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ジョージ・ワシントンの横須賀母港化に反対しよう     かけはし2006.7.24号

放射能災害の危険性が現実に

原子炉事故が住民にもたらす被害は計り知れない

STOP!!原子力空母母港化講演会

 七月六日、総評会館で「STOP!!原子力空母母港化 ゴードン・トンプソンさん講演会」が原子力空母の横須賀母港化を許さない全国連絡会の主催で開かれた。ゴードン・トンプソンさんは、エネルギー、環境、環境維持開発、国際安全保障分野における技術・政策分析専門家で、マサチューセッツ州ウォーセスタークラーク大学ジョージ・パーキンス・マーシュ研究所の研究教授である。
 今回、全国連絡会が「二〇〇八年に横須賀基地にニミッツ級の原子力空母を配備する」との米国の発表を受けて、米軍原子力空母・原子炉事故の危険性につて、トンプソン所長に調査・報告を依頼した。トンプソンさんは総評会館の講演会の後、七月七日、八日と横須賀で二回、横浜で一回の講演を連続を行うことになっている。
 全国連絡会の福山真劫さんが「私たちは原子力空母の母港化には絶対反対だ。ただ横須賀市民だけでは母港化を阻止できないと考え、一昨年の五月三十日に全国連絡会をつくり全国から横須賀の闘いを支援する体制を整えた。この秋に日米軍事再編の問題が山場を迎えるだろう。そのための闘いの今日の講演会が糧になればと思う」と開会のあいさつをした。
 呉東正彦さん(原子力空母の横須賀母港問題を考える市民の会代表・弁護士)が、木元茂夫さんが作った横須賀基地の現状のビデオを放映しながら、「反対のとくりみと今後の運動」について提起を行った(別掲)。次に、上澤千尋さん(原子力資料情報室)が「原子力空母の原子炉事故の危険性と事故被害の予測」の報告を行った(別掲)。
 トンプソン所長が「日本の横須賀の原子力空母母港化による放射能事故の危険性」について講演を行った。講演後の質疑の中で、横須賀からの参加者から「トンプソンさんの調査があらかじめ国家間の戦争を排除しているのは納得できない。ヒロシマ・ナガサキに原爆が投下されたが、横須賀も必ずその標的になったはずだ。原子力空母の母港化はそうした戦争の危険をさらに増すものだ。この点をきちんととらえる必要がある」と意見が出された。
 横須賀での空母の修理は陸上では行わない、そうした施設を陸上に作らないとアメリカは表明しているが、海上での修理にも陸上から大量の電力を供給しなければならない。地震が多い日本では修理の時に電力がストップした場合、事故の危険性は高いとトンプソンさんは指摘した。
 トンプソンさんの指摘する危険を減じる四つの選択肢の考え方については同意できないが、アメリカ本国の科学者が原子力空母の事故の危険性を指摘した調査・報告書を提出したことは大きな意味がある。横須賀の原子力空母母港化阻止の闘いをさらに拡大しよう。       (M)

