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    かけはし2019年5月20日号

研ぎすまされた歴史感覚鍛えよう


読書案内 内田雅敏著・三一書房刊 1800円+税

『戦後が若かった頃に思いを馳せよう』

大門 健一

安倍政権と対峙する感性と理論

 内田雅敏弁護士が三一書房から新しく本を出した。タイトルはおよそタイトルらしからぬ『戦後が若かった頃に思いを馳せよう』となっており、本を手に取るまで皆目書かれている内容を推し測ることはできなかった。私は比較的内田さんと年齢が近いので、少年時代に持っていた目・感覚で現在をもう一度捉え直してみるべきだという呼び掛けと理解し、本を開いてみた。本の内容・主旨は鎌田慧さんの推薦文が「本著から、改憲に傾斜する安倍政権に対峙する弁護士内田さんの覚悟と実践が立ちあがってくる」と一言で言い当てている。
これまで内田さんは一〇冊を超える本を出しているが、私が読んだのは『戦後補償を考える』『靖国にはゆかない、戦争にもゆかない』など数冊だけ。しかし今まで読んだ内田さんの本の中で今回の本が一番おもしろかったし、内田さんという人間をより深く理解できるような気がした。
目次は「T はじめに いくつかの映画と本と」「U 憲法」「V 日本、韓国、中国」「W 靖国」の四部構成となっている。特に「T」が圧巻でこの項を読むと内田さんの闘う哲学と感性は世界の東西のできごとを検証し、歴史の中で見直すことによってつくられていることが理解できる。「U」〜「W」は安倍政権と対峙するための弁護士・活動家としての理論であり、実践篇だ。
それにつけても感心するのは、内田さんは多忙な弁護士を職業にし、一〇冊を超える本を執筆し、多くの社会活動にも参加している。昨夜日比谷集会で顔を会わせたと思ったら、次の日には国会前行動でまたいっしょであるということがしょっちゅうある。さらに私の知る限りでは休暇を使い登山もするし、旅行にも出掛けている。どこにそんな時間があるのか不思議でたまらなかった。
そして今回知ったのは想像を超える読書量であり、数多くの映画まで鑑賞しているという事実である。内田さんはいつ眠っているのだろうか。いつ休んでいるのだろうか。わかることは、学生時代から培った民衆に対する愛情と類まれな好奇心がそれを支えているという事実である。この好奇心なしに、こんなにも本は読めないし、映画は観れない。

歴史をみる目こそ重要


「T はじめに」は「プロ意識を刺激された二本の映画『顔のないヒトラーたち』『ブリッジ・オブ・スパイ』を観て」の感想ではじまる。そして二本の映画の核心が「日本とドイツの戦後社会の違い、過去と向き合う姿勢の違いは、自らの手で戦犯裁判したか否かにある」ことを納得させられる。さらにそれを裏付ける内容の『そこに僕らは居合わせた』『片手の郵便配達人』という二冊の本が紹介され、映画で知った核心を追体験させられる。
内田さんは「日本人自身による戦犯裁判の全くされなかった日本」の歴史が安倍政権をつくったのであり、安倍政権の打倒とはこの戦後形成された日本社会の根本的転換が必要だと読者に提起しているのである。
さらに韓国の廬武鉉(ノ・ムヒョン)大統領がモデルの映画『弁護人』の感想を語りながら、豊臣秀吉の朝鮮出兵と島原蜂起を題材にした『星夜航行』『出星前夜』(飯嶋和一著)の二冊の本を紹介する。それは『出兵』として片付けられない残虐極まりない「侵略」であり、島原蜂起は重税に対する民衆の抵抗を巧妙に「宗教弾圧」にすりかえたことを読者に知らせる。未だ多くの隠された歴史が存在していることを指摘し、その隠された歴史の蓋を開ける闘いが必要だという。
「歴史とは現在と過去との対話である」というE・H・カーのテーゼを持ち出して、今一度歴史を振りかえることを読者に突きつける。その闘いなしに「『大日本』と闘った原城の農民たち、沖縄辺野古で日・米『二つの大国』と闘っている人々」と合流はできないと主張する。また弘前大全共闘であった安彦氏の「虹色のトロツキー」を読むことも推奨している(私は岡山の滝浦孝さんに読ませてもらった)。

