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    かけはし2019年6月17日号

人道的危機の責任者直視を


イエメン

忘れられた戦争の四年

マジェド・アルウィシャリー

従属永続化狙う
破壊的攻撃継続

 イエメンに対する攻撃の四年で何がつくり出されたのだろうか?
 国連は、毎週一〇〇人近くの市民が殺害されている、と語っている。空襲は、過去一二ヵ月で一カ月に三七人の子どもを殺害、あるいは傷付けた。「セイブ・チルドレン」によれば、空襲が戦争に関連した死や負傷の主な原因だった(注)。
 イエメン人の三分の一以上に当たるおよそ一〇〇〇万人には、食べるものが十分にない。
 五歳以下のおよそ八万五〇〇〇人の子どもが、二〇一五年以後の過酷な飢餓により死亡した可能性があり、約二〇〇万人のイエメン人が栄養失調の状態にあり、その内の三六万人は深刻な状態だ。人口の約八〇%に当たるおよそ二四〇〇万人が、何らかの形の人道援助を必要としている。
 一八〇〇万人近くのイエメン人は、清潔な水を利用できない。戦争と困難な人道上の諸条件は、一九万人以上を近隣諸国へ逃れるままにしている。
 またイエメンには、学校に行けない子どもが約二〇〇万人いる。そして約一二〇万人が二〇一七年以後にコレラと診断され、二五〇〇人以上が死亡した、と報じられた。
 これらがイエメン民衆がこうむった悲惨な結末だ。これこそ、サウジと米国の政権の攻撃が欲したことだ。つまり、イエメン民衆の暮らしと生計の諸要素すべてを破壊し、毎日の殺人、爆撃、破壊、飢餓の仕組みを前に、貧困と侮辱の状態にとどめ、また傲慢と植民地主義への力づくの依存にとどめることだ。
 この情勢は、アラビア半島の民衆に対するサウジと彼らの仲間による不公正な支配に反対する、何年にもわたるわれわれの絶え間ない叫びを正統なものにしている。彼らはもはや、メッカとメディナにあるイスラムの聖地の守護者に値せず、テルアビブとワシントンの殺人者と手を握り、イエメンのムスリムを、またそれ以前にシリアとイラクのムスリムを殺害している。
 サウジアラビア王国で権力を握っている者たちは、シェイク・ニムルとジャマル・カショギの虐殺により、いかなる意味でもイスラムの聖地を統治する資格がないことを示すことになった。

世論の関心対象
表面的問題のみ


 人権監視団が報告したところでは、サウジでの拘留者にかけられた嫌疑は彼らの人権活動に結びつけられ、女性活動家に対するサウジ検察当局による起訴は、サウジアラビアにおける平和的な抗議行動が招いたものだった。彼ら内部の論争すらも彼らにはやっかいなことになり、彼らに敵対的な世論に暗い面を見せる形になっている。
 特にサウジ連合と国際法に反するその行動の正統性に関して、国際組織と地域組織の政治的かつ法的な見方が明確であるにもかかわらず、米国、英国、そしてイスラエルの政権は、上記の非人道的な犯罪すべてを変わることなく見ないで済ましている。こうして世論も残念だが、人道に関係する表面的な問題と些細な部分にしか懸念を向けていない。
 たとえば英国の日刊紙、デイリーメールに向けてのある公式言明では「子どもの兵士集めと英国部隊のイエメン戦争へのあり得る関与に関しわれわれが暴露したことが、大きな反応を巻き起こした」とある。
 またガーディアン紙によれば「英国アジア担当相は、イエメンでの戦闘に向け英国軍が子どもを訓練していることを調査中であり、イエメンでのサウジが率いる連合の兵士では子どもがその四〇%に当たる、と指摘している」。
 そして引き続く国際的な反響の結果として、ドイツ政府は、サウジアラビア向けの兵器輸出禁止を六ヵ月間延長することになった。
 核兵器保有に向けた最初の一歩として核燃料処理を行いたいというサウジ政権の切望に関しては、民主党のロバート・メネンデスと共和党のマルコ・ルビオ両米上院議員が、エネルギー省への手紙の形で、核燃料生産能力をサウジアラビアが開発することへの支援に抗議した。つまり「ワシントンはサウジアラビアに技術と情報を提供すべきではない。彼らは、これらの問題の展開が地域の情勢におよぼす深刻さを、またそれらの結果が否定的なものになり、この地域に甚大な影響を及ぼすということを、十分に分かっているのだ」と。

