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    かけはし2018年3月19日号

新たな核時代突入許すな


米の「核態勢見直し」と日本の「軍拡」

米国と一体化した戦争への道ノー
核の傘脱し大惨事の根元絶とう

米ロ相互不信から小型核開発へ


  トランプ政権が二月二日に公表した米国の核戦略の指針である「核態勢見直し」(NPR)の特徴は、新型の小型核兵器(潜水艦発射弾道ミサイルに搭載)と核巡航ミサイル(海上艦船配備型)の開発と導入を明確に打ち出したことである。また重大な戦略的非核攻撃も含めて、「米国と同盟国の死活的国益を守る極限の状況下において」は核の使用を検討するということも明記した。こうした米国の核戦略転換の背景にあるのは、小型核戦力の分野で米国がロシアから大きく後れをとっているということがある。
 二〇一〇年に米露で合意した新戦略兵器削減条約(新START)では、一八年二月までに@米露両国が配備する戦略核兵器をそれぞれ一五五〇発以下とする。AICBM、戦略原潜、戦略爆撃機の配備済み総数を七〇〇以下とするとして、現在の時点で両国ともにそれを達成している。ちなみに米国が現在配備している戦略核は一三九三発で、運送手段は六六〇となっている。この新STARTは二一年で失効するが、両国が合意すれば五年延期することができる。
 一方、戦術核の保有では米露に大きな差ができている。米国は戦闘爆撃機に搭載する約二〇〇発を欧州・トルコに配備するなど現在七六〇発を保有している。それに対してロシアは約四〇〇〇発保有していると見られている。この戦術核の分野でロシアと同等の軍事能力を持つことで、ロシアを抑止しようとするのが米国新NPRの最大の狙いだと言える。
 米ロ両国は一九八七年に、射程が五〇〇〜五五〇〇キロの核弾頭とミサイルを対象とした中距離核戦力(INF)全廃条約を締結していた。しかし、ロシアは〇三年のイラク戦争における米国の強力な非核通常戦力を目のあたりにして、同年一〇月に「戦略抑止力の限定的使用を検討する」として、「小型核先制使用」のための開発を本格化させるのであった。そして一四年のウクライナ危機で米露関係は急激に悪化した。
 こうしたなかでロシアは一六年に、ポーランドの北側に位置しバルト海に面している飛び地の自国領であるカリーニングラード州に、核兵器搭載可能な新型戦術弾道ミサイル「イスカンデルM」を配備した。また米国の指摘によると、今年の二月にロシアが開発した核巡航ミサイル「カリブル」が実戦配備されたとされている。
 米国の側もまた配備と計画を進めている。ロシアの指摘によると、一六年にルーマニアに配備された弾道ミサイル防衛(BMD)施設が「攻撃用に変更可能」であり、日本が配備を計画しているミサイル防衛(MD)システムの「イージス・アショア」は、「迎撃用ミサイルのSM3だけでなく巡航ミサイルのトマホークも搭載できる」。さらにイージス・アショアと韓国で配備が進んでいるTHAADミサイルそしてNATOのMDが一体となって、ロシアと中国を包囲する形で配備されている。
 INF全廃条約は現在、完全に空文化してしまった。また世界の核弾頭の九割以上を保有する米露は、一〇年に新STARTに合意してから八年近く新たな核軍縮交渉を行っていない。こうした現在の状況に対して米国の専門家や前政府長官からは危機感の声が上がっている。「冷戦崩壊後、米露関係は最悪の状況にある。双方が解決策を見いだせないまま緊張が高まっている」。「世界は新たな核時代に突入してしまった。大惨事の触媒になりかねない」と。
 核兵器のピークは冷戦時代の一九八六年で、核弾頭数は推定で七万三〇〇〇発だった。それが一七年までに一万四九〇〇発まで減少してきた。しかしそれでも人類を滅亡させるのに十分な破壊力を有している。小型核兵器の「定義」が確定されているわけではないが、米国はTNT火薬に換算して一キロトン以下(広島型が一五キロトン)を想定していると見られている。しかし限定的で局所的な小型核兵器の使用だとしても確実に「報復」攻撃されるだろうし、それがエスカレートして全面的な核戦争に発展する可能性を否定することはできない。米露両核大国による小型核兵器の開発・製造・配備を許してはならない。

