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    かけはし2018年5月14日号

待つことなく防衛運動の先頭に


カタルーニャ

国際書記局への手紙

中央政府との衝突とプロレタリアートの課題

トロツキー 



【解説】

 本紙二〇一八年四月九日号にジャラール・フロランソンによるカタルーニャ問題に関するトロツキーの立場について論じた論文が掲載されているが、その中で、日本ではまだ翻訳されていない一九三四年七月におけるトロツキーの国際書記局(IS)宛て手紙が用いられている。そこで、ここにその論文を訳出して読者に提供したい。
一九三四年春、右派のスペイン中央政府は、カタルーニャにおける半ば独立した地方政府が制定した進歩的な農民保護法を無効にした。カタルーニャ政府を支配していたのは民族主義政党のエスケラやその他の小ブルジョア勢力であった。六月一二日、バルセロナのカタルーニャ議会は同法を再度制定するとともに、カタルーニャ選出の議員たちをマドリードの中央議会から引き上げさせた。これは、トロツキーが「カタルーニャの衝突」と呼んだ政治危機を作り出した(この危機は四ヵ月ほど続いたが、最終的にカタルーニャの小ブルジョア勢力が中央政府に屈服したことで決着がついた)。六月一七日、労働者同盟(左派の労働者組織・政党を結集したスペインの統一戦線組織)はバルセロナで地方協議会を開催し、次のような決議を採択した。「もし反革命的マドリード政府がカタルーニャを攻撃した場合には…、労働者同盟はこの運動を支持し、その指導権をとって、社会主義共和国連邦の勝利へと導くよう努力する」。この協議会の主要な参加組織の一つが、国際左翼反対派のスペイン支部であったスペイン共産党左派(ICE)であったが、この組織は当時すでにトロツキーとかなり疎遠になっていて、多くの問題をめぐって両者の間で論争がなされていた。トロツキーはこの手紙の中でも、中央政府から攻撃された場合のみ闘争の主導権をとるという共産党左派の待機的政策を厳しく批判している。ここでトロツキーが展開した方針はこの時点では実行されなかったが、一九三六年のスペイン内戦を予想するものであり、そこにおける政策を先取りするものとなっている。底本は、Writings of Leon Trotsky:Supplement 1934-1940, Pathfinder Press, New York, 1979.〔  〕は底本の編集者による補足。

 〈1〉

 カタルーニャの衝突とそこから生じる可能性を評価することは、カタルーニャが疑いもなく今日、スペインの反動とファシズムの危険性に対抗する防衛勢力の最も強力な陣地であるという事実を出発点にしなければならない。この陣地が失われたなら、反動は決定的な勝利を獲得するだろうし、しかも来たる長期間にわたってそうなるだろう。正しい政策をもってすれば、プロレタリア前衛は、この強力な防衛陣地をスペイン革命の新しい攻勢の出発点として利用することができるだろう。これがわれわれの展望でなければならない。

 〈2〉

 このような発展は、カタルーニャ・プロレタリアートがマドリードの反動的中央政府に対する防衛闘争の指導権を掌握しないかぎり不可能である。しかし、この闘争が〔他の勢力によって〕開始される場合のみそれを支持するとカタルーニャ・プロレタリアートが約束しているかぎり、そういう事態にはならないだろう。〔プロレタリアートの政策は〕マドリード政府が非妥協的立場をとるか、あるいはカタルーニャの小ブルジョアジーが後退するかなどということに〔依存させることはできない〕(だが、われわれの同志たちはカタルーニャ労働者同盟(注一)の中で、マウリン(注二)の〔小ブルジョアジーへの〕追随政策にしたがっている)。〔この闘争が成功しうるのは、〕カタルーニャ・プロレタリアートが防衛運動の先頭に立つ場合のみであり、しかるべき展望を明らかにし、より大胆なスローガンを提起し、言葉においてだけでなく行動においてこの闘争の指導を開始する場合のみである。

 〈3〉 

 抵抗闘争は、すべての大衆勢力を動員するだけでなく(そのためのすべての前提条件はすでに存在している)、攻勢に向けて前進する場合のみ勝利することができる。まさにそれゆえ、今後、プロレタリア前衛がスペインの残りの地域における労働者と農民に対して、カタルーニャの抵抗闘争が勝利するか敗北するかが諸君の勝利ないし敗北をも決定づけるだろうと説明することが決定的な重要性を持つのである。スペイン全土においてこれらの同盟者を動員することは、今ただちに遂行されるべきであって、マドリード政府の反動的攻勢が現実のものとなる時まで待ってはならない(その時まで待つというのがわれわれの同志たちと、労働者同盟の多数派の立場である)。

