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    かけはし2018.年1月15日号

秋葉原で「戦争前夜」を感じた


日本衆議院選挙

日本国旗と愛国心誇示するキャンペーン

 日本・東京秋葉原は「アニメーション」の聖地として知られている。アニメーション関連の店が肩を並べており、地方や海外からやってきた数多くの観光客がここを訪れる。最近では人気アイドルグループ「AKB48」が出演するライブハウス「AKB48劇場」で有名になった。アニメーション、アイドル、コンピューターゲーム。秋葉原は日本「サブカルチュア」の最先端を駆けている所だ。

2千人の人波が「日の丸」手に


 この街は時として(ヘイトスピーチの集会が開かれるなど)ナショナリズム(国家主義)が噴出する空間でもある。衆議院選挙が行われるたびに自民党は選挙戦の最終日に行われる「最後の演説」をここで行う。以前は東京の渋谷、新宿、池袋など大きな駅やバスターミナルのある所で行ったけれども、最近のこの何年かは決まって秋葉原が最終演説の場所だった。
 自民党の広報担当者は、これについて次のように語った。
 「秋葉原では聴衆の反応がよい。特に若い人々がよく集まる。選挙戦の『最後のお願い』の演説の場所として今や秋葉原以外の場所は考えられなくなった」。
 10月22日の衆議院選挙を前にして自民党が選挙運動のフィナーレの場所に決めたのも当然にも秋葉原だった。
 衆議院選挙の投票日を翌日に控えた10月21日、秋葉原の駅前広場は2千余の人波でビッシリだった。多くの人々が小さな「日の丸」(日本国旗)を手にしていた。人波の最前列に「ガンバレ、安倍総理」と書かれた巨大な横断幕もかけられていた。この日の「主演」が到着する前から駅前広場は熱気がうずまいていた。
 「自民党の勝利のためにがんばろう!」。
 「安倍政権を支持する!」。このようなかけ声があちこちからあふれ返っていた。
 その反面、安倍政権に批判的な放送社のカメラ記者には、「失せろ!」「恥を知れ!」「偏向報道をヤメロ!」などのような言葉をあびせた。
 夕刻7時、夕闇があたりをおおうころ、勇ましい音楽の音に合わせて安倍晋三総理が到着した。
 「アベさん!」。
 一斉に声をあげた。人波の中で日の丸がうちふられた。宣伝カー(日本では選挙の遊説をする時、とりたてて舞台をつくらず、車の上にあがって演士が演説する)の上から安倍総理が声をしぼり出した。
 「北朝鮮の脅しに屈してはならない。日本人の生命と幸福を守るために(自民党に)力を与えてくだされば、と思います」。
 「日本を守りぬき、日本の未来をおしあげることのできるのは、わが自由民主党しかありません!」。

ナショナリズムの熱に身を任せ


 発言が終わるたびに聴衆は「よし!」と合いの手を入れた。それとともに日の丸の波がうねった。(自民党の最終遊説の姿は)どう見ても極右集会そのもののようだった。ナショナリズムの熱狂、政権に対する忠誠と盲信、今が本当に21世紀なのか疑いが生じるばかりだった。
 遊説の場では少数派だったけれども、安倍総理に反対する野党支持者たちが混じっていた。いつもと違って「反安倍派」が少なかったのは、多くの人々が野党候補の応援集会に足を向けたからだ。10人ほどの野党支持者たちは「憲法を守れ」と書いた紙を手にして、時々「アベはヤメロ」とヤジをとばした。
 そのたびに安倍の支持者たちのののしりが飛んできた。
 「やかましい。静かにしろ!」。
 「選挙妨害をするな!」。
 「お前は北朝鮮の側なのか?」。
 日の丸を掲げた群れがこれらの人々を取り囲んだ後、腕力で遊説場から追い出そうとした。このような場面こそが現在の日本社会に確実に根を下ろした象徴的「風景」だと言うことができる。差別と排他の空気、身ぶるいが起きるほどの「愛国心」が日本を蚕食している。(このような日本社会の雰囲気が)今回の総選挙で自民党圧勝の要因の一つとなった。

