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    かけはし2018年3月26日号

「近代化」と「維新」の関係問う


「明治150年」キャンペーン批判(3)

「富国強兵」路線の原点

幕末と新政権の連続性

 政府が音頭を取った「明治一五〇年」の国家式典・キャンペーンを通じて明らかにされていることは、一八六八年の「明治維新」=徳川幕府の崩壊と「王政復古」、明治維新政権の発足こそが、日本「近代化」の出発点だったという歴史観である。この点は「明治一〇〇年」〜「一五〇年」式典を通じて共通している。徳川政権と明治維新政権がめざす方向は、根本的に異なったものであり、「維新政権」なくして日本の急速な発展と近代化はなかった、という捉え方だ。
 しかしこの見解に異論を唱えているのが、例えば日本近代政治外交史研究の重鎮で「文化勲章」受章者であり、宮内庁参与まで務めた三谷太一郎(東大名誉教授)だ。三谷はむしろ、明治維新政府の「近代化」戦略が、幕末の江戸幕府の政策を引き継いだものであることを強調している。
 彼は昨年三月に出版された『日本の近代とは何であったか――問題史的考察』(岩波新書)の中で「文明開化」や「富国強兵」といったスローガンは、徳川慶喜将軍の「近代化」路線を継承するものとして唱えられていた、と説明する。
「幕末の近代化路線は、ほとんどそのまま明治政府によって継承されました。明治維新の前後で権力の交代はありましたが、権力の路線は連続していたのです。明治政府による日本近代の形成(国家形成)を方向付けたのは、旧権力によって設定された路線でした。福沢(諭吉)を例外として、旧幕府官僚(特に洋学者)たちの多くが明治政府に投じたのも、彼らが支持した権力の路線が連続していたからです」。
 これは「近代化・文明開化・富国強兵」路線は、時代に遅れた「守旧派」の徳川幕府を打倒した薩長主導の明治新政府によって牽引された、という安倍らの「思いこみ」を否定する見解だ。

「もう一つの歴史」探る
 
 三谷は一月二二日の毎日新聞に掲載されたインタビュー記事「そこが聞きたい 日本の近代化が抱える問題」の中でも、「明治政府の『富国強兵』『文明開化』をどう評価されますか」という問いに、次のように答えている。
 「明治政府の進めた近代化は、徳川幕府の路線と同じです。権力の交代があったにもかかわらず、最後の将軍である徳川慶喜の近代化路線を象徴する富国強兵、文明開化というスローガンが踏襲されました」。
 「スローガンが持つ問題性を日本人に認識させたのは、太平洋戦争の敗戦でした。敗戦で初めて、多くの日本人は、幕末以来の国家戦略に非常に大きな問題があったのだと認識したのです。日本国憲法9条で『強兵』路線が放棄されました。冷戦崩壊後、東日本大震災などを経て、『富国』路線にも疑問が投げかけられています。富国路線を支えてきたエネルギー供給の危うさを東京電力福島第1原子力発電所の事故が浮き彫りにしたからです。一方、北朝鮮の核・ミサイルなどの安全保障環境の変化により、『強兵』路線への回帰の傾向が見られます」。この主張もまた前掲『日本の近代とは何であったか』の終章で強調されている。
 こうして三谷は、政治史学者の立場から、安倍政権のきわめて一方的な「明治維新」解釈に疑義を呈する論陣を張ろうとしている。
 われわれもまた、「明治一五〇年」キャンペーンがらみのご都合主義的な歴史解釈に対して、民衆運動の立場から「もう一つの歴史」を掘り起こし、対置する作業に学んでいく必要があるだろう。

