もどる

    かけはし2017.年2月27日号

国境を越えた底辺からの統一を


メキシコ

トランプおよびペニャとの対決に向けて

国際主義の精神こそが外国人嫌
悪的民族主義を打破する出口

革命的労働者党(PRT)

 以下は、第四インターナショナルメキシコ支部の革命的労働者党(PRT)による声明。米大統領のドナルド・トランプが二国間国境沿いの壁に関する作業を即刻始めるという大統領令に署名し、メキシコがその対価を払うことになると繰り返したことを受けて発表された。結果としてメキシコ大統領、エンリケ・ペニャニエトは、一月三一日に予定されていたホワイトハウス訪問の取り消しを迫られた。

トランプ「新たな従属」の要求


われわれは、国中での石油価格、電気料金、水道料金の劇的な引き上げ、およびメキシコの寡頭体制に関する正統性の危機――それはなおさら一つの政治危機となっている――を深めることになった国を貫く不断の大規模な抗議行動で刻印された一カ月を経て、今や、ホワイトハウスにおける、極右、外国人嫌悪、マッチョ、レイシズム、反メキシコといった新政権の最初の数歩を見始めつつある。これがメキシコの政治光景にもたらし得るものはただ、さらなる紛争の種、諸々の対立、闘争の諸々の可能性だけだ。
ペニャ政権の小心な対応はあらためて、この国の危機に適切に対処するその不能性を示している。その危機には今や、トランプ政権がとっているメキシコに敵対的な諸方策、およびその継続的な脅迫が含まれている。
米国新政権の保護主義的転換が進行中だ。それは、メキシコへの投資を封じ込め、環太平洋パートナーシップ自由貿易協定(TPP)を解消しただけではなく、米国に有利に北米自由貿易協定(NAFTA)を「再交渉」(それを事実上解消)し、メキシコからの輸出品に二〇%の関税をかけ、すぐ間近に迫っている大量追放には触れないとしても、とうに軍事化されている国境の、不名誉となる壁に資金を出させるとも脅している。
新自由主義が抱える諸々の危機の表現であるそのすべては、米国の後背地としてメキシコを確保するためにその上に何十年にもわたる新自由主義の経済諸政策が組み立てられた、諸々の基礎を破壊する可能性をつくるだけだろう。実際にペニャニエトのもっとも新しい、特にエネルギー部門の構造改革は、メキシコ経済の、北の隣国がもつ帝国主義的利益に対する深い、ほとんどそれだけへの依存、という想定に基づき設計され、押しつけられた。
NAFTAは、もっともはっきりした二、三の作用を示すだけでも、メキシコの地方を破壊し、「マキラドーラ(米国との国境沿いにつくられた、輸出品製造向け部品、中間財輸入を無税にする保税加工区:訳者)」モデル(輸出品加工工場の)に便宜を与えつつ萌芽段階の国内工業を解体し、国の鉱物資源を米国(およびカナダ)企業に譲り渡し、労働者の諸権利を破壊し、不安定労働を広げた。そしてそれは先の想定に基づくものだったのだ。
同時にミゲル・デラマドリッド(注一)の時代以来、PRI(制度的革命党)とPAN(国民行動党)両者の政権は、米国の利益に対する彼らの従属を正当化し、米国人を「敵」に回すよりも「味方」につけた方がいい、と語ってきた。これらのテクノクラートたちは、彼らがホワイトハウスの前にぬかずいた時、将来の借家人が変節し、彼らをもてあそぶなどとは、露ほども想像しなかった。なぜならばこれらのメキシコの支配者と公職者たちは、自身を政治家とは、また連携関係にある主権国家の代表者などとはまったく見ず、単なる下僕と見ていたからだ。
それゆえにこそわれわれは、メキシコ政府、あるいは「メキシコのための協定」に署名した諸政党が、あらゆる「新NAFTA交渉」において、あるいは米国内メキシコ人に対するいじめを前にして、また差し迫った壁建設を前に、メキシコ民衆の利益を代表するなどとは期待できない。
今後にあるものは、より腰をかがめ、かつかつに食べるだけの、従属の新たな形態以外ではないだろう。そしてそれは国境を挟む双方で、労働者に対し最悪の諸結果をもたらすだけだろう。

