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    かけはし2017.年6月5日号

「森友・加計」疑獄の徹底解明を


居直り・隠蔽工作を許すな
あばかれた「国家戦略特区」のねらい

国会を包囲し、安倍内閣打倒の攻勢へ

すべては首相の主導で

 「教育勅語」斉唱問題に見られる復古的天皇主義教育と安倍首相夫妻との親密な関係でクローズアップされた「森友学園」スキャンダルに続き、安倍首相の米国留学時代以来の「腹心の友」・加計孝太郎が理事長を務める加計学園の獣医科大新設問題が大きな政治的スキャンダルになっている。これまで五二年間にわたって新設が認められず、加計学園自身二〇〇七年以来、小泉政権時代に始まった「構造改革特区」制度を利用して一五回にわたって認可申請をしながら、そのたびに却下されていた獣医学部新設が、突如として認められた、という問題である。森友学園の「安倍晋三記念 瑞穂の国小学院」と同様に、安倍首相夫人の昭恵は加計学園の保育園「名誉園長」である。
二〇一五年六月、今治市と愛媛県は新しい「国家戦略特区」制度を利用して、改めて獣医学部新設を提案した。同年八月には「『日本再興戦略』改訂2015が閣議決定され、獣医学部新設にあたって「既存の獣医学部で対応できないニーズに応える獣医師を要請する場合に限る」といった内容が盛り込まれた。
二〇一六年八月、地方創生相が安倍首相に忠実な「イエスマン」山本幸三に代わることで、事態は加計学園の獣医学部創設に向かって急速に変化した。「内閣府からの伝達」として文科省に向け「総理のご意向」「官邸の最高レベルが言っている」として、加計学園の獣医学部新設を促す文書が文科省次官をはじめとしたトップレベルに流された。
二〇一六年一一月には国家戦略特区諮問会議で広域的に獣医学部が存在しない「空白地域」に限り獣医学部新設を認めるという方針が決定され、すでに獣医学部が存在する近畿地方で獣医学部新設を準備していた京都産業大学が新設を断念し、獣医学部新設申請は加計学園だけになった。
これを受ける形で、二〇一六年一二月二二日に内閣府・文科省・農水省間で獣医学部新設を一校だけとする条件が追加され、こうして加計学園の獣医科新設が、用地の無償譲渡(三七億円相当)、総事業費九六億円の半額の愛媛県と今治市による負担などといった破格の条件で認められることになった。安倍のお友達(ゴルフや食事会を頻繁に繰り返す)は、安倍のおかげで宿願を果たしたのである。

反旗ひるがえした前次官


この間の国会審議で、「加計学園」に今治市の獣医科大学新設を認めることになった経過について、文科省幹部の間に共有されたメモが問題となった。そこでは「加計学園への獣医学部新設承認」に関して「官邸トップの言っていること」「総理のご意向」と書かれたメモが明らかになった。しかし、菅官房長官も他の閣僚たちも、「怪文書」「出所不明のメモ」として一蹴してしまった。
だが文科省官僚の「天下り」問題の責任を取らされて辞任した前川喜平前文科省事務次官へのインタビューが「週刊文春」六月一日号、朝日新聞五月二五日付に掲載され、五月二五日には記者会見が行われたことで事態は急展開を遂げている。
この記者会見で前川前文科事務次官は、「国家戦略特区」(二〇一三年に安倍政権の下で閣議決定)に指定された愛媛県今治市で、加計学園の獣医学部を新設する計画について「官邸の最高レベルが言っている」「総理のご意向」と書かれた文書に関し、それが菅官房長官の言う「出所不明」の「怪文書」ではなく、内閣府から示されたものであることを明らかにした。
前川は「国家戦略特区での獣医学部新設について、条件に合致しているかを判断すべき内閣府は、十分な根拠のある形でその判断をしていない。薄弱な根拠の下で規制緩和が行われた」と語った。「文科省が十分な調査をしていないとすれば、その背景には何があるのか」という問いには「十分な根拠がなく規制緩和が行われて、本来、赤信号のところを、とにかく青信号だと考えろと言われて青にさせられた。官邸など政権中枢からの意向、要請といったものに逆らえない状況がある」とぶちまけた。
朝日新聞とのインタビューで前川は「行政がゆがめられた」と述べている。こうした前川の安倍政権への抵抗に対して、安倍首相「お気に入り」の読売新聞は前川の「出会いバー」スキャンダルを報じることで、彼の「反乱」を封じ込めようとしている。

新自由主義と極右の接合


ここで改めて「加計学園」問題の根幹をなす「国家戦略特区」とは何かについて考えてみよう。
「オリンピックを梃子に『国家戦略特区』の推進が目指されているが、究極の政策目的は特区の設置にあるのではない。特区は地域間格差を作り出すための『器』にすぎず、究極の目的は『全国特区化』である。つまり、特区は規制撤廃・緩和を全国に拡大する入口だということだ。現段階で一〇区域が『岩盤規制の改革の突破口』として『国家戦略特区』に指定されている。内閣府は規制改革メニューとして、農林水産業・医療・教育・雇用・介護・保育・観光・外国人材・創業・都市再生・近未来技術の分野を挙げているが、とりわけ一九八〇年代中曽根政権以来の新自由主義政策において、「改革」が先送りされてきた農業・医療・教育・雇用を『岩盤』として標的にする」(宮崎礼二「アベノミクスと2020年――延命への危険な賭け」、季刊『ピープルズ・プラン』76号、2017年4月)。
二〇二〇年東京五輪・そして改憲を日程に入れた安倍政権と支配階級の戦略は、一方における「規制緩和」、新自由主義の新たな段階での展開とその背後での「国家主義」・排外主義との結合、あるいは並行という特徴を持たざるを得ない。しかしそれは、安倍政権にとってもきわめてむずかしい綱渡りを強制されることになるだろう。その端緒を、「森友」問題での籠池本人の「反乱」の中に見出すことができる。
「森友」で反旗を翻したのは極右の側であり、「加計学園」では官僚トップの側だった。
天皇「生前退位」問題での極右天皇主義の間にくすぶる「怨念」を射程に入れながら、今後の政治の流れを見通していかなければならない。
われわれは二〇二〇年改憲阻止の闘いの中で、左派とリベラル派の共同戦線を様々なレベルで作り上げていく必要がある。同時にその一方で、この新自由主義的「規制緩和」と国家主義との新たなレベルでの相克あるいは接合を意識せざるをえない。「天皇の代替わり」と東京五輪を射程に入れた左派の独自のキャンペーンは、そうした攻防の中でこそ自覚的に追求されるべきである。(平井純一)




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