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「かけはし」1999.7.26号より

超高圧送電線が江原道の豊かな自然をズタズタにした

国内で初めての超高圧電線網

 江原道と言えば何よりもまず美しい自然の景観と山林だ。ところが97年から、この江原道の自慢が試練に直面している。江原南部地域の山林全体を貫通する大規模な鉄塔群のためだ。この鉄塔は国内で初めて導入された超高圧送電網である76万5千ボルト新加平〜新太白送電線路のために立てられた。
 京畿道加平郡雪岳面の変電所から始まり江原道洪川郡、横城郡、平昌郡、旌善郡などを経て太白市院洞洞にまでつながるこの送電線は韓国電力が広報しているように「76万5千ボルトのエネルギーの大動脈」として、世界的にもその例がまれなほどの規模だ。線路の長さだけでも157・44Hほどになる。この区間に高さ約百メートルの鋼鉄からなる送電塔が実に317基も立ち並んでいる。現在、工事は95%ほどが進められた。
 工事が終わりに近づけば近づくほど問題は次第に大きくなっている。何よりも心配されるのが大規模な山林棄損がもたらす自然生態系の破壊だ。また住民たちの生存権への脅威も欠かすことのできない問題だ。この5月、横城郡チョンイル面シンデ里では韓電側ともみ合いになった住民22人が病院に入院するという事態が起こった。その後、韓電の相次ぐ脅迫や郡庁や警察署からの圧力によって6月に入って合意書にハンを押したが、横城郡チョンイル面ユドン里をはじめ、平昌郡平昌邑テファ里、旌善郡トン面モルン里、太白市蒼竹洞など他の地域は合意とは関係なしに韓電側の事業に反旗をひるがえしている。

無慈悲な国策事業…棄損面積隠しも

 初期の住民たちの抵抗は弧軍奮闘を余儀なくされた。補償金つり上げのための行動だなどと見られたりもした。だが送電鉄塔がほとんど完工しかけ始まったこの春から、工事によって棄損された山林の実像が外部に知られ始めた。このときから地域の問題が江原道全体に広まり、さらに全国的な環境問題として注目され始めた。
 横城郡チョンイル面ユドン里の住民反対闘争委員会ホン・ソンボム委員長は並々ならぬ心情を、こう語った。「われわれは補償費というビタ銭のためにこのように闘争に踏み切ったのではない。韓電は、われわれが補償費欲しさにこんなことをしていると中央の世論を作りあげ、一方では国策事業に反対する地域利己主義だと非難する。これはとんでもないギマンだ。末代までずっと守るべき山林を破壊したことを告発し、住民たちを欺いて事業を推進するという誤った態度を指摘するのが、どうして地域利己主義なのか」。
 江原道で行われた76万5千ボルト送電鉄塔の工事によって大規模に山林が棄損されたということは、すでに何度にもわたって知らされた事実だ。だがいざ、どの程度の面積がどのように棄損されたのかは正確にはハッキリしていなかった。事業主体である韓電は当然にも口止めした。工事を担当した各建設会社も環境破壊については、おし黙ったままで通した。それどころか監督機関である環境部(省)や山林庁も山林棄損についての実態さえ把握できていなかった。
 このような中で緑の連合が4月末から6月末まで4〜5人の活動家を現場に派遣し、317個の送電塔すべてについて山林棄損の実態を調査した。その結果、山林棄損は知られていた以上に大変な規模だという事実が確認された。江原道の地域全体で明らかになった棄損面積は全部で234万9776平方メートルで、蚕室主競技場の200倍に当たる面積だ。主要な棄損内容は鉄塔が立っている317の敷地と作業の過程で開設した道路などだ。
 これに加え、大規模工事では常に「欠かせない」不実工事がその領分を加える。山林をやみくもに削り取り、山崩れを誘発したのだ。当初、韓電が出していた環境影響評価書には送電鉄塔が立てられることによって棄損される敷地の平均面積は一基当たり655平方メートル、全体で19万2500平方メートルだった。だが緑の連合の調査結果は、一基当たり2354平方メートル、全区間で74万6218平方メートルであることが明らかとなった。
 工事作業路も、韓電は環境影響評価書で、山林破壊を最少化するためにヘリと索道(ケーブル)運搬などの低減方法を提示した。だが317個の鉄塔のうちヘリで資材を運搬したのは二カ所にすぎず、索道運搬は一カ所だけだった。残るすべては道路を通し、作業路として利用した。調査によって確認された作業路の総延長は535Hで京釜高速道路よりもさらに長い。道路を作る過程で発生した切開地を含めれば棄損面積は少なくとも二倍に増える。隣国日本の場合、同じ規模の76万5千ボルト送電塔を建設するのに40%だけ道路を通し、残る60%はヘリとケーブルを利用した作業をした。
 今回の調査結果は、韓電が環境影響評価をバラバラにしたり、これに反して工事を進めたことを示している。もしもそうでないなら緑の連合が調査を誤ったか虚偽の事実を流布したことになる。だが今回の調査は、すべての鉄塔のそれぞれについて二カ月間、実測調査をしたもので、誤差率は一%未満だ。
 敷地や作業路による山林棄損とともに、山崩れによる棄損も深刻なことが確認された。送電塔を立てることだけ考え、あとのことはまるで考えなかったということの代表的な事例が山崩れだ。山の斜面を削り、渓谷に全部、落としてしまったのだ。山崩れが発生した地域は全部で772カ所、棄損された面積は136万4135平方メートルに達する。

