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与党「合意」案を許さない!               かけはし2006.4.24号

教育基本法改悪案上程を阻止しよう

新自由主義と「愛国心」強制を合体させ平和・人権を敵視

憲法改悪攻撃との連動

 与党・教育基本法改正に関する協議会は、四月十三日、教育基本法改悪案を正式決定し、小泉政権に提出した。政府・与党は、今国会での法案成立を強行しようとしている。われわれは、戦争ができる国家作りのための憲法改悪攻撃と連動し、グローバル戦争と資本大競争を勝ち抜く人材育成に向けた中央教育審議会答申(二〇〇三年三月)と日本経済団体連合会の「これからの教育の方向性に関する提言」(○五年一月)を土台にし、新自由主義的教育破壊と国家主義が合体した改悪法案の国会上程と成立を許さない。ただちに教育破壊・派兵大国化づくりのための改悪案の実態を暴き、これまで構築してきた改悪阻止戦線をさらに強化、広げていくことを訴える。
 改悪案は、現行法が前文と十一条だったが、前文と全十八項の構成となっている。主な問題箇所について、以下批判する。

国家に忠実な人材育成

 「前文」は、「世界の平和と人類の福祉の向上に貢献することを願う」と言いながら、そのねらいは資本のグローバル化と世界秩序防衛のために国際貢献と称して「対テロ」グローバル戦争、日米安保体制を支えぬくことにある。
 憲法改悪を前提としているために、「日本国憲法の精神にのっとり」の文言は残し、戦争を担うために現行法の「平和を希求する」の文言を「正義を希求する」と書き換えた。個人の権利を排除・抑圧するために「公共の精神」と明記した。天皇主義と侵略戦争賛美教育を強化するために「伝統を継承」した「新しい文化の創造を目指す教育を推進する」ことを強調している。現行法の「民主・人権・平和」の原理を投げ捨て、新自由主義と国家主義に貫かれた文言を並べたてた。
 「1 教育の目的」は、現行法の「個人の価値をたっとび、勤労と責任を重んじ、自主的精神に充ちた」の箇所を削除し、「人格の完成を目指し、平和で民主的な国家および社会の形成者として必要な資質を備えた、心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない」とした。つまり、国家に忠実な人材を育成していくことを明確化したのである。
 「2 教育の目標」は、日本国家を支えるために@「豊かな情操と道徳心を培う」A新自由主義的教育と差別・選別・エリート教育政策に基づいて、「能力」と「勤労を重んずる態度を養う」B「公共の精神」を優先した「社会の形成に参画する態度を養う」C核・原発・乱開発・地球温暖化状況の危険性を無視し、資本が嫌がらない「環境の保全に寄与する態度を養う」と列挙した。
 五項目の戦争国家を支えるための「愛国心教育」の項目は、「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできたわが国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと」とした。
 当初は、自民党が「国を愛する心」、公明党が「国を大切にする心」を主張していた。だが、自民党は「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんだ」と「他国を尊重」を加え、「心」を「態度」に変更した。さらに、「わが国と郷土」の「『国』には統治機構を含まないこと」を公明党と確認した。そして、公明党は「国」と「愛する」について妥協することによって政治決着した。
 この「愛国心」教育の合意に対して、文科省官僚は、「内面にとどまる『心』ではなく、外形的に表出する『態度』を養うことを教育目標に掲げる方が、効果は大きい」と述べ、「愛国心」教育と「日の丸・君が代」を強制し、反対・抗議する教職員に対して排除・弾圧していくための根拠にすると公言している。都教委が先取り的に「日の丸・君が代」の強制に反対した教職員への大量処分を強行しているように、全国で処分・排除が拡大する危険性がある。生徒・教職員の内心の自由の侵害を許してはならない。処分撤回闘争を支援・連帯し、天皇制と戦争を賛美する「愛国心」教育の犯罪性を批判していこう。

