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    かけはし2019年3月18日号

検察はすべての証拠開示せよ


2・28

狭山差別裁判―今年こそ最大のヤマ場

再審無罪求め、東京集会に270人

 二月二八日夜、東京・台東区の台東区民会館大ホールで、「狭山事件の再審を求める東京集会」が開催された。主催は「狭山東京実行委員会」。冷たい雨が降り続くなか、支援者ら二七〇人が集まって会場は満席となり、石川一雄さんの無罪を求め闘う決意を新たにした。
 司会を東京教組の片桐育美さんが務めた。「すでに三八回にも及ぶ三者協議が行われた。事件から五六年目の今年。この集会を成功させ再審開始を」と訴えた。
 青木正男実行委議長が発言した。「私たちの要求で明らかになった新証拠は、二二〇点を越えている。今こそ一丸となって運動を前進させる」。青木さんは千葉県で起きた少女虐待事件にも触れた。「大変残念だ。学校職場で教師は長時間労働のなかで日々闘っている。来年度は都内三区で児童相談所の設置が予定されている。子どもたちへの支援を今すぐ行いたい。狭山事件を通じて私たちは、どんな差別も許されないということを学んできたはずだ」と振り返った。
 桐田達也実行委委員長が、配布された資料に掲載された「集会基調案」を読み上げた。
 狭山再審弁護団の河村健夫弁護士が、本集会のメインプログラムである講演をした。(演目・要旨別掲)

裁判官に正義の
プレッシャーを
講演の後、石川一雄さん、佐智子さん夫妻が登壇した。一雄さんは、被害者の死斑について「私が確定判決通りに死体を抱えて移動したら、あのような死斑はつかない。被害者は殺された場所で数時間放置されていたから死斑がついた。こうした点一つとっても私は犯人ではありえない」と語り、「これほどの人が集まってくれて私たちは幸せ者だ。必ず勝利して恩返しをしたい」と話した。
佐智子さんがマイクを握った。「今日は愛知県をはじめ遠くから来てくださっている。京都や大阪の皆さんにも支えられている。幸せです。沖縄の県民投票で民意がはっきりと示された。大きな力、正義の力です」。そして一九六四年の浦和地裁判決について「3・11の死刑判決こそ差別の原点だ」と厳しく糾弾した。「判決文では一雄さんの家が貧しくて満足に学校にも行けず、奉公に出されたことを個人の責任としている。こうした家庭環境だから順法精神が希薄で犯罪に走るのだと」。
佐智子さんは自身の体験も語った。「私は徳島の被差別部落で生まれました。『てっちゃん』という近所の子供がいたが、その子は一日も学校に行けなかった。私はそれをおかしいと感じなかった。石川と私は八歳違うが、それでも私の村ではそうだった。だから浦和地裁の判決が許せないのです」。「苦しい年月のなかで石川は、多くの人に支えられて文字を取り戻した。今は国のトップが変だが裁判官に正義のプレッシャーをかける。今年が山場です。ぜひ皆さんのお力添えをいただきたい」。佐智子さんの言葉に会場は大きな拍手に包まれた。

まともな社会を
実現するために
同宗連(※)からは「台湾では検察が尽力し、えん罪が晴らされた。かたや日本はどうか。どちらが安心して暮らせる社会になるか。まともな司法、まともな検察、まともな社会を実現するためにがんばろう」と発言があった。東京清掃労組人権交流会の押田五郎さんは、「二三年連続で狭山の現調を続けている。フィールドワークもやっている。私の住む国立市では、さまざまな人権条例を作っている。市民と人権派市議の運動の成果だ」と取り組みを紹介した。
東京都連江東支部の女性は、「私たちは小さな支部だが、石川さんに来ていただいて毎年七月に地区集会を開いている。江東共闘会議主催で毎月、亀戸駅前で情宣もしている。勝利するまでの毎月の取り組みだ」。都連青年部長が演壇に立ち、狭山入門学習会、浅草フィールドワーク、ネットと人権の学習会など多様な活動を報告した。
本集会の決議案を青木正男実行委議長が読み上げ、全体の拍手で確認された。最後に「団結ガンバロー」と拳を振り上げ、幕を閉じた。      (佐藤隆)
※「同和問題」にとりくむ宗教教団東京地区連帯会議

狭山事件の真実を
いい加減な審理はさせない

狭山東京弁護団 河村建夫

 狭山事件は、警察の不手際で被害者が殺された事件だ。捜査側の焦りがえん罪を生んだ。追い詰められた警察の「犯人探し」は社会の弱者に向かう。
検察は自分たちに有利な証拠しか開示しない。あらゆる再審闘争は証拠の開示を求めることから始まる。第三次再審請求から一三年。「三者協議」を舞台として証拠開示を求めた「門野勧告」から一〇年。数多くの新証拠が出されたが、まだ一部に過ぎない。検察の「不見当」という弁解は極めて曖昧だ。
昨年八月、有力な科学的証拠の一例として「下山第二鑑定」を提出した。これは「被害者の物」として石川さん宅の鴨居から「発見」された万年筆のインキについて「蛍光]線分析」という手法を駆使したものだ。
被害者が生前使っていたインキは「ジェットブルー」と呼ばれる特殊な色であり、そのインキからは「クロム元素」が検出された。しかし石川さん宅に置かれた万年筆からは「クロム元素」は検出されず代わりに「鉄元素」が検出された。石川さん宅の万年筆のインキが「ブルーブラック」であり、被害者が使用していた物とは別物であることが科学的にも証明された。
審理中の東京高裁刑事四部の裁判長は後藤眞理子氏、裁判官は世論の動向に敏感で、傍聴席に人がいるのといないのでは緊張感も変わる。世論に沿った判断をすることは「日産ゴーン事件」でも見て取れる。後藤氏は来年夏にも退官と言われている。裁判官は後任に交代する前に、思い切った判断をすることがある。「みんながこの裁判に注目しているぞ」とプレッシャーをかければ、いい加減な審理はできないはずだ。
世の中で急速に排外主義が強まっている。どう頑張っていくか。いろんな人と連帯することだ。弁護団もいろんな立場の人と連帯をしていくつもりだ。(講演要旨・文責編集部)