「壁」は両国労働者に犠牲を強制


ペニャニエト政権の当惑は、それだけでもすでに十分なのだが、彼自身の無能さの表現だけではない。その当惑はまた何よりも、彼らが何十年も、新自由主義の指令に忠実に自らを従わせてきた――ペニャと「メキシコのための協定」諸政党によって押しつけられている構造諸改革の中にもっとも完全に表現されている――ことから来ている。そしてトランプが帝国主義諸政策により右翼的で保護主義的な転換を与えようとしている今、メキシコの新自由主義者は、危機に対するどのようなオルタナティブもないまま、見殺しにされることになった。
彼らは帝国主義の指令にしたがうことによりメキシコの墓を掘った。それゆえ彼らはどのようなオルタナティブも提供できない。そしてその指令はいかに行動すべきかに関し彼らが知るすべてであり、今それらの指令は、彼らがそれほどまで忠実に従ってきたものとは対立しているのだ。
左翼や社会運動にとって、また労働者にとっては、NAFTAの再交渉を恐れないことが重要だ。この協定はこれまで勤労民衆に対してはただ恐るべき結果を残したにすぎないのだ。今最悪の間違いは、PRD(民主革命党、中道左派と目されてきた:訳者)がやっていることだが、トランプに反対し「NAFTAを防衛する」ことだろう。
それとは逆に農民、民主的諸労組、さらに左翼は全体として、NAFTAとその結果に何十年も闘いを挑んできたのだ。われわれは、われわれもその一部である多数、労働者に利益となる強力な経済を建設するために、その天然資源を活用する主権をもち独立した国家のために闘う。
トランプの「保護主義的転換」は、われわれの天然資源を横領し、過剰搾取するために安く不安定な労働力を利用するということに、米国がもはや関心をもっていない、ということを意味しているわけではない。しかしトランプの保護主義的貿易政策を前に、労働者の利害という観点からは、「他の諸国に注意を向ける」(中国やEUを提案している人々のような)ということはまったくオルタナティブにはならない。それは、半植民地的で依存的な国にとどまり続けるということを意味するだろう。
これらの不平等かつ従属的な諸関係がこの国のあるいは労働者の状況を改善することはなく、それらは確実に支配階級の特権を維持するだろう。われわれは、主人を変えるのではなく、そのモデル自身を壊す必要がある。新自由主義的メキシコの終わりは、独立し主権をもつメキシコ、あらゆる種類の抑圧や搾取のない、公正で民主的、自由で平等主義的、そして環境調和的なメキシコ、それを再形成するために、勤労民衆を起点に闘い、組織化しつつ、底辺からわれわれすべてを統一する好機にならなければならない。それが革命派の政治展望だ。