教育への市場原理導入

 「5 義務教育」は、現行法の「九年の普通教育を受けさせる義務を負う」を削除した。表向きには、「情勢の変化に対応できるようにするため」との理由から年限を削除したと言っているが、そのねらいは「国家および社会の形成者として必要な資質を養う」ために「飛び級」などエリート教育、進学競争のための中高一貫教育、資本が喜ぶ教育特区の拡大など新自由主義的教育改革を押し進めていくことを前提としている。また、行政改革の一環として教職員の削減、地方切り捨てにつながる義務教育費国庫負担制度の廃止をも射程にしているのだ。
 現行法の第五条の「男女は、互に敬重し、協力し合わなければならないものであつて、教育上男女の共学は、認められなければならない」は、全廃した。男女平等と男女平等教育の否定への踏み込みだ。自民党憲法調査会が憲法二四条の婚姻・家庭生活における両性の平等を見直すことを提言(〇四年六月十日)し、教育現場では「ジェンダー・フリーバッシング」が吹き荒れている。教基法改悪の先取り的展開が強行されている。「男女共学」の全廃は、これらを追認し、バッシングを国家的レベルで押し進めている。
 「6 学校教育」は、「教育を受ける者が、学校生活を営む上で必要な規律を重んずるとともに、自ら進んで学習に取り組む意欲を高めることを重視して行われなければならないこと」と明記し、「公共の精神」「愛国心教育」「道徳教育」に基づいて、管理・監視・規律を強化していくことを掲げた。
 「7 大学」は、資本のグローバル化競争に耐えうる産学一体の教育・研究体制を構築していくために大学を「教育および研究の成果を広く社会に提供することにより、その発展に寄与する」ためと新たに位置づけた。
 「8 私立学校」は、「国および地方公共団体は、その自主性を尊重しつつ、助成その他の適当な方法により私立学校教育の振興に努めなければならない」と明記することで、教育に市場原理を導入し、教育特区、「株式会社立学校」の設立を広げようというのだ。

教職員の団結権を否定

 「9 教員」の項目は、「教員は、自己の崇高な使命を深く自覚し、絶えず研究と修養に励み、その職責の遂行に努めなければならない」と国家に奉仕することを強制している。さらに、従順であれば「教員の身分は尊重され、その待遇の適正が期せられるとともに、養成と研修の充実が図られなければならない」と通告している。
 この具体化とは、何か。教職員に対して教育の全国一律の競争主義、差別・選別主義を促進させていく担い手となることを強要しているのだ。そのために「教員免許更新制の導入」、「教員評価の改善・充実」、「主幹」制度(中間管理職)、「スーパーティーチャー」の導入(エリート教員の育成)、新学校評価制、校長権限の拡大、教育委員会制度の強化など新たな管理システムを導入し、これまでの義務教育制度を解体・再編を行っていくことにある。このシステムに抵抗する者や「不適格教員」は、排除の対象であり、研修と称して隔離し、思想転向、減給・解雇攻撃を強行してくるだろう。 
 そもそも「教員」項目は、日経連提言の中に「小中高等学校の教員養成、研修制度の見直し」、「教員の自己研鑽の強化」の具体化だ。提言は、「一部には自らの政治的思想や信条を教え込もうとする事例が見られ、これらが長年、教育現場を混乱させ、教育内容を歪めてきたことは否定できない。教職員による組合は、一定の範囲での職場環境、待遇の改善に取り組むという本来のあり方に徹すべきだ」と恫喝し、「勤務時間内の組合活動の禁止」、「就業ルールの徹底」を強調している。つまり、教職員の団結権、組合活動の否定なのである。教基法改悪法を根拠とした闘う教職員組合への解体攻撃を許さない。
 「10 家庭教育」「11.幼児期の教育」の項目を設けて、国家・行政による家庭教育への介入と国家への動員を広げていくことを明記した。
 「12 社会教育」は、現行法に「国及び地方公共団体は、図書館、博物館、公民館等の施設の設置、学校の施設の利用その他適当な方法によつて教育の目的の実現に努めなければならない」と具体的に明記しているが、改正案では「社会教育に関する施設の設置、学校等の施設の利用、学習の機会および情報の提供その他の適当な方法によって社会教育の振興に努めなければならない」と書き換えた。この獲得目標は、教育現場に対する行革と民営化の導入の拡大にあることは間違いない。
 「13 学校、家庭および地域住民等の相互の連携協力」では、教育行政や国家権力による家庭・地域への介入を明確にしている。住民自治や市民コミュニティーを軽視し、国家権力・学校・地域防犯協会による監視・管理を強め、差別・排外主義による異端排除へとつながっていく危険性がある。
 「16 教育行政」は、教育への国家・行政権力の介入を禁じた「教育は、不当な支配に服することなく」の文言は残ったが、「国民全体に対し直接に責任を負つて行われるべきものである」という部分を削除し、「この法律および他の法律の定めるところにより行われるべきものであり」と書き換えた。
 この条項とセットで、「17 教育振興基本計画」を設けて文科省、行政の権限の強化、介入と統制と拡大、利権と天下りの土壌を作り出していく「充実」した予算措置などを強めていこうとしているのだ。自民党文教族は、「法の支配を明記することで、教育内容についてやりたい放題がまかり通ってきた学校現場の条文解釈に一定の歯止めはかかるだろう」と、条項の性格と本質を明らかにしている。

