もどる

    かけはし2019年2月11日号

革命は今も広場にある!


中東

「秩序は維持されている!」

慰めで革命の騒音は消せない

ジルベール・アシュカル

 アラブの春は、シリアの革命的民衆決起がアサド政権の残虐な鎮圧作戦によって敗退させられたと伝えられる八年後の今、最終的に収束したかに見える。しかし同時に今年の幕開けは、チュニジアとスーダンでのゼネストへの動きを含んだ民衆的決起で刻印されている。以下では、ジルベール・アシュカルが、この情勢全体の底流にある不可逆的な趨勢への確信を、現在の動きを歴史と対照させつつ論じている。(「かけはし」編集部)

今年の幕開けも民衆の決起から


 アラブ世界の独裁体制は、虐殺と宗派主義を通して今回も生き残った。しかし長期的には、虐殺と流血を頼りにするどんな秩序も、崩壊する運命にある。
 アラブ世界の今年始めは、去年のそれと著しく似ているように見える。二〇一八年は、モロッコ、チュニジア、ヨルダン、さらにスーダンにおける抗議行動と社会的騒乱――イランですら、アラブの動乱に捉えられたように見えた――で始まった。一年後、今年二〇一九年の始まりでも社会的地震が、活発な爆発を続けているものか、いつかの爆発に向け準備中の休火山か、そのどちらかの高度に密集した火山群で特性づけられるアラブ地域を、依然として揺らし続けている。
 国の貧困地域の中心にあるシジ・ブジドという町で二〇一〇年一二月一七日に始まった大地震の震央であるチュニジア――アラブ近代史上もっとも明るい気分にさせた(次の「春」まで)章であるアラブの春の口火を切った国――は今も、次々に起きる爆発の一つを通過中だ。もっとも新しい地方の蜂起は、この国の同じように貧困化した中央部にあるカトリーヌという町で爆発し、チュニスとスファックスという二大都市の近くにまで広がった(同時にチュニジア労働総同盟はゼネストを準備中:訳者)。
 早い時期に民衆が二〇一一年のアラブの春に加わり、オマール・アルバシールの独裁体制からの過酷な弾圧で迎えられたスーダンでは、民衆運動は、容赦なく繰り返し攻勢に戻ってきた。巨人的な波が巨大な監獄の壁に打ちつけ続けている大時化の海のように、スーダンのバスティーユが崩れる日――彼を救出するために、湾岸君主たち内部のスーダン独裁者の「兄弟たち」が展開するあらゆる努力にもかかわらず、無情にもやってくる日――まで、民衆運動は勢い、ストライキに次ぐストライキ、を集め続けている。

自らを納得させたい独裁者たち


 アラブの旧体制は今あらためて結集しつつある。そしてこの地域の反革命諸勢力は再統一しつつあり、アラブの春をその民主主義と社会的平等に向かうコースから宗派的憎悪の薄汚れた沼地に押しやるための努力として、彼らが一時利用した、宗派的分裂を克服しようとしている。
 バシャール・アルアサド――八年前にチュニジアで始まった広範囲に広がる革命の波を相手に持ちこたえた独裁体制のシリア版象徴――を最初に再抱擁した男が、他の誰でもなく、現在、アラブ体制の最弱の環になっている国の頭目、オマール・アルバシール自身であったことを、どう語ればいいのだろうか。彼は昨年末、ダマスカスへの驚きの訪問を行ったのだった。
 さらに同じく、シリア政府をアラブ専制体制の悪臭を放つ囲い――皮肉なことに、シリアの革命を宗派主義という濁った水に沈める点で、自らの努力とその「兄弟たち」の努力が近づいたおかげで、ダマスカスが一時的に排除された囲い――に連れ戻す道を導いた政権の一つが、他でもなく、シリア体制の反革命的そっくりさんであるバーレーン首長であったことを、どう語ればいいのだろうか。
 ダマスカスとマナマ(バーレーンの首都)の両政権とも、一方ではエリートの宗派が多数派の宗派であり、他方ではその逆であるとしても、彼らの権力を固めるために宗派主義を利用した。シリアとバーレーンの体制は両者共、後者はサウジの君主によって救われ、他方前者はサウジの不倶戴天の敵であるイランの「聖職者体制」によって、さらに遅れてネオツァーリ体制のロシアによって救い出されたという違いがあるとはいえ、外国の介入によってアラブの春から救い出された。
 アラブの諸政権は今、彼らの壊れたつながりを回復させ、和解のアラブサミットを準備するのに忙しい。彼らは今深呼吸をし、アラブ革命は死を遂げ、ものごとはいつもの抑圧的秩序に戻っている、と自らを納得させようとしている。

