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    かけはし2019年5月20日号

袋小路に入った金正恩外交


ロ朝首脳会談をどう見るか?

朝鮮半島の非核化こそ唯一の選択肢

初の露朝首脳
会談の背景は

 四月二五日、ロシア極東のウラジオストクでプーチンと金正恩による初の露朝首脳会談が行われた。会談では合意文書などは作成されず、実質的に両首脳の初顔合わせという域を出るものにはならなかった。
プーチンはこれまでに金正恩に対して二度の会談要請を行ってきたが、金正恩はそれをことごとく断ってきた。一回目は一五年の戦勝記念行事で、二度目は一八年の極東経済フォーラムへの招待だった。またロシア政府は二〇一三年の九月に成立間もない金正恩政権に対して、旧ソ連時代の朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の債務、八七〇〇億円の九割を返済免除するということを決めてきた。そういった経緯があったからだろう、プーチンは北京で開催されている「一帯一路」国際会議に二六〜二七日に参加する日程に合わせて金正恩との会談を設定したのであった。まさに「会ってあげよう」という演出をしたのであった。

さらに深まる
朝鮮経済危機


 それでもロシアにはロシアとしての会う事情がなかったわけではない。広いロシアのなかにあって極めて人口密度の低い極東・東シベリア地域においては、安価な労働力としての朝鮮人労働者の存在は極めて重要なものとなっていた。森林伐採や地域開発、農業や工場労働者として貴重な労働力となってきたのである。それが国連安保理の朝鮮制裁決議によって新規雇用が禁止されて、今年末までの朝鮮人労働者全員の帰国が迫っていた。そういった事情もあって、二月六日にはコズロフ極東発展相は三月上旬にモスクワで朝鮮との政府間協議を行うことを明らかにしていた。
 三月二六日、国連安保理外交筋は国外で就労する朝鮮人労働者数の実態について報告している。それによるとロシアでは、自国の管轄下で働く朝鮮人労働者数は三万二三人から一万一一四九人に、中国では「半数超」を送還、UAE(アラブ首長国連邦)では半数超にあたる八二三人を送還したという。またロシアのトピリン労働社会保障相は安保理決議を順守することを表明しており、朝鮮にとっての外貨稼ぎのための重要な柱でもある朝鮮人労働者問題は暗礁に乗り上げた状態になる。
 国連食糧農業機関(FAO)の報告書によると、朝鮮は昨年の洪水の影響で作況が落ち込み、六四万一〇〇〇トンの穀物不足になっていることが指摘されている。これは朝鮮人民一人あたりコメが約二五キロ必要になっているということだ。こうしたなかで国連世界食糧計画(WFP)は四月三日、ロシアが朝鮮に小麦五万トンを提供したと発表した。中国からの人道支援も続くなか、韓国もまたこれまで実施してきた食糧支援を拡大して、医療・燃料・災害抑止などの支援拡大の検討に入った。
 朝鮮は二年ほど前から本格化した経済制裁によって経済危機が進行して、食料に加えて生活必需品・エネルギーなどが極度に不足していて人民の生活と生存が脅かされている。そのような状況のなかで四月一一〜一二日に朝鮮の最高人民会議が開催された。金正恩は施政演説で「米国との対峙と経済制裁の長期化」を指摘して、絶望的な自力更生による経済再建の必要性を強調した。また演説の中でトランプ政権に対して「ハノイの再現ならば会談に参加する意欲はない。双方が要求を下げるべきだ。年末まで米国の勇断を待つ」と発言した。文在寅政権に対しては「仲介者ではなく民族の利益を擁護する当事者となるべきだ」として、南北経済協力などを盛り込んだ「九月平壌宣言」の実施を要求した。

