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    かけはし2018年7月16日号

周辺住民と共に即時廃炉を


東海第二原発

危険きわまる老朽原発動かすな

日々強まる再稼働反対の声



再稼働に向けた
国の三つの認可

 七月四日、原子力規制委員会は日本原電が二〇一四年五月に提出した東海第二原発の「設置変更許可申請」を、新規制基準に「適合する」とした審査書案を了承した。審査書案は三〇日間のパブリックコメントにかけられ、八月下旬にも審査書案を正式決定とも報じられている。決定後、原子力委員会、経済産業相への意見聴取を経て確定する。確定すれば、東日本大震災で津波被災した原発としてはじめて。福島第一原発と同型の沸騰水型炉(BWR)では柏崎刈羽の二基に続き三基目となる。柏崎刈羽の再稼働時期は見通せず、「東海が最初のBWR再稼働」と報じるメディアも多い。
審査書の確定がそのまま再稼働の「合格」とはならない。日本原電が「新規制基準申請」と同時に行った「工事計画申請」と昨年一一月に行った二〇年の「運転延長申請」の計三つの認可が必要となる。東海第二の運転開始から四〇年目となる今年一一月二七日までに「合格」させなければ「廃炉」となる。

拙速な審査は
住民の命を奪う

 「関西電力+自殺」をキーワードにWeb検索をすると上位に「夢もなく怖れもなく―労働研究五〇年」という熊沢誠さんのホームページがみつかる。老朽原発の再稼働と延長を問う中で避けられない事件だ。
――二〇一六年四月二〇日、関西電力の技術畑の課長、四〇代のAさんが出張先の東京のホテルで自殺を遂げた。どの方面からの申請だったのかわからないが、この事件について敦賀労働基準監督署はおよそ半年後、これを過労自殺と労災認定している。Aさんの死がマスメディアに報道されるのは、この労災認定後のことである。
――すべての審査期限は一六年七月七日である。この期限までに合格・認可が果たされなければ、とくに審査のきびしい四〇年以上の高浜の老朽原発一の1・2号機は、廃炉の可能性がきわめて高かった。
――Aさんが自死したのは、「新規制基準にかかる審査」に「合格」したその日、一六年四月二〇日である。労災と認定されたのはあまりにも当然であろう。そして彼の死後一カ月の五月末、関電は工事計画の補正書類を規制委に提出し、六月二〇日、再稼働・老朽原発の運転延長の認可を受けている――。
東海第二の審査では、担当の複数の原電社員が三六協定の上限を超える違法残業をしていたことが四月二四日に報じられた。今年一月九日、中央労働基準監督署から定期的な立ち入り調査を受け、二月二三日に是正勧告を受けていた。
規制委員会の定例会議で東海第二の審査遅れと「打ち切り」の話題が上るのが四月後半から。規制委員会は他の審査担当を割き、東海第二担当を増員させた。東海第二の審査書案を作成した人員は六ケ所再処理工場の審査加速に充てられたようだ。

 審査書案の問題
点はどこに?

 東京新聞は解説記事で「原電は出来の悪い受験生で、規制委は何とか合格させようとする親のようだ」という審査経過を監視を続けてきた住民の声を紹介しながら、拙速さと次の審査書案の問題点を取り上げた。
――規制委は厳格審査が求められているのに、常に「時間切れ」を意識。防潮堤の議論では、原電は当初、液状化対策を省いた設計を示したが、規制委は「液状化の有無を議論している時間はない」と警告。審査をパスさせるため、地盤改良を前提にするよう迫り、要求を丸のみさせた。
――原発に張り巡らされたケーブルについて、規制委は「燃えにくいケーブルへの交換が原則」としていた。ところが、他の防火対策で十分だとして、四割弱の交換で容認。原電が対策工事費を賄うため、事故を起こして被災者への賠償を続ける東京電力から支援を受けることの是非にも突っ込んだ議論を避けた。
――時間をかけて念入りな検討が必要な住民の避難計画は、規制委の審査の対象外で、自治体に丸投げされている。周辺一四自治体から計画が出そろうめどは立っておらず、住民の不安は置き去りにされたままだ――。
パブコメは「科学的・技術的な意見」に限られており、規制委員会は「社会からの批判」への直接的な対応を行わず、あらかじめ逃げ道をつくろうとしている。

責任をたらい回
しする官僚たち

 規制委は審査書案を了承した四日、世耕経産大臣に「原規規発第一八〇七〇四二号」を提出した。東電と東北電力の資金援助の確約書を添付した文書は、大臣が柏崎刈羽の認可時の意見聴取の際の回答で示した「同社(東電)がこれら(審査書など)をしっかりと遵守していくよう、適切に監督・指導していく所存である」と同文の回答を行うよう誘導する内容だ。いわば規制当局が推進当局に贈る指南書だ。この前日、二〇三〇年度の電源構成に占める原発の比率を「二〇〜二二%」にするとの政府目標を掲げた「第五次エネルギー基本計画」が閣議決定されたばかり。推進当局の目標達成を規制側が後押しするかのようだ。
三・一一に原子力災害対策本部の菅直人が原子力緊急事態宣言を発令されていらい解除されていない。原子力防災は内閣府が所管。原子力防災会議の議長は内閣総理大臣が、副議長は、内閣官房長官、環境大臣や原子力規制委員会委員長が務める。
避難計画作りが義務付けられた三〇キロ圏の一四市町村のうち、策定を終えたのは笠間と常陸太田、常陸大宮の三市のみ。課題は山積している。
更田委員長は当事者のふりをして責任回避する発言をしている。
――私も東日本大震災があったときには、東海第二から二キロメートルぐらいのところに自宅があって、PAZ圏内(*)に家族とともに住んでいて、そこに二〇年以上住んでいたわけで、状況は他の発電所に比べても、わかっています〜(中略)〜防災計画を立案する上で、技術的な助言を求められれば、これは内閣府の原子力防災とともに連携して、そういった助言は与えていけるだろう――。
*PAZ圏内:原子力施設からおおむね五キロ圏内。放射性物質が放出される前の段階から予防的に避難等を開始。対象は約八万人にのぼる。

1740億円の
安全対策費は?

 現在の原子力規制庁の安井正也長官は、推進当局の資源エネルギー庁原子力政策課長だった二〇〇四年四月、使用済み核燃料を再処理せずそのまま捨てる「直接処分」のコスト試算の隠蔽(いんぺい)を部下に指示していたことが明らかとなっている。安井から課長を引き続いたのが柳瀬唯夫で、〇六年の原子力産業の国際展開を盛り込んだ「原子力立国計画」のとりまとめ役だった。
その結末のひとつが東芝の破綻である。原発一基一兆円を超える時代となった。
一一〇万キロワット級のBWRの建設費は一九九八年に運転開始の東海第二が一八八〇億円、九九年運転開始の福島第一6号が一八三三億円、同型で最も新しい〇五年運転開始の東北電力東通1号で四二八〇億円だ。東通1号の建設費に東海第二の再稼働のための安全対策費として見積もられている一七四〇億円を加えても約六〇〇〇億円。最新の安全対策技術が詰め込まれた一兆円炉と比べると不安ではないか。
日本原電は二〇二一年三月までに必要な安全対策工事を完了させる方針だ。

公明・保守支持
層のねじれ現象

 昨年八月の県知事選では自公候補(得票率四七・五〇%)が再稼働反対を訴えた現職(同四〇・八五%)と新人(同一一・六五%)を破った(前哨戦については本紙二四八一号参照)。公明党票が明暗を分けた。公明党は前回知事選で自主投票とした。公明県議らの応援を得た現職が自民党からの多選批判を振り切った。昨年は、都議選での自民敗北を受け、公明党中央が県本部に自民候補の推薦を迫った。公明党は「建設後四〇年を経た原発の運転を制限する制度を厳格に適用」と延長については明確な政策をもつ。
四月一四日、水戸市で小泉純一郎講演会が開催された。呼びかけ人の一人である海野市長は冒頭、「市民の命を、地域を守るために、原発は極めて危険な要因と考えるにいたった。小泉氏が原発ゼロと自然再生エネルギーの推進を訴えていることには大いに共感できる」と発言したという。また、中川秀直自民党元幹事長も姿を見せたという。
新潟では県知事選告示前日の五月二三日、長岡市で小泉純一郎講演会が開催された。会場では、野党統一候補の池田千賀子さんと並んで中川秀直と中村喜四郎元建設大臣が座ったという。両人とも科学技術庁長官も務めたかつての核燃料サイクル推進の当事者だ。中村は自民党離党後も小選挙区で自民党を破り続け不敗、民主党解党後にできた「無所属の会」に加わる。また、中村の新旧選挙区内の県議五名で自民県政クラブを構成している。東海第二の審査合格期限は一一月二七日、茨城では県議選の前哨戦がはじまっている。
四月二二日、原発とめよう!東京ネットワークが主催した集会で、東海第二原発運転差止訴訟原告団の大石光伸さんは知事選後の運動では「保守層の支持の必要性を感じている」との発言があった。七月四日に開かれた原子力資料情報室の公開研究会で、元東海村村議で原告団に加わる相沢一正さんは講演の中で、「この九月一日に震災の翌年から続けられている福島県民集会≠フように農漁業者も加わる茨城県大集会の開催を準備している」と参加を呼びかけた。秋に知事選を迎える福島県からも隣県の原発再稼働に反対する声を寄せてほしい。

高まる県民の
再稼働反対の声

 昨年一〇月の総選挙で茨城新聞が行った県民世論調査で、東海第二再稼働反対の意見が前回の二〇一四年衆院選時の五七・六%から五・七ポイント増の六三・三%と、日を追うごとに増していることがわかった。今回の賛成は二一・二%。選挙区別では、茨城五区(東海村と日立市、高萩市、北茨城市)では反対が六六・八%、賛成が一七・一%。支持政党別では自民が反対五九・〇%、賛成三〇・一%。公明が反対五一・〇%、賛成二一・〇%。
他党は反対が七〇%を超え、無党派層では反対六三・三%、賛成一二・八%だった。
国の三つの認可とは別に、地元の「了解」が再稼働の前に立ちはだかる。今年三月に日本原電と締結した新たな安全協定によって、立地自治体である東海村に加え、隣接する日立市、ひたちなか市、那珂市、隣々接する常陸太田市と水戸市の五市が再稼働の拒否権をかちとった。六市村すべての了解が得られねば日本原電は国の三つの認可を得ても再稼働はできない。
水戸市議会はこの六月の定例議会で「住民理解のない再稼働については認めない」とする国への意見書を採択した。賛成一七(全会派)、反対二(無所属と民主・社民フォーラム)、棄権七(保守三会派)で、全員が賛成したのは日本共産党(三名)と公明党(五名)だった。
日々、ハードルは上がっている。
(七月八日 斉藤浩二)



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