独裁の退場なしには革命不可避


 彼らはそうすることで、偉大な革命的指導者で思想家であるローザ・ルクセンブルクが書いた言葉をわれわれに思い起こさせる。それは、欧州の反動的諸政権が、第一次世界大戦の後に大陸を覆った革命の波の敗北から安堵を覚え、深く息を吸い込んでいた時に書かれた言葉だ。つまりローザは、一九一九年一月一四日、一世紀前彼女がベルリンで反革命の暴漢によって暗殺される前日、次のような感銘を呼ぶ言葉を記していた。
 「『ワルシャワでは秩序が維持されている!』『パリでは秩序が維持されている!』『ベルリンでは秩序が維持されている!』。しかし、『秩序』の守護者からのニュース速報が宣言するものはことごとく、世界史的闘争の一つの中心から次までの半世紀にすぎない」と。
 それはあたかも、アラブの「秩序」の守護者から出てくる歓喜に酔ったニュース速報のこだまを、つまり「マナマでは秩序が維持されている!」「ダマスカスでは秩序が維持されている!」「カイロでは秩序が維持されている!」との響をわれわれが今聞き続けているかのようだ。
 そしてここにはローザの痛烈なコメントが続いている。つまり「そして歓喜に酔った『勝者たち』は、決まって血の海の虐殺を通して維持される必要のある『秩序』はどんなものでも、容赦なくその歴史的運命、つまり消失、へと向かうということに気付くことができない」と。アラブの支配者たちも同じように、殺人と虐殺という方法で永遠に維持される必要のある彼らの独裁的「秩序」は崩壊の運命にある、ということを実感できていない。
 しかしながら彼らは、彼らの独裁的「秩序」が正常に戻ったと自らを納得させようと懸命に試みても、今チュニジアとスーダンからわき起こり、明日にはカイロとダマスカスから起こる革命的騒音をさえぎることはできないだろう。八年前にチュニジアで始まったものは実際に、アラブの旧体制が今なお持ちこたえ続けている中では、止まりようのない長期の革命過程であるからだ。
 今日のチュニジアやスーダンで、そして潜在的には全地域諸国で、エジプトの若い反逆者たちが、残忍な弾圧で一時的に沈黙を強いられる――不可避的にやってくる次の爆発まで――前に決まって唱和したように、「革命は今も広場にある!」。(『ジャコバン』誌より)(「インターナショナルビューポイント」二〇一九年一月号)

ブラジル

国際連帯へのアピール

ジャン・ウィリスは
生き長らえてほしい!

抵抗する民衆への連帯を

ブラジルでは極右の大統領が就任したが、この大統領の選出過程から、政治的暴力、被差別民衆への暴力が激化している。この中でPSOL(社会主義と自由党)の連邦議員が亡命を余儀なくされるという事態が起きている。この重大な情勢展開を前に、当該のPSOL議員への連帯、及びブラジルの民主主義防衛に立ち上がる人々への連帯を呼びかける、国際連帯署名のアピールが出された。以下に掲載する。(「かけはし」編集部)


事態は深刻だ
極めて急要す
 ジャン・ウィリスはゲイのPSOL議員――初めてホモセクシャルを明らかにし、国会でLGBTIの権利を求めた誇り高い戦士――だった。しかし彼は今週、連続する死の脅迫のゆえに、彼の仕事も国も失った。われわれは今、彼の命の権利を求めて立ち上がることがどれだけ重要か、を自覚している。ジャンは、極右グループを発信源とする洪水のようなフェイクニュースの標的になっている。彼らはジャンの亡命を、昨年九月のジャイル・ボルソナロ大統領に対する暗殺計画への関与という根拠のない主張、と結びつけようとしているのだ。
 これが極めて急を要する情勢であるがゆえに、ブラジルの活動家はみなさんの支援を期待したいと思う。われわれは、すでに多くの国民的支援を受けている(個人と諸組織の二三〇件以上の署名)。そして今われわれは、他の諸国の諸政党、NGO、諸運動、諸組織、知識人、諸々の指導者、議員、さらに公的な人々の署名を求めている。みなさんがみなさんの政党、運動、指導者、組織からの支持をできる限り早く送ることができれば、それは非常に重要なものになるだろう。
 マリエレ・フランコの事件では当局に行動するよう圧力をかける点で、国際的連帯は極めて重要だった。そして今、ジャンに対する脅迫もまた、深刻に受け取られなければならない。

