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                            かけはし2006.4.3号

改憲国民投票法案の上程阻止へ

それはたんなる「手続き法案」ではない民主党を抱き込んだ改憲協議の突破口だ

与党ペースで
進む国会審議

 第164通常国会は冒頭から、ライブドア、耐震強度偽装、BSE、防衛施設庁談合の「4点セット」問題で、小泉内閣の新自由主義「構造改革」政治の破綻を追及する構図ができかかっていたように見えた。しかし永田衆院儀員の「ニセメール」問題で、最大野党の民主党が大混乱におちいったことにより、攻守ところを変えてしまった。自民党は「4点セット」などなかったかのように民主党攻撃に転じている。
 三月末最終報告を前に、「米軍再編」に対する基地を抱えた地域の住民の批判・抵抗の気運が三月五日の三万五千人を結集した沖縄県民大会、同十二日の岩国住民投票の画期的勝利に示されるようにさらに広がっているにもかかわらず、この日米安保そのもののグローバルな軍事一体化に向けた根本的作り替えは、国会の中でほとんど何の追及も受けることなく論議の焦点から外され、政府・与党は二〇〇六年度予算案のスムーズな成立にこぎつけた。
 衆院での与党「三分の二」体制の下で国会審議の「劣化」が進んでおり、与党の側は後半戦に入った国会会期において「ボスト小泉」の座を争う九月の自民党総裁選をにらみながら、三月一日の与党幹事長・政調会長・国対委員長会議で、行革推進法案、医療制度改革法案、教育基本法改悪法案、改憲国民投票法案の成立をめざす方針を確認している。
 われわれは今こそ、労働者・市民の闘いによって、こうした新自由主義的構造改革や「米軍再編」と一体となった改憲・戦争国家体制づくりのための反動法案の成立を阻止し、「無風国会」とも言われる現状を逆転させる必要がある。

民主党をふく
めて論点協議

 改憲のための国民投票法案については、すでに自民・公明・民主の三党が「論点協議」を衆院憲法調査特別委員会(憲特委)の理事会で開始することに合意している。与野党三党によるこの合意は、改憲国民投票法案を三党で「共同提出」するためのすりあわせを開始することを意味する。
 三月七日の憲特委理事懇で船田元・自民党憲法調査会長は「論点整理を入り口に、互いに議論する中で境界線はない。法案につながっていく」と述べた。自民党の中川秀直・政調会長も同日「五月の連休明けには参院に送付できるよう努力したい」と語った。武部勤・自民党幹事長は三月十日の記者会見で「国民投票法については、今国会で成立を期して議論をつめていく」と述べた。政府・与党が民主党をも巻き込んで今国会で改憲のための国民投票法案を成立させ、改憲のための政治プロセスを加速させていこうとしているのは明らかだ。
 自公両党の側は、改憲議連案をベースにした同法案の骨子を二〇〇四年十二月の与党協議会実務者会議で確認している。すでに本紙上でも批判しているように自公両党案は投票方式に関して「一括賛否」か「改正」条項に関して個別に賛否を問う方式かを先送りにし、「有効投票」の過半数によって賛成と見なして改憲を容易にし、さらに「国民投票運動」やメディア報道を罰則をもって厳しく規制するなど、著しく反民主主義的なものであった。これに対しては民主党も批判し、日本弁護士連合会(日弁連)も昨年二月の意見書で@「個別の条項ごとに賛否の意思を表示できる投票方法へ」A「表現の自由、国民投票運動の自由の最大限の尊重」B「改憲発議から投票までの期間は、最大限の国民的論議を保障するに足りる期間へ」C「賛成は、少なくとも総得票数の過半数で」D「投票率に関する規定を設けるべき」などの意見を提起していた。
 自公両党は、すでにこれらの批判を受けて民主党を巻き込んだ「共同提案」に到達するために、「一括賛否方式」を取り下げ、メディア規制について「緩和」し、さらに有権者についても公選法の改正を前提とした上で「十八歳以上」まで拡大するなどの「修正」を考慮しているとされる。
 これまでのところ三月十六日、二十三日に予定されていた憲特委理事懇での「論点整理」のための協議は、いずれも与党ペースでの議事運営に対する民主党の反発によって延期されている。しかし枝野幸男・民主党憲法調査会長は今国会での改憲国民投票法案の成立には基本的に合意しており、事態は「三党合意」=共同提案・成立に向かって急ピッチで進んでいることに変わりはない。