「信頼」と「共闘」に依拠

 「U 憲法」の項では、「72年前の敗戦、空襲の恐怖から解放された人々は、青い空、夜空の星の美しさを改めて認識した。……声をあげて叫びたい程の解放感があったという『戦後が若かった頃に思いを馳せよう』ではないか」「いよいよ(改憲をめぐる攻防は)正念場である。たかだか70年で『平和憲法』を放棄してよいのか」と読者に訴える。
「すべての侵略戦争は自衛の名のもとに開始された。したがって新憲法は、戦争の放棄、すべての戦力の放棄、交戦権の否認をしたのである。しかし安倍政権は二〇一四年に集団的自衛権行使容認。安保法制の強行採決によって9条の改憲に手をつけた。9条2項への自衛隊の加憲は、自衛隊に対する制限を最終的にとっぱらおうとするものである。その際に用いられるのは、憲法13条の『国民の生命、自由及び幸福追求権』である。学者の中に9条に対して13条を対置する学者が存在するが、これは極めて危険であり、安倍の策略に利用されてしまうことになる。安全保障の要諦は抑止ではなく『信頼』であり、アジア民衆との共闘こそが決定的である」と指摘している。この共闘と信頼なしにわれわれの闘いも辺野古の闘いも勝利しえないと内田さんは力説する。
もし安倍政権の9条の明文改憲を許すなら、公然たる戦争への道は一段と近づくことを意味する。なんとしても阻止しよう。

改憲を全力で阻止しよう!


「V 日本、韓国、中国」の項では中国人の強制連行問題を取り組んできた経過から言葉のはしばしに自信があふれている。「歴史問題の解決において被害者に寛容を求めるには、加害者の慎みと節度が不可欠である」と述べるとともに「我が国が過去の一時期韓国国民、中国国民、アジア民衆に対して植民地支配により多大の損害と苦痛を与えたという歴史的事実を謙虚に受け止め、これに対する痛切な反省と心からのお詫びが絶対に必要である」と力説する。
現在韓国で問題になっている徴用工問題に対しても、かつて内田さん自身が直接に関わった中国人強制連行問題における三菱マテリアル社などの謝罪や賠償問題を例として取り上げ、詳しく交渉の経過を紹介している。私たちが徴用工問題を考える上で大いに参考になる。
「W 靖国」では、安倍首相の発言の多くは一般的保守というより、「アジア・アフリカの人々を勇気づけた」という靖国神社の「聖戦史観」に基づいており、機会をみては「村山・河野談話」を反故にし、「再び英霊を讃美する歴史観を強めようとしている。私たちの闘いは犯罪的な靖国史観を最終的に打ち砕くことであり、これを基礎に成立し続ける天皇制に反対し続けることが重要だ」と指摘する。これは天皇交代や元号改変をお祭り的に扱うメディアに対する闘いでもある。また靖国神社にかわるすべての戦没者を対象とした無宗教の国立施設を造るべきだと提案している。
内田さんは憲法や法律をつめるという方法ではなく、あくまでもアジア民衆との合流・共闘の観点から論理を建てているので、ものすごくわかりやすい。それは最後の追記で多くの論理を展開するのではなく、『ゲゲゲの鬼太郎』の作者でニューギニアの戦場で爆撃により左腕を失い餓死の境界線を彷徨うという苦労をした水木しげるの「妖怪のなかで最も厄介なのが国家という妖怪である」という言葉で締めくくっていることに最も典型的に表現されている。是非『戦後が若かった頃に思いを馳せよう』を一読しよう。

4.24

非核平和の朝鮮
半島と日本へ!

連続企画の第一弾

 朝鮮半島と日本に非核・平和の確立を!四・二四集会が、文京区民センターにおいて同実行委員会の主催で行われた。この日の集会は、同実行委員会が準備している六月七日の日比谷野音での三〇〇〇人集会と銀座デモ、そしてその翌日の国際シンポジウムの成功に向けた第一弾だ。集会には会場いっぱいの三四〇人が参加した。

対立・分断から
平和・統一へ!
集会は主催者を代表して、日韓民衆連帯全国ネット共同代表の渡辺健樹さんが発言。渡辺さんは朝鮮半島情勢を視点にすえた六・七集会を成功させていくことの重要性を訴えた。また昨年の四・二七南北首脳会談で発表された「板門店宣言」一周年に合わせて予定されている、非武装地帯での五〇万人によるヒューマンチェーンに実行委員会からも参加することを報告した。そして日本参加団が送った「アピール」文を読み上げた。
集会では三つの報告があった。岡本厚さん(「世界」元編集長)は、資料を示しながら安倍政権の朝鮮植民地支配に対する歴史修正主義を批判した。
一九九三年、細川首相演説「侵略行為や植民地支配などが多くの人々に耐え難い苦しみと悲しみをもたらしたことに改めて深い反省とおわびの気持ちを申し述べる」。九五年、村山首相談話「植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました」。九八年、小渕首相「韓国国民に対し植民地支配により多大の損害と苦痛を与えたという歴史的事実を謙虚に受けとめ、これに対し、痛切な反省と心からのお詫びを述べた」。
二〇一〇年、菅首相談話「韓国の人々は、その意に反して行われた植民地支配によって、国と文化を奪われ、民族の誇りを深く傷つけられました。・・・この植民地支配がもたらした多大の損害と苦痛に対し、ここに改めて痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明いたします」。
こうした一連の歴史認識に対して安倍は、一五年の談話で「日露戦争は、植民地支配のもとにあった、多くのアジアやアフリカの人々を勇気づけました」として、日本による植民地支配という事実を抹消してしまった。
岡本さんは最後に、「中国の政治・軍事、経済的な位置」、そして「米国による対中政策の影響」を見定めながらも、「対立と分断の東アジアを維持したいのか、それとも平和と統一の東アジアへ転換したいのか」が、鋭く問われていると訴えた。

