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    かけはし2017.年3月6日号

反共と国家主義、財閥には友好的


保守政府の歴史ろう断10年史

修正された歴史教科書3種の分析

朝鮮戦争と李承晩政権

 「行政府や警察各所の主要な座に、親日行為を行った人々を登用していた李承晩(イ・スンマン)政府は親日派処罰に消極的だった。さらに進んで反民特委の活動が活発になると、これを非難する一方、露骨な妨害に乗り出した」(2009年版、金星出版社「韓国近代史」教科書)

 「反民特委が日本警察出身のノ・ドクスルを検挙すると、大統領イ・スンマンは左翼反乱分子を探し出すのにたけた警察官をやたらに捕らえてはならないとの特別談話を発表した。引き続いて共産党と内通したとの口実で反民特委所属の国会議員たちを拘束した」(2014年版、未来には出版社「韓国史」教科書)。
「イ・スンマン政府もまた反民特委の活動に消極的態度を示しつつ、共産化の脅威に対処しなければならない緊急性などを挙げて、反共の経験が豊かな警察をつかまえてはならないとの談話文を発表した。1949年、一部の警察が反民特委の事務所を襲撃するなど反民特委の活動は困難を味わうことになり……」(2017年1月31日公開「韓国史」国定教科書最終本)。
大韓民国政府樹立直後の1948年9月、親日派清算のために設置された国家機構「反民族行為特別調査委員会」に対して当時の国家首班である初代大統領イ・スンマンがいかなる態度を示したのかについての歴史教科書の叙述編さん史だ。
韓国の親日派清算が挫折した理由を知ることのできる歴史の1つの山場だが、先んじた各検定教科書がイ・スンマンをその原因として記述したのとは異なって、国定教科書に至っては責任の所在が不透明になる。パク・クネ政府が歴史教科書の国定化を強行した理由を見せつける端的な事例だ。

始まりは李明博、終わりは朴槿恵

 パク・クネ、チェ・スンシルによる国政ろう断の局面にあって、キャンドルの市民たちは歴史叙述の変更によって利益を得る集団の実体を目撃した。歴史教科書の国定化政策は国政ろう断の亜流である「歴史ろう断」(ろう断:高くそびえ立った丘、坂。最もよい位置を占めて利益や権力を独占する)として話題となり広く知れわたっている。
教育部(省)が検定教科書(と国定教科書との)混用を決定するとともに結局、国定化政策は廃棄されたものの、弊害は相変わらずだ。長い時間にわたって誤りが累積されたからだ。ろう断の果てはパク・クネ政府だけれども、その始まりは教育部を動員して歴史教科書の叙述修正に介入した2008年のイ・ミョンバク政府にさかのぼってたどり着く。
「ハンギョレ21」は保守政府の10年間に修正を繰り返してきた歴史教科書を比較分析してみた。分析の対象は計3種で@2008年、イ・ミョンバク政府下で初めて命令を受けて修正された金星出版社の「韓国近現代史」教科書(便宜上、金星教科書)、A2013年、パク・クネ政府が修正命令した8種の「韓国史」教科書の中で学校現場での採択率が最も高かった(30・6%)「未来には」の教科書(検定教科書)、B去る1月31日に教育部が公開した「韓国史」固定教科書最終本(国定教科書)だ。
分析の結果、修正・変更された歴史叙述の相当数は特定人物の歴史的責任を免除し、韓国の現在的課題を認識するうえで必要な歴史的事実を漏落・偏執・隠ぺいすることに集中されたことがあらわになった。その事例は極めて多いが、現在の韓国社会の問題を理解するうえで必要な歴史認識と密接にかかわる代表的な争点の3つを紹介する。

 @米国
パク・クネ大統領が「キャンドルの2倍」だと語った(パク・クネ支持の)太極旗(韓国国旗)集会に参加した、いわゆる愛国市民たちはなぜ太極旗とともに米国の国旗である星条旗を掲げるのだろうか。韓国と米国の関係を歴史的に把握しようとするならば、解放直後に38度線を境界として以北と以南で実施された米ソの軍政を語らないわけにはいかない。ところがこの10年間、米軍政について変更された叙述内容を探ってみると、明らかな意図がうかがい知れる。
当初、金星教科書は教科書本文ではないけれども探究活動の項で当時の米陸軍総司令官マッカーサーの布告令第1号とともに「韓国人の自治を認めず親日の官吏を引き続き採用した米軍政の政策をうかがい知ることのできる条項を探してみよう」という活動を提示した。
ところが検定教科書では米軍政は「(朝鮮)総督府の官僚や警察をそのまま活用した」との叙述があるものの「親日」という表現はなくなった。国定教科書に至っては総督府という用語が抜けて、「既存の官僚および警察組織をそのまま存続させた」と修正した。
解放直後、米軍政に積極的に協力した韓国民主党の性格についての叙述も微妙に修正されたり省力された。韓国民主党の創党の人士たちについて金星教科書(「日帝下の地主や起業家たちを中心とした一団の人士)と検定教科書(「反民族親日経歴者たちと保守的な民族主義系列の人士)という説明をしたけれども、国定教科書(「ソン・ジヌ、キム・ソンスらは韓国民主党を結成し、大韓民国臨時政府を支持した」)は代表の人物を挙げるだけで、政党の性格を理解することのできる歴史的情報は明らかにしていない。国定教科書では韓国民主党が米軍政に協力したという叙述もなくなった。

 A北韓
北韓(北朝鮮)についての叙述もまた保守政府の発足以前と以後とでは画然と異なる。1990年代初めの北韓の核兵器開発や核拡散禁止条約(NPT)脱退事件についての叙述が代表的だ。
金星教科書は当時の事件について、北韓が核兵器の開発放棄を明確にする代わりに韓国政府が軽水炉の建設を約束した点、北韓が米国に休戦協定を国際社会から軍事的安全を保障されることのできる平和協定に変えてくれと要請した点、以降2000年代に北韓が核開発の再開を宣言するとともに押し出した名分が軽水炉建設の遅延だったという点などを詳細に叙述した。
反面、検定教科書は北韓の核開発によって南北関係が梗塞したという具合に簡単に言及するにとどまった。国定教科書はさらに1歩踏み込んで、「北核の危機と北韓の対南挑発」という別途の小単元を設け、北韓の核開発や北方限界線(NLL、海の38度線)侵犯、2008年の金剛山観光客被殺事件、2010年3月の天安艦事件、2011年11月の延坪島砲撃事件など事例だけを羅列するばかりで、挑発の理由や背景は提示していない。歴史的事件の背景を理解することのできる情報が教科書にないのだ。

 B財閥
韓国社会の代表的病弊として挙げられる財閥についての歴史叙述も保守政府の10年間、修正されてきた。
金星教科書は「財閥の成長」という別途の探究活動を通じて▼大規模企業集団の系列社数と資産総額▼政府の政策と財閥の成長過程▼財閥成長の背景となったパク・チョンヒ政権の総合貿易商社制度などの資料を提示し、財閥の成長の背景、肯定的・否定的影響を探って見るようにした。
ところが検定教科書は財閥を「韓国だけの独特な企業文化」だとのみ表現しており、「政経癒着」に言及しながらも財閥と関連づけて説明してはいない。
国定教科書は「維新体制の登場と重化学工業の育成」という段落で、財閥についてだけ一段落を別途に割いた。パク・チョンヒ政府の重化学工業育成政策によって財閥が生じ、これらが世界的企業として成長したという内容が主要な脈絡だ。検定教科書に比べて現代史の叙述分量が少なくなったことを考えれば、国定教科書が財閥に割いた紙面の破格さが明らかになる。政経癒着問題は言及されてはいるものの、さしずめ蛇足だ。

 保守政府は、なぜ歴史教科書の修正に乗り出したのだろうか。キム・ユックン歴史教育研究所長(トクサン高・教師)は2015年に学術誌「歴史と教育」に載せた論文『国家主義と歴史教育、その向こうに向かって』で「最近の10年間に続けられた右派の歴史教育論は1つの傾向性を持っている」とし、これを「国家主義」というキー・ワードで説明した。
キム所長は「ハンギョレ21」との通話で「歴史教科書を巡る波動はニューライトの歴史認識が貫徹される過程だった」とし「反共国家のアイデンティティを通した愛国的国民づくり、すなわち反共を核心的な国家のアイデンティティとみなし、経済開発を主導する国家のために個人が献身し、犠牲にならなければならないという歴史認識」だと語った。
2008年、教育科学技術部から修正命令を受けた金星出版社「韓国近代史」教科書の執筆陣だったキム・ハンジョン韓国教員大教授は「イ・ミョンバク政府の時、米国産狂牛病(BSE、牛海綿状脳症)牛肉反対のキャンドル集会が、教科書左偏向問題を提起している人々が出てきた契機だった。学生たちが社会を理解する方式が以前とは大きく変わったことを認定できないまま、『左偏向した教育を受けて政府を批判している』として学校教育を通じて歴史認識を注入しようとした」と語った。
キム教授は「イ・ミョンバク政府の時から歴史の叙述を政治的問題としてアプローチすることが本格化した。政府が問題とみなした歴史叙述は、執筆陣の政治的見解とは関係なく歴史解釈の違い、新たな研究成果などが反映されたのに、『歴史学者の90%は左派』だとし、固定化を押しつけた」と語った。

分断の責任の所在隠しにのみ没頭


歴史科の教育過程や執筆基準の開発についての経験が豊富で、「韓国史」教科書の執筆陣としても参加したチェ・ビョンテク公州教大教授は「〈韓国近現代史〉の教科書は、1990年代に新進歴史学者たちを中心としてなされた歴史学界の発展を反映した、と評価することができる。検定教科書を執筆する時も、それまでに歴史学界が蓄積した実証的研究成果を大いに反映しなければならないという責任感を感じた。歴史学をよく知らない人々がこれを理念的物差しで評価したことが問題」だと指摘した。
チェ教授は新しい歴史教育のモデルを作らなければならない、と強調した。「現在の韓国社会が直面した福祉、民主化など人々が皮膚で感じている価値を中心として新たな歴史のナラティブ(narrative、物語、物語文学)を創造しなければならないが、国定教科書は分断と戦争責任の所在を隠すことに没頭している。未来世代の歴史教育に分断の責任の所在を隠すことが何でそんなに重要なのだろうか」。(「ハンギョレ21」第1148号、17年2月13日付、ジン・ミョンソン記者)

朝鮮半島通信

▲朝鮮中央通信は13日、中長距離弾道ミサイル「北極星2型」の試験発射が2月12日に実施され、成功したと報道。試射は金正恩朝鮮労働党委員長が視察した。中国外務省の耿爽・副報道局長は2月13日の定例会見で、朝鮮による弾道ミサイル発射が国連安全保障理事会の決議に違反しているとの認識を示した。
▲2月7日の朝鮮中央通信によると、金正恩朝鮮労働党委員長が、平壌市内の江東精密機械工場を視察した。金委員長は2015年1月にも同工場を訪問し、工場の近代化と労働環境改善の重要性を教示している。
▲在日本大韓民国民団(民団)の呉公太中央本部団長は2月6日、韓国の尹炳世外交部長官に対し、釜山日本総領事館前の少女像の移転のために努力してほしいという趣旨の要望書を伝達した。
▲韓国の朴槿恵大統領の友人、崔順実氏の国政介入事件を捜査する「特別検察官」は2月13日、李在鎔サムスン電子副会長を呼び、再度聴取した。李氏に対しては、贈賄などの疑いによる逮捕状請求が今年1月に棄却されている。
▲2017年の韓国大統領選で有力候補とみられていた前国連事務総長の潘基文氏が2月1日、大統領選への不出馬を表明した。
▲金正恩朝鮮労働党委員長の異母兄、金正男氏が2月13日、マレーシアで殺害された、と報道された。
▲平壌で2月15日、故金正日総書記の誕生75周年を祝う中央報告大会が開かれた。大会では、マレーシアで殺害されたと報道されている金正男氏についての発言は伝えられていない。金正恩朝鮮労働党委員長は2月16日、金総書記と故金日成主席の遺体が安置されている平壌の錦繍山太陽宮殿を訪問した。
▲中国の商務省は2月18日、税関当局とともに、国連安全保障理事会の制裁決議に基づく措置として朝鮮民主主義人民共和国(以下、朝鮮)からの石炭の輸入を2月19日から、2017年12月31日まで停止すると発表した。
▲韓国の特別検事は2月15日、朴槿恵大統領の友人の崔順実被告の娘の梨花女子大学への不正入学を巡り、業務妨害などの容疑で同大前総長の崔京姫容疑者を逮捕した。また特別検事は2月17日、サムスン電子の事実上のトップである李在鎔副会長を逮捕した。
▲ソウル中央地裁は2月17日、会社更生法を申請した海運大手、韓進海運の破産を宣告した。
▲朝鮮中央通信は2月23日、中国を名指ししていないものの、朝鮮民主主義人民共和国(以下、「朝鮮」)に対する石炭輸入禁止措置は「社会システムを崩壊させる敵国の策略に等しい」と批判。「米国の言いなりで、朝鮮の国民生活に悪影響を与える意図はなく核プログラムの抑制が目的」と指摘した。
▲友人女性の崔順実被告による国政介入疑惑で弾劾審理が進行中の韓国・朴槿恵大統領の代理人団は2月22日、「韓国は大統領の弾劾制度のために滅びるだろう」と述べ、今回の弾劾は違憲であると主張した。
▲2月23日の朝鮮中央通信の報道によると、朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は22日、平壌で開催された朝鮮人民軍功勲国家合唱団の創立70周年記念公演を観覧した。最側近の崔竜海党副委員長らが同席した。
▲韓国の中央銀行である韓国銀行は2月23日、定例の金融通貨委員会を開き、政策金利を年1・25%で据え置くことを表明した。据え置きは8カ月連続。



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