「教育勅語」の役割


 欧米に学んだ「富国強兵」路線において徳川慶喜を先頭とする幕府と「薩長」を軸にした「討幕派」の間に基本的な政治的路線の相違がなかったとすれば、最大の違いはどこにあったのか。旧幕府側が天皇を担いだ「諸藩連合」による政権を作り、徳川家がその政権の筆頭に座ることを構想していたのに対し、「薩長」の側は徳川幕府を打倒し、天皇の「絶対的権威」を「錦の御旗」に仕立て上げ、その権威を前面に掲げた「天皇制国家」を築き上げようとした。
 この点で三谷が幕府と維新政権を通じた「文明開化・富国強兵」の同一性を中心に論じることは、やはり不十分であるように思われる。
 もちろん三谷は、明治国家にとって国民の統合のための装置をどこに求めるか、ということが最大の難関であったことを忘れてはいない。西欧におけるキリスト教のような宗教的統合機軸がない中で、伊藤博文が「我が国にあって機軸とすべきは独り皇室あるのみ」と断じたことに触れ、「神の不在が天皇の神格化をもたらした」と指摘している。
 だとするならば、「近代化・文明開化・富国強兵」路線における明治政府と江戸幕府の同一性を指摘するだけでは全体像は見えてこない。明治政府は西欧を模した「近代国家」を建設するために天皇の神格化を加速させた。それは「大日本帝国憲法」のみによっては不可能だったのであり、三谷も指摘するように「教育勅語」がその役割を担わせられることになった。
 三谷は、『日本の近代とは何であったか』の末尾に近い箇所で二〇一六年八月の天皇「生前退位」メッセージによせて次のように書いた。
 「……天皇は自らの意思を主権者である国民に対して直接に伝えることが可能なのか、可能であるとすれば、それはいかなる方法によるべきなのか。この問題はすでに述べたように、実は今から一二七年前、一八九〇年に『教育勅語』を天皇が意思表示の形式で当時の臣民に対して直接に伝達するに際して、『教育勅語』と憲法の双方の起草に関わった法制局長官井上毅が最も脳漿を絞った問題でした。今やそれは現天皇の直面する問題であるとともに、主権者である国民全体の問題でもあるのです」。
 「生前退位」メッセージと「教育勅語」を重ね合わせて論じる、というなかなかユニークな論点ではある。        (純)

2.24

防衛予算増大は何のため

地域から軍拡反対の声を

防衛省にデモ・申し入れ

 二月二四日午後四時から、東京・市ヶ谷の外濠公園から防衛省に向けて、デモ・申し入れ行動を行い、五〇人が参加した。主催は大軍拡と基地強化にNO!アクション2017。[参加団体]有事立法・治安弾圧を許すな!北部集会実行委員会/立川自衛隊監視テント村/パトリオットミサイルはいらない!習志野基地行動実行委員会/反安保実行委員会/武器輸出反対ネットワーク(NAJAT)[賛同団体]戦争・治安・改憲NO!総行動。
 実行委主催者が「六年連続で防衛予算がアップされ、今年は五兆一九一一億円で史上最大の予算が組まれている。安保法制が出された二〇一五年、立川、練馬、習志野の自衛隊基地に反対する運動団体が呼びかけて軍拡に反対する銀座デモを行った。今日、防衛省に軍拡はやめろと申し入れる」とあいさつした。
 その後、参加団体が行動提起。3・12霞が関デモ第三弾、日韓連帯、3・18韓米合同軍事演習反対米大使館行動(午後2時から)。武器輸出反対ネット、「輸出反対でやってきたが、現在は輸入反対で活動している。今までは武器に制限を持たせていたが、長距離巡航ミサイルの導入などそれからの大転換がなされている。イージス・アショアの配備。秋田では一キロ以内に小・中学校があり、強いレーダー波を出すので地元で反対運動が起きている」。
 「平和の声・行動ネットワーク入間」、「航空自衛隊入間基地に戦争でケガをした人のための戦闘医療病院が建設されようとしている。入間基地に対して抗議行動を継続している」。次に、ミサイル避難訓練に反対する行動を行った仲間が「一月二二日に首都東京で初めてミサイル避難訓練が住民や企業・社員三〇〇人をエキストラ動員して、後楽園周辺で行われた。これに対して一二〇人がプラカードを掲げて反対行動を行った。文科省は小・中学校に訓練をするように通達を出した。また、国会議員向けの訓練も行うという」と治安訓練の強化に反対を表明した。反天連、「3・27琉球処分の日、3・28与那国島に自衛隊が配備された日、このような記念日に天皇が沖縄・与那国島に行く。これに抗議する3・24集会を予定している」。先島への自衛隊配備に反対し、埼玉・千葉などいろいろな駅でスタンディングをやっている「島じまスタンディング」の訴え、2・25沖縄連帯池袋デモも呼びかけられた。
 デモの途中で防衛省に対して、大軍拡に抗議する申し入れが行われた。 (M)