呉東正彦さんの報告から
母港化のための浚せつ工事のストップを


 昨年十月、アメリカ海軍が「二年後に横須賀基地に原子力空母を配備する」と発表した。この時点では署名をいっぱい集めて横須賀市に反対するように求めてきた。横須賀市長も市議会も全員が反対していた。しかし、今年になって特に政府の方から市長を容認派にさせようとさまざまな働きかけがあった。
 今年の四月、横須賀の商工会議所の人たちが市議会議員の一部の人たちを連れて、サンジエゴで「原子力空母は安全だ」というご招待のツアーに行った。さらに四月、アメリカ海軍がファクトシートで「原子力空母は安全だ」という宣伝文書を出してきた。そして市長は市民の意見を聞く会を開いたが、参加者五十人の半分が連合町内会長だった。会を開いたら容認の意見ばっかりだった。
 六月にファクトシートに対して横須賀市が出していた質問書に対して国が回答書を出してきた。それと同時に原子力空母のために、近々浚せつ工事を始めなければならない。それを横須賀市に容認してもらうためにわざわざ外務大臣が来て市長にせまった。普通の人なら、これは相手が弱っているからがんばろうとなるのだが、それまでいろいろ政府の切り崩しの中で、市長は市民を裏切るという空母受け入れの決断をした。
 しかし、私たちはここからが重要な運動の局面ではないかと思っている。やるべきことは三つある。
 一つ目はきちんと検討しきっていない原子力空母の危険性をみんなが知って、空母母港化をやめさせるべきだという世論を強めること。二つ目は、浚せつ工事をストップさせることだ。市長には空母母港化に必要な浚せつ工事をストップする権限がある。もし市長がノーと言えば別の可能性が生まれる。浚せつ工事をするとヘドロ汚染が広がる。地元漁師はこの工事を怒っている。浚せつ調査の協議が明日開かれる可能性がある。さらに今後、工事の協議が開かれる。中止を求めて市に働きかけ、何とか止めたい。
 三つ目はみんなが原子力空母のことに反対している。もう一度、市長にこのことをつきつけ、容認を撤回させる。私たちが一万人に市民投票をやってみると七割が反対している。新聞の世論調査でも六割が反対だ。市長はそうした声を聞かずに国に逃げてしまった。市長は岩国のような住民投票はしないと言っているが、住民投票も迫っていきたい。
 いずれにしも、原子力空母の母港化にあと二年かかる。日米両政府にとって乗り越えなければならない関門はたくさんある。私たちはそこに立ちふさがって、「地域の住民の安全を犠牲にして配備されようとしている原子力空母はおかしい。おかしいものはおかしい」とキチンと訴えてこの計画をストップしていきたい。(発言要旨、文責編集部)

上澤千尋さんの報告から
炉心溶融で百六十万人がガンで死亡する


商業炉に比べて
危険性は高い

 ニミッツ級の原子力空母艦には原子炉が二基搭載されている。しかしながら、その原子炉システムについては、構造はおろか、正確な出力すら明らかにされていない。
 艦載原子炉は、通常時は定格の一五%の出力で運転し、戦闘時などの緊急時には一分ぐらいの短い時間で一〇〇%にまで出力を上昇できる設計になっている、と米軍は説明している。出力の急変は、燃料および原子炉圧力容器に大きな熱応力をもたらすため、材料の劣化がすすみ、構造健全性に大きな影響を与える。
 ウラン235が九七%という高濃縮ウランの燃料を使用しているため、出力急上昇時に制御に失敗すれば、暴走事故を起こす危険性が、ウラン235の濃縮度四%程度の燃料を使用している商業炉に比べてずっと高い。

事故が起きた時の
被害を予測すれば

 ニミッツ級の空母が横須賀港接岸中、ないしは横須賀構内を航行中に原子炉の炉心が溶融するような事故が起きた場合の被害予測を行った。
 風向きが南南西で、東京の都心やさいたま市方面に向って放射能が広がっていった場合、東京都心の多くが急性障害相当の250ミリシーベルトの範囲に入っており、職業人に対する年間の被曝線量限度である50ミリシーベルトの範囲には宇都宮市が含まれる。このケースの集団線量を概算すると三百万〜四百万人シーベルトになる。風下の扇型内に居住ないしは滞在していた人たちのうち、百二十万〜百六十万人がガンによって死亡すると予測される。
 二基あわせての熱出力が百二十万キロワットという原子炉搭載空母が大都市部の横須賀港に出現することで、非常に大きな放射能災害の危険を招くことが明らかになった。