右派の内部矛盾と対立

 自民党と公明党は、中教審答申以降、教基法改悪案作りのために与党協議会を設置し、文科省官僚とともに密室で審議してきた。これまで数波にわたる教基法改悪反対全国集会をはじめ、全国各地で草の根で反対運動に包囲され、公然たる論争を恐れて、委員のメモ回収、報道への伝聞やリークも一切禁止し、限られた審議内容しか明らかにしてこなかった。この間、合意できる条項を積み上げてきたが、「愛国心」の表記対立で審議がデッドロック状態だった。
 だが、与党は、自民党の九月総裁選とポスト小泉政権問題、公明党執行部人事問題、来年の統一地方選挙、参議院選挙という政治スケジュールを優先し、今国会での成立を決めた。本年一月審議再開後、週一回のペースで審議を強行し、裏で自民党文教族と公明党・創価学会幹部らの間で政治的取り引きを繰り返し、改悪案の合意に至ったのである。
 ところで教育基本法改正案の今国会提出について小泉首相は、「与党で議論し、調整していただきたい。国会の状況を見て、判断しなければならない」と語り、安倍官房長官も、「法案ができれば基本的には国会に出すということだが、国会のスケジュールなどもあり、与党とよく相談する」と慎重な発言を行っている。これは、自民党内から「愛国心の表記があいまいだ」、「他国の尊重とは、北朝鮮も尊重するのか」、「教育は不当な支配に服することなくの文言を残す必要はない」など批判意見が続出しているからだ。
 すでに教育基本法改正促進委員会、日本会議、日本会議国会議員懇談会は、四月十一日に「教基法改正大会」を行っている。この大会で改正案に@「愛国心」または「国を愛する心」の表記を入れるA「宗教的情操の涵養(かんよう)」を明記するB「教育は不当な支配に服することなく」の文言は削除することを求める決議を採択している。郵政民営化に反対して無所属になった平沼赳夫衆議院議員(日本会議国会議員懇談会長)は、「三点のうち一つでも実現しなかったら改正案に反対だ」と表明している。昨年、義務教育費国庫負担金制度の廃止派と現状維持派の対立関係が発生したが、教基法「改正」案合意をめぐっても再発している。「改正」派の内部矛盾と対立が深まりつつある。
 教基法改悪阻止運動は、新たな局面を迎えた。この闘いは、憲法改悪攻撃と国民投票法案阻止闘争の前哨戦と位置づけて、取り組んでいこう。全国の職場・地域・学園から国会を包囲していこう。  (遠山裕樹)


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