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    かけはし2018年2月5日号

戦争国家と生活破壊許さない!
大軍拡・格差と貧困を加速



2018年度政府予算案を批判する

 一月二二日、第196通常国会が召集された。安倍首相の施政方針演説は、「アベノミクス」を軸とした「働き方改革」「生産性革命」に重点を置きながら、朝鮮半島の「核戦争危機」に対応した日米の共同作戦に本格的にのめりこもうとする姿勢を明確にするものになっている。二〇一八年予算案への批判は、安倍政権がもくろむ今年度中の改憲発議への闘いと一体だ。全力をあげて阻止しよう。(編集部)

米軍と一体化した実戦態勢へ

 安倍政権は、二〇一七年一二月二二日、二〇一七年度補正予算案と二〇一八年度予算案を閣議決定した。一般会計総額は九七兆
七一二八億円と六年続けて大規模な予算となった。
 補正予算の総額は一兆
六五四八億円だが、「その他喫緊の課題等への対応」の中に「国民生活の安全・安心の確保」と称して二三四五億円の軍事費(イージス・アショアの導入などミサイル防衛関連経費)を強引に前倒しで計上した。歳出抑制を演出するため、当初予算に盛り込めない事業を補正予算に組み入れたのである。
 一八年度予算案の軍事費は、前年度比六六〇億円増(一・三%増)の五兆一九一一億円で六年連続で増額した。陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」関連経費三五億円、航空自衛隊に搭載する長射程巡航ミサイル導入関連費約二二億円、弾道ミサイル防衛関連(補正も含めて)約一九八七億円などを計上した。連動して次期主力戦闘機F35を六機(七八五億円)、垂直離着陸輸送機オスプレイ四機(三九三億円)、潜水艦建造(六九七億円)、C―2輸送機二機(四三五億円)、滞空型無人機グローバルホーク(一四七億円)など次々と巨額な兵器を米軍需産業などから購入しようとしている。対中国シフト強化に向けて南西諸島への自衛隊の増強を進めているが沖縄県宮古島、石垣島などに配置する部隊の施設整備費に五五三億円を配分した。
 「米軍再編関係経費」も二一六一億円で過去最高だ。沖縄に関する特別行動委員会(SACO)関係経費も五一億円。米軍「思いやり予算」を一九六八億円と計上し、米日共同軍事実戦体制の強化に財政的にも踏み込んでいる。辺野古米軍新基地建設費も八一六億円と過去最高を計上し、工事を加速させようとしている。沖縄の辺野古新基地反対運動に真っ向から敵対する軍事予算である。
 軍事大国化の一環である軍学共同路線の強化に向けた「研究者版・経済的徴兵制」である「安全保障技術研究推進制度」に対して一〇一億円を計上。戦争に役に立つ大学・企業研究に多額の研究費を支出することを通した国産軍需産業の重層的な育成が目的だ。防衛装備庁は、採用大学研究機関に対して一件期間五年で最大二〇億円の助成を開始していることを明らかにしている。
 このように憲法違反の戦争法の下で、米軍と一体となってグローバル派兵の実戦レベルを上げていくために巨額な武器を購入しようとしている。とりわけ北朝鮮のミサイル・核兵器開発に対して戦争を煽り立てながら改憲攻撃を先行させ、これまでの憲法九条の「専守防衛」戦略を投げ捨て「敵基地攻撃能力の保有」に向けてなし崩し的にミサイル防衛体制の既成事実を積み上げようとしている。米軍と一体に向けた軍事予算を許さず、戦争のための無駄な軍事費を削減し民衆生活関連費への配分増額を行え。

