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    かけはし2018年4月23日号

テメル大統領と彼の政党仲間を告発する


ブラジル

マリエレ・フランコ暗殺糾弾

出口なく国の荒廃をおおい隠す
軍を使った麻薬戦争に反対する

インスルジェンシア


 以下は、ブラジルで起きたマリエレ・フランコ暗殺に関するテメル大統領の責任を糾弾して、PSOL内部左翼潮流のインスルジェンシアから出された。なぜテメル大統領が責任を負うべきなのかとして、リオデジャネイロの深刻な危機的状況、また今年秋に予定されている大統領選と議会選をめぐる思惑をも含んだ、ブラジル全体の政治的混迷とそこに対するテメルと政権与党の反民衆的かつ無責任な対応が、具体的に明らかにされている。(「かけはし」編集部)
 リオデジャネイロの社会的紐帯を脅かし、同時にマリエレとアンデルソンの政治的暗殺をも可能にした暴力と経済的危機には、大統領と彼の政党一味に直接の責任がある。
 親愛なる(選挙の洗礼を受けていない)共和国大統領、ミスター、ミチェル・ルリア・テメル、黒人社会運動と女性の社会運動出身の人権活動家、またリオデジャネイロ市議会議員のマリエレ・フランコ、および労働者のアンデルソン・ペドロ・ゴメスへの残忍な処刑における歴史的かつ絡み合った罪により、われわれはあなたを告発する。
 マリおよびアンデルソンのいのちは、大統領閣下が打ち倒すのに力を貸している最初のものではなく、不幸なことだが最後のいのち――若く懸命に働いている――でもないだろう。サンパウロ州政府の治安長官としての閣下の事積と全面的につながる、この国の頂点における経済政策並びに治安政策は、その死をつくり出す生産性のゆえに、国際的分野で傑出したものになっている。
 三月一四日夜の同志二人の死に何千人もが憤激し、悲しみの声をあげたように、若者たち、特に黒人(あるいは非白人)と労働者の殺戮と虐殺は、この国の北から南すべての大都市の最貧困居住区域における日常生活で、苦みを押し殺して飲み込んでいるものだ。まさに対をなすように、零細農民から土地なき者たち、先住民、またキロムボラ(注一)運動指導者たちにいたる人びとに対する殺し屋による殺人は、あなたたちの側からは些細なことにされているのだ。

権力犯罪の追及者が抹殺された


 ここでの違いは今回が、一つの大都市における、選出された代表者に対する政治的暗殺、ということだ。
 マリエレは声を奪われた。それは、数多くの理由の中でも、もっとも脆弱な者たちのいのちに対するあなたとあなたたちのカーストの共謀による、ファベーラ出身の黒い肌をもち貧しい若者に対する体系的な根絶、大量投獄政策を、また等しく悪意ある警官殺し、「両側の」犠牲者の家族を見捨てることを、彼女が厳しく批判してきたがゆえだ。要領を得ない、また筋を外した(警察の)作戦と選挙目当ての派手な行動、そして麻薬常用者とそのケチな売人に対する紛れもない抑圧を基礎にした、この愚かしい麻薬戦争の只中で、彼女は、誰に責任があるかを指摘するために、運動のスピーカーと市議会のスピーカーを通してはっきり話すために、彼女の美しく勇敢な口を使ったはずなのだ。
 閣下、この問題におけるあなたたちの罪は新しいものではない。確かに閣下は精巧なマシンガンの引き金を引くことはなかった。おそらくあなたは、この時まで彼女とアンデルソンを誰が殺害したかを見つけ出す行動も取ってきている。しかしあなたの党の一味、以前のPMDB(ブラジル民主運動党)、今の再度のMDB(ブラジル民主運動)(訳注)は、法人税免除のペテンと大枚の賄賂を通して、リオの公共インフラとリオデジャネイロ州市民への基礎的社会サービスを浪費した者たちなのだ。PT大統領に対する「お飾り的」副大統領(これはあなたの言葉だ!)として閣下が行動する間、ここでのあなたの共犯者は、かつてリオが経験した中では最悪の経済的、社会的危機の一つを生み出した。専門家は、州がこの損害から立ち直り始めるにはおそらく三年はかかる、と予想している。
 あたかもこの基本的骨格をなす背景でも事足りないかのように、二期半にわたって警察内部の細々とした犯罪に肥料を注ぎ、コミュニティ内に設立された民兵に何ら事情も分からないまま関心を向けたのは、あなたの党一味の同志たちだった。悪への万能薬として、役立たずのウニダーデ・デ・ポリシア・パシフィカドラス(UPPs)(「われわれはこれらの地域を取り戻し、その後に社会的イニシアチブに基づきそこに入ろうとしているだけ」と主張している)(注二)を提案したのは彼らだった。しかし彼らは、その悪とは闘わず、それと闘うための意図も計画もまったくもっていなかったのだ。