レイシズムと闘う幅広い戦線を


すべてのことは次のことを示している。つまり、NAFTAに関してトランプが提案している、「米国の利になる再交渉」が意味することは、メキシコのインフラのさらなる破壊、およびメキシコ経済の北の隣国の必要に沿ったより大きな従属、ということだ。帝国は、米国生産のこの再構築において、それを行う上で米国が必要とする基礎的な投入物を可能な限り低いコストで確保しようと試みるだろう。
国民的団結だと? 変化を遂げた政治光景を前に、新しい主人に自らと彼らの利害を合わせようとしている有力者たちと共通するものを、われわれ労働者は何かもっているのだろうか? トランプ内閣の腐敗し外国人嫌悪の、百万長者のメンバーたちは、近年における民主党と共和党双方の政策によりその状況がより不安定にされてきた黒人、ラティーノ、白人からなる何百万人という労働者と共通するものを、何かもっているのだろうか? この危機にわれわれを投げ込んだ第一の者であった者たちとの国民的団結、この想定される呼びかけ以上に有害なものはまったくあり得ない。
もちろん、急を要することは、他のものに対するレイシズム的な憎悪、抑圧、否認という諸政策に反対するもっとも幅広い統一を固めることだ。しかしそれが意味することは、国境にとらわれない底辺からの統一だ。トランプとペニャが表現しているものは、敵、一時的な侮辱にもかかわらず、同じ敵だ。そして米国の労働者、スーの人々、メキシコ人移民(国境を越えたわれわれの兄弟姉妹の労働者)、と全体としてのラティーノ、ブラックス・ライヴズ・マター、米国の街頭にあふれ出た何百万人という女性たち、これがわれわれの主な連携者だ。
外見はぞっとするようなものだとはいえ、これらの残酷な攻撃(トランプとペニャの)はすでに、決起した抵抗という障害にぶつかりつつある、ということもまた真実だ。トランプの就任は一方で、前線を女性が占めた、大衆的な抗議行動により迎えられ、新たな決起と闘争も確実だ。これらは出発点にすぎない。
他方国境のこちら側では、ペトロラゾ(石油価格引き上げ)と構造改革に反対する大規模な決起が、闘争と抵抗の新時代を予告している。諸闘争は再び、ペニャ出ていけ、と叫び声を上げるだろう!
国境の両側で闘争の中にある人々にとって急を要することは、われわれが共に資本主義の主人に立ち向かうことができるように、接触を届かせることだ。われわれは、二〇一四年九月行方不明となったアヨツィナパの四三人との、模範となる国際連帯を再び取り上げる必要がある。これは国民的団結という詐欺とは関わりのない、国境を越えた団結、底辺からの統一、多様性の中の統一、抵抗し勝利するための統一の問題だ。
メキシコの場合に急を要することは、全土での大規模かつ自然発生的な諸決起に表現された社会的不満が、それはまだ確定された勝利とは言えないとしてもバハ・カリフォルニアの例のように二、三の例で部分的勝利を得たが、闘争のより永続的で民主的な諸戦線――さまざまな組織が促進でき、そこにそれらが共に到達できる戦線――へと向けられ組織化される可能性を開くことだ。
石油価格引き上げに反対するほとんど一カ月にわたる全土での自然発生的な連日の抗議行動は、それ以前に新自由主義反対の組織化を進めてきていた諸勢力からのより大きな参加を経験し始めることになった。この一月二六日、ニューワーカーズ・セントラル、メキシコ電力労組(SME)、電力利用者全国会議(ANUE)を代表とする、労働者階級の決定的な部門が、「民衆労働者政治組織」の支持の下、メキシコシティの街頭を貫く非常に大きな決起に参加し、近頃の自然発生的な民衆的市民的抗議行動の枠組みの内部に、組織されたプロレタリア的翼の存在をつくり出した。二六日のこの決起には、ANUEとSMEが組織した、ガソリンスタンドと前メキシコシティー電力会社の職場における、数十の占拠と抗議行動が先行していた。
一月三一日メキシコシティーでは、もう一つの重要な極によって、別の大きな決起が呼びかけられた。この極には農民諸組織とUNT(全国労働者組合)が含まれ、後者には、電話交換手と大学の学生のもっとも重要な組合が入っている。