憲法改悪と切
り離せぬ攻撃

 自民・公明両党だけではなく、民主党をふくむ改憲派は、「国民投票法案」が改憲発議や改憲の是非とは切り離された「手続き法案」として、憲法改悪とは別個のものであることを印象づけようと躍起になっている。しかし、すでに自民党が現行憲法を全体として否定する「新憲法草案」を作成し、民主党も昨年十月に「憲法提言」を提出するなど九条改憲を軸に戦争国家体制構築に向けた動きが現実の政治日程に載せられている今日、「国民投票法案」が改憲という「クーデター」に直結していることはあまりにも明白である。
 民主党の枝野は二月二十六日に大阪で開かれた公開討論会の席上で「国民投票法案の論議を改憲内容と結びつけて行うことは最悪。具体的な改憲をしない時に法案を作ることが公正・中立を確保すること」と述べている。枝野は、許すな!憲法改悪・市民連絡会の公開質問状(06年1月17日)に対する「回答」(2月7日)の中で「近年の国民投票法制をめぐる議論が、主に自民党などの憲法改正論の一環として浮上してきたことを否定しません」と述べた上で、「議論のきっかけは何であれ、国民投票法制はもともと日本国憲法の付属法典として整備されることを予定していたものであり、日本国憲法下で立憲主義が真に機能するための不可欠の一部であることは間違いありません」と強弁している。
 枝野自身、「改憲」とそのための「国民投票法案」が決して切り離せないものであることを自認しているのであり、改憲のための政治日程がまさに自民党などによって大急ぎで展開されているからこそ「国民投票法案」が上程・成立させられようとしていることを否定していない。「立憲主義」そのものを否定するクーデター的「新憲法」案と「国民投票法案」を「切り離す」ことなどできないのである。
 自民党の新憲法案は、「米軍再編」=グローパルに「対テロ」戦争戦略に自衛隊と日本国家を全面的に動員しようとする「現実」の圧力に対応するための、まさに「立憲主義」破壊の攻撃なのであって、その具体的進行と表裏一体の関係にある改憲プロセスを無視して「公正・中立」な「国民投票法案」策定を「立憲主義」で偽装することはきわめて悪質である。

今井一氏の対
応はまちがい

 他方、「真っ当な国民投票のルールを作る会」事務局長として「国民投票法案」の早期制定を主張している今井一も「護憲派の人が国民投票を語る場合、よく『改憲のための(国民投票)』という枕詞が入ります。でも、これは違う。国民投票は主権者である国民に憲法改正の是非を問うための制度です」と語っている(週刊「金曜日」06年2月17日号、座談会「国民投票法とどう向き合うか」)。
 今井は「護憲派の人たちが信用されない一つの理由は、できもしないことをできるかのように言うことです。今回も国民投票法の制定阻止と言っていますが、あり得ないです」「この法律ができたからといって、自動的に改憲されるわけじゃない。制度としては中立で、最後は一人ひとりの国民の一票で決まる」と述べ、国民投票法案自体についても「私たちの『市民案』が反映される展開になりつつあります」と自公民合意による「真っ当な」法案成立の展望を語っている(同前・座談会での発言)。
 しかし、われわれは強調しなければならない。「国民投票法案」はまさに改憲の政治過程を押し進めるものであり、決して憲法改悪とは切り離しえないことを。そして「国民投票法案」の上程に反対し、世論を喚起し、改憲に向けた政治過程の加速をストップさせることが、九条改悪を軸にした憲法改悪を「国民投票」においても阻止する労働者・市民の闘いを広範に築き上げるために不可欠の課題であることを。
 今井は、「護憲派」があたかも「国民投票」を「座して待っている」かのように誹謗する。まったく違う。「九条改憲阻止」を軸とする憲法改悪反対の闘いは、現実の「米軍再編」や民主主義や人権破壊の警察監視国家化に反対する闘いと結びつけて、いま多様に発展している。
 この闘いの中で、労組や地域からの民主党議員への働きかけをふくめ、改憲のための「国民投票法案」の今国会での上程に反対する院内外の闘いを強めよう。
(3月26日 純)                                        


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