国民に知らせずに大規模な山林破壊

 調査を通じて明らかになったことは、韓電が国民の耳目の届かない江原道の山の中で大規模に山林を破壊した、という事実だ。旌善郡住民対策委ナ・ビョンナム委員長は「韓電は最初から徹底してわれわれを無視し、だましながら送電塔を推進してきた。これは地域住民のだれに聞いてみても明らかな事実だ。電磁波をはじめ住民の被害が心配される内容があれば最初から腹を割って協力を求めてしかるべきだった」と語った。そもそも政府が何をするのか分からない、というのがここの住民たちの疑問なのだ。
 江原道の送電塔工事は国策だとの名の下に工事の過程で環境をまるで考えず事業を強行した。76万5千ボルト超高圧送電線路工事は国内屈指の各大企業が参加した。東部建設、サンヨン建設、現代建設などだ。これらの企業は何かというと、環境を考える企業だなとど広告を出しながら、いざとなると自身の事業場では国民が見ていないうちに大変な山林破壊をしでかしていたのだ。
 今回、明らかになった動かしがたい山林破壊の事実について政府当局がどう対応するのか注目される。送電線に反対する地域住民の体から発する質問に政府は何と答えるのだろうか。「純朴な住民たちは木の一株に手をつけるにも山林法だとか何だとか思案するのに、国家は思いのままにこうやって山林をなくしてもよいものなのか。なぜ法は、いつもわれわれのような民百姓たちにのみ守ることを強要するのですか」。(「ハンギョレ21」第266号、99年7月15日付、ソ・ジェチョル記者)

「電源開発特例法」という超憲法的悪法

 大規模な山林棄損によって相当な規模の生態系を破壊した韓電の事業方式には「電源開発特例法」が背景に位置している。同法は韓電の事業的必要があるとき、戦時のように個人の私有地までも強制によって収用することができるという条項を盛り込んでいる。自由民主主義国家にあって戦時でも非常時でもない平常時に個人の土地を強制収用できる法が存在しているのだ。それこそ超憲法的な悪法だ。
 大方の国民はこの法の実体を分かってはいない。同法は七八年の維新の時期に作られた。韓電の開発事業の現場で、それ以外の現行法を反古紙同然にし何にもまさる威力を発揮してきたのが、ほかならぬ電源開発特例法だ。原発建設はもちろん、智異山やチョムボン山の天然林を伐採したヤンス発電所、変電所、送電塔なども、すべてこの法に基づいて事業が立案・推進された。
 電源開発特例法は事業者である韓電に産業資源部(省)長官の承認さえ与えられれば地方自治体はもちろん、他の部署の承認など全部で十九個の行政手続きを無視できるように特例を認めている。これは電力供給に付与される莫大な特権だ。これによって環境部や山林庁など環境と国土に関連した政府の部署が韓電の環境破壊行為に対して制裁や統制をおよそできない結果をもたらし続けた。地方自治制にもかかわらず韓電が自治体はもちろん地域住民らの私有権を無視し、事業を強行する特権が付与されているのだ。
 現代文明において電気はぜひとも必要なエネルギー源だ。電気なしには一日とて暮らすことはできない。だが電気を供給し管理することにも手続きと過程は重要だ。韓電の態度は、基本的に国家の基幹エネルギーを担当するという理由で政府が過度な力を付与したことに原因がある。国民の政府が発足してから韓電の民営化が提起されたが、いまは足踏み状態だ。韓電の独走を根本で保障している電源開発特例法に対する真剣な再検討が切実に求められている時期だ。(「ハンギョレ21」第266号、99年7月15日付)


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