サウジ連合への
西側支援拒絶を

 あらゆる人物が帝国主義者と植民地主義政権が作り上げた人道上の悲惨さをわれわれに示しているのだから、イエメンの政治情勢における今日の収支決算は明らかだ。そして先の諸政権こそが、サウジと湾岸首長諸国の体制を、終局的にはイスラエル体制の存在に役立つ、混沌と戦争と付帯的紛争の道具にしたのだ。
そうであってもイエメン人の抵抗は、揺らぐことのない形で、またイエメン民衆に敵対する犯罪的な殺人機構に立ちはだかる抑止に向けた新たな均衡の建設の形で、今なお存在している。
われわれは西側の同志たちに、兵器売却、軍事情報交換、また経済的、兵站的支援を通じた、新植民地主義のサウジ連合に対する彼らの政府による支援に反対するよう訴える。われわれはさらにあなた方に、この情勢に関するサウジ連合の作り話に反対するよう促す。われわれはあなた方を、この攻撃に関しもっと多くのことを読み取り、セクト主義的レンズを通してではなく、帝国主義と連携した攻撃者に反対する民衆的抵抗の闘争として、この危機の歴史を調べるよう励ましたい。(五月一日、「アゲンスト・ザ・カレント」より)

▼筆者は、現在ベイルート在住のイエメン人ジャーナリスト。
(注)この記事は最初「アル・マヤディーン」に掲載され、ジュリア・カセムにより英訳された。(「インターナショナルビューポイント」二〇一九年五月号)

英国

メイ辞任とブレグジット

労働党が鍵を握っている

ソフトブレグジット路線放棄を

アラン・デーヴィス

 英国ではメイ首相が完全に行き詰まり辞任が確定したことで、英国政治は一層混迷を深めると共に、強硬ブレグジットも避けがたくなっていると観測されている。以下は、強硬ブレグジットが必ずしも確定的ではないとして、この情勢の中で労働党が進むべき方向を論じている。なお以下の短評は、EU議会選直前に書かれている。(「かけはし」編集部)
 メイは、彼女の内閣が彼女の回りで粉々に崩れ、「一九二二年委員会」(保守党の幹部ではない保守派下院議員による私的なグループ:訳者)が彼女が頼みにしているものを突然取り去る中で、最終的に、不可避となった辞任を受け入れ、それを公表した。彼女は、下院が休会に入るのに合わせ、また五月二六日のEU議会選結果が分かる前にこれを行うよう選んだ。そして先の選挙結果は、保守党にとって悲惨なものになろうとしている。
 彼女は六月七日に辞任するだろう。そして保守党指導部を選ぶ選挙キャンペーンは六月一〇日に始まるだろう。彼女は、この過程が終わるまで、おそらく八月はじめまで、暫定首相としてとどまり、またトランプをもてなすためにそこにいることになるだろう。
 彼女の仕事を引き継ぐ熾烈な競争は、二〇人にもなる者たちの間で行われ、誰が勝ちそうかを示すものはほとんどない。はっきりしていることは、ブレグジットの右翼的軌道が加速し、新たな指導者は、あり得る限りナイジェル・ファラージばりの、取引ゼロの強硬ブレグジットを行うと誓う、強硬路線の指導者になるだろう、ということだ。
 メイの取引が過ぎ去っていることを前提に、また突進する強硬ブレグジット派にとっては今やある種の法的な義務不履行がそこにあることを前提にした場合、先のことは、一〇月末までの強硬ブレグジットをよりありそうにするものだろうか? 必ずしもそうではない。よく考えるべきことが二つある。
 第一は、アイルランドの問題では自らを欺いている新たな強硬派がブリュッセルでテーブルをがんがん叩き始めているからといって、アイルランド内の英国国境という問題は消え去るわけではない、ということだ。英国がもし取引なしにEUから離脱するならば、アイルランド内の英国の国境はWTOの取り決めの下でEUと英国間の国境になり、厳格な国境が不可避となる、というのが厳しい現実なのだ。しかしながら、多くのレトリックが逆の方向に費やされている。
 二番目のことがらは、一〇月末にいかにして取引なしのブレグジットを得るか、だ。それは、あらゆる点で議会の議席計算が変わりそうにはないという条件の下では、議会を迂回する、ということを意味すると思われる。これは、保守党をさらに分裂させることなしには、そしてもう一つの国家の基本骨格に関する危機をもたらすことなしには、極めて困難なことになるだろう。そしてその危機は、総選挙か二度目の国民投票に帰着するだろう。
換言すれば、ブレグジットを止めることはまだ可能ということだが、しかしそこでは労働党が鍵になるだろう。それが意味すると思われることは、労働党が彼ら自身のブレグジット取引についての話を止め、残留の選択肢を伴った二回目の国民投票を後押しすることだ。中心課題がブレグジットとして残る総選挙が行われるならば、同じことが当てはまる。ソフトな、あるいは職に優しいブレグジット、などというものはない。労働党はこのことを認めなければならない。労働党は、鮮明な反緊縮の要求、すなわち「一握りの者のためではなく多数のために」、に基づく綱領の一部として、拡大しつつある残留支持層に訴えなければならない。(五月二四日、「ソーシャリスト・レジスタンス」より)

▼筆者は英国の第四インターナショナルの指導的メンバー。(「インターナショナルビューポイント」二〇一九年五月号)


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