広島の被爆経験
と平和への思い
次に小林愛子さん(広島被爆者・張本勲さんの姉)が、小学二年の時に原爆によって被爆し後、プロ野球選手になる五歳の弟の手を引いて死体が転がる廃墟と化した広島の街をさまよった体験などを語った。そして「戦争と核兵器はあってはいけません」「世界の平和を信じて、核兵器廃絶の署名運動をしていきたい」と熱く語った。
最後に李泳采(イ ヨンチェ)さん(恵泉女学園大学准教授)が、一〇〇年前の三・一独立運動から一七年のキャンドル市民革命までの、韓国民衆闘争について整理して報告した。李さんは「週刊金曜日」の三・一朝鮮独立運動特集にあてた小論のなかで次のように書いている。
「(憲法裁判所が朴大統領の弾劾を認めたとき)多くの市民たちは涙を流して感動と喜びの声を上げた。これは、腐敗した権力を弾劾させたという市民の勝利の涙であるのと同時に、『権力は国民から生まれる』という民主主義の基本と常識が守られる韓国社会を市民自らが闘い取ったという自負心の涙でもあった」「三月一日の朝鮮民衆の歓呼と涙は、一〇〇年後のわれわれに何を残したのか。おそらく現在の敗北に失望せず未来を見通し個人の権利意識をもって、今抵抗せよと、市民意識を覚醒させるものだったかもしれない」。
六月七日に日比谷野音で予定されている「朝鮮半島と日本に非核・平和の確立を」集会には、韓国からも補償要求運動や民主労総の代表らも参加して発言する。日韓・日朝民衆の連帯で集会を成功させよう。
(R)

4.25

関西共同行動 連続講演会B

「徴用工」・「慰安婦」問題
どう解決するのか


 【大阪】関西共同行動二〇一九連続講演会の三回目が四月二五日エルおおさかで開かれた。
 講演に先立ち中北龍太郎代表があいさつ、「私も日本軍慰安婦問題については、戦時性奴隷であり、戦争犯罪であり、重大な人権侵害であるという認識でフィリピンのロラの裁判を一〇年間闘ったが敗訴した。一方、徴用工問題については、韓国の裁判所が個人の請求権を認めている。国際法上も非常に大きなことだ。
 安倍・朴首脳会談で慰安婦問題は不可逆的に解決したとし一〇億円を日本が拠出して決着したが、いずれ北朝鮮との国交回復交渉で問題が再び浮上する。問題をあいまいにせず、きちんとした解決の道を考えたいとの意図から今回の講演を企画した。

「幕引き」許さず
謝罪と補償を
なお、講演チラシに従軍慰安婦問題と記したのは私たちの認識不足で、間違いだった。日本軍『慰安婦』とすべきだった」と述べた。
有光さんは、講演の冒頭に、「慰安婦」には企業「慰安婦」もいたので、むしろ日本軍をつけない方がいいと自分は思うと意見を述べた。
講演で有光さんは、米朝会談・朝鮮戦争終結・日朝会談再開へ向かうことで、東アジアの安定と平和の確立がなされることを強調した。
被害者が求めているのはまず事実を知ってほしい、ということだ。その上で、日本政府と企業の謝罪、加害者の刑事処罰、被害者の名誉回復がなされる。日本政府の態度は「謝罪・補償」ではなく「援助」だ。「賠償・補償」は解決済みという立場だ。
戦後補償裁判は、ほとんど原告側の敗訴となった。しかし二〇一一年八月三〇日に、韓国憲法裁判所が「慰安婦」被害者のケースは一九九五年日韓請求権の対象外かどうか日本政府と交渉するよう韓国政府に命じる判決を韓国憲法裁判所が出して以後、状況が変わった。二〇一二年五月二四日、韓国大法院が強制労働の被害者たちの主張を認め、原告勝訴の趣旨で原審に差し戻した。二〇一八年一〇月三〇日、大法院は三菱重工と新日鉄に対して損害賠償支払いを命じる確定判決を出した。
日本政府は幕引きをねらっているが、韓国政府は憲法裁判所決定を受けて「慰安婦」問題の対応を要求している。
韓国の文在寅政権は、二〇一五年「慰安婦」合意の軌道修正を検討している。
ポイントは被害者の納得だ。徴用工も含む総合的解決策として、「日韓官民共同基金」の提案も考えられる、と有光さんは語った。
(T・T)

【訂正】かけはし前号(5月13日号)5面、沖縄ツアー報告記事上から6段目右から1行目「三つの卍模様の琉球国の国旗」を「三つの赤、青、黄色の巴模様の琉球国の国旗」に訂正します。


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