資本のためのインフラ整備


 さらに軍事費をはじめ無駄に満ちた予算項目は、多数にわたるが、とりわけ不必要な予算と民衆生活に敵対する削減予算を取り上げ、安倍政権の予算案を通したねらいを批判していこう。
公共事業関係費も五兆九七八億円で六年連続の増額だ。大企業・ゼネコンのための「生産性革命」などと看板を掲げ、その実態は乱開発・環境破壊・人権侵害に満ちたプロジェクトを立ち上げている。
 東京外環などの物流ネットワーク関連費(二二八三
億円)と三大都市圏環状道路(東京・大阪・名古屋)に対しては財政融資資金(一・五兆円)を活用し、前倒しでバックアップする。環境破壊と住民立ち退きを前提にした暴力的なプロジェクトに高額予算を投入する必要はない。
 安全軽視・運航過密・空港公害を拡大する首都圏空港機能強化予算は、羽田空港(七一二億円)、成田空港(五二億円)、中部空港(一七億円)、関西空港(二九億円)など軒並に増額予算を計上した。いずれも二〇二〇年オリンピック・パラリンピック東京大会に便乗して需要や伸びを過剰に見積もり、離発着回数の増大計画を打ち出している。羽田空港は、二〇年までに空港処理能力の約四万回拡大とセットで都民生活に接近するルートを設定し、騒音、落下物の危険性の無視だ。成田空港も飛行制限時間緩和と「第三滑走路」計画を推進し、住民追い出しに奔走している。空港公害を拡大・促進する予算は大幅圧縮しかない。
 国際コンテナ戦略港湾は、京浜港(東京・横浜・川崎の三港)などの開発のために七六六億円計上した。ターミナル整備など大型化を進めていくことによってアジアハブ港競争に勝ち抜き、グローバル資本主義に対応していくための予算化として手厚い配分をした。大企業の儲けを優先した大型公共事業に偏向したこんな予算配分を認めることはできない。
 整備新幹線事業費に三四八〇億円を計上し、新幹線族議員・ゼネコン・地元土建業などを潤すために北海道、北陸、九州・長崎ルートの工事を進める。逆に地域公共交通ネットワークには二一〇億円を配分したが、あくまでも整備新幹線拡大を優先し、地域開発には欠かせないローカル交通網の充実化の要求に逆行するものだ。
原子力関連予算は、「原子力の安全技術の強化」に三五・六億円、高レベル放射性廃棄物の地層処分に関する技術開発委託費三七・六億円、「電源立地地域対策交付金」に八二二億円、「原子力発電施設等立地地域基盤整備支援事業」に五六億円など原発再稼動・推進路線の立場から自治体・地域買収も含めて立て続けに多額の予算を計上した。核燃料サイクル計画を維持したまま高速増殖炉原型炉「もんじゅ」の廃止措置に向けて一七九億円(前年同)を計上したが、その総額は見えず、新たな高速炉計画も策動している。安倍政権は、「エネルギー基本計画」で二〇〜三〇%は原発稼動で賄うと位置づけている。民衆の脱原発の声に敵対する原発関連予算はいらない。
 文部科学省の二〇年東京五輪・パラリンピックに向けたスポーツ関係予算は前年度比一・八%増の三四〇億円と過去最高の予算を計上。選手強化事業に四・九%増の九六億円を配分したように国威発揚とナショナリズムの強化、メダル獲得至上主義を煽りたてながらオリンピックマフィア・族議員・ゼネコン・スポーツ関連企業へのばら撒きが実態だ。国家主義スポーツの強化に向けた予算化に反対し、その使い道の真相を暴きだしながら「オリンピックはいらない!」の取り組みを広げていこう。

東京五輪と天皇「代替わり」


同時に東京五輪・パラリンピックキャンペーンに便乗して警察庁は、テロ対策として一二七億円を計上した。指揮機能強化、対サイバー対策と情報収集、公安政治警察・警察機動隊の大量配置を推進し、先行して対象の盗聴・尾行・調査を積み上げながら共謀罪の適用も射程にしながら対テロ治安弾圧体制の強化に着手している。オリンピック反対の取り組みは警察権力による人権侵害・地域戒厳体制を許さない闘いであることも確認しておこう。
天皇制強化に向けた「代替わり」関連費に三五・六
億円も計上した。その内訳は、装束・調度品などの儀式経費一六億五三〇〇万円、「即位礼正殿の儀」関連費五億円、天皇一家らの新旧邸改修費など一七億三〇〇〇万円、宮内庁職員増員のために増額予算した。しかも来年十一月に結婚して皇室を離れる秋篠宮家の長女への一時金として一億五千三百万円(皇室経済法に基づく上限額)を計上する始末だ。
安倍政権による「格差と貧困」政策によって民衆が苦闘しているにもかかわらず、この皇室関連予算の破格な配分はいったいなんなのか。身分差別と特権を拡大する民衆統合装置としての天皇制の犯罪性が経済的側面においても露骨な高額予算の計上によって示されている。天皇賛美の与野党一致国会を作り出し、憲法違反の「生前退位」法をでっち上げ、あげくのはてに高額な「代替わり」関連費と皇室費の支出だ。こんな身勝手な天皇制の暴挙を許してはならないし、天皇制予算は廃止しかない。反天皇制と反「代替わり」キャンペーンは、この不当な皇室関連予算のねらいも明らかにし社会的にクローズアップさせていかなければならない。

