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    かけはし2018年7月9日号

より強力で危険な金融危機はまもなく迫る


経済

エリック・トゥサン語る

債務支配への反抗に挑戦を

民衆による公的債務監査を武器に  

 
 株式取引と金融市場の先頃のバブルは、切迫した金融危機を予告している。その危機は、「不正な債務全廃を求める委員会」(CADTM)スポークスパーソンで歴史家、政治学者であるエリック・トゥサンによれば、過去におけるよりも強くかつ危険なものになりそうに思われる。債務に関する地域セミナーのために先頃スリランカを訪れたトゥサンは、「ヒンドゥ」紙のインタビューの中で、投機活動に携わっている銀行が抱える危機について語った。
 CADTMは、不正な債務の取り消しに関わって活動している活動家の国際ネットワークだ。ベルギーとモロッコを拠点とするその活動家たちは、特に世界の南に焦点を当て、諸々のコミュニティが大量の債務と格闘するのを助けるオルタナティブの開発に取り組んでいる。二〇一五年に出版された「バンコクラシー」(金融権力)は、公的債務の拡大に果たした諸々の銀行と政府の役割に対する分析により、世界的に注目を集めた。
 今彼は、近年における一連の政策的判断ミスから必然的な、「新たな危機」を警告する。つまり諸々の中央銀行は、量的緩和策を実行し、銀行に大量の流動性を注入し、「極めて毒のある」金融商品を買い入れたのだ。中央銀行がそうした商品を買い入れ、銀行に「大量のマネー」を与える一方、そのマネーを銀行は、生産者や家計には貸し出さなかった。その代わりにほぼ四年間彼らはそれを、株式市場の「新たなバブル」に導くさらなる投機活動に使った。
 「絶対的に明白なことだが、株式取引額の計上は全面的に誇張され、それは大企業資産の真の価値には対応していない。遅かれ早かれ、新たな金融危機が来るだろう」と彼は語った。

民間債務も
同じく膨張
同時にまた、近年途方もないほどまで債務を積み上げた、金融や非金融の大企業が抱える民間債務に関しても大きな懸念がある。「金融市場のこの部分にも新たなバブルがある。そしてそれが危機に関するもう一つの可能性だ」と彼は語った。
インドの金融部門の危機に関して、さらにこの部門から発するさらなる私有化という要求に関して、トゥサンは、問題は銀行の公的性格からではなく、それらが民間部門に類似したふるまいを取り入れてきたことから出ている、と語った。

銀行の社会化
本当に必要に
トゥサンは、市民、銀行職員、また地域の当局が銀行の活動を統制する「銀行の社会化」を主張する。「公的銀行は、現場の経済に介入し、それが人びとの必要に合致し発展するのを助けなければならない」と。
彼は、ラテンアメリカ、アフリカ、アジアにおけるマイクロクレジットとその存在感に関し、大量の宣伝作戦とマイクロファイナンスに対する非常に強力な制度的支援――まさに世界銀行からほとんどの国民政府にいたるまで――が行われてきた、と語った。
彼は彼の調査から、マイクロクレジット貸し出しの借り手は一億二〇〇〇万人以上になり、その八一%は女性であった、ということを見出した。
以下にこのインタビューの抜粋を紹介する。(「ヒンドゥ」紙)

銀行の健全化はまったく未達成


――あなたは二〇一五年に出版されたあなたの著作「バンコクラシー」の中で、世界中の政府と銀行が公的債務を劇的に高めるために今もどのように共謀しているか、を語っている。今あなたは危機をどう見ているか?

 第一に、極めてはっきりしていることだが、米国、北米、西欧の大銀行は彼らの資産をきれいにはしなかった。彼らは、彼らが保有していた毒を含んだ商品を減らして彼らのバランスシートをきれいにし、何の成果にも結びついていない貸し出しを減らし、彼らの全資産に対する自己資本株式の比率を高めるものと想定されていた。現実には彼らは、そうする、また極めて危険で投機的な活動を止める、そうした必要な決定を行わなかった。
一方規制当局は、銀行に対する彼らの支配を強めるものと想定されていた。しかし過去二年われわれが見たのは、彼らが銀行に対し大甘だということだ。政府と規制当局は、銀行システムを善導し、投資銀行と商業銀行を分離し、法外な俸給とボーナスを終わりにし、結論的に実体経済に資金を流すものと想定されていた。われわれが知ることになったすべては、銀行システムへの善導の代わりに、一連の銀行破綻と大々的な詐欺によって明るみの下に引き出された、長い一覧表になる着服だった。
オバマ大統領期、米国下院は、一つの法――規制を強化し米国の銀行を統制するためのドッド・フランク法――を採択した。そして今トランプは、それを解体し、ドッド・フランク法の名前の下に取り入れられた僅かの政策と規制手段を取り消す最中にある。
第二に、中央銀行――米連邦準備制度理事会、欧州中央銀行、イングランド銀行、日本銀行――は、銀行に大量の流動性を注入し、MBS(抵当権を裏書きとした有価証券)やABS(資産を裏書きとした有価証券)といった極めて有毒な商品を買い入れることから構成される、量的緩和策を実行した。中央銀行はこれらの商品を銀行から買い取り、交換に彼らに大量の貨幣を与えた。しかしそれらの銀行は、このマネーを生産者――中小規模の生産者、あるいは家計――に貸し出すためには使わなかった。それらは今も、このマネーを投機活動を高めるために――たとえば、株取引として自社株を買い戻すために――使い続けている。これは、およそ四年間の間で、株取引における新たなバブルの発展に導くことになった。
近い将来の新たな株式市場崩壊という現実的リスクがある。これがいつ起きるかを予測することは難しい。しかし絶対的に明白なことだが、株式取引額の計上は全面的に誇張され、それは大企業資産の真の価値には対応していない。遅かれ早かれ、新たな金融危機が起きることになるだろう。
同時にまた、金融と非金融の大企業が抱える民間債務に対しても大きな懸念がある。これらの企業の債務は、近年途方もなく増大し、その結果、企業債券市場の分野にはもう一つのバブルがある。これらの債券は、一定の長期を基準にマネーを借り入れるために大企業が発行している。
金融市場のこの分野には新たなバブルがあり、それはもう一つの危機の可能性だ。債券市場の以前の大崩壊は一九八七年に起きた。将来われわれはおそらく、当時より強くもっと危険となるはずの、この分野における危機を抱えることになるだろう。

公的債務の真実暴露非常に重要

――CADTMとこれまであなたが続けてきた仕事に移りたい。あなたは、資金の行き先、それが住民多数の要求に向け使われているのか否か、を考慮した場合、現存の債務の多くは正統性のない債務だ、と語っている。われわれが債務問題を考える際、国際的にも国内的にも、諸政府や銀行はめったに情報を共有しようとしない。それは時として秘密の法律制定で守られている。インドでは、マネーの行き先に関しまったく不透明であり、市民が何らかの情報を要求できる可能性を得たのは、二〇〇五年の「情報権法」の後はじめてのことだ。この正統性のない債務に関し、われわれはどうすれば本当の姿をつかめるだろうか?

 銀行と公的当局がそうした詳細の公開を回避しようと努めているのははっきりしているが、それでも情報を得るための手立ては数多くある。あなたはインターネット上で大量のデータを見つけ出すことができる。問題は、中央銀行のウェブサイト上で提供される情報を正しく解釈することだ。
われわれはまた、いくつかの大銀行、投資企業、KPMG、PwCといった監査企業の調査機関が提供する情報も利用できる。挑戦すべきことは、債務が目的とされていることにどう使われているか、どのような利率でか、マネーを受け取っている者は正確には誰か、世界銀行、ADB(アジア開発銀行)、IMFのような多国間機関が課した条件はどのようなものだったのか、を理解しようと努める必要性について、一層多くの市民を納得させることだ。
これらの契約や貸し手が課す諸条件を分析し、政府が実行する政策の本当の意味を理解することが重要だ。彼らは、彼らが現実には別の目的のためにそれを使う場合でも、「われわれはある目的のためにカネを借りているのだ」と言う可能性があるのだ。CADTMメンバーとしてのわれわれの挑戦課題は、債務の正統性あるいは正統性欠落に関し一つの結論に達するために、市民が債務蓄積を問題にしようとすることを助けることだ。
たとえばCADTMは、ギリシャ議会議長の協力の下に、ギリシャの公的債務に関する真実委員会と活動を調整した。CADTMには国際的なネットワークがあり、市民が債務を監査する手引きを発行し、二〇〇七〜八年にはエクアドルで、次いで二〇〇八年にはパラグァイで債務監査に参加した。われわれはスペインでは、二〇一一年にさまざまな公共広場を軸に組織された反緊縮運動のような、市民の諸決起を源とする新しい政治勢力と共に活動している。これらの勢力は、彼らが多くの自治体選挙で伝統的な諸政党を打ち破った後、債務の市民監査を実行しようとしている。これらの新政治勢力の意志にもかかわらずわれわれが確信していることは、この目標は民衆運動の圧力の下でのみ実行可能、ということだ。これこそわれわれの活動の意味だ。
公的債務の高いレベルは、教育、医療、市民の安全、職といった面で人権を満たすことを市民に保証する上で、公的当局の能力を引き下げている。それゆえに、もしわれわれが民衆の必要を満たすために財源の大きな部分を解放したいと思うならば、債務返済に使われる巨額な公的資金という問題に取り組むことは決定的だ。

右翼の台頭に対抗する道はある

――あなたは、巨額な公的債務は公的諸機関、統治能力などを弱める、と語り続けている。この傾向につきまとうあり得る政治的波及について、少しばかり話せるか? この二、三年われわれは、欧州や他の多くのところで、ウルトラ民族主義の諸勢力がより多くの政治的戦場で地歩を得るのを見ている。金融危機、債務積み上げを源とする公的諸機関の弱体化、そして極右の台頭、これらの間につながりはあるのだろうか?

 まさに、つながりがあるのははっきりしている。同時に、全般的傾向は常に右翼的政策に有利な方向を向いている、ということを私は確かだとは思わない。それは情勢に依存している。欧州と北米ではっきりしていることは、市民の多数派は伝統的諸政党に満足していない、ということだ。
右翼諸政党は、現在の経済情勢を厳しく非難し、民族主義的、排外主義的、レイシズム的、反移民の諸政策を提示し民衆的支持を集めることに成功した。しかし同時に、真の進歩勢力が市民に別のオルタナティブを説明しようと挑むならば、彼らも重要な支持を集めることができる。その一例こそ、昨年の英国におけるジェレミー・コービンのキャンペーンだ。
保守党は、ブレグジット一年後には勝利を得るだろうと考えて、総選挙を前倒しした。コービンは、労働党左派の活動家として、鉄道、郵便サービスの国有化、学生債務問題、自治体債務問題解決に対する資金投入、反レイシズムと国際主義の立場の防衛、といった急進的な政策を提案した。そして労働党支持票は増大し、下院議席を三〇増やし、他方テレサ・メイは 一三議席失ったのだ! 英国では今、左翼が場を得、右翼諸政党はそうなっていない。
米国では、情勢は矛盾をはらむものになった。民主党が大統領候補として仮にバーニー・サンダース支持を決めていたとしたならば、民主党はトランプを押しのけて選挙に勝利を収めた可能性がある。民衆から見て、ヒラリー・クリントンは既得権エリートの代表そのものだったのだ。トランプは変化の可能性を代表し、サンダースもそうだった。すなわち、サンダースがもし民主党から選ばれていたとすれば、民衆を利するサンダースの約束が、トランプの芝居がかった身振りよりもはっきりと信じるに値するものであるということを前提とすれば、彼が勝利者となった可能性は確かにあったのだ。
金融ビジネスが見せるスキャンダルに満ちた進展、そして伝統的諸政党に対する大企業と銀行の影響力を理由に、いわゆる右翼ポピュリズムの運動が場を獲得し続けていることははっきりしている。しかしその情勢は、左翼が別の展望を提示する場合、右翼を大いに利するものとはならない。その時左翼は、勝者となる可能性を得るのだ。

銀行の危機の原因把握こそ必要

――インドにおける銀行部門の危機――何十億ドルという大枚の巨額の詐欺を特徴とする――を受けて、多くのエコノミスト、政策策定者は、銀行のさらなる私有化に向けてこれ以上好都合な時期はこれまで一度もなかった、と力説している。あなたの考えでは、それは機能する可能性があるか?

 現在の公的銀行は本当のところ住民多数の利益になるようには行動していない、ということが真の問題だ。問題は、これらの銀行の公的性格からではなく、それらが民間部門と似たふるまいを採択してきたことから発している。それらは、今も民衆に対するサービスという責任を自ら引き受けてはいない。そして、公的金融部門に対する市民の統制の欠落がある。公的金融部門は、民間銀行部門同様、秘密性を支持し、統制を受けないことを欲している。
われわれの挑戦課題は、銀行部門の公的性格を改良し、それを具体化することだ。そしてインドの場合では、公的銀行部門を単に守ることではなく、それを深く変革することだ。この部門は諸々の投機活動と常連優遇を止めるべきであり、経済と住民の生活条件を改善する有益な計画を求める自治体当局と家計に貸し付けを与えなければならない。私は銀行の社会化を主唱し続けている。その意味は、市民、銀行職員、そして地方当局が銀行の諸活動を統制しなければならない、ということだ。公的銀行は、現場の経済に介入し、経済を人びとの必要に一致させ、それが発展するのを助けなければならない。

市場通じた貧困解決というワナ


――スリランカでは、マイクロクレジットと私的債務発生に関する認識の高まりがある。これは、世界の南では一つの傾向なのか?

 マイクロクレジットは、世界の南のどこでも、ラテンアメリカ、アフリカ、アジアでその活動を広げ続けている。巨大な宣伝作戦とマイクロファイナンスに対する極めて強力な制度的支持――まさに世界銀行からほとんどの各国政府にいたるまで――があり、そしてそれらは、貧困層に対する彼らを市場に結びつけることを通じた解決策、と描かれている。
民間の大銀行はますますマイクロファイナンスに関与している。われわれはまさに、マイクロクレジット産業について語ることができる。それは国際的に発展させられ、支援され、組織されている。みなさんの前には今世界で、マイクロクレジットローンの借り手が一億二〇〇〇万人いる。そしてその八一%が女性なのだ。

――しかし、それが世界の南でより拡大しているのはなぜなのか? それはほとんど、あたかもそれが発展への熱望をもつそうした諸国を標的にしているようだ。

 世界という尺度では、成人の二〇億人が銀行口座を持たず、そのほとんどは世界の南で暮らしている。マイクロファイナンスは、こうした成人を金融市場につなぐことを狙っている。マイクロクレジットは、彼らを経済のグローバリゼーションにつなぐ鎖だ。それは、彼らを資本主義システムあるいは商業システムに全面的に合体させるツールだ。

労働者運動は債務問題も課題に


――われわれが極右の台頭について語り合った時、あなたは進歩勢力がオルタナティブを提起することもあり得る、と語った。あなたはまた以前、労働者階級の運動と労組は彼らの闘争を広げ、人びとが債務に入り込む問題を統合する必要がある、とも語っていた。

 まさしくそうだ! サッチャーとレーガンが一九八〇年代初頭に権力の座に到達して以後、左翼のわれわれは衰弱した。社会的諸権利を敵視する大資本の全般的攻撃が起きてきた。伝統的な労働者階級が影響を受けてきた。ますます多くの労働者と被雇用者の下には極めて不安定な職しかない。労働者階級の正規な部門にいる層は、ほとんどの国では少数派だ。それをあなたはインドについて知っている。
この傾向はまた、米国や欧州諸国の多数といった諸国でも真実だ。つまり、不安定職やパートタイムの職の増大だ。賃金が下がり続けているために、ますます多くの人々が債務に入り込んでいる。消費の可能性を維持するために、ますます多くの人々が債務を負うようになった。
それはたとえば米国で、サブプライム危機で極めて鮮明だった。二〇〇六〜七年のサブプライム危機の爆発後、米国では一四〇〇万の家族が彼らの家から追い出された。
スリランカでの訪問で私に示されたことは、二〇〇九年の内戦終結後マイクロクレジット産業がこの国でその活動をどれほど急速に広げてきたか、またそれがどれほどまで残酷になり得るか、ということだ。実際、人びとは、四〇%から六〇%になる利子を払う必要があるならば、債務の返済など不可能なのだ。この利率でマイクロローンを提供することが、過剰債務の条件を生み出し続けている。
人びとは、以前の債務返済のためにもっと多くのマイクロクレジットローンを得なければならない。それは、その多数が女性であるこの状況の犠牲者に対し、途方もない問題を引き起こしている悪性のサイクルだ。証言を聞けば信じ難いものがある。女性たちは私に、マイクロファイナンス企業は稼ぎがまったくない人たちにローンを与え続けている、と語っている。何らかの稼ぎがなければ債務返済は不可能だ。こうして彼らは、彼らがもつことのできる僅かの資産をも失うことになるだろう。つまり彼らは、家や野菜を栽培する小さな土地をもっているならば、債務の返済のためにそれらを失うことになるだろう。
世界の北と南の双方で、労働者運動に課されていることは、家計が抱える民間債務の問題を考慮に入れることだ。債務を返済する必要があるために巨大な圧力の下に置かれた人びとにとっては、社会運動やストライキに参加することが一層やっかいなことになっているからだ。(「ヒンドゥ」紙より)(「インターナショナルビューポイント」二〇一八年六月号)  


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