もどる

    かけはし2019年2月11日号

「改憲本番国会」包囲へ!


通常国会開会

安倍施政方針演説を批判する

政府打倒へ連続した行動を

「平成の、その先の時代」

 一月二八日、第一九八回通常国会が始まった。安倍首相が国会冒頭で行った施政方針演説から、労働者・市民は何をつかみとるべきなのだろうか。今回の通常国会で、本紙読者をはじめとして多くの人びとが注目しているのは、安倍首相の悲願である「憲法改正」テーマについて、安倍首相がどのように打ち出しているのか、ということだろう。結論から言えば安倍政権の最大の課題である「改憲」問題は、@「はじめに」からE「おわりに」までの中で独自項目として立てられているわけではなく、E「おわりに」の末尾においてはじめて登場するという構成になっている。その部分を全文引用しよう。
 「憲法は、国の理想を語るもの、次の時代への道しるべであります。私たちの子や孫の世代のために、日本をどのような国にしていくのか、大きな歴史の転換点にあって、この国の未来をしっかりと示していく。国会の憲法審査会の場において、各党の議論が深められることを期待します」「平成の、その先の時代に向かって、日本の明日を切り拓く。皆さん、共に、その責任を果たしていこいうではありませんか」。
 改憲、あるいは憲法に直接かかわる言及は、それだけである。しかしこの改憲への言及が、長文の施政方針演説の末尾において謳われていることが重要なのだ。われわれは施政方針演説の全体的構成との関連で、安倍政権の「改憲発議」に向かう政治の中身を理解していくべきだ。
 ここ一・二年の安倍政権との闘いの中心的焦点となるものが「改憲阻止」のテーマであることは多くの人々が理解している。「二〇二〇年東京五輪」を新しい憲法で迎えるという安倍政権の願望を阻止する運動を作り出していくためにも、今回の「天皇代替わり」の年における「施政方針演説」の全体構成の中から、安倍首相の政治戦略を理解すべきだろう。

「しきしまの大和心」


 @「はじめに」は、四月三〇日の天皇退位と五月一日の新天皇即位についての言及から始まっている。この短い冒頭部分では、「代替わり」にあたって、「平成」という時代、阪神淡路大震災、東日本大震災などの災害が相次いだこと、その被災地の現場にはつねに天皇・皇后の姿があったことに言及している。
 安倍はこうした天皇・皇后の姿を語るにあたり、「しきしまの、大和心のをゝしさは ことある時ぞ あらはれにける」という明治天皇の「御製(ぎょせい)」を引用し、「明治、大正、昭和、平成。日本人は幾度となく大きな困難に直面した。しかし、そのたびに、大きな底力を発揮し、人びとが助け合い、力を合わせることで乗り越えてきました」と、施政方針演説の中で語った。
 しかし、この明治天皇「御製」の歌の「ことある時」とは決して自然災害のことではない。字義通り「有事」を指している。日露戦争が始まったばかりの一九〇四年二月に、対露戦争の勝利のための「挙国一致」を呼び掛けたのがこの「御製」の歴史的意味だ。施政方針演説の「はじめに」の項で、日露戦争という「国難」にあたっての「挙国一致」を求める「明治天皇御製」をわざわざ引用した安倍「施政方針」演説は、それ自身、挑発的なものと言うしかない。

「毎月勤労統計」不正
 
 A「全世代型社会保障への転換」B「成長戦略」では、アベノミクス六年間の「成果」をうたい上げ、「成長と分配の好循環」がもたらされていることを強調している。
 「この六年間、三本の矢を放ち、経済は一〇%以上成長しました。国・地方合わせた税収は二八兆円以上増加し、来年度予算における国の税収は過去最高、六二兆円を超えています」。「早期にデフレではないという状況をつくり、企業の設備投資は一四兆円増加しました。二〇年間で最高となっています。人手不足が深刻となって、人材への投資も息を吹き返し、五年連続で今世紀過去最高水準の賃上げが行われました。経団連の調査では、この冬のボーナスは過去最高です」。
 しかしこの「アベノミクス」の「成果」を呼号する統計の虚偽が明らかになっている。「毎月勤労統計」での不正調査に基づく昨年の実質賃金増減率を実態に近い方法で調査すれば、一年のうち九カ月で前年比マイナスとなり、年間を通じてもマイナス〇・五三%になると野党が試算した。厚労省もそうなる可能性を認めた(「朝日」二月一日朝刊)。かさ上げされた賃金データを基礎に「賃金は緩やかに上昇している」(月例賃金報告)との判断がなされたのである。「過去最高水準の賃上げ」という安倍の言は、まったくの嘘っぱちだった。
 「毎月勤労統計」の不正問題は、「アベノミクスの成果」を「実証」しなければならない官僚の強迫観念がもたらした結果ではないか、との評価もなされている。

