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    かけはし2018年3月19日号

希望的観測を政策にすることはできない


シリア

ジルベール・アシュカルに聞く

数々の絡みついた政治的矛盾が
戦争終結への道をはばんでいる

 ジルベール・アシュカルは、シリア紛争は終わるにはほど遠く、バシャール―アルアサドが新たな政治的枠組みを確立するためには、米国とロシア間で一定の一致が必要になる、と断言する。アシュカルは以下のインタビューで、将来のシリアにおけるイランの役割が賭けられた中心的問題の一つと語り、PYDに対するトルコの戦争、近年におけるサウジアラビアの地域的役割、シリアの国際和平会合、イランにおける近頃のデモ、そして中東に対する米国の新たな外交政策を論じている。

戦争は少しも終ってはいない

――アサドとプーチンは近頃、「戦争に勝利した」と言明した。シリアの戦争は終わっているのか? バシャール―アルアサドには何が起きるのだろうか?

 そうした宣言には希望的観測が数多くある。戦闘は今もイドリブ地域と東グータで猛威をふるっている。とはいえ、イランとロシアが後押しする政権が今や打ち固められ、その前にもはや存続に関わる脅威はない、ということは本当だ。この体制はかつて二度、大敗の瀬戸際にあった。そしてその度に外国の介入によって、最初はイランにより、次にはロシアにより救出された。結果として体制は今や、軍事的に優位を確保している。しかし私が「体制」という場合、実際にはロシア―イラン―アサド枢軸のことを言っている。アサド政権単独では、上に見たことのどれであれ完遂できなかったと思われるからだ。それどころかこの政権は、はるか以前に打ち負かされていただろう。
他にも、北東部にシリア民主軍(SDF)が支配し体制の支配の外にある極めて大きな領域がある。民主統一党(PYD)が率いるシリア・クルド人民防衛部隊(YPG)はSDFの背骨だ。彼らは、ユーフラテス川東岸からトルコとイラクの国境にいたる全領域を含むシリアの広大な部分――そしてこれは、現地で米軍部隊が現実に関与しているところだ――を支配している。さらに二つの領域がYPGとその連携相手の支配下にある。つまり、ユーフラテス川西岸のマンビジュ、および現在トルコの攻撃が続いているアフリンだ。

対クルド関係めぐる鋭い矛盾


――特にYPGの問題を取り上げたい。トルコは、YPGが支配するアフリン地域への攻撃を始めた。これは紛争の新たなエスカレーションを意味するのだろうか?

 ここに大きな矛盾がある。西側の諸大国は多年の間、クルディスタン労働者党(PKK)にテロリスト組織のレッテルを貼ることで、NATOの中心メンバーである彼らのトルコという盟友にしたがい続けてきた。トルコ軍は、NATO諸国の支持に基づいて何年かにわたって、トルコ内のクルド人に対しいくつかの攻撃を仕掛けてきた。
しかしながら二〇一四年に米国がイラクとシリア両国でISISと戦闘すると決定した時、米国は米軍部隊を現場で直接関わらせることを望まず、代わりに当地の部隊に空軍の支援と物的支援を供与した。こうして米国は、軍事的見通しから見た時、シリア国内のこの戦闘でのあり得る最良の盟友はクルド諸部隊だろう、と見出したのだ。ワシントンは、ほとんどが今SDF支配下にある地域に基盤をもつシリアアラブ人の編入を一体として、SDFの創出を励ました。その結果として、米国がマイノリティのクルド人の側に立って民族的戦闘に巻き込まれているようには見えないようにするためだ。PYD/YPGがPKKに緊密に結びついていることを誰もが知っている以上、この連合は政治的矛盾を生み出した。
ISISと戦闘する点で、米国は、トルコとワシントンを含むそのNATOの同盟諸国により公式に「テロリスト」とレッテルを貼られた、その政治運動に結びついた勢力に頼った。驚くことではないが、これは、その公共の敵ナンバーワンとの米国の協力を見て憤激を覚えたトルコ国家を大いにいらつかせた。

