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    かけはし2017.年3月27日号

左翼に問われる社会主義の理念


米国

トランプの破滅への道

ひっ迫する市民的自由と人権の危機

アゲンスト・ザ・カレント


 ドナルド・トランプはすぐさま彼の名で、ホワイトハウスの将来の占有者を迎える民衆的な反感のもっともすごい津波をつくり出した。「米国第一」の就任演説という吠えるような脅しから、多数の百万長者と億万長者からなる内閣まで、医療保険の何百万人もの人々からの差し迫ったはぎ取りまで、生殖に関する女性の権利への攻撃とムスリムの移民を禁止するもくろみまで、さらに黒人の若者たちとあらゆる弱い立場の住民への攻撃まで、彼が生み出した怖れと強い嫌悪感は、組織化と抵抗の新しい時代の幕を開けた。
 政治的観点では多様な、しかし基本的な人間的品位を守る必要によって統一した、何十万人という人々が街頭に殺到した。トランプは、ホワイトハウス顧問のケリアン・コンウェイのあからさまな「オルタナティブ・ファクト」という永続的なキャンペーンに取りかかるという彼のチームの約束と合わせて、彼が明白なな嘘を話す時、企業メディアを挑発して報道までさせた。
 それは印象に残る業績だ。つまりこれらのメディアは、公明正大さの見せかけを気取ることに執着しているのだが、ジョージ・W・ブッシュやロナルド・レーガン――あるいはベトナム戦争時代のリンドン・ジョンソンやリチャード・ニクソン――が嘘をついていたことを、彼らがそれを完全に知っていた時ですら、公然と明らかにすることを慣わしにしたことなどまったくなかったのだ。
 そのすべてはもちろん良いニュースだ。悪いニュースは、大いに憎まれ軽蔑された政権であっても、とてつもない打撃と取り返しのつかない危害を加えることができる、ということだ。絶対に間違ってはならない。われわれは今、市民的自由と人権において数十年で最大の緊急事態を前にしようとしている。七つのイスラム国からの移民に関する禁令は、「一時的」を意図したものではまったくなかった。それはむしろ拡張され――ムスリムコミュニティと米国の住民全体を恐れさせる意図と共に――そうだった。ムスリムの人々に対する暴力的攻撃、そして何らかのテロ事件(実際のあるいは未遂の)という危険が大いに成長中であり、トランプ徒党の緊張戦略はほとんど隠されていない。
 諸々の危機は、本国と世界の双方にある。トランプは彼の最初の週で、米国の国際的立場を上首尾に台無しにし、その住民の安全をより低くした。彼は、米国とメキシコの関係を傷付けた。彼は、移民禁令のもくろみにより――そして、まだ不明だが大勢の市民を殺害した、イエメンでのぶざまに取り繕われた海軍特殊部隊、シールズの急襲により――、「イスラム国」とアルカイダの宗教的全体主義的偏執者に大きな勝利を渡し、普通のイラン人の中にある親米感情という深い貯留池を干し始めた。
 トランプの徒党は、抵抗できない難民に対してだけではなく、また――パリ気候協定からの撤退を約束することにより――自然に対しても、つまり気候科学者への自由な発言禁止命令によっては打ち破られることなく、脅されるはずもない敵に対しても、戦争を宣言した。他方でトランプは、イスラム教を禁止しEUを打ち倒すためのキャンペーンを展開中のオランダの政治家、ゲールト・ウィルダース、フランスの極右、マリーヌ・ルペン、そしてギリシャのネオナチ、「黄金の夜明け」から当然の支持を得た。ドナルド・トランプはウラジミール・プーチンと並んで、欧州諸国すべてで台頭中の偽ポピュリスト、レイシスト、また反移民勢力の、おおいな期待を集める二人組となった。
 トランプがさらに悪化させた中東の混乱、そして彼が欧州経済に、また潜在的には世界経済に与えつつある打撃はまったくのところ、本来彼ら自身の右翼内部で議論されるべき必要性だ。