原発事故隠しの五輪
 
 Cのテーマは「地方創生」であり、「農林水産新時代」、「観光立国」、「地方創生」、「国土強靭化」、「東日本大震災からの復興」の五つの項目が取り上げられている。「我が国の国柄を守ってきたのは全国各地の農林水産業」「農こそ国の基」などという言辞で、農漁業破壊の現実を隠蔽しながら、「平成の、その先の時代に向かって、若者が自らの未来を託すことができる『農林水産新時代』を」といった空虚な言葉をもてあそんでいるだけだ。
 「観光立国」の項では、日本を訪れる外国人観光客の急速な増大を宣伝しながら「海外と地方をつなぐ空の玄関口、羽田、成田空港の発着枠を八万回増やします。世界一安全・安心な国を実現するため、テロ対策などの一層の強化に取り組みます」と、「観光」が「治安の強化」と一体のものであることを明らかにした。二〇二〇年の東京五輪、二〇二五年の大阪万博は、そうした弾圧・監視体制を強化するための口実となっている。
 「東日本大震災からの復興」の項でも、オリンピックをはじめとしたスポーツイベントが「原発事故は終わった」とする気運を押しつけるための最大の材料となっている。
 「九月二〇日からいよいよラグビーワールドカップが始まります。五日後には、強豪フィジーが岩手県釜石のスタジアムに登場します」「東北の被災地では、この春までに四万七千戸を超える住まいの復興がおおむね完了し、津波で浸水した農地の九割以上が復旧する見込みです」「原発事故で大きな被害を受けた大熊町では、この春、町役場が八年ぶりに、町に戻ります」。
 「来年、日本にやってくる復興五輪、その聖火リレーは福島からスタートします。最初の競技も福島で行われます。東日本大震災から見事に復興した東北の姿を、皆さん、共に、世界に発信しようではありませんか」。
 こうして二〇二〇年五輪は、安倍内閣にとって原発事故の惨害を「過去」に追いやるためのものに他ならない。

もうひとつの未来へ


 Dの項目は「戦後日本外交の総決算」と名付けられている。「公正な経済ルールづくり」、「安全保障政策の再構築」、「地球儀俯瞰外交の総仕上げ」、「世界の中の日本外交」という各テーマに貫かれている方向は、明白だ。グローバルな資本主義経済を前提にした日本の軍事的役割を、これまでの枠を大きく踏み越えて強化していくことが、その基調である。
 「自らの手で自らを守る気概なき国を、誰も守ってくれるはずがない。……もはやこれまでの延長線上の安全保障では対応できない。陸、海、空といった従来の枠組みだけでは、新たな脅威に立ち向かうことは不可能であります」「新しい防衛大綱の下、そのための体制を抜本的に強化し、自らが果たし得る役割を拡大します。サイバーや宇宙といった領域で我が国が優位性を保つことができるよう、新たな防衛力の構築に向け、従来とは抜本的に異なる速度で変革を推し進めてまいります」。
 これがグローバルなレベルで戦闘能力を発揮する、自衛隊の「侵略軍」化に他ならないことは明白だろう。
 「戦後日本外交の総決算」という項目で展開されるのは、まず何よりも自衛隊の世界規模での実戦部隊化である。国際的に展開できる実戦的軍事力を前提としてはじめて「戦後日本外交の総決算」も可能になる、というのが「施政方針演説」で安倍が強く押し出した中身である。
 確かに地球規模での温暖化対策や、「海洋プラスチックごみ対策」といった項目にも触れてはいる。今年六月に大阪で行われる「G20サミット」との関係でも、そうしたテーマは安倍内閣にとって無視することはできない。しかしその中心的ねらいが軍事的分野に据えられていることは間違いない。そしてその政治プログラムの全体が、Eの「おわりに」という項目で、憲法改悪というゴールに向かうプロセスとして位置付けられている。
 「二〇二〇年(東京五輪)、二〇二五年(大阪万博)を大きなきっかけとしながら、次世代の子どもたちが輝かしい未来に向かって大きな『力』を感じることができる、躍動感あふれる時代を、皆さん、共に、切り拓いていこうではありませんか」。
 そして次に冒頭に述べたような「憲法は、国の理想を語るもの、次の時代への道しるべ」という「改憲への呼びかけ」が続く。
 安倍は、自らのプログラムを提示した。労働者・市民は、憲法改悪に向かう安倍たちのプランをはっきりと拒否し、「安倍改憲阻止」の共同闘争を大きく広げていくとともに、アジアの人びと、世界の人びとと共に、「もう一つの世界」「もう一つの未来」を作り出そう。そうした闘いは、グローバルな規模で現に始まっている。     (平井純一)



もどる

Back