リオ破壊への責任回避は不可能


 リオがもし回復の大海と繁栄の海に浮かぶ一つの悲惨な島であったとすれば、このどれ一つであれこれほどまであきれるようなのものとはなっていなかったと思われる。しかしながらあなたとMDBは、これがそれに関するすべてではない、ということを十分に分かっている。おそらく記憶は衰えつつあるのだろうが、あなたとあなたの党は、二〇一六年の極めて問題のあるディルマ・ルセフ弾劾をもたらした、政治、司法、事業家、金融、メディア諸勢力間の幅広い接合に関し唱道者だった――諸々の本や大学の諸学科の中で見つけ出すことができるように――。その直接の口実はいわゆる会計処理のきわどさだったが、われわれは覚えているが、あなたのクーデターブロックにとっての主な課題は「これまで続いている最大の経済的かつ社会的危機の一つからこの国を救い出すこと」だった。
 しかし閣下、この危機に対してクーデターが生み出した回答は、底辺にある者たちにとっての永続的な悪夢となっている。あなたは連邦の投資と賃金を何と二〇年間も凍結するのだ! あなたは、八〇年にわたる労働法を破壊しようと懸命に挑み続けてきた。あなたは、諸々の社会計画を最低限にまで切り下げ続けてきた。あなたは、生態系の惨状をもっと悪化させる可能性すらある。この問題に関しわれわれの下にある弱々しい法にすらあなたがしたがっていないからだ。
 あなたとあなたの財務相は、州の財政を――もっとも目立つものとしてリオデジャネイロのそれを――絞め殺した。リオに対して彼らは、事実上自殺を処方した。賃金、退職年金、また他の年金給付の何回かに分けた分割払い、拠出の増額、利子の引き上げ、州立大学の閉鎖、州立の上下水道企業、CEDAEの私有化がそれだ。さらに忘れてはならないが、ゼロ、投資はゼロだ。
 閣下とあなたの党、MDBはしたがって、リオデジャネイロを荒廃させている経済的、社会的、そして暴力的危機というぎょっとするような絵柄に対して直接の責任がある。大統領選に立候補したいと思っている者が(もちろん、あなたは再選のための候補者ではないのだから)この責任を回避するのは筋が通らない。このもっとも深い闇の時間、リオへの連邦による、また軍事的な介入を命令する極めて深刻な歩みを通して、一度たりとも得たことのない人気を回復しようとの愚かな考えに責任を認めるべき者こそ、この国民の最高代表者だ。

大統領の決定は最悪の火遊びだ


 ミスター大統領、何とあなたは、あらゆる反動的論理、原理主義、またあなたの連合の基礎をなす金銭づくの行動をもってしても、国会で「退職年金改革」の承認に必要な三〇八票を確保することができなかった。そうではなかったのか? あなたは白状すべきだ。この敗北から免れるために、そしてあなたのもっとも忠実な協力者たちを今年選出させるために(今年秋には大統領選挙と国会議員選挙が予定されている:訳者)必要な投票での大変動を何としても得るために――新たな議員免責特権を理由に彼らを牢獄の格子から救い出すために――、閣下は文字通り火遊びに出ることを決めたのだ、と。
 仲裁者と自らを主張することは、あまりに度が過ぎたものになったのかもしれない。おそらく閣下は、物事が起きているのはどの国でか――ブラジル企業人の政治代表の圧倒的多数に特性的であるような――を考えることもなく、あなたの党一味の典型的政治行動において、一線を越えてしまった。あなたの諸行為は、リオでの暴力に対して解決ではなく、戦争のエスカレーションを生み出すだろう。犯罪的な諸派閥間の、治安諸部隊の腐敗し統制を失った諸派閥間の、今やそれらが軍の部隊に近いものになっているという危険の高まりを伴う、戦争のエスカレーションだ。
 何らの出口もないまま同じ政策、麻薬との戦争、大量投獄、黒人の根絶を力説することによって、あなたは、軍の部隊を麻薬取引集団との直接衝突に引き出しつつ、賞讃を受け取り、しかしこの国で二〇一三年以来起こってきた最悪の統制を失った諸行為に責任を負っている。その最悪なものが、街頭で、政治で、また閣下を中心とする諸機構の中で起きてきたのだ。
 閣下は、ブラジルとリオデジャネイロのメキシコ化に口火を着けた一人として、歴史に残る可能性がある。ミスター大統領、あらためて考えてみろ。これこそ、選出をめざしてあなたが計画しようとしていること、ではないのか?