エルドアンが事態を一層複雑に


この矛盾は、エルドアンの政党である公正発展党(AKP)が議会の多数を失った二〇一五年に、彼が急角度の民族主義的移行に踏み込んだ事実によって、もっと鋭くさえされた。これは、クルドの運動が中心的役割を果たした左翼の連合によって獲得された票の増大を理由としていたが、そこにはまた、もっとも重要なことだが極右トルコ民族主義に票を奪われたという理由もあったのだ。
これに直面したエルドアンは、クルド運動との間で和平を求めた数年後に、トルコ民族主義の扇動に依拠しつつ、クルドに対する戦争を再開した。彼の主張にあるイスラム保守主義の立場に変わりはなかった。しかしトルコ民族主義の方向で新たな移行が起き、クルド人に対する猛攻を新たなものにした。エルドアンは後に二回目の選挙を組織し、彼の党はそこで議会多数派を取り戻した。AKPは現在主な極右トルコ民族主義政党と連携している。
基本的に、エルドアンのこの立場が一層彼を米国と一致しないコースに置いた。オバマ政権との諸々の緊張が高まった。エルドアンは、一時トランプ政権に賭けた――ドナルド・トランプはシリアのクルド諸勢力への支援を止めると約束したのだ――。しかしながらペンタゴンは、彼と対立した。クルド諸勢力は、彼らがすばらしい戦士であることをこれまでに証明し、またISISを打ち負かす上で助けになってきたからだ。
ペンタゴンは、SDFをシリア内に今日彼らが確保している主な切り札であると見なしている。彼らは、彼らがもしSDFとの結びつきを切れば、アサド政権とイランが率いる諸勢力が不可避的にユーフラテス川東岸までの広大な戦略的領域を回復するだろう、と分かっている。この地域におけるイランの膨張を抑え込もうと米国が決意している以上、ペンタゴンは、シリア―クルド諸勢力とSDFに継続した支援を与える以外の選択肢はない、と見ている。ここにこそ摩擦がある。
エルドアンは現在シリア北西部のアフリンというクルド人住民が多数の地域を攻撃中だ。この地域は、ISISとの戦闘では何の役割も演じていなかった。こうして米国にとって懸念はまったくなかった。そこに米軍部隊は皆無だ。しかしエルドアンはマンビジュ――SDFが米軍地上部隊の直接支援を受けている――に攻撃の矛先を向けると脅した。ロシアはアフリン地域へのトルコの介入にゴーサインを出し、そこから自身の部隊を引き上げた。その目的は、そのことでトルコ―米国間の仲違いを悪化させることだ。
この全体状況はさらにもっと複雑化しつつある。これこそ、この地域の問題にわれわれが再びつながることのできるところだ。つまり、シリアでの戦争は終わるどころではない、ということだ。ブッシュがイラク占領直後に極めて不注意にかつ愚かしく発表したような、またプーチンがシリアに関し二度宣言したような、あらゆる「使命は完遂された」といった言明は、単に希望的観測にすぎない。シリアでは何ごとも解決は見ていないのだ。アサド政権は、ロシアの支援をもってしても、この国を統御する能力をもっていない。それはイランを必要としている。それでもシリアでのイランの存在は、米国とイスラエルにとっては受け容れ不可能だ。

――トルコがクルド諸勢力を敗北させるならば、彼らはマンビジュ占領にまで進むつもりでいるのだろうか?

 この戦闘は実のところ割るには極めて堅い木の実だ。今起きている最中のことは、完全に感情の吐露だ。トルコ軍がたとえアフリンを何とか占領できるとして、彼らが永続的な攻撃下に置かれると思われる以上、彼らがそこに長期にとどまることはまったく困難だろう。その上彼らは、イランやロシアの軍部隊とは異なり、公式政権による招きという口実もなしに、外国の領地での戦争を行うことになるだろう。
エルドアンは今火遊びをやっている。彼はこの作戦で大きなリスクを冒すことになった。彼は彼自身の党内にすら生まれた不満に直面し、彼の権力を固めるためにこの民族主義的攻撃を利用している最中だ。しかし軍事的停滞は、彼に大きな負担をかける可能性もあるのだ。

イランの扱いも今後大きな問題

――イランは、シリアをどのような環境の下に残すだろうか?

 イランはシリアから出ることを強いられるだろう。これは、国連安保理決議の形態での、ロシア―米国合意が生まれる場合に起きる可能性があるだろう。それは、ジュネーブで達すると思われる一つの政治的合意を基礎に、二〇一一年以後シリアに入った全外国人部隊(この年のはるか前からすでにシリアにいたロシア人は除外される)はこの国を出なければならない、と明記する決議だ。
特にシリア政権がこの取引の一部となる場合、イランがこれにノーと言うことは難しいだろう。アサドが選択を迫られる場合、彼がモスクワ以上にテヘランの側に立つことはないと思われる。モスクワは政権の地上部隊に依拠している。他方イランは現地の占領を続けている。テヘランはシリア政権に、モスクワが認めると同じ程度の自律性の余地を認めないだろう。
それに加えてイランの体制は、シリアの体制とはイデオロギー的にまったく異なっている。シリアの体制は多くから、現場ではそれがイラン率いるイスラム原理主義諸勢力から支えられていてさえ、イスラム原理主義に対する砦として描かれてきたのだ。それもまた、この情勢にはらまれた複雑さの一部だ。

――昨年一二月二八日以後、イランではいくつかの重要なデモが起きた。それらは、イランのシリアに対する介入にどのような影響を及ぼす可能性もっていたのだろうか?

