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    かけはし2018年3月12日号

共謀罪は廃止するしかない


2.16

大垣警察市民監視違憲訴訟

警察の市民運動つぶし許すな

監視・介入・干渉をやめろ

 二月一六日、衆議院第二議員会館で「大垣警察市民監視違憲訴訟 共謀罪はやっぱり廃止! 警察による市民運動潰しの監視・介入・干渉を許さない」院内集会が大垣警察市民監視違憲訴訟の勝利をめざす「もの言う」自由を守る会の主催、共謀罪NO!実行委員会の協賛で行われた。

警察が企業を
「指導」して対策
共謀罪の先取りというべき大垣警察市民監視事件とは何か。
二〇〇五年頃から中部電力の子会社であるシーテック社が岐阜県大垣市に風力発電施設計画を進めていたが、風力発電による低周波被害などの不安を感じて地元市民が勉強会を開始し、それを大垣警察署警備課の公安政治警察が監視し、運動つぶしのためにシーテック社に情報提供と「指導」していた事件だ。
朝日新聞(名古屋本社版/二〇一四年七月二四日)は、シーテック社の内部文書を入手し、「岐阜県警が個人情報漏洩 風力発電反対派らの学歴・病歴」という見出しでスクープ報道した。議事録は、風力発電反対運動つぶしのために公安がシーテック社を「指導」しているやりとりが明記されていた。さらに勉強会を開いた地元住民二人と脱原発運動活動や平和運動をしていた大垣市民二人の「氏名」「学歴」「病歴」などの個人情報、地域の様々な運動の中心的役割を担っている法律事務所に関する情報をシーテック社に提供していた。
住民は、一六年二月四日、名古屋地裁に対して公安とシーテック社の意見交換記録「議事録」の証拠保全を申し立て四議事録(第一回/一三年八月七日)(第二回/一四年二月四日)(第三回/一四年五月二六日)(第四回/六月三〇日)を入手し、全容が明らかとなった。大垣警察署にシーテック社を呼びつけた公安は、「勉強会の主催者であるA氏やB氏が風力発電に拘わらず、自然に手を入れる行為自体に反対する人物であることを御存じか」などと環境破壊反対運動に対する露骨な敵対心を露わにし、わざわざ「今後、過激なメンバーが岐阜に応援に入ることが考えられる。身に危険を感じた場合は、すぐ一一〇番して下さい」と事件作り(仕事作り)のために「指導」するありさまだ。
住民は、その後、岐阜県個人情報保護条例に基づく本人開示請求、岐阜県警本部長や岐阜県公安委員会への抗議・要求書の提出、警察法第七九条(苦情の申出等)に基づく苦情申出、地方公務員法違反の刑事告発を行ったが、一四年一一月に「通常の警察業務の一環だ」と居直り回答を行ってきた。
同様に、参議院内閣委員会(二〇一五年)でこの事件が取りあげられたが、警察庁警備局長は、「公共の安全と秩序の維持の観点から関心を有し、必要に応じて関係事業者と意見交換を行っております。そういうことが通常行っている警察の業務の一環だということでございます」と答弁し、公安政治警察による日常的な住民監視は合法だと強調したのである。

公安の暴走を
止めるために
このような公安警察の人権侵害のやりたい放題に対して住民と弁護団は、一六年一二月、岐阜県を被告として国家賠償請求訴訟を名古屋地裁に提訴した。訴訟は、@公権力の行使の違法性Aプライバシー侵害B個人に関する情報を承諾なくみだりに収集・管理・提供されない自由(憲法一三条)の侵害B表現行為人格権(憲法二一条一項、一三条)の侵害C表現の自由(憲法二一条)の侵害などを争う。被告県は、ことごとく「認否しない」と反論している。
さらに住民は、県警に個人情報の開示請求をしたが、「存在の有無も答えない」とする非開示の不当決定に対して「警察庁及び岐阜県警の保有する原告四人の個人情報を抹消せよ」という個人情報抹消請求を追加提訴(一八年一月)した。
共謀罪制定以前から公安政治警察は、市民監視を日常的に行い、微罪弾圧も含めて罪名をこじつけて事件をデッチ上げ、不当逮捕・家宅捜索、長期拘留を行い市民運動を弾圧してきた。大垣事件はその氷山の一角であるが、公安が運動潰しのための「意見交換」を行ってきた証拠が「議事録」として明らかになったことは、公安の暴走を止め、共謀罪を使った新たな弾圧を許さない重要な反撃戦だ。大垣警察市民監視意見訴訟を支援・連帯していこう。