申入書

6年連続の軍事予算増大、日米軍事一体化の推進、自衛隊の「軍隊」化に抗議する

 内閣総理大臣 安倍晋三殿
 防衛大臣 小野寺五典殿
 外務大臣 河野太郎殿

 2月1日、参院での可決により2017年度補正予算が成立した。うち軍事関連は2345億円と過去最高額となり、当初予算との合計額は5兆3596借円と前年度比2%増、伸び率も異常であるが対GDP比は1%を超える。当初予算では1%を割り込ませながら補正を加えて1%枠を超えさせるという姑息な手段は、ここ10年問に6回も繰り返されている。
それだけではなく、昨年8月の「概算要求」での次年度項目を「補正」及び「新規後年度負担」に盛り込み、当初予算案を少なく見せるという手段も繰り返されている。とりわけ今回は「ミサイル防衛」関連の予算振り分けが目に余る露骨さと狡猾さを示している。すでに2兆円近い税金を投入しながら、現実的には役にも立たない「ミサイル防衛」のさらなる経費膨張を糊塗しつつ、朝鮮民主主義人民共和国の核とミサイル開発を奇貨として、トランプ政権に約束した「米国製高額兵器爆買い事業」の前倒し実施が画策されていることを看過することは出来ない。
さらに、すでに「概算要求」にも「鳥嶼防衛用高速滑空弾」と「島嶼防衛用新対艦誘導弾」が計上されていたが、昨年末になって戦闘機搭載型の「長射程巡航ミサイル(「スタンド・オフ攻撃ミサイル」)」3種が突如当初子算に盛り込まれた。ここに、同じく昨年末突如浮上してきた「いずも」型ヘリ空母を実用的な「空母」に改修し、F35Bを艦載して日米で共同運用するという事案、同じく空母艦載が運用の前提となる「EA18G“グラウラー”電子戦機」導入構想を加えるならば、一方で共和国の「脅威」を煽り「ミサイル防衛」強化で税金を空費し、対中国包囲網という虚言で自衛隊の「南西シフト」を強引に推し進めつつ同じく貴重な税金を空費するという、米国追従、軍需産業優先の軍事予算の聖城化、我が国の虚妄な軍事大国化があらわになっていると断じざるを得ない。
一方で来年度当初予算案では、軍事予算に5兆1911億円という連続する過去最高額を計上しながら、これまた引き続く社会保障費の自然増圧縮が行われ、1345億円削減。さらに第二次安倍政権発足以来顕著な「生活保護」世帯への攻撃がまたも行われ、生活の根本を担う「生活扶助費=生活費」は180億円削減、母子加算も2割カットで20億円削減される。本来国民生活の基本部分を保障するのが政府の責務であるにもかかわらず、それを放棄し、社会的弱者を狙い撃ちにするようにして、ただでさえ「アベノミクス」なる愚策により強いられている苦しい生活をさらに破壊させながら、それで浮いた税金で高額兵器を購入する現政権の卑劣な方針を私たちは絶対に許さない。
最後に、「基地の街」から反戦・平和・反基地、武器輸出反対を訴え続けてきた私たちは、今回の補正予算と当初予算案に如実に現れている「安全保障」の名を借りた軍事優先、国民統制優先の施策が、安倍政権が目論む「憲法9条明文改憲」と緊密に結びついていることを、憤りをもって糾弾するものである。「日本国憲法」前文と9条に込められた崇高な「平和主義」の理念のもとに生きることへの自負と誇りをもって、私たちは平和のための闘いを担ってきた。このかけがえのない平和への希求が、軽佻浮薄、内実皆無の安倍政権のもとで無惨に破壊されることなど断じて認めない。