 〈4〉 

 カタルーニャはスペイン革命の基軸であり続けるだろう。カタルーニャの指導権を獲得することは、スペインにおけるわれわれの政策の土台でなければならない。だが、われわれの同志たちのとっている政策では絶対に不可能である。もしこの決定的な情勢を、われわれのせいでスペイン革命の新たな敗北――それは長期にわたって重大なものになるだろう――で終わらせたくないのなら、この政策を速やかに転換しなければならない。
この問題におけるわれわれの同志たちの政策は、われわれ自身の組織および労働者同盟の権威をいちじるしく傷つけるだけでなく、プロレタリアート自身の権威を傷つけるものであり、事実のリアルな理解にもとづいた抜本的な政策転換によってのみ修復することができる。このことを隠すべきではない。われわれの同志たちの立場、および労働者同盟内での彼らの立場は、非プロレタリア的勤労大衆にとって次のようにしか理解されないだろう――「プロレタリアートは、他の者が〔闘争を〕開始した場合のみそれに参加するという立場を、プロレタリア組織を通じて表明している。しかし、それでいながら、彼らは、小ブルジョア政党たるエスケラに対して自己自身を犠牲にするよう要求している(労働者同盟によって課せられた諸条件(注三))。これは、農民と小ブルジョア大衆の特殊利益を完全に無視するものである。また彼らは、その可能性が生じるやいなやできるだけ速やかに自分自身の階級的目的――プロレタリアートの独裁――の方向へ闘争を導こうとするだろう」。
つまり、プロレタリアートはこの場合、カタルーニャ民族の中のすべての被抑圧階層の指導者として、すなわち民族解放運動の指導者として登場するのではなく、他の諸階級の単なるパートナーとして登場することになる。しかもきわめて利己的なパートナーであり、協力を得るためには〔譲歩〕するかその約束をしなければならず、しかもそれが必要とされるだけ長くそうしなければならない。カタルーニャの小ブルジョアジーと大ブルジョアジーと反動派――この反動勢力は小ブルジョアジーの破産にもとづいている――は、プロレタリアートがこのような立場をとることを何よりも望んでいるのである。

 〈5〉

 われわれの同志たちは、何よりもこのことにもとづいて転換を行なわなければならない。彼らは、カタルーニャ共和国独立の宣言に向けたアジテーションを(彼ら自身の諸組織および労働者同盟を通じて)行なわなければならない。そしてこの独立を確かなものとするために全人民の即時武装を要求しなければならない。もちろん政府が武装させてくれるまで待つべきではなく、労働者民兵を形成することにただちに着手するべきである。その際、政府に対してより優れた武器装備を要求するだけでなく、自ら反動派やファシストを武装解除することによって武器を入手しなければならない。プロレタリアートは、カタルーニャ大衆に対して、自分たちがカタルーニャ独立の防衛に真剣な関心と利益を有していることを証明しなければならない。ここにこそ、自分たちの都市と農村とを防衛しようとしているすべての人民階層の闘争において指導権を獲得することを可能にする決定的な道がある。
人民の武装は、来たる数週間において、次のような諸スローガンを中心とするわれわれのアジテーションの中心にならなければならない。賃金の支払停止反対。武器装備と物資調達のコストは政府と雇い主によって負担されなければならない。既存の軍兵士は、民兵の訓練担当者として民兵組織に登録されなければならない。将校は民兵のメンバーによって選挙されなければならない。民兵の基礎は工場である。大工場や鉄道などの労働者とすべての公共部門労働者は、自動的に民兵組織の一部とならなければならない。ほとんどの市民は民兵への参加を求められるだろう。すべての連隊はそれぞれの連隊委員会を選出し、これらの委員会はカタルーニャ民兵の全師団から構成される中央委員会に自分たちの代表者を送る。この中央委員会(すなわち中央ソヴィエト)は事実上の政治国家として機能するが、何よりも管理統制機関として、後には民兵に武器装備や軍需物資を供給する中央機関として機能する。この課題を達成したあかつきには、この中央委員会は、政府と並んで存在する一機関から政府そのものにならなければならない。これこそが、カタルーニャの現状におけるソヴィエトの形態でありその具体的な発展経路である。

 〈6〉

 カタルーニャ・プロレタリアートは、その極度の分裂状態のせいでカタルーニャにおいてヘゲモニーを行使することができない。そのため、彼らは自分たちだけでカタルーニャの独立を宣言することができない。しかし、独立の必要性を全力を尽くして訴え、それを小ブルジョア的エスケラ政府に要求することはできるし、そうしなければならない。また、新しい選挙をただちに実施するよう訴えることによって、これまでの立ち遅れを取り戻さなければならない。「われわれには、人民大衆の真の意志を代表しそれを闘争へと導くことのできる新しい政府が必要だ」。民兵の連隊委員会は、この選挙の準備と実施のための主要な手段とならなければならない。言いかえれば、この問題の二つの局面――独立の宣言と人民の武装――を相互に区別することができるとすれば、後者こそが前者を達成するために必要不可欠なものなのである。

 〈7〉

 プロレタリアートは、民主主義的諸要求(出版・報道の自由、安上がりの国家、公務員給与の平準化、経済の民主化、贅沢品へのより多くの間接税、抵抗運動への資金獲得のために有産諸階級への累進的直接税、等々)の最前線に立たなければならないだけでなく、またそれと並んで、自分自身の階級的要求を〔提起しなければならない〕だけでなく、農民と小ブルジョア大衆のあらゆる特殊的要求をも前面に押し出さなければならない。

 訳注
(注一)労働者同盟……一九三三年一一月に結成されたカタルーニャの労働者諸組織の統一戦線団体。社会党、UGT、共産党左派〔スペインの左翼反対派〕、労農ブロック、いくつかのサンディカリスト・グループなどが参加した。しかし、カタルーニャ最強の労働者組織であるCNTはその恥ずべき反政治主義の立場から参加を拒否し、共産党は一九三四年九月まで参加しなかった。
(注二)マウリン、ホアキン(一八九七―一九七三)……スペインの労働運動活動家、CNT指導者、共産主義者。ブハーリンの右翼反対派を支持して一九二九年にスペイン共産党から追放。「カタルーニャ労農ブロック」を組織。一九三五年、アンドレウ・ニンと協力して、マルクス主義統一労働者党(POUM)を結成。一九三六年に内戦が勃発したとき、POUMの国会議員であったマウリンはフランコの軍隊に逮捕、投獄。
(注三)労働者同盟によって出された条件……労働者同盟はその地域大会において、労働者の武装、すべての労働者組織のための組織化とプロパガンダの自由、すべての産業部門における週四四時間労働などの要求を決定した。

カタルーニャ

世界の人々へのアピール

人権の防衛へ国際連帯の決起を

 カタルーニャの民主的諸権利に対するスペイン国家の抑圧は日々悪化している。この瞬間、一〇人の指導的政治家と活動家が、何らの罪状でも有罪宣告されることなく獄中にある。彼らは暴力的反乱の罪を帰せられているが、彼らが暴力を行使することは一度もなかったのだ。主要なカタルーニャ運動組織の二人の指導者、ホルディ・シュイキサルト並びにホルディ・サンチェスは、四月半ばまでで獄中で六ヵ月過ごしたことになるだろう。
 さらに、一〇人の政治囚と国外にいる六人の政治指導者とは別に、昨年の一〇月から現在まで、投票の中でまたデモの中で一五〇〇人が負傷し、ファシストによる攻撃が一五〇件あり、一四〇のウェブサイトが閉鎖され、ジャーナリストに対する警察の攻撃、ラッパーや作家やアーティストに対する検閲……があった。
 この状況に対する抗議として、四月一五日の午前一一時にはバルセロナで、社会運動の非常に幅広いプラットホームが組織する統一デモが行われるだろう。このプラットホームには、ANC(カタルーニャ民族会議)、オムニウム・カルチュラル、諸労組、居住区諸組織、諸々の青年運動、文化・スポーツ諸組織、NGO連合……が含まれる。それは、政治囚に対する、またカタルーニャにおける、さらにスペイン国家の他の部分においてますます度を強める現在の諸々の攻撃に苦しむあらゆる人びとに対する、連帯に向けた巨大な呼びかけとなるだろう。
 われわれは国際連帯の諸運動に、四月一四、一五日にかけてさまざまな行動、デモ、集会、大衆的会合、象徴的なイベント……を組織するよう訴える。
 われわれが今日カタルーニャにおける抑圧が異義を突き付けられることなく進むことを許すならば、世界のあらゆる他の場でも明日には、基本的諸権利には抑圧される可能性が生まれるだろう。四月一四―一五日での決起をお願いする。民主主義と人権の防衛を、カタルーニャで、またあらゆるところで。(「インターナショナルビューポイント」二〇一八年四月号)




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