議席3分2の確保で改憲発議可能

 今回の総選挙で「安倍1党」体制は変わらなかった。第48代衆議院選挙で自民党と公明党を合わせた連立与党は313議席を占め、衆議院の全議席(465)の3分の2(310)以上を手にした。憲法改正案の発議に必要な議席(衆議院と参議院のそれぞれで3分の2以上の議席が必要)を確保したのだ。
そうだ。今回の選挙で改憲が可能になった。安倍総理は北朝鮮の「脅威」を口実にして、日本が今後、武力の使用を放棄すると宣言した憲法第9条の改正を狙っている。またこれを推進することのできる「数の力」を今回の選挙で確保した。たとえ名目上であっても、日本が戦後の長い間(国際社会を相手として)掲げてきた「平和主義」の看板を今や投げ捨てることが眼前に存在している。
当初、今回の選挙は波乱が続出する複雑な様相の中で展開された。安倍総理が衆議院を解散すると宣言したのは9月末だ。あまりにも突然の解散宣言だったため自民党からも反対の意見が相次いだ。自民党のある有力政治家は「なぜ解散をしなければならないのか、本当に理由が分からない」として不満を漏らしたりもした。実際のところ、安倍総理は(今回の選挙で)議席をある程度、失う覚悟をしていた。ある日刊紙政治部記者によれば、「解散発表の段階で行った事前調査で自民党は最小50議席を失うだろうという結果」が出てきたからだ。

北朝鮮の核利用した不正隠し


それにもかかわらず解散を決行したのは、総理自身をてこずらせていた「森友・加計学園疑惑」(安倍総理が自身と親しい人物に学校新設のための便宜を提供したという疑惑)に注がれた国民の目をそらすためでもあった。この問題のせいで安倍内閣の支持度が下降線を描いていた。各新聞社の世論調査で安倍内閣の支持率は30%のラインを上下した。このままでは政権が「レームダック」に陥りかねなかった。このとき、思いもよらない援軍が登場した。北韓(北朝鮮)だった。
ミサイル発射と核開発に関連したニュースが流れ出てくるたびに安倍総理は「国家の危機」を前面に押し出した。このように(北風が吹くことに)なれば(安倍総理の)「疑惑を追及する」声が消えてしまう。国内問題で苦しめられた安倍内閣は、望むたびにミサイルを発射してくれる北韓は間違いなく救助船の存在であったことだろう。
安倍総理は、これを選挙に積極的に利用した。「北韓の脅威」を煽動しつつ、武力使用のための憲法改正を前面に掲げた後、さらに一歩踏み込んで、前後のつじつまは合わないが、教育や福祉の拡充などの公約をないまぜにし「国難に対処しなければならない」という「イチカバチか」のような選挙に乗り出したのだ。
もちろんこれが無謀な挑戦であることは分かっていただろう。それゆえに50議席をも失う覚悟をして選挙戦に乗り出したのだ。(安倍総理にとって)重要なのは国家ではなく、自らと自民党を守ることだった。前述した政治部記者は「ともかくもモリトモ、カケ学園問題をウヤムヤにすることができるならば、それで良し、という考えだった。議席をいささか失ったとしても、総選挙をすれば憲法改正のようなことが表面化することになる。政権の安定のためには(総選挙を通じて政界を)一度リセットする必要があった」と安倍総理の意図を分析した。
その後、北韓以上に強力な援軍が姿を現した。それは支離滅裂な野党だった。安倍総理が解散の意思を明らかにしたその日、小池百合子東京都知事は突然、「希望の党」を創党するとして旗を掲げた。今春の東京都議会選挙で躍進した小池知事が自ら率いていた「都民ファーストの会」を発展させて、総選挙に挑戦状を出したのだ。急造した希望の党の党首となった小池知事は「新たな保守政党」を作っていくと訴えつつ安倍自民党に反旗を掲げようとした。小池知事の側では都議会選挙での大勝をなしとげた「成功体験」があったため、国会議員選挙でもブームを起こすだろうと信じて決断を下したのだ。
だが第1野党だった民進党との合党話が出てくるとともに形勢は不利に動きだした。前原誠司民進党党首は(当初、民進党で出馬しようとしていた)立候補者全員が希望の党に移って出馬するだろうと発表した。これに反発する人々が結びつき始めた。民進党はもともと右派から左派までさまざまな色合いの人々がより集まった呉越同舟のような政党だった。当初、保守と近かった右派系の議員たちは勝つ側につけとばかりに希望の党に党籍を移した。だが左派系の議員たちはそうすることができなかった。どんなに「反アベ」という看板を掲げると言っても憲法改正を支持する希望の党は自民党の第2中隊にほかならなかった。この党に党籍を移すということは自らの信念を投げ捨てるということを意味した。