新しい政治的極が必要だ


この危機と抗議行動の規模は、政府並びに全制度的諸政党(今や、「メキシコのための協定」諸政党だけではなく、MORENA〈国家再生党、注二〉も含む)からの「国民的団結」といった諸々の呼びかけとは独立して、闘争内部に勤労民衆の組織された極を発展させる必要と責任を提起している。これが求めることは、全土での闘争すべてを調整でき、現局面で必要とされるレベルにまで抗議行動と闘争を高め、この日々の決起における三つスローガンをその結論までやり通す、真に統一された空間を生み出すための意識的で責任ある努力だ。ちなみにそのスローガンとは、石油価格引き上げ反対、構造改革反対、ペニャ出ていけ、だ。
これは、抗議行動を闘争の新たなレベルまで引き上げることを意味している。そしてそのレベルには、可能なこととして、全国規模の公民的ストライキが含まれる。しかしそれは、単なる宣伝としての呼びかけであってはならない。それが意味することは何よりも、それを現実にできる社会的諸勢力の創出とその調整だ。
事実として、構造改革、特にエネルギーと教育部門のそれの撤回は現在、ペニャ政権の取り除き(二〇一八年の予定された二、三の選挙まで待機するという、ロペス・オブラドールが提案する、交渉による移行を意味すると思われるが、そうした円滑かつ制度的道によるものではなく)という政治的目標からは切り離せない。実際中期的には、構造改革の撤回は、二〇一三年(あるいは、NAFTAが発効した一九九四年)以前にあったような憲法への単純な回帰を意味することなどあり得ない。それは、この国を再設計するための新しい憲法制定会議を求めるのだ。
このことは、トランプが代表するヤンキー帝国主義が、「メキシコのための協定」諸政党とその政府が、憲法のある点に反映されたかされなかったりする諸権利と歴史的獲得成果を破壊しつつ、わが国に熱を込めて押しつけた、その新自由主義的グローバリゼーションに新しい展開を押しつけようとしている今、なおのこと真実だ。

すでに始まった女性たちの闘い


底辺からの、あらゆる運動と抵抗の表現の統一を築き上げることは、確実に数多くの困難に直面する。しかし今後の数週間、諸々の危機の継続と深まりは、それを前に進めることに可能性を開くと思われる。
二月四日、歳入法として「メキシコのための協定」諸政党がすでに承認したものとして、新たなガソリン引き上げが行われるだろう。そして、トランプ計画の事実上の実行は、「国民的団結」の呼びかけが数々あろうとも、平和と安定の到来にはほとんど結びつかないだろう。あらためてまさに、壁の建設とその代金請求を、メキシコ人労働者の米国からのあり得る大量追放と共に考えてみよう。
今日、国境の両側の社会運動が共同のキャンペーンを討論し発展させるための空間を追い求めることは、おそらくかつて決してないほどに急を要する。レイシズムの憎悪を葬る上では連帯が決定的だ。国際主義の精神が、外国人嫌悪的民族主義を打ち破るための唯一の出口だ。
出会いの点は数多くあり得る。メキシコで何年間も環境殺し的な大規模プロジェクトに抵抗を続けてきた何百という運動は今、自身をスタンディングロック(石油パイプライン建設を巡りスー族を中心に米先住民が、民衆的連帯・支援に包まれてその阻止闘争を展開している現場:訳者)という鏡の中に見ている。あるいは、メキシコの刑務所にいる何十人という政治犯、および一〇年の投獄に直面する可能性がある米国で先頃拘留された抗議行動参加者は、同じ抑圧政策の中にいる。さらに、昨年以来、女性に対する暴力と女性殺人に対決してラテンアメリカ中で街頭に繰り出した女性たちは、何百万人もの「ピンク・プッシー・ハット」(一月二一日のワシントン女性行進に向け、ピンクの猫型帽子を身につけようと、ソーシャルメディアを通じて呼びかけられ、同調者が広がった:訳者)の女性たちの中に、彼女たちの姉妹を見出している。

ペニャとトランプ、彼らが大目に見られることはないだろう!

団結したわれわれは勝利するだろう!

二〇一七年一月二五日、メキシコシティー

注一)ミゲル・デラマドリッドは、一九八二年から一九八八年まで第五二代メキシコ大統領を務めたPRI党員。数多くの新自由主義政策を導入した。
注二)ロペス・オブラドールの党。(「インターナショナルビューポイント」二〇一七年二月号)   


もどる

Back