社会保障カット、生活破壊

 予算は社会保障関連など民衆生活関連にターゲットとして絞り、アリバイ的な手薄予算配分、圧縮と削減傾向を強め、憲法二五条の生存権の否定へと傾斜し、新自由主義政策を貫徹させた予算を作り上げた。民衆が生活していくための社会保障予算と公共サービスの充実化は当然である。
社会保障費は、一七年度当初費四九九七億円(一・五%)増の三二兆九七三二
億円となった。概算要求時の自然増分六三〇〇億円を一三四五億円も削減した。社会保障費削減派は、一斉に「社会保障費への切り込みが不十分だ」と削減要求を強めている。すでに安倍政権は、この六年間で一・六兆円も削減してきたが、しかも突出した軍事費を削減し、社会保障関連費に配分せよとは絶対に言わない。
医療費は医師らの技術料や人件費に充てる「本体部分」は〇・五五%プラスにしたが、「薬価部分」はマイナス一・四五%によって患者負担率を上げた。介護保険料は〇・五四%で前年度比一三四〇億円増だが抑制と認定率の低下をめざしている。障害福祉関連費も〇・四七%の微増で前年度比一一六二億円増でしかない。子ども・子育て支援新制度関連は一三三五億円増だが、民衆の要求に対してわずかな増額によってかわそうとしているのが本音だ。
厚生労働省は、生活保護費を一〇月から段階的に引き下げると発表し生活保護基準を改定し生活扶助費の削減へと踏み出し、前年度比一六六億円減だ。生活困窮者自立支援制度は前年度比三二億円増でしかない。
さらに復興庁予算案は一兆六三五億円で一七年度予算よりも約一八〇〇億円も圧縮した。被災地軽視の流れを追認した予算になっている。国の支援を定めた「子ども・被災者支援法」の実現の後景化だ。地震被災者・東電福島第一原発事故被災者に対して諸ニーズに応じた手厚い支援が求められている。

破たんする「アベノミクス」

 税収は五九兆八〇〇億円しかなく、不足する財源を三三兆六九〇〇億円の新規国債で補う借金財政を膨らませた。財務省は、新規国債発行額を当初予算ベースで八年連続で減額し「経済成長と財政再建の両立をアピールできる予算」などと「自慢」しているが、早々と二〇年度に基礎的財政収支(プライマリーバランス)を黒字化するとした財政再建目標を投げ出してしまった。すでに国(約九一五兆円)と地方(約一九二兆円)を合わせた長期債務の残高が、一一〇八兆円に到達し、また、一人当たりの金額に換算すると八七四万円の借金を抱えることになっている。この膨大な借金の現実を意識的に避けて、新たな無駄予算によって借金を膨らませているのが本当の姿なのである。
安倍政権のペテン性は、これだけではない。安倍晋三首相は経済財政諮問会議(一二・二一)で「景気拡大は『いざなぎ景気』を超えて戦後二番目の長さになった」といつものように数字のトリックを駆使した嘘レッテルを行った。
そもそも国内総生産(GDP)に対する長期債務残高の割合は一九六%となり最悪の水準になっている。「いざなぎ景気超え」というが、実質経済成長率は二・〇%(一三年)、〇・三%(一四年)、一・一%(一五年)、一・〇%(一六年)の低水準を推移している。しかも「いざなぎ景気」(一九六五年一一月〜七〇年七月)は消費主導型の景気拡大局面だったが、現在、民衆のほとんどが景気上昇を実感できない状態が続いている。
つまり実質賃金指数は前年同月比〇・一%増(厚生労働省/一月九日)、消費支出が前年同月に比べ一・七%増(総務省/一月二六日)の数値からも明らかなように民衆は消費支出を増額するほどの体力がなくなっているのだ。グローバル大企業・金融機関等によるマネーゲームなどによってカネ儲けで潤い、民衆に還元されない状態が続き、深刻な経済状態なのである。だからいつのまにか安倍首相は、「トリクルダウン」(大企業が儲ければ、民衆所得、消費も増えるという願望論)も言わなくなっている。つまり、「アベノミクス」の破たんが明白だ。
企業の内部留保は四〇六
兆二三四八億円(二〇一六年度)と過去最高を更新しているが、それを労働者賃金へ回さず、株主分配率に上げているのが資本の本質だ。求められているのは富の再分配強化と大企業と富裕層への税の応分の負担であり、とりわけ大企業優遇税制の撤廃と法人税の増額だ。予算案は、「格差と貧困」を温存し助長する経済構造を作り出しながら、民衆の生活関連予算を削減し、安倍政権の延命と大資本防衛のために作り上げたのである。予算案に反対し、民衆のための予算組み替えを行え!     (遠山裕樹)


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