「北朝鮮の脅威」口実に何でも


 防衛省は昨年の一二月八日に、航空自衛隊の戦闘機に長射程の巡航ミサイルを導入することを決定した。導入されようとしているのは、米国製の射程九〇〇キロの「JASSM(ジャズム)―ER」と「LRASM(ロラズム)」をF15に搭載し、ノルウェーなどが開発した射程五〇〇キロの「JSM」をステルス戦闘機F35に搭載することを想定している。
 現在、空自に配備されているミサイルは対艦用の「ASM2」で、その射程は一七〇キロである。射程が九〇〇キロ・五〇〇キロとなると、地上攻撃可能な巡航ミサイルの自衛隊機への初配備ということになる。この導入に関して防衛省幹部らは「米軍と連携すれば長射程ミサイルを使った攻撃は可能」「敵基地攻撃能力が視野にあるのは明らか」と指摘している。また小野寺防衛相は去年の三月に「敵基地攻撃能力の保有」を政府に求めた自民党検討チームの中心メンバーだった。また過去の米政権は、日本が攻撃的兵器を保有するということについて慎重だったのだが、トランプ政権によってこれは転換された。
 朝鮮が保有する対艦ミサイルの射程は一〇〇〜二〇〇キロ程度なのだが「北朝鮮の脅威」という金看板を持ち出せば「何でもやり通せる」という状況になっている。しかし巡航ミサイルの保有だけでは敵基地攻撃は難しい。確実に攻撃するためには、標的の位置を捉えるための偵察衛星や、ミサイルを迎撃しようとする相手側のレーダー網を無力化する電子戦能力なども必要である。日本の現状は偵察衛星六基で、電子戦能力は保有していない。
 また新型の空対艦ミサイル「ASM3」の開発が完了していて、これを来年から量産して南西諸島に展開しているF2に配備されようとしている。「ASM3」の射程は既存の「ASM2」と同程度なのだが、マッハ3以上で飛ぶために迎撃がより困難になる。
 日本政府は昨年の一二月一九日に、陸上配備型の弾道ミサイル防衛(BMD)システム「イージス・アショア」二基の導入を閣議決定した。運用主体は陸上自衛隊で、二三年までに配備しようとしている。経費は二〇〇〇億円以上が必要だとされているが、「イージス・アショア」用の最新式レーダーも導入すれば、その費用は大幅に跳ね上がることになる。「イージス・アショア」はハワイにある実験用施設を除くと、現在一六年五月にルーマニアに導入された一基だけが運用されている。今年中にはポーランドに二基目が配備される予定だ。
 日本では配備の有力候補地としてあげられているのが、秋田市の新屋演習場と山口県萩市のむつみ演習場だ。この二カ所で日本全土をほぼカバーできるといわれている。「イージス・アショア」に搭載する迎撃ミサイルは現在、海上自衛隊がイージス艦に搭載している「SM3」の改良型「SM3ブロック2A」である。これは日米が共同開発したもので、速度は五割増しで射程は二倍ほどになる。しかしハワイ沖で実施されたその迎撃実験は、三回中二回連続して失敗している。
 現在の日本の弾道ミサイル防衛(BMD)体制はどのように作動するのかというと@宇宙空間(約三万六〇〇〇キロ上空)で米国の早期警戒衛星がミサイルを探知A自衛隊や米軍のレーダーが発射方向・弾道などを分析Bその情報を受けたイージス艦とPAC3の部隊が迎撃態勢に入るCイージス艦搭載の「SM3」が大気圏外の高度五〇〇キロで迎撃するD撃ちもらしたものを空自が運用する地上配備型迎撃ミサイル「PAC3」が高度一〇数キロで迎撃するというものである。