・来年度予算の防衛費を徹底的に見直し、敵基地攻撃兵器を含む高額装備の購入費、軍事研究費等を削除すること。
・沖縄県民の民意と自治、人権を蹂躙して進められている辺野古新基地建設、先島の軍事要塞化を即刻中断すること。
・米軍再編と自衛隊再編による全国の基地機能の強化とそれに伴う周辺環境の悪化を中止すること。
・日米同盟に加えて、日英、日仏、日豪と拡大を目論む軍事同盟強化を断念すること。
・わが国へのイージス・アショア導入計画を放棄し、「ミサイル防衛」からの撤退をすること。
・「特定秘密保護法」「安保法制」「共謀罪法」を廃止し「9条明文改憲」を断念すること。

 2018年2月24日
大軍拡と基地強化にNO!アクション2017
2・24対防衛省申入行動参加者一同

「安全保障技術研究推進制度」参加の大学
に軍事研究からの撤退を求める要望書

 現行の「防衛大綱」(2013年12月策定)の「研究開発」に「大学や研究機関との連携の充実」が明記されてから、4年が経過した。この間、2015年に「安全保障技術研究推進制度」が発足し、その予算額が3億円から6億円に、さらに昨年度は一気に110億円に増大し、本年度当初予算案においても101億円が計上されているところである。
 周知の通り、「日本学術会議」は1950年、1967年と「戦争を目的とする科学の研究は絶対にこれを行わない」「軍事目的のための科学研究を行わない」主旨の声明を発表し、戦前の学術と軍事との癒着を拒否する姿勢を示してきた。安倍政権の元で再び学術と軍事が接近させられようとしている中、『日本学術会議』は昨年3月これまでの「声明を継承する」主旨の声明を発表している。また、市民の間からも「軍産学複合体」拡大に抗する運動も展開されている。
 こうした背景から、結果的には一昨年、昨年度と大学からの同制度への応募は横ばい状態となっており、明確に「応募しない」との態度を明確にする大学も増えてきている。しかし、そうした状況の中で、代表研究機関は企業、パートナーとしてともに研究を進める分担研究機関として大学が参加するというケースが2017年度に明確になってきたのである。
 具体的には「小規模研究課題」に東京農工大学、「大規模研究課題」に岡山大学、東海大学、東京工科大学、東京農工大学が参加することになっている。企業が前面に立つことで、軍産学複合体の実態を隠蔽し、大学等の参加を促す意図が見て取れる。
 国立大学の法人化以来、大学・研究機関は恒常的な研究資金不足に直面している。軍事など特定の目的に特化された資金投入は、学術全体の健全な発展に悪しき影響が及ぶことは必至である。また、明治以降日本の近代化の過程での「国力増強」の名の下に「官・産・軍・学共同」が連続する帝国主義的侵略戦争を牽引した歴史が、米トランプ政権との密接な関係を強引に追求する現政権の姿勢において形態を変えて再来するのではないかとの危惧も禁じ得ない。
 基地現地から日本の軍事大国化に抗し、真の平和実現のための活動を続けてきた私たちは、2017年度委託を受けた4大学において、上述の日本近代史において大学が果たしてきた負の側面への反省から発せられた「日本学術会議」の3度にわたる「声明」の本旨に則り、委託の辞退を含む、軍事研究そのものからの撤退を強く求めるものである。
 2018年2月24日
大軍拡と基地強化にNO!アクション2017
(一部略)



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