私たちは街頭の人々と共に進む


 われわれの側について言えば、われわれは、われわれの仲間たちへの残忍な処刑に反対して憤然と立ち上がり、ブラジルと世界の――そうだ、世界だ!――街頭に繰り出し続けてきた何十万人という人びとにしたがうだろう。
 憤激し、街頭に現れる上で、人は左翼である必要はない。連邦の介入に反対である必要もない。以前に街頭に繰り出した経験がある必要もない。事実として、悲劇が起きることを可能にした情勢と暴力に異議を唱え、徹底した調査を求めることを除けば、何も必要はない。
 しかしわれわれは、あらゆる人びとにわれわれが知っていることを伝えるだろう。つまり、事実としてマリエレは「麻薬との戦争」に反対していた、ということをだ。なぜならば彼女は、この政策こそが最終的に、マレ(リオデジャネイロのファベーラ、マリエレの生まれ育った地区:訳者)の、またリオとブラジルのまさに数多くのファベーラの、彼女の黒人と貧しい兄弟たちや住民を殺した、ということを知っていたからだ。
 われわれは、マリエレが書いた最後の論評は連邦の介入に反対するものだったということ、マリエレは大文字で書くに値する人権活動家であったということ、マリエレは黒人の、バイセクシャルの、そして社会主義者の一女性であったということ、実際社会主義と自由党(PSOL)の最良の闘士である社会主義者であったということ、を広めるだろう。われわれはそれらを大いに誇りに思う。そしてわれわれは、彼女がそれらをあらゆる人びとに知ってもらいたいと思っていると確信している。
 マリエレとアンデルソンの思い出は残り続ける! 黒人のいのちは大切だ! リオ州知事、ペザオ打倒! テメル打倒! 警察を非軍事化せよ! 連邦の介入は直ちにヤメロ!

▼インスルジェンシアは、第四インターナショナル支持者を組織しているPSOL内部潮流。
(注一)キロムボラスは、ブラジルの逃亡奴隷がつくり出した入植地。
(注二)UPPと短縮形で呼称される鎮圧警察部隊は、リオデジャネイロ州のいわゆる法執行と社会サービス計画をにない、麻薬取引集団が支配していると想定された地域を取り戻すことを自らの目的にしている。(「インターナショナルビューポイント」二〇一八年三月号)
(訳注)MDBは、軍事独裁体制下の体制内野党として結成されたという歴史がある。      

ブラジル

国際公開状

マリエレ・フランコに正義を

独立した調査委員会を求める

 ブラジルで起きたリオデジャネイロ市議会議員のマリエレ・フランコの暗殺に対し国際的な抗議が巻き起こっている。その中で以下のような国際公開状が発表された。この公開状には、米国の映画監督、アヴァ・デュヴァネイを筆頭に、ナオミ・クライン、ノーム・チョムスキー、エドワード・スノーデンなどの国際的著名人を含む八四人が連署している。(「かけはし」編集部)
 三月一四日、ブラジルでもっとも勇気ある社会的指導者の一人がリオデジャネイロの街頭で残忍に暗殺された。市議会議員であり人権の擁護者であるマリエレ・フランコが、黒人青年活動家の集会を後にした直後、車で移動中、正体不明の暗殺者から頭部に四発の銃弾を撃ち込まれたのだ。彼女の運転手、アンデルソン・ペドロ・ゴメスも殺害された。
 マリエレは、二〇一六年に市議会議員に選出されるずっと前から、アフリカ系ブラジル人、LGBTの人びと、女性、そして低所得コミュニティの諸権利の、疲れを知らず怖れを知らない擁護者として広く知られていた。リオのもっとも貧しい居住地区に生まれ育った一人のゲイ女性として彼女は、この町のファベーラにおける激しくなるばかりの警察の暴力に反対して、容赦ないキャンペーンを行った。
 マリエレの活動は力をもつ敵を数多くつくり出した。しかし彼女は、治安部隊による黒人青年の超法規的殺害にはびこる免罪に猛烈に異義を突き付け、彼女の殺害の二日前には、マセウス・メロという名の黒人青年の殺害に果たした警察の役割を、厳しく非難していた。彼女は、リオデジャネイロへの軍部の介入に対する指導的批判者であり、この介入に対する監視を任務とした市の委員会を率いていた。
 われわれは声なき人びとの声となり、国家が仕掛ける暴力、軍事化、また反民主的諸勢力に対する抵抗の象徴であった一人の女性に対する、このコマンドスタイルの殺害に、深刻に懸念を覚え、またショックを受けている。マリエレの暗殺が狙い定めた暗殺を示す特性を折り紙付きで帯びていることを前提としてわれわれは、著名かつ尊敬を集める国内と国際的な人権専門家、法の専門家から構成される、また国家の司法当局と警察当局の全面的な協力を伴うマリエレ・フランコ殺害に対する独立した調査の遂行を任務とする、独立委員会の創出を求める。
 マリエレは死の直前、「この戦争が終わるまでに他にどれほど多くの者が死ななければならないのだろうか」と問いかけていた。われわれは、マリエレ・フランコへの、そして彼女が残した娘と両親への正義を求める。またわれわれは、ブラジルの活動家、政府への敵対者、および低所得民衆に対する殺害と犯罪視を終わりにすることを求める。(以下、八四人の署名、ウェブサイト「ジャスティス・フォー・マリエレ」より)(「インターナショナルビューポイント」二〇一八年三月号)


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