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「かけはし」1999.7.5号より

検察による造幣公社スト挑発工作疑惑に二大労総が対政府闘争へ

構造調整との闘いへ問われる組織力強化

検察のスト挑発工作への反撃へ

 検察の造幣公社スト誘導発言の波紋によって労働界が再び沸きたっている。(注)
 労働界は今回の事件を現政府の労働政策の本質が露骨に表れたものと見て、今年4〜5月のゼネストに次ぐ強力な対応を準備している。民主労総は6月17日、1日だけの時限ストを行い、18日以降にも国際民衆行動の日の行事など、大規模な集会を相次いで開き、政府の労働政策を糾弾して大統領の謝罪と確実な再発防止を要求する計画だ。民主労総所属の保険医療産業労組が6月18日からストに突入し、最大組織である金属産業連盟も6月10日に続き20日ごろ労使紛糾の各事業場が連鎖ストに入る予定だ。韓国労総も公企業などが相次いでストに入り、26日には全組織がストに突入する計画だ。
 労働界は政府が今回の事件の真相をキチンと明らかにしないなら反政府闘争さえも辞さない、との態度を示している。民主労総に比べて相対的に政府に友好的な韓国労総も社会団体などと連帯した対政府闘争を公言しており、キム・デジュン政府と結んだ政策連合を破棄する動きを見せている。

二大労総の同時闘争は97年以来

 民主労総と韓国労総が同時に対政府闘争に踏み切るのは、97年初めの労働法改正反対闘争以来のことと言える。昨年夏、労働界が同時に労使政委への不参加を宣言したときも、実際にストに踏み切ったのは民主労総だけだったし、今年4〜5月に民主労総のゼネストが高まったときも韓国労総は、およそ沈黙を通した。
 このように両労総がともに踏み出すことによって、今回の労働界の闘争は97年の労働法改正反対ゼネストには及ばないにしても、政府に相当の打撃を与えるものと見られる。
 民主労総と韓国労総が同時に踏み出すのは、今回の事態が政府の労働運動への弾圧を象徴的に見せつけているという点で共感しているからだ。だが内部事情を探ってみると、両者には微妙な違いが見えている。
 民主労総の強硬な態度は当然、予想できることだ。造幣公社が民主労総の所属事業場であるばかりでなく、現政府が発足して以来、大部分の紛糾事業場が民主労総の傘下だ。昨年夏、政府の積極的な仲裁によって破局を免れた現代自動車の事態、現政府の初の警察力動員として記録されたマンド機械の紛糾、今年4月の民主労総のゼネストの契機となったソウル地下鉄労組のストなどが、すべて民主労総傘下の事業場だった。
 民主労総は、この機会に政府の民主労総に対する強硬弾圧政策を強く印象づけ、整理解雇や構造調整一辺倒の経済政策全般の問題点を世論化するとの方針を立てている。春のゼネスト以降、突破口を見いだせなかった民主労総としては、この機会に組織力の強化も期すことができる、と期待している。
 反面、韓国労総の最大の関心事は、やはり公企業の構造調整の問題だ。韓国労総は3月末に労使政委員会を脱退した後、ずっと公企業の一方的な人員削減など構造調整の中断を要求してきた。
 この問題は韓国労総内で相当の勢力を形成している政府投資機関労組連盟と直結する問題であり、このために韓国労総は造幣公社の事態が起きる以前から、すでにストの計画を立てており、政府に対する圧力を強化してきた。
 このような状況の中で、構造調整問題を企業の経営革新のためではなく労組破壊の道具として使用したとの疑惑が提起されると、韓国労総は構造調整全般の問題を焦点化させる絶好のチャンスだと判断したものと見られる。労総はこれに伴い6月9日、「今回の造幣公社の事態は企画予算処の一方的構造調整と人員削減が労働弾圧の根本的原因だという点を見せつけている」ものであるとして、チンニョン企画予算処長官を告発するなど、構造調整の問題を集中的に論議している。
 もちろん構造調整の問題は民主労総にとっても他人事ではない。ソウル地下鉄や韓国通信、地方公社医療院、地域医保労組など公共部門の労組が構造調整の問題をめぐって労使間の摩擦をもたらし、その多くは依然として解決されていないままだ。このため、政府の労働運動弾圧に抗議する今回の労働界の総攻勢は結局、構造調整や整理解雇の問題、労働界が継続して要求してきた核心的懸案へと争点を移していくものと見られる。こうなるなら民主労総と韓国労総が対政府闘争で共同歩調を取って連帯する可能性も高い。
 今回の事態を契機に、政府内で強硬対応に固執してきた検察など公安勢力が相当の政治的打撃を受け、対話を通じた事態の解決を主張してきた穏健派の声が相対的に力を得るものと見られる。今年五月の民主労総のストが政府の予想にも及ばないまま終わって以降、政府内で強硬対応を主張していた勢力が大きな力を手にし、対話を主張していた側の声は弱まっていたが、このような力学関係は、さし迫っての労使政委員会の改編とともに相当の変化が避けられないだろう。
 けれども、このような変化が政府の労働政策全般の変化へと結びつくのは容易ではないものと見られる。これまで政府内の強硬勢力は「民主労総の内部力量をみるとき、ストをキチンと貫徹できないだろうし、ストをするにしても政治的、経済的、社会的余波はほとんど問題にならない」と主張してきており、対話を主張する側も反論しがたかった。
 結局、労働界は強硬勢力のこのような指摘をぬぐい去り、強力な組織力を見せつけることが最大の課題となっている。
 韓国労総はストなどの闘争経験が多くはない組織であることから、今度のストも政府に大きな打撃を与えることはないものと労働界の内外では見ている。4〜5月のスト以降、内部組織の整備をいまなお仕上げられない民主労総もまた大規模ストにすぐさま突入するのは難しい状況だ。このため労働界は大規模ストを通じた政府への圧迫よりは都市貧民、農民、社会団体などと連帯した大衆闘争に集中する可能性が大きい。
 いずれにせよ労働界が当面、対話よりは闘争に集中することは明らかで、今年の初めから機能が完全に停止した労使政委員会もまた当分の間、正常化は期待しがたい。

