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ワシントンとロンドンにとって、問題は始まったばかりだ

ジルベール・アシュカル




 ブッシュ政府は、その結果について何の確信もなく、この戦争を選択した。それは、まるで幸運な星のもとにあるポーカーのプレーヤーに賭けるかのように、あるいはまた神聖な介入を確信するかのようである。アメリカ大統領の特性は今やその宗教的傾倒であると広くみなされるようになっており、こうした点を考えるなら、むしろ神聖な介入という確信にもとづいてこの戦争がなされた可能性が高い。このアメリカ大統領は、オサマ・ビン・ラディンと大きな共通点をもっているのである。
 最悪ケースのシナリオに備えながら常に計画をたてるというのが基本的な常識である。だが、尊大にも、ワシントンは、イラクに対してすぐにでも勝利を勝ち取れると想定した。そこでは、米軍が解放軍として迎えられてこの国を簡単に支配できるというわけである。イラク反政府勢力の中で、ワシントンに一方的に強い思い入れをしている親米派は、最良ケースのシナリオを約束した。そのシナリオの中心的考えのひとつになっていたのは、イラク軍の寝返りということであった。このイラク軍がワシントンに忠誠を誓う新政権の主要なテコになるだろうというのである。
 しかしながら、これまでのところ、事態はそうしたシナリオとは異なっていることが明らかになった。その第一の理由は、ブッシュ=ブレアの二頭立て馬車の政治的諸困難――それはとりわけ世界的な反戦運動が大衆的な出現したことである。特にイギリスとアメリカでの運動はそうである――のために、ワシントンは開戦を遅らせるとともに、長期戦に直面するのを恐れてその軍事的配備をさらに増強しなければならなかった。
 特に四月期に予想される天候上の諸困難を考えると、この遅延は、地上軍の攻撃の開始を早めさせ、空爆作戦とほとんど同時に地上軍の攻撃が開始されることになった。一九九一年には今回とは対照的に、ワシントンは、地上軍を送り込む前に五週間以上のきわめて大規模な空爆をイラク軍に浴びせたのであった。
 そして、このことは、イラク政権の軍隊が、地上軍の攻撃が開始された時点でははるかに大きな戦闘能力を備えていることを意味した。イラク側の戦闘能力が一九九一年よりもはるかに大きいことは確かである。一九九一年には、空爆で生き残った兵士たちが、疲弊し、驚愕(きょうがく)し、大量に連合軍に降伏した。
 イラク住民について言えば、これらの人民は、ひどく敵対的ではないものの、占領軍にそれほど友好的ではなかった。この事態は占領軍を驚かせた。ワシントンとロンドンの統治者たちが理解していない点、それは次の点である。イラク人民は、サダム・フセインを憎んでいることことはまったく当然であるが、同時に、ワシントンとロンドンをもそれ以上に憎むのにもやはり大きな根拠がある。
 イラク人民は、連合軍が一九九一年の湾岸戦争終結時に自分たちをサダム・フセインに売り渡したやり口を覚えている。それから十二年後、この人民は、ワシントンとロンドンによって押しつけられた、日々の大量虐殺を生み出し続ける経済制裁に今なお苦しんでいる。国連安全保障理事会内のワシントンとロンドンと提携している諸国もこの犯罪の共犯者である。イギリスというかつての植民地列強とイスラエル国家の後援者兼この地域の主要な抑圧国であるアメリカとの同盟軍を、イラク人民がどうして解放軍であるなどと信じることができよう。
 サダム・フセイン体制の崩壊は、多くのイラク人民によって安堵の念をもって歓迎されるだろうが、イラク人民はそれだけに満足するほど単純ではない。人々は、同時にイギリスとアメリカの占領が自分たちの望ましい運命ではないということを知っているのだ。人々は、ワシントンとロンドンの動機がイラクの資源を獲得しようという欲求であり、イラク人民の幸福への関心ではないことを理解している。
 したがって、おそらく、ワシントンはイラク傀儡(かいらい)政権を樹立して、自分たち自身の現地勢力を使ってイラク国内情勢を支配することができるようになるのはきわめて困難となるだろう。たとえ、ワシントンが意図しているようにこの国に長期の軍事基地を建設するとしても、そうなるであろう。それに、すべての人が、米英両軍が都市内に永続的に駐留し続けるのは非常に危険であることを理解している。
 ワシントンとロンドンの困難は始まったばかりである。両者をさらに困難な状態に追いやれるかどうかは、われわれに、反戦運動にかかっている。この侵略戦争に対して、ジョージ・W・ブッシュとトニー・ブレアおよびそのすべての支持者たちに高い代償を支払わせてやらなければならない。すでに、イラク領土からの連合軍の即時全面的撤退を要求する闘いは、有望な可能性をもつようになっているように思われる。
 われわれはまた、占領軍の威嚇のもとでないイラク人民のための自由で民主主義的な選挙を、イラクだけでなくイラン、シリア、トルコのクルド人の自決権を要求しなければならない。二〇〇三年三月二三日(「ルージュ」(03年3月27日号)

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