人間としての
尊厳を貫こう
院内集会は、海渡雄一弁護士(共謀罪NO!実行委員会)のあいさつから始まり、「戦前の戦争体制の要は、治安維持法、軍機保護法、国防保安法だった。現在、軍機保護法、国防保安法に匹敵するのが特定秘密保護法であり、治安維持法の団体規制として復活したのが共謀罪だ。特高警察は、戦前の三法にもとづいて動いていた。同じように公安警察も同様の動きをしており、クローズアップしていかなければならない。その最前線として闘われているのが大垣事件だ。秘密保護法、共謀罪廃止の闘いは公安警察の監視であり、暴走を止めていかなければならない」と発言。
山尾志桜里衆院議員(立憲民主党)は、「先の国会の法務委員会で上川陽子法相は、『共謀罪で捜査している事件はゼロである』と答弁した。しかし、大垣事件のように公共の安全と秩序の維持のために通常業務として行っているはずだ。警察が共謀罪で捜査をしたら徹底的にチェックし、みんなで戦闘体制を維持していこう」と訴えた。
続いて共産党の藤野保史、穀田恵二両衆院議員、福島瑞穂参院議員(社民党)も発言し、支援連帯を表明した。
弁護団長の山田秀樹弁護士は、違憲訴訟の概要を報告し、「新聞の見出しは『個人情報漏洩』となっているが、誰かが間違って情報を流した事件ではない。警察が積極的に運動つぶしの目的に従って情報を事業者に提供している。警察の行為が明確に違憲であると裁判所に言わせなければならない」と強調している。
清水勉弁護士は、個人情報抹消請求について報告し、「公安警察の情報収集の法的根拠はそもそもない。『公共の安全と秩序の維持』のためと称してやりたい放題だ。公安は情報交換によっていろんなデータを蓄積している。個人情報は抹消廃棄せよと規制しなければならない」と発言した。
原告の松島勢至さん、船田伸子さん、近藤ゆり子さんは、警察の住民監視の不当性を糾弾し、「生きづらい社会はいやだ。憲法によって人間の尊厳を実現していきたい。訴訟に勝利しよう」と訴えた。  (Y)

2.23

狭山事件の再審求める東京集会

検察は事実調べを行え

証拠隠しを止めろ


 二月二三日夜、東京・台東区の台東区民会館九階大ホールで、「狭山事件の再審を求める東京集会」(主催・実行委)が開かれ、約二八〇人が集まった。主催は同実行委。
 一九六三年五月一日。埼玉県狭山市で誘拐された女子高生が殺され、農道に埋められるという痛ましい事件が発生した。直前に東京で起きた「吉展ちゃん事件」に続き、またしても身代金を取りに来た犯人を逃すという大失態を演じた捜査陣は、世論の厳しい批判をかわすために、被差別部落への見込み捜査を開始。事件当日のアリバイの曖昧だった石川一雄さんを逮捕した。
 あれから五五年。東京高裁への第三次再審請求申立てから一一年九カ月。無実の罪で人生の大半を獄中で過ごした石川さんは、この日も妻の佐智子さんとともに、満場の支援者らに元気な姿を見せた。会場は浅草寺の東側にあり、三年前にリニューアルされた。

「事実」のねつ造
は余りにも明白
主催者あいさつで青木正男実行委議長は、政府が画策する「働き方改革」を厳しく批判。「使用者側の都合による改革に過ぎない」と断言し、「戦争へ向かう国づくりを進める安倍政権に強い危機感を感じている。労働実態の偽データ公表と同じく、狭山事件で石川さんを犯人とした証拠がねつ造されたことは明らかだ」と説いた。そして「差別と格差を許さない社会を実現し、一日も早く石川さんの無罪を勝ち取るため、実行委も全力でがんばる」と力を込めた。
松島幸洋実行委事務局次長は、集会基調案を提起した。四三年前に東京高裁で下された「寺尾判決」(確定判決)のでたらめさを、再審請求の経過とともに丹念に暴き出した中身の濃い文章だ。
狭山弁護団の河村健夫弁護士が演壇に立った。演題は「私見・私たちが真っ先に求める事実調べベスト3」。冒頭で河村さんは、「冤罪の被害者は、社会的弱者や孤立者に集中している」と指摘。「足利事件の菅谷利和さんには友達がいなかった。布川事件の桜井昌司さん、杉山卓男さんは共に不良と呼ばれていた。警察は、そんな人物だから違法で強引な捜査も許されると思い込んでいる」と述べた。