 運動が維持され、拡張を続けていたのであればそれは、体制がシリアへのその介入を再考するよう強要する情勢をつくり出したかもしれない。実際介入は、デモに立ち上がった人びとにより厳しく非難された。
しかし運動は静まり鎮圧され、体制は統制を取り戻している。しかしながらわれわれは、体制の二つの翼の間にある緊張の高まりを見ている。ロウハニ大統領が代表する改良主義者は、革命防衛隊(パスダラン)強硬派部分を圧縮しようと挑み続け、後者とその対外介入はイラン経済に重荷になっている、と力説している。
社会的混乱が再開するならばものごとは変わるかもしれない。しかし今のところ体制は完全に事態を統制している。その上シリアは、核合意を取り消すと脅しているトランプ政権とテヘランの衝突において、重要な切り札だ。トランプのそのような動きは、強硬派を知らず知らずに有利にするような行動となるものであり、結果として、米国の圧力に対する対抗運動としてイランの拡張の継続を励ますものになるだろう。

クルドではEUの独自性はない

――あなたの考えでは、EUは、クルド人への攻撃に関しトルコを批判する点で、より大きな役割を果たすべきだろうか?

 EUは、政治的課題や軍事的課題に関して、米国から自立して世界的に行動することができずにきた。それは今まで、もっぱら米国の助手として振る舞ってきた。これは、トランプ政権を前にするEUにとって一つの問題となっている。
欧州の主流とこれほどまで政治的に異なり、かつ欧州の極右に文字通り近しい米大統領が生まれたのははじめてのことだ。ブッシュ政権は、利害の差違を起源としてイラク侵攻反対を明らかにしたフランスやドイツのような、いくつかのEU政権との間で問題を抱えた。しかしたとえば英国のトニー・ブレア政権は、ブッシュの側に立って完全に関与した。
パレスチナ問題に関してはこれまでに、異なったEUの見解に関しある種の結晶化ができてきた。それこそが、パレスチナ解放機構(PLO)代表のマムード・アッバスが今、パレスチナ国家に認知を得るためにEUを獲得しようと試みている理由だ。
イランに関してもまた、EU諸国とトランプ政権との間には公然とした違いがある。EU諸政権は、イランとの核取引に導いたオバマの政策に完全に満足していた。しかしその取引をトランプは、米国が確定したものとしてはこれまでで最悪の合意だと考えている。彼がもしこの核合意を取り消すようなことがあれば、これは米―EU関係に公然とした危機をつくり出すだろう。こうして当面パレスチナとイランが、米、EU間に鋭い対照があり、議論を呼ぶ二つの問題だ。
とはいえシリア問題は、EU諸国が米国の見解に反対の見解をもっている問題ではない。EUは今日まで、いかなる自立した立場も明らかにしたことがない。

シリア再建の課題はまだ問題外

――紛争は終わっていないと考える場合、あなたは、アサドが訴えるような再建の可能性が何かあると考えるか?

 それはあらためて希望的観測だ。ロシア自身がいくつかの機会に、シリアの再建に資金を出すようEUに訴えてきた。ロシアはそれによって一つの地歩をこれまで確保し、シリアの再建が今後の課題となった場合にも、ロシアがその中で鍵を握る役割を演じると思われるがゆえに、EU諸政権には敏感となる問題が多くあるのだ。
モスクワは、契約で大きな分け前をポケットに入れるロシア企業と共にシリア再建に資金を出すところとしては、EUの方を好むと思われる。しかしこれは、米国のゴーサインなしにはEU諸政府が資金を出すつもりがないことを理由に起きないだろう。そしてそのゴーサインは、この情勢にイランが乗ずることがない、と米国が納得させられない限り与えられないだろう。現情勢下では、イランもまた市場の大きな部分を必然的に確保すると思われるのだ。
こうしたことを考えれば、この政治的パズル全体が解けない限り、再建という問題が本当に議題に上ることはないだろう。
ロシアは今、シリアのための戦後政治枠組みを設定しようと試みている。彼らはそれを、トランプの大統領就任少し前の二〇一六年終わりにやり始めた。彼らは、彼がロシアとの新しい関係という彼の約束を果たすことを期待していた。しかし、ワシントンのエリート層が強力な反ロの立場で反応しているがゆえに、当面これは起きそうにない。いずれにしろトランプは、ロシアがシリアでイランと協力することを止めること、およびその諸勢力をその国から押し出すことに合意しない限り、ロシアとのどのような取引にも乗り出さないだろう。
トランプにとっての理想的なシナリオは、彼らがイランを押し出すという条件の下で、シリアの世話をロシア人に任せるという、一定の取引にプーチンとの間で達するというものだと思われる。米国はその交換としてロシアに対する制裁を解き、欧州でのいくつかの譲歩を与える可能性が生まれるだろう。しかしこれは今のところ、明らかに視野の届くところにはない。