トンプソンさんの講演から
セシウムによる影響はチェルノブイリと酷似

 原子力空母による放射能事故には三つの大きな要素がある。@事故または、意図的行為(乗組員による破壊行為またはテロ攻撃)の発生。国家間の戦争は想定していないA原子力空母の二基の原子炉のうちの一または二基から、環境中への放射性物質の放出B放出された放射性物質は、大気または水を通して広がり、人間を放射能被曝する。
 原子力空母に搭載されている原子炉は商業用軽水炉に比べて低出力で長期にわたって稼動している。原子炉燃料内の放射性物質のヨウ素131は商業炉より少なくなっている。しかし、燃料交換まで長い期間運転を続けるため、セシウム137の内蔵量は商業用原子炉とさほど変わらない。
 このような放射性物質が大気に放出された場合、二つの影響について検証した。放出から数日間での急性の影響と数十年かけて影響がもたらされる長期のもの。同じような事故が原子炉で起きた場合、急性の影響は原子力空母の原子炉からの場合は小規模になるだろう。長期的には商業用と変わらないものだろう。一九八六年のチェルノブイリ原発事故のセシウムによる被曝がたいへん重大な問題だ。チェルノブイリ事故の時の影響は現在でもイギリスに残っている。
 原子力空母で事故が起きた場合、セシウムによる影響はチェルノブイリ事故と類似してくるのではないかと考えている。このような原子炉で炉心損傷をひきおこすような事故の確率としてはどのようなものがあるのか。世界中で稼動している商業用原子炉は12100原子炉・年に達している。二つの大きな原子炉事故が起きた。それはスリーマイル島事故(1979年)とチェルノブイリ事故(1986年)だ。アメリカの海軍原子炉は5700原子炉・年で、炉心を損傷するような事故は報告されていない。ソ連では事故があったようだと言われている。商業用・軍事用どちらも将来的な予測ついては1万原子炉・年に一回と想定されている。破壊行為やテロ攻撃による事故の確率は、数量化できない。二〇〇〇年にボート爆弾で米海軍艦船がテロ攻撃を受けた。
 炉心損傷をともなうような大事故が起きた場合、どれだけの放射性物質が放出されるのか。原子力空母の原子炉は軍事的な目的を持っているので特殊な要素が含まれている。このことが事故があった場合の環境への放出放射能の危険性を増加させる。戦闘による衝撃と急速な出力上昇に耐えうるように作られている。そのため原子炉の燃料の中に、多量のジルコニウムが含まれている。
 事故の場合は大量の水素が放出され、水素は空気と触れることによって水素爆発を引き起こすたいへん危険な状況をつくりだす。空母の中の体積は限られているので、原子炉の格納容器は非常に小さいものだ。このような格納容器の特徴は炉心損傷のような大きな事故があった場合に、環境に放出される放射性物質の量が沸騰水型軽水炉のマーク1型と同じくらいになるのではないか。
 放射性ヨウ素の大気中への放出による風下一キロの地点の甲状腺被曝量は140シーベルト、十キロの地点で17シーベルトとなる。原子力空母が母港化されなければ事故による放射能被害の危険性は存在しない。
 原子力空母の放射能事故の危険を減じる四つの選択肢が考えられる。@飛行機を使ったテロ攻撃の危険性を減らすための、日本の航空上の保安体制の充実A機雷やボート爆弾を使ったテロ攻撃の危険性を減らすための、横須賀の港湾の保安体制の充実B横須賀とその周辺地域における放射能緊急事態対応計画の充実。事故が起きた場合は米海軍は事態をすみやかに知らせることが大切だC航行不能となった原子力空母を沖合いに短時間に曳航するための準備体制の確立。
 危険性を減らすためにはまだまだ検証が必要だ。三つの方法が考えられる。@米海軍によって環境影響報告書が作成されること。この環境影響報告書には機密情報の使用というものがかかわってくるが、付属資料としてこの報告書に加えることができるA米国議会が科学アカデミーにこのような影響調査を委託すること。これまで、科学アカデミーは公開・非公開の文書を用意したことがあるB日本政府あるいは独立した立場の科学者によって、調査報告がなされることだ。(発言要旨、文責編集部)


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