小選挙区制が自民党助けたが…

 そのうえ小池知事が「希望の党の政策と合わない人々の入党を認めない。排除する」と語ったことが波紋をひき起こした。そのような(小池知事の)冷淡な発言がTVで何度も放送されるとともに、小池知事に対する評価が急落した。
結局、「排除」の対象と考えられていた民進党のリベラル系議員たちは、ひとかたまりとなって希望の党への移籍を拒否した。彼らは新たに「立憲民主党」という政党の旗を掲げたり、無所属での出馬を宣言した。結局、野党は分裂してしまった。この時点で自民党の勝利が予測され始めた。「反アベ」「反自民党」の票が分散すれば与党が有利にならざるをえない。
(韓国のように)日本も小選挙区制だ。この制度の下では選挙区別に最高得票者1人だけが当選する。例えば、自民党候補を支持する票が減ったとしても、対立する複数候補が出馬して票が割れれば「地域基盤」が強い自民党が圧倒的に強さを発揮する。
今回の選挙ではこのような「共倒れ」を防ごうとして各地で共産党と立憲民主党が連帯して候補の単一化をしてみようとした。だが希望の党がほとんどすべての選挙区で候補者を立てたせいで、ともかくも「反自民党」の票が散らばってしまった。結局、自民党が単独過半数の議席を占め、連立与党である公明党と合わせて全議席の3分の2以上を手にした。自らの失策によって自民党に勝利を与える形となった。
だが自民党が勝利した理由はそればかりではない。前述した秋葉原の光景がわが脳裏にしみついて離れない。これまで幾度となく選挙運動を取材してきたけれども、これほどにナショナリズムをさらけ出した遊説の現場を見たことはない。日本は確実に危険な方向へと歩んでいる。
いま私の作業室の机の上には小さなヒノマルが置かれている。秋葉原で自民党の最終演説を取材していたときに、自民党関係者からもらったものだ。プラスチックの棒にぺらぺらの紙、安あがりの国旗だった。
この10年間、私はこのような日の丸の群れと向きあいつつ生きてきた。私は国の祝日や国家の行事がある時に国旗を手にしたことは1回もない。だが国旗を大切に思っている人々の考えは尊重する。けれどもヒノマルは現在、差別と排除のために動員されている。秋葉原駅の前で人々が振っていた日の丸は安倍政権に対する支持を表現しているというよりも「反安倍」に対する憎悪の表れだった。
それだけではない。韓国と中国に対する反発を表したり、日本で暮らしている外国人を排除しなければならないと主張する時に、日の丸はそのような意志を代弁する象徴となっている。差別と排除の現場には「必ず」と言っていいほどにヒノマルの群れがいる。
このような光景については真面目な右翼たちの間でも「日の丸が気の毒だ」という声がもれてくるほどだ。ある右翼関係者は「日の丸を単純な道具として使っていることに怒りを覚える」という言葉を付け加えもした。

言いようのない恐怖が重く残る


英国の文学者セミュアル・ジョンスンは「愛国心はどうしようもない人々の最後の避難所だ」という言葉を残した。今回の選挙では、日の丸は「北朝鮮の脅威」「国難を突破しよう」という安倍総理の言葉に呼応した。その点について私は何か言いようのない恐怖を感じる。
日本人すべてが「どうしようもない人々」だと言う考えはない。そういうわけはない。だが現在の日本社会の一部には間違いなくプラスチックと紙で作った日の丸のように、安物の愛国心によって興奮しようとする雰囲気がある。今回の選挙の結果に、そのような社会の雰囲気が現れたのではないだろうか。(「ハンギョレ21」第1185号、17年11月6日付、安田浩一の日本社会/日本独立言論人)