マニフェスト

 われわれは大きな悲しみをもって、国と連邦議員としての彼への委任から去る、という彼の決定を受け取っている。ウィリスに対する安全保障と保護を保証する上でのブラジル国家の失態を前にすれば、この究極の方策は、受け取った数知れない脅迫と暴力の文化、ブラジルのLGBTIの人々の命を軽んじているそれら、が導いている一つの結末にほかならない。
ブラジルは、ヘイトクライムの中でもっとも多くのLGBTIの人々が死に、黒人を追い立てている、そして同性愛とトランスの女性に対する殺害が記録破りになっている、そのような国だ。
二〇一九年初頭というこの間の日々にわれわれは、極度の冷酷さで殺害された異性服愛好者であったクエリー・ダ・シルバの喪に服した。もう一人の異性服愛好者でもあったティーンエージャーは、石で襲われ歯を八本失った。一人のレズビアンの女性は仕事中に殺害されレイプされた。情勢は恐るべきものだ。
われわれの国はまた、世界で人権擁護の活動家がもっともひどい迫害を受ける国の一つでもある。自らの命を守るという点で、ジャン・ウィリスの決定は理解できるものであり、われわれの幅広い連帯を得ている。それは、ブラジルの民主主義が危険なところにあり、暴力が容認可能と思われるレベルを完全に超えた、という標識だ。
われわれは、司法、立法、そして執行機関の代表者たちの立場を拒絶する。彼らは、ジャン・ウィリスの状況にはらまれた重さを今なお過小評価し、最小化し続けている。彼らは、これらの犯罪の犯人たちに軽々しく承認の合図を送っているのだ。そのような姿勢は、LGBTIの人々、女性、黒人、そして人権の擁護者たちに対する迫害をただ増幅するだけだ。

われわれはジャン・ウィリスと共に立ち、そして彼に生き長らえてほしいと切に思う。
ブラジルの民主主義は危険にさらされている。
われわれは、抵抗し、人権を擁護するすべての人々に対する全面的な連帯を、はっきり示す必要がある。

国際署名(二〇一九年一月二八日現在)
ジルベール・アシュカル(ロンドン大学SOAS教授)
デイヴィッド・アルダーソン(マンチェスター芸術・言語・文化大学芸術・言語学部学際研究センター主任)
オリヴィエ・ブザンスノー(仏NPAスポークスパーソン)
テリー・コンウェイ(労働党イスリングトン北区LGBT担当)
ビーター・ドラッカー(IIREアムステルダム)
ペネロペ・ドゥガン(IV編集者、IIREアムステルダム)
マリア・フェルナンダ・アレッラネス・アレッラネス(メキシコPRT)
アドリアノ・カムポス(ポルトガル左翼ブロック)
バレリア・コスタ・パチェコ
エンリケ・ドゥアルテ・ミエムブロ(メキシコPRT)
サミュエル・R・フリードマン(AIDS研究者)
アダミ・ハニエ(ロンドン大学SOAS)
サイ・エングラート博士(ロンドン大学SOAS)
A・フェルナンデス・ゴメス
ジョナサン・フライヤー
ポール・ルブラン(ラ・ロチェ学院歴史学教授)
アリシア・メンドーサ・グエッラ(メキシコPRT)
ポール・メプシェン(アムステルダム大学)
クリスティーヌ・プパン(仏NPAスポークスパーソン)
フィリップ・プトー(仏NPAスポークスパーソン)
ラフル・ラオ(ロンドン大学SOAS)
リナ・ロンジャ・カリ(議員、デンマーク反EU人民運動)
ピエール・ルッセ(国境なき欧州連帯) 
ゾーレン・ゾンダーガールト(議員、デンマーク赤緑連合)
ジャン・ウィレム・ストゥーチェ(IIREアムステルダム)
エリック・トゥサン(CADTMスポークスパーソン)
エレニ・ヴァリカス(仏国立科学研究センター)
A・コレティヴァ(ポルトガル・コレティボ・フェミニスタ)
コレティボ・フェミニスタ・ソシアリスタ・ボセス・デ・リリス(メキシコ)
デモクラシア・ソシアリスタ(アルゼンチン)
(「インターナショナルビューポイント」二〇一九年一月号)

 


もどる

Back