朝鮮人民への
無条件支援を

 ロイター通信の発表によると、二月末にハノイで行われた第二回目の米朝首脳会談でトランプが金正恩に渡した文書は以下のような内容だった。
@すべての核兵器と核物質の引き渡しA核計画の完全な申告と米国を含む国際査察員の完全な受け入れB核開発関連のすべての活動や新たな施設建設の中止Cすべての核関連インフラの廃棄D核計画に関与する科学者・技術者の民生活動への配置換え。
そしてさらに、朝鮮の核インフラ、化学・生物兵器計画に関連する軍民両用の能力、弾道ミサイル、発射施設、関連施設の完全廃棄を要求した。
トランプ政権はネオコンのボルトンが主導し、経済制裁の継続という「兵糧攻め」戦争で金正恩体制の打倒に向けて本格的に舵を切ったということができる。その方法はイランやベネズエラに対する戦争政策とも共通している。もはやトランプ政権との小手先の「ディール外交」は通用しないことは明らかだ。金正恩は経済制裁をいくらかでも解除させたいのであれば、非核化の本気度を国際社会に示さなければならない。中国やロシアを含めて、朝鮮の核武装に賛成している国はどこにも存在しない。圧倒的な朝鮮人民も核爆弾ではなく食料や生活必需品を必要としていることは明らかだ。
金正恩体制が再び「瀬戸際外交」を選択すれば、それは間違いなく体制崩壊の引き金となるだろう。ハノイでの失敗は決定的である。金正恩は試されて失敗した。軍の既得権は空白化され、下級軍人は国外労働の道も絶たれて日本海での命がけのイカ漁に駆り出されている。労働者は仕事もなく実質的な失業状態。農民も飢えている。朝鮮の自滅か、それとも独裁者の排除かという選択が迫られることになるだろう。
これまで蚊帳の外から南北和解の動きに敵対してきた安倍政権は、窮地に追い込まれている金正恩を確認した上で「無条件で会う」としゃしゃり出てきた。金正恩と会って得意の「お説教」でもするつもりなのだろうか。安倍政権は食糧不足に苦しむ隣国の人民に対して「無条件で」備蓄米から数万トンの人道支援をしなければならない。(高松竜二)

4.6

伊達判決60周年集会

安倍の改憲暴走止めろ

国家賠償請求訴訟勝利へ

 「憲法第九条の解釈は、アメリカ軍の駐留は、軍備なき真空状態からわが国の安全と生存を維持するため自衛上やむを得ないとする政策論によって左右されてはならない」「わが国が外部からの武力攻撃に対する自衛に使用する目的でアメリカ軍の駐留を許容していることは、指揮権や軍出動義務の有無に拘わらず、憲法第九条第二項前段によって禁止されている戦力の保持に該当するものであり、結局わが国に駐留するアメリカ軍は憲法上その存在を許すべからざるものと言わざるを得ない」(一九五九年三月三〇日 砂川事件東京地裁判決―伊達判決から)。
 この画期的な伊達判決から六〇年。四月六日、日比谷図書文化会館大ホールで「安倍暴走改憲を許さない!伊達判決六〇周年記念集会」が、伊達判決を生かす会の主催で開かれた。

運動の交流進め
国賠請求訴訟
集会は島田清作共同代表と会員の西尾綾子さんの司会で進められた。まず初めに、〇九年六月に結成した「伊達判決を生かす会一〇年間の活動報告」を吉沢弘久事務局長が行った。
会発足のきっかけは、伊達判決に対処しようとした米公文書と日本行政文書一六通の存在が明らかになったことだった。会の活動はまずこれらの文書の情報開示請求から開始されたが、ことごとく却下された。それでも一一年三月には「砂川事件裁判の全記録」の公開をかち取った。
また一三年初めには、閲覧停止期限が過ぎたとして米公文書館から一六通のなかの三通を入手する。そしてこの三通の文書を新証拠として「砂川事件裁判の無効=免訴判決」を求める再審請求を一四年三月に東京地裁に行った。しかし一八年七月までに棄却が決定した。またこうした期間にも沖縄・横田・厚木などの基地反対運動との連帯と交流も進んだ。
それで今年の三月になってから、憲法第三七条が保障する「公平な裁判所の裁判を受ける権利」が侵害されたとして、国家賠償を請求する訴訟を東京地裁に起こした。第一回公判は六月一二日の午後二時から東京地裁第一〇三号法廷で開かれる。傍聴席は一〇〇席あるとのことで、傍聴席を埋める市民の結集が重要である。
集会は続いて二人の弁護士から報告を受けた。「砂川事件裁判再審請求の総括と司法の闇を暴く」と題して、吉永満夫再審請求訴訟弁護団代表が、また「砂川事件裁判国家賠償請求訴訟について」と題して、武内更一国家賠償請求訴訟弁護団代表がそれぞれ課題などを報告した。その後、弁護団と原告団が紹介され、それぞれ決意などを表明した。

白井聡さんが
語る「戦後国体」
賛同団体からの連帯発言は沖縄一坪反戦地主会、横田基地もいらない市民交流実行委員会、沖縄意見広告運動が行った。そして横浜事件国賠訴訟上告人からの発言の後、白井聡さん(京都精華大学専任講師)による記念講演「戦後の国体とはなにか」が行われた。講演内容は彼の著書である『永続敗戦論』と『国体論』をベースとするものであったが、「新元号」問題なども絡めながらの話となった。
集会の最後に、会の共同代表であり原告でもある土屋源太郎さんが登壇して、国家賠償請求訴訟の第一回公判への参加と運動へのカンパが強く呼びかけられた。闘いと運動はまだまだ続く。       (鶴)