米国社会の分裂

 ここでわれわれは、米国における破滅の政治と抵抗に焦点を絞りたい。
大統領令はものすごいスピードで到来――多くは明らかに、主席顧問のスティーブ・バノンの考えとして知られる毒気をはらんだ沼から発して――した。それは、トランプは反対派を圧倒するために「ショックと畏怖」戦術を使いつつ、よく練られた戦略的な右翼の課題設定にしたがっているのか、それとも錯乱しているのか、それを理解するのが難しいと評論家たちが気付くほどのものだ。
一般的に政府の政策は、イデオロギー的考えと並んで、対立する物質的、政治的、また企業と国家の利害の、ある種複雑な相互作用だ。トランプのいくつかの表明は、純粋にイデオロギーあるいは楽観主義によって――イスラエルの米大使館を無謀にもエルサレムに動かすという誓約、メキシコに対する脅迫、彼の就任式典参加者の規模に関するとんでもない主張のように――駆り立てられているように見える。他のものは、極右と宗教的右翼という異なる部分を満足させるための、悪質だが予測できた重要な設定課題だ。つまり、中絶に関わる諸権利を一掃するという誓約、EPA(環境保護局)の気候変動ウェブページの消去、移民に敵対する一掃に協力しない都市向け連邦資金供与に関する脅迫、といったことだ。
リンゼイ・グラハムやジョン・マケインといった数少ない指導的共和党員が、他の者たちが確実に感じている困惑とショックを今声に出しているとしてもそれは、公然とした分裂が姿を現した、ということを意味しているわけではない。共和党の連携は、権力の保持が各々の反動部分に彼らの欲する大きな分け前を与えるだろう、という保証によって一体に保たれている。
トップについた困り者は宗教的右翼に、最高裁の支配と反LGBT差別に取りかかる「自由」を与えるだろう。企業のアメリカは巨額の減税、ウォールストリートの規制緩和、今後近いものとして、諸労組がまだ保持しているものに対す「働く権利」の猛攻、を得るだろう。ありもしない「不正投票(クリントンへの)」の調査というトランプの要求が純粋に病的な自己中心主義によるものか、それとも全国規模の投票権抑圧に向かう共和党の動きを示すものか、それはまだわれわれには分からない。その上で今後のこととして、共和党の予算提案があり、それはあらゆる報告に基づけば、経済的愚行がどこまで広がるかを計るものとなるだろう。
今は、たとえそこに喜劇的な付随物がつきまとっているとしても、極めて危険な時である。同時に、強力な抗議と抵抗が即座に出現したことは、今この時を有望なものにもしている。

攻撃の食い止め

 われわれが分かっていることとして、トランプは、ホワイトハウスの主になろうとするものの中では近代史上もっとも軽蔑された者だ。ワシントンDCにおける女性のデモは、個人のフェースブックポストから始められ、一つの組織委員会に急速に合体化された。そしてこの委員会は、確かに民主党につながっていたとはいえ、黒人、ムスリム、LGBT、またフェミニスト全体の懸念を中心に置いたことで称賛に値するものだった。
起きたことそれ自身は、ワシントンDCにとどまらず、国中の、また国際的に、大、中規模の諸都市でも、あらゆる予想を上回る、といった事例の一つだった。
さらにもっと驚くことは、一月二七日遅くに公表された、トランプの移民と旅行の禁令が示した不愉快さに対する即座の反応だった。この禁令は、それを実施する責任を負っている出先機関にさえ、前もっての知らせもなく公布され、何千人という人々は国際空港で突然足止めされ、数百人は米国到着と同時に拘留――ある者はすぐさま国外に追放――された。この命令のまったくの冷酷さが、反応に電気ショックのような刺激を与えた。
デモ参加者と懸念を抱いた弁護士たちが、心を傷付けられた家族と拘留者たちとの連帯に加わるために空港に殺到し、空港を機能不全化し、裁判所の緊急命令を得る中で、強い憤りのこもった反対の規模と強さ全体が焦点に入った。事実としてわれわれは、これらの決起はオキュパイ運動の絶頂が達したところを引き継いだ、と言うことができる。もちろん彼らが導くかもしれないところは、いわば空白になっている問題だ。
心穏やかではない真実だが、「安全保障」を名目としたトランプの移民に対する残酷な攻撃とその「仕事」には歴史的な前歴がある。たとえば、一八八二年の中国人排除法、東欧移民(特にユダヤ人)に扉をバタンと閉じた一九二四年の法、一九二〇年代の「国外追放ビジネス」などが本紙の以前の号で論じられていた。
米国史には、「移民を歓迎する国」としての米国の神話に反して、扉を開くこととそれをぴしゃりと閉じることの間の対立に関し長い記録があり、加えて、植民地的入植と皆殺し的な先住米国人追い立て、さらに共和国の最初期から引き継いだ奴隷制の拡大と廃止の間に起きた戦争がある。わが社会内の最良なものと最悪なものの間の長い闘争が、法廷と街頭で、再度劇的な形で加えられることになった。