あらゆる差別
をなくす原点
ベスト3の一つ目は、万年筆のインキを鑑定した「下山鑑定」(2016年)である。被害者が普段使っていたインキと、石川さん宅から「発見」された万年筆のインキが別物であることを科学的に証明した。
この「ペーパークロマトグラフィー検査」では、二者が同一のインキか、異なる二種の混合かも判別できる。被害者が愛用していた万年筆には、「ジェットブルー」(ライトブルー)という特殊なインキが入っていたが、石川さん宅から「発見」された万年筆のインキは「ブルーブラック」だった。弁護団の再審請求に対し、裁判所は「別インキを補充する可能性がある」などと強弁して却下し続けている。そもそもこの発見万年筆自体が、警察によって持ち込まれた捏造品だ。警察は被害者の使ったインキまで調べずに、低い鴨居の上に見えるように置いたのである。
二つ目は、脅迫状の筆跡と石川さんの筆跡を調べた二〇一八年提出の新証拠「福江報告書」。コンピューターを駆使した最新の科学的「筆者異同識別」によって、脅迫状の筆跡は九九・九%の確率で石川さんのものではないことを明らかにした。具体的には、石川さんが逮捕直後に書かされた「上申書」と真犯人の脅迫状から、それぞれ特定の文字を取り出し筆跡のズレの大きさを比較するという検査である。
三つ目は、取り調べの様子を録音したテープである。この証拠開示によって、有罪判決の根拠である警察官証言「スラスラ自白した」の信用性が崩れた。開示されたのは自白した後の録音だが、犯行の経過についての知識を石川さんはまったく持っていないために、取調官に何度も質問している。
石川さんが発言に立った。「今年も多くの皆さんに来ていただきありがとうございます。冤罪が長引いていいはずがない。昨年末に交代した近藤裁判長は評判がいいようで、期待している」。と切り出した。
「すぐ疲れるという妻に、昨日初めて布団を敷いてやった。私は毎夜九千歩も歩いている。鍛えているから疲れない。」。「無罪を勝ち取ったら風呂いっぱいにビールを張って、そこに飛び込みたい」。石川さんの言葉に、会場は温かい笑いに包まれた。
佐智子さんは、部落解放同盟東京都連が高裁前行動に尽力してくれることに感謝し、「五五年目を迎えた狭山は、今年こそ大きく動く。石川七九歳。最後の闘いです」と訴えた。
集会には、実行委参加団体のほか、地域で活動する個人やグループも多数訪れた。東京清掃労組常任中央執行委員の西村好勝さんは、「人権交流会を通じて、各地で人権活動を推進している。狭山はあらゆる差別をなくす運動の原点だ。共にがんばりましょう」とアピール。
冤罪を題材にドキュメンタリー作品を作ってきた映画監督の金聖雄さんは、新作「獄友」を紹介した。無実の罪で長年にわたり自由を奪われてきた被害者たちの友情を描いた作品だ。三月二四日から公開される。
集会が終わると必ず会場出口に立ち、参加者一人ひとりに固い握手を求める石川さん。そんな彼の人柄に触れるたびに私は思う。もしこの人がまっとうな人生を送っていたら。すなわち冤罪に巻き込まれずに普通に働き、愛すべき家族に囲まれてのんびりと老後を迎えていたら。その長い年月の中で、どれほど多くの人が、誠実で義理堅く、お人好しで優しい石川さんに癒され、勇気づけられ、希望を与えられていただろうか、と。「不運だったけど、不幸ではない」――「獄友」たちの言葉が、説得力を持って響いてくる。
石川さんに、残された時間は長くない。「今年こそ狭山が動く」と佐智子さんは自らを奮い立たせている。地区の小規模な集会にも、本会場や都心で開かれる大きな集会にも、多くの人が駆けつけ、再審開始・完全無罪を勝ち取る決意を共有してほしいと願う。(佐藤隆)


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