4.28

東京レインボーパレード

差別に抗して
自由に生きる

 四月二八日、さわやかに晴れ上がった青空の下、東京の代々木公園でLGBTの人びとが差別に抗し、自由に生きることのできる社会をめざす東京レインボープライドのレインボー・パレードが行われた。広い代々木公園では多くのステージが設けられ、音楽やスピーチが行われ、食事をしたり交流する光景が各所で見られた
 初開催から二六年という今年は、過去最大の一万人以上が参加した。多くの大企業がスポンサーになっていることは、企業イメージの向上という思惑があることは間違いないが、そうした場を使うことによって、LGBTの人びとの権利のための行動や、自己主張の場が広がり始めていることも事実だ。
 パレードには立憲民主党の枝野代表、日本共産党の小池書記局長、社民党の福島参院議員も参加した。
 日本にいる外国人の人びとの姿も目立った。この日、郵政労働者ユニオンは、LGBTの当該組合員と支援者が、「郵政ユニオン・セクシャルマイノリティ・サポーターズ」の虹色の横断幕を掲げて渋谷パレードに参加した。
 労働の現場から、セクシャル・マイノリティーへの差別を許さない訴えをしていくことの重要性はますます明らかになっている。        (K)

コラム

「平成」と「令和」の狭間で

 うんざりするお祭り騒ぎである。もちろん改元劇のことだ。「憲政史上初」。天皇明仁が生きたまま退位した。メディアはこれでもかと皇室儀式を茶の間に垂れ流し、「お車から一〇分間も手を振られ続けた」などと、その一挙一動に強引な意味づけをした。
 「ありがとう平成」――各地でカウントダウンが起こり、「平成最後」のキーワードで物ごとに付加価値が加わった。人一倍功名心の強い首相安倍晋三は「退位礼正殿の儀」で「国民代表」を勝手に名乗り、明仁は「お言葉」で安倍を名指し慰労した。スローガンは「おめでとう令和」と「令和最初の」に切り替わり「改元限定品」が巷にあふれた。
 放送大学教授の原武史は、新聞紙上や近著で、近代天皇制とりわけ上皇明仁、上皇后美智子について持論を展開している。
 原は二人が、「戦後の民主主義と共に歩み、国民に称賛をもって迎えられた」。「本来政治が果たすべき役割が、もはや天皇と皇后にしか期待できなくなっている」(五月一日・朝日朝刊)と指摘。そして明仁・美智子がこれまで、戦争犠牲者への追悼や被災者への慰問を含む行幸啓に尽力したことを重視する。
 六〇年の間に国内を繰り返し訪れ、市井の人々に直接語りかけたこのスタイルは、政治家を超え「平成天皇」の完成形として存続している。「天皇と皇后しか分断した社会を統合する役割を果たすことができないとしたら、民主主義にとってきわめて危うい」(『平成の終焉』・岩波新書)。
 独裁的な手法で戦争国家化へまい進する安倍自民党政権を、左から牽制することができる存在は、常に人々の目線に立ち、寄り添う天皇と皇后しかいない。リベラル派も含め、なんとか天皇の言動を利用しようとする態度も、理解できなくはない。
 だがそもそも今回の「生前退位」自体が、「お言葉」に端を発した特例法によって実現した違法性。日本会議ら右派による天皇訪問地での提灯奉迎や君が代斉唱などの奉祝運動の展開。その一環として自衛隊が沿道に堵列し、敬礼するまでにいたった復古的実態を知るとき、天皇に平和や民主主義を託せるはずもない。看護士の宮子あずさは、「天皇制の本質は差別である」と言い切り話題になった(五月六日・東京朝刊)。
 人の声に耳を貸さず、批判に逆上する権力者。弱者にひざまずき、慰撫して歩く「象徴」。原氏は前掲引用で上皇后美智子と皇后雅子の今後の役割に期待し、それがポスト平成時代における皇室改革につながると見る。右派がこだわる男系主義で、一族は今後も揺れ続けるからだ。
 皇族個人の関心やキャリアに、変革の根拠を求めるわけにはいかない。制度そのものを覆すこと。やはりこれしかない。(隆)

 



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