朝鮮半島通信

▲習近平国家主席の特使として訪朝していた中国共産党中央対外連絡部の宋濤部長が11月20日夜、帰国した。金正恩朝鮮労働党委員長との会談が実現したかどうかは不明。
▲朝鮮民主主義人民共和国は日本時間の11月29日午前3時18分ごろ、新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星15」1発を発射し、ミサイルは日本の排他的経済水域(EEZ)内に落下した。韓国国防省は12月1日、「火星15」について、通常角度で発射した場合、1万3千キロ以上飛行可能で、ワシントンが射程に入るとの分析結果を国会で公表した。
▲朴槿恵前大統領の裁判で、朴被告は11月27日の公判をボイコットにより欠席した。ソウル中央地裁は11月27日の公判を28日に延期した。
▲韓国銀行(中央銀行)は11月30日の金融通貨委員会で、2011年以来となる利上げを決定し、政策金利である7日物レポ金利を0・25ポイント引き上げ、1・5%にした。韓国の2017年の経済成長率は3%を上回る見通しで、インフレ率は韓国中銀の2%の目標近辺を維持している。
▲朝鮮中央通信は11月28日、金正恩朝鮮労働党委員長が平安南道順川に新設されたナマズ養殖場を視察したと報道。日時は不明。朝鮮労働党の呉秀容副委員長、朴泰成副委員長らが視察に同行した。
▲米韓両空軍は12月4〜8日、合同軍事演習「ビジラント・エース」を実施した。韓国軍によると、同演習はこれまでで史上最大規模。
▲韓国海洋警察によると、韓国西部・仁川沖で12月3日午前、22人乗りの釣り船が給油船と衝突し転覆した。
▲朝鮮中央通信は12月3日、金正恩朝鮮労働党委員長が、新型大陸弾道ミサイル「火星15」発射実験で使った移動式発射台のタイヤを製造した慈江道の「鴨緑江タイヤ工場」を視察したと報道。視察の日時は不明。また同通信は6日、新たに建設された三池淵のじゃがいも粉生産工場を金委員長が現地指導したと報道した。慈江道と三池淵は、朝鮮北部の近隣にあたる。また9日付の労働新聞は1面で、金委員長が朝鮮北部の白頭山を訪れたと伝えた。白頭山は金委員長の祖父の金日成主席の抗日闘争の拠点で、父の金正日総書記が生まれた「革命の聖地」とされている。
▲東芝の英原子力発電事業子会社、ニュージェネレーション(ニュージェン)の買収を検討している韓国電力公社は6日、東芝からニュージェン株取得に関する優先交渉先に選ばれたと発表した。韓国電力公社は今後数カ月間、東芝と独占的に交渉が可能となる。
▲金正恩朝鮮労働党委員長は1月1日に新年の辞で、平昌五輪への代表団派遣を含め、必要な措置を取る用意があると表明した。一方で韓国の趙明均統一相は1月2日、南北高官協議を1月9日に行い、2月開幕される平昌冬季五輪に北朝鮮選手団が参加する可能性について話し合うことを提案した。
▲朝鮮民主主義人民共和国のメディアが12月27日までに報道した2017年の金正恩朝鮮労働党委員長の動静に関する報道は計102件。件数は、金正恩氏が最高指導者に就いて以降、最少となった。動静報道に占める軍関係の報道は、2015年、2016年はいずれも40%以下であったのに対し、2017年の割合は50件で49%であった。経済関係は19件で20%以下であった。
▲韓国の文在寅大統領は4日、元慰安婦や支援団体関係者らと懇談し、2015年12月28日の日韓外相会談で結ばれた日本軍の慰安婦問題を最終かつ不可逆的に解決するために行われた日本国と大韓民国による合意(日韓慰安婦合意)について「真実と正義の原則に外れる」として謝罪した。


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