日米軍事同盟の攻撃的再編


 「イージス・アショア」配備は、これまでのイージス艦の役割を代替するのが主目的であり、これまで日本海で弾道ミサイルに対応してきたイージス艦(現有は四隻)を南西諸島などに展開することが可能になる。日本政府は二〇年までにイージス艦を八隻体制にして、PAC3の部隊も現在の一四カ所一六隊から二四隊に増やし、迎撃ミサイルも射程が二倍になる改良型に変える計画だ。また弾道ミサイルを探知するための高性能レーダー「FPS5」が青森の大湊・佐渡・鹿児島の下甑(しもこしき)島・沖縄の与座岳の四カ所に配備されてきた。政府はさらに、弾道ミサイルと航空機の両方に対応可能な警戒管制レーダー「FPS7」の配備を予定している。
 米軍は原子力空母とイージス艦などからなる「空母打撃群」を中心に部隊運用してきた。それに加えて新たに「強化型遠征打撃群」を編成し、それを極東に最初に配備することを決定した。この新たな編成は佐世保基地の強襲揚陸艦「ワスプ」を中心に、複数のイージス艦と組ませるというものだ。「ワスプ」には岩国基地の垂直離着陸可能なF35Bを搭載することができる。
 こうした米軍の計画と並行して出されているのが、海自のヘリ空母「いずも」(全長二四八m・二隻保有)を空母に改修するという案だ。F35Bへの対応が第一に考えられている。また昨年の一二月にロンドンで行われた日英の外務・防衛担当閣僚協議(二プラス二)では、今年中に初の日英共同軍事訓練を実施することが合意された。英国の新鋭空母「クイーン・エリザベス」もF35Bを運用する予定だ。いずれにせよ米日の軍事力は、南西諸島へと展開されようとしている。
 トランプ政権と安倍政権による日米軍事同盟の再編と強化は、「北朝鮮の脅威」を口実としながらロシアと中国に対して、より攻撃的な内容を持って推し進められてきているということができる。それは沖縄を中心軸に据えて、南西諸島に展開することと、佐世保と岩国を後方の出撃拠点として強化していこうとするものである。
 九条改憲反対の闘いは、米国の核の傘の下で安住しながら米国に追従して、よりリアルな戦争へと突き進むことに反対する闘いである。そして辺野古新基地建設に反対する沖縄での闘いは、日米の攻撃的な軍事同盟再編・強化と対決する中心軸になっている。全国の反基地・反戦平和運動の再建・強化を推し進めながら、沖縄につながる強力なネットワークを作り上げよう。       (高松竜二)

―米朝会談実現か―

戦争煽るトランプと安倍許すな
東アジア民衆の声つなごう


朝鮮半島の危機
に転換の可能性
 韓国のピョンチャンで開催された冬季五輪を機に、核戦争の現実的危険性にまで踏み込んだ朝鮮半島の危機は大きく転換する可能性が生み出されている。
 三月五日、ピョンヤンで朝鮮の最高指導者キム・ジョンウン朝鮮労働党委員長と韓国大統領府のチョン・ウィヨン国家安保室長が会談した。三月六日に明らかにされた同合意の内容は次のようなものだ。
 @四月末に南北軍事境界線上にある板門店の韓国側施設「平和の家」で南北首脳会談を行う。
 A緊張緩和のために南北首脳間の首脳間のホットラインを設置する。
 B朝鮮への軍事的脅威が解消され、体制が保証されれば核を保有する理由はない。
 C朝鮮は非核化問題協議と関係正常化ため、米国と対話する用意がある。
 D対話が続く間、朝鮮は追加の核実験や弾道ミサイル発射を行わない。
 満面の笑みを浮かべて、韓国側代表に話しかけるキム・ジョンウンの映像は、これまでとは一転した印象を与えるものだった。

非核化と緊張
緩和を今こそ
それに続いて、チョン・ウィヨン韓国大統領府国家安保室長は米国に飛び、三月八日、ワシントンでトランプ米大統領に対して、キム・ジョンウン朝鮮労働党委員長との会談について報告し、キム・ジョンウン委員長がトランプ米大統領との会談を要請したことを報告した。
トランプはこの要請を受諾し「五月までに会談する」と応じたという。チョン・ウィヨン国家保安室長によれば、キム・ジョンウン委員長は「非核化」の意向表明を行い、今後は核実験と弾道ミサイル発射を「自制する」と約束した、という。
われわれは、この大きな変化の兆しを「楽観視」することはできないが、少なくともこの局面でトランプと安倍政権が推し進めてきた朝鮮半島での「戦争」の脅しをやめさせ、朝鮮半島・東アジアの平和・人権・民主主義のための運動を、さらにねばり強く発展させる必要がある。
圧倒的に多くの朝鮮半島の人びとは、この「非核化」と「緊張緩和」の流れを支持している。
日本の労働者・民衆は、今こそトランプ・安倍の戦争政策、自衛隊軍拡と改憲に反対し、平和・人権・民主主義の東アジアを作り出す闘いに合流しよう!
(3月9日 K)
 
 


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