政治解決には国際的合意不可欠


――あなたの考えでは、ソチとジュネーブにおける話し合いがシリアでの何ごとかを今後変えるだろうか?

 これらの話し合いは政治解決の諸条件に関するものだ。われわれは多かれ少なかれ、これがこれまでと似たものに見えるもの――移行期、新憲法、新たな選挙、そしてこのすべてが権力に留まるアサドと彼の新たな大統領選挙への立候補を伴うこと――だと分かっている。それゆえそこには、その点で期待できる新しいものは大してない。
モスクワとアサドは、彼らは新たな選挙を監視する国際監視団を受け容れる意志がある、と宣言している。彼らは、シリアでの今日の自由な大統領選挙におけるアサドの勝利に賭けているのかもしれない。それは、アサドの体制が一つのブロックである一方、反政権派が極めて数多くに分裂しているからだ。反政権派が大混乱の状態にあるという事実は、アサドの体制にそのようなシナリオにも十分耐えるという十分な信頼を与えている可能性がある。
しかしながらそのような解決が実現するためには、まず国際的合意が必要になる。モスクワが後ろ盾になったソチの話し合いには、ロシア、トルコ、イラン、シリア政権、およびシリア反政権派の信用を失った部分だけが参加した。国連が後援したジュネーブの話し合いには米国とEUが関与している。私は、二〇一一年以後にシリアに入った外国軍部隊全部の撤退を明記しない協定を、米国が受け容れるとは想像できない。言葉を換えれば米国は、「われわれは同じくイランがこの国から去るという条件でシリアから出る意志がある」と言うと思われる。それこそが、米国が現在ユーフラテス川東岸地域に固執している理由だ。ワシントンのロシア人に向けたメッセージは、「君たちがイラン人を取り除けばシリアを君たちに任せるつもりだが、そうでなければそのつもりはない」というものだ。

米国の対外政策にも混乱の要因

――トランプのこの紛争に関する見方はオバマの見方とは異なっている。彼はイランを孤立させようと試み続けている。そしてエルサレムをイスラエル国家の首都と認めた。彼らの政策が異なる理由は何であり、またトランプの政策がこの地域にもつことになる意味合いはどのようなものか?

 ここには異なった問題がある。イスラエルに関する限り彼は、特定の聴衆の要求を満たそうとしている。その聴衆とは、福音派と他のキリスト教徒シオニストであり、彼らはブッシュの下での共和党支持者の大きな部分を構成していた。そして今もトランプ支持基盤の主要な部分だ。米国副大統領のマイク・ペンスはこの部分の代表だ。彼は親イスラエルの主張では彼自身のボスさえも上回っている。
逆に言えば、幅広い米国のエリート内部には、この問題での総意はまったくない。トランプの側近内の何人かは、極めてイデオロギー的な、エルサレムに関する彼の立場を喜ばなかった。政権内部の総意があるただ一つの問題は、イランに対する強硬な姿勢だ。しかしこれさえも、核合意を反故にするという点を除くものだ。

――サウジ政権はシリア紛争で、特にイランとの関係で、今も何らかの決定的な役割を演じているのか?

 トランプはイランに対する敵意をエスカレーションするよう、サウジの支配者たちを大いに力を込めて励ました。彼らは、カタールに圧力をかけるといった、あるいはレバノン首相のサアド・ハリリに対する辞任の強要といったエピソードの扱いに関して、恐ろしく下手くそだった。そしてその両者とも大失敗に終わった。
サウジの支配者たちは、シリアに関する彼ら自身の戦略をまったくもっていず、米国の後ろにしたがっているだけだ。彼らにつながるシリア反政権派で残っている部分は極めてひどく弱体化されている。こうしてシリア内でのリアドのテコ全体ははるかに弱くなっている。その主な関心はイランを抑制し、それを巻き返すことだが、そのために彼らには、ワシントンに頼ることしかできない。(二〇一八年二月一二日)(「インターナショナルビューポイント」二〇一八年二月号)    


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