労使政委の正常化日程にもつまずき

 労使政委は、労使政委法が制定され直ちに具体的な構成と運営とを規定した施行令が発効されるのを契機に組織を再整備し、労働界の復帰のための本格的接触に乗り出す計画だった。だが造幣公社のスト誘導の波紋がわき上がるにつれ、このような労使政委側の日程にもつまずきが予想される。労使政委は、これまでの合意事項がキチンと履行されないということなどから労働界の強い不信を受けてきたが、造幣公社の事件が明らかになるとともに労使政委の位置づけの問題が再び浮かび上がっている。当初、労使政委は昨年、造幣公社の構造調整を2001年までに推進することで合意した。だが検察がこのような合意事項を紙クズ同然にし、さらに一歩進んで構造調整を労組破壊の道具とみなしたことが明らかになったのだ。
 それで今回の造幣公社の事態の真相を明らかにし、似たような事態の再発防止策を立てようとする労働界の要求を労使政委が政府案の中で貫徹させることができるかどうかが労使政委の機能正常化の一番のカギとなる見通しだ。(「ハンギョレ21」第263号、99年6月24日付、シン・ギソプ記者/ハンギョレ新聞社会一部)
 注、造幣公社の「構造調整」は労使合意によって2001年までに推進することにしていたが、会社側は今年1月7日、突然、沃川造幣厰の機械を慶山に移した。これに抗議した労組員は逮捕され、解雇された。また抗議の焼身自殺を図った労組委員長は下半身重火傷3度となったが4月に逮捕され、起訴された。370余人の人々は慶山に移らざるをえず、乳呑み児を含む家族と生き別れ状態となって寮暮らしを余儀なくされている。
 問題は、この移転劇が「構造調整」に名を借りた公安当局による労組弾圧のための意図されたシナリオだった、ということだ。
 チン・ヒョング前大検(最高検)公安部長は最近、酒席で、こう発言した。
 「造幣公社のストは実際、われわれが作ったものだ。公社や、そういった政府投資の企業体に構造調整が必要な時だが、どうするかと考えていたところ動きがあって、われわれが下部に指示して腹案を作った。事実、われわれが誘導(誘い出した)したのだ。社長が高校の後輩なので話も通じたし。それで沃川から慶山に機械を移すことにし……。公企業体にストが起きれば『われわれが、こうする』ということを見せつけようと、そうしたんだが……。労組の側が余りにも早く降参してしまったのだ。それで拍子抜けに終わった……」。


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