3.6

検察・警察の捜査照会
による情報収集の危険性

院内集会で警鐘鳴らす

 三月六日、「検察・警察の捜査照会による情報収集の危険性について」院内集会が衆議院第二議員会館で行われた。共謀罪NO!実行委と「秘密保護法」廃止へ!実行委の共催。

大々的情報収集
が暴露された
一月三日、共同通信は、「検察当局が、顧客情報を入手出来る企業など計約二九〇団体について、情報の種類や保有先、取得方法を記したリストを作り、内部で共有している」と報じた。すでに検察・警察は、グローバル派兵国家建設の一環として対テロ治安弾圧体制を強化し、連動して刑訴法一九七条を根拠にして、公私の団体に対して「捜査関係事項照会」(任意)によって個人情報も含む様々な情報を取得している。任意で情報を得られないケースでは令状を取り執行する。ほとんどの公私団体は警察などの問い合わせにすべて応えている。
この手法自体憲法一三条(プライバシー権)、三五条(裁判所の令状に基づかない住居、書類、所持品侵入、捜索・押収を禁じる)に抵触し、違法に近いものだ。「GPS捜査」裁判でも最高裁(二〇一七年)は違法判決を出している。
しかし、検察・警察は、居直り的に「捜査上有効なデータ等へのアクセス方法一覧表」を作成し、情報収集を拡大していた。いずれも「捜査関係事項照会」と称して鉄道会社には「定期券の内容、チャージ金額、利用履歴」の取得、電子マネー付ポイントカード提供会社には「ポイントカードの人定事項、利用店舗」の取得、アプリ運営会社には「アプリのフリーマーケット取り引き履歴」の取得、ポイントカード提供会社には「レンタル履歴、店舗内の防犯カメラ映像」の取得、携帯電話会社には「捜索・差し押さえ許可状」によって「メールの送受信履歴、位置情報」などを取得しリスト化していた。
共同通信によるスクープ報道によって各メディアは「捜査当局の顧客情報取得 日々の暮らし『丸裸』に」(東京新聞)、「カード情報どこまで提供 会員に知らせず 捜査当局に利用状況」(朝日新聞)の見出しで追いかけ記事でツタヤ、各コンビニ、NTTドコモなどが個人情報を提供していたことを報じた。利用規約には警察などへの協力を明記していないことまで判明した。つまりカード会社などは、利用者に警察からの情報要求などの情報を提供せず、警察が要求するままに秘密裏に個人情報を提供していたのだ。社会的批判が強まったため「Tカード」のカルチュア・コンビニエンス・クラブは、「捜査令状に基づく場合にのみ対応する」ことを公表せざるをえなかった。
だが検察・警察は、社会的批判を無視し、刑訴法を盾にして不当な情報収集を続行している。なんとか歯止めをかけるために実行委は院内集会を行った。

監視社会の巨大
化が現在進行形
横山雅弁護士(自由法曹団治安警察問題委員会事務局長)は、「捜査関係事項照会と監視社会」というテーマで問題提起した。
「買い物や商品のレンタルなどで特典ポイントがつくTカードの運営会社が、利用状況など個人情報を会員に知らせないまま、裁判所の令状もなく、捜査機関に提供していた。『捜査関係事項照会』によって情報収集していた。そもそも『T会員規約』に当局への情報提供を明記せず、当局も情報を得たことを本人にしられないよう保秘を徹底していた。企業は回答を拒否しても罰則はないが、実際は関連資料のコピーを添付する形で返答している」。
「対抗方法は、捜査照会やそれに基づく個人情報が適正に利用されているか否かの監視が不可欠だ。場合によっては国家賠償請求権の行使、立法化の要求も必要だ。そもそもTカードなどの会員規約があってもろくに確認しないまま同意し、捜査当局への情報提供、さらにユーザーの知らないところで提携企業に日々提供され、セールスなどに利用されている実態が問題だ。ビッグデータが使い放題のあり方が問題だ」と批判した。
防犯カメラを通した情報収集の実態について、「通行人の画像、フェイスブックの画像などを顔認識ソフトウェアを利用し、判明した氏名で他のデータベースの情報を検索する。これを同時に行うことによってカメラの前を通りかかった人物の個人データをリアルタイムでディスプレイに表示することに成功している。この詳細がブルース・シュナイアー『超監視社会』(草思社)で明らかにされている。さらに歩行認容システムも確立させ、大勢の中から特定の人物を探し出す能力も向上している」と述べ、監視社会の巨大化が現在進行形であることの危険性を強調した。
なお実行委は、毎月六日に定例の共謀罪廃止・秘密保護法廃止国会前行動を行っている。この日も国会前行動を行い、院内集会には逢坂誠二衆院議員(立憲民主党)、藤野保史衆院議員(共産党)、福島みずほ参院議員(社民党)が参加し、国会内外にわたってスクラムを強化していくことを確認した。    (Y)


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