抵抗と左翼

 いずれにしろはっきりしていることだが、トランプと彼のバノン―コンウェイ―スパイサーという雇われ暴力団的な一隊は、抗議を前にしても引き下がらないだろう。トランプは、そのフルタイムの仕事が彼の恐るべきとんでもなさに関し彼にあらためて自信を与えることである、そのような者たちと共に、泡のような代わりの現実の中に住んでいる。その上にトランプは、無傷でとどまると見られる――少なくとも、何百万人という彼への投票者が、彼らの医療ケアや社会保障やメディケア(六五歳以上の高齢者を対象とする医療保障制度)の喪失に向き合うまでは――支持基盤を確保している。
オートメーションや新自由主義的資本主義の世界的展開に合わせて失われた製造業の職は、米国内に大挙して戻ろうとはしていない。こうした諸々の現実が「米国第一」の霧から現れてくるには一定の時間がかかるだろう。
しかしながら、即座の抵抗と数々のデモは何百万人という人々に、彼らの憤激と今後に来ようとしているものに対する恐れという点で、彼らがひとりではないという自信をあらためて与えている。暴虐の継続的猛襲を前にする時それが大事であり、そしてそれは世界に、トランプに対する世界規模の大嫌悪は、米国住民の感情から離れているものではない、と告げている。
街頭に結集された憤激は、議会民主党と州政権を保持している民主党を、それがたとえ彼ら自身の寸断されてしまっている信頼性をただ維持するためだけであったとしても、本物の反対派のように行動するよう強いている。民主党は、投票権抑圧や公的部門労組の存在を例とした一定の課題に関し、政治的ちぢこまりを回避する目的で抵抗しなければならないのだ。
ほとんどが公式非公式の議会ロビーイングに終わる諸活動を乗り越えて、全国的には、四月二九日に設定された環境をめぐる大規模な動員がある(ワシントンDCと西海岸で)。五月一日を中心として、一〇年前のラティーノが率いた巨万の移民の諸権利を求めた決起が再起するということも――まだ分かっているとは言えないとしても――不可避だと思われる。重要なことは、「指導部」であるなどとうそぶくことをしなければ、反資本主義左翼がこれらの発展に重要な役割を果たすことができるということを認識することだ。
原理をなす市民の諸権利を防衛する点で後退などあり得ない。マッカーシズムタイプのブラック・ライブズ・マター(「黒人の命も大事」運動)に対する尋問の怖れがある。許可証のない移民は恐るべき将来に直面している。トランプの移民禁止令に対するみごとな反応を、未成年移民滞在期限延期措置(DACA/非合法の形で米国に達した未成年者に二年間の滞在とその間の労働許可を与える措置、二年間の年限は更新可能:訳者)をめぐって、有資格者がその期限延長を得ようとする際の決起に向けた予行演習としなければならない。
同時に、トランプ支持者の労働者階級層は、差し迫った医療保険や社会保障やメディケアの破壊により厳しい打撃を受けるだろう。大きな問題はまさに今、諸労組が弱体化し分裂している――いくつか(もっとも重要なものとしては建設)はトランプのパイプライン政策を支持し、多くの労働者は保護主義者との神話でだまされ――ことだ。反トランプの抵抗は、傲慢で企業により添う新自由主義の民主党が見捨てた人々に届くメッセージをもたなければならない。
われわれは、トランプがやろうとしていることが見てきたほど多く、予測できないものである以上、攻撃と抵抗という両分野で想定外のことを想定しなければならない。そして、ブルジョアメディアの多くが以前のどの大統領に対するよりもトランプに反対しているがゆえに、また彼のビジネスと政治的取引が標的の豊かさという環境を意味しているということを条件として、われわれは、それが意味するものを前もっては知ることのできない、どっさりのスキャンダルが発見されることも予想可能だ。
予想できたように、バーニー・サンダースからエネルギーを吹き込まれた基盤の多くは、クリントンキャンペーンに吸収され、われわれには残念なことだが、ジル・ステイン/アジャム・バラカの緑の党キャンペーンは、大きな突破とはならなかった。選挙の余波の中でバーニー・サンダースは彼の「われわれの革命」という組織を発足させた。それは、民主党を進歩的なポピュリスト勢力として再形成することをめざす組織だ。このきつい制約のある展望と一体化している彼の支持者の中にはなにかみじめさがある。
左翼に関しては、バーニー・サンダースが社会主義という考えを人気あるものにしたという事実が、選挙のショックの後、一定数の民衆層に社会主義に向けた電気ショック的刺激を与えることになった。その最初の場として、「アメリカ民主的社会主義者」――一九七〇年代の社会党分裂以後では、伝統的な米国内社会民主主義組織にもっとも近いもの――が、新メンバー数千人の流入を経験した。
ソリダリティを含む革命的左翼の立場に立つ諸組織もまた成長を見た。反資本主義かつ革命的左翼の立場に立つわれわれすべてにとっての試練は、トランプ、および白人至上主義右翼の日の出の勢いに恐れをなす何十万という人々、そして左翼と社会主義の理念に向け刺激を受けている何千人もの人びと、この人々に前衛主義的大言壮語を行うことなくいかに対応するのか、ということになるだろう。
ドナルド・トランプと彼の恐怖の館が破滅に向かう支配という彼らの進路を進み続ける中で、大衆運動とその反資本主義的な部分の切迫した任務は、強力かつ統一した対抗課題を出現させることとなる。
(「インターナショナルビューポイント」二〇一七年三月号)


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