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    かけはし2018年7月30日号

“幸せの花”を土足で踏みつぶした


寄稿 (下)

袴田巌さんは無実だ

6・11東京高裁大島裁判長の不当決定糾弾

山崎俊樹(袴田巌さんを救援する清水・静岡市民の会事務局長)

“科学的”という言葉は、真実を見失う

DNAが決め手とされ、DNA鑑定を絶対視した、明らかな裁判官の誤りで有罪となった足利事件と東電OL事件がある。
 実はこの袴田事件も同様なことがある。科学的なレベルは現在とは全く違うが、当時の新聞報道では放火の際に使用された油の分析が、当時県警に導入されたガスクロマトグラフィー分析によって工場にあった混合油と一致したことが報じられ「科学捜査の勝ちどき」という見出しが踊っている。私たちは「科学」というと、客観性が保証されるような気がして、安易に信じる傾向があるようだ。 特に犯罪捜査に使われる「科学」という言葉は、常識では考えられないこと、普通の人の行動ではあり得ないこと……つまり犯人ではないこと、を真剣に考える機会を奪い、「科学」が犯罪を証明したと思い込み、私たちの常識的な判断を奪っていく危険が常に伴うことを考えるべきだ。
袴田さんに関してこの点を見ると……毎日食事で通る裏出入口(裏木戸)にもかかわらず、上の留め金を掛けたまま、扉の下をめくり上げて合計三回も通るとか。工場にはボイラーがあるにもかかわらず、必ず出荷されるとわかっている味噌タンクに衣類を隠すとか。 合計三回も行われたズボンの装着実験で全くズボンがはけないこととか。極めつけは、家宅捜索では手袋とベルトが押収目的物にもかかわらず、ズボンの共布(もちろん新品)を味噌まみれのズボンと一体のものと警察官が判断し、押収し、翌日には検察官が冒頭陳述を変更するなど……これらは、普通の市民感覚からすると、明らかにおかしなことなのだが「科学」鑑定で油分が一致すると、“工場関係者が犯人に違いない”となり、袴田さんの実家から発見押収された共布が味噌漬けズボンと一致すると“袴田巖が犯人だ”となる。まさに、「科学捜査」という言葉で、他の証拠物……特に袴田さんが犯人でない証拠や真犯人に繋がる証拠……の価値を低く見たり無視したりしていくのだ。

大島裁判長は無知なのか、無知を装っているのか


即時抗告審では、袴田さんに対する拷問や暴行の事実もまた明らかになった。特に、前述した袴田さんの自白によって見つけたとされる右足の傷である。
一度でも逮捕された者なら、その身体検査がどのようなものかわかるだろう。尻の穴まで見る徹底的な検査である。まして、殺人容疑で逮捕した袴田さんの身体検査がどのようなものか、足の裏の古傷すら記載されているのである。それを大島裁判長は「袴田を全裸にでもしない限りはズボンに隠れている場所の傷まで発見することは困難で……そこまで徹底した検査が行われたとは考え難く……」と、決定書で述べている。刑事裁判官が警察の身体検査がどんなものか知らないはずはないだろう。
はけないズボンも同様である。ズボンの寸法札にある「B」という記号を検察官が色を表す記号と知りつつ、サイズを表す記号と偽って公判で主張していたことが明らかになった。裁判官をだましていたのである。
着装実験(東京高裁での控訴審)ではけなかったのは体型が変わったからであり、衣類の専門家が袴田さんの体型から見て勧めるサイズとベルトの穴の位置から、はけたはずだと断定している。
かつての控訴審で高裁は一九七二年から七五年に三回の着装実験を行っている。袴田さんはその着装実験に向けて獄中で体を絞り、三回目の着装実験時の体型は現役のボクサーそのものである。それでもズボンははけないどころか、太もも部分でつかえて入らないのである。写真は事実を物語っている。大島裁判長は、この着装実験(一九七五年一二月……三九歳)の際の検証調書に「袴田の大腿部上部の周径は五五pであり、同日時点の体重は六二sであって、本件による逮捕勾留前よりも体重が増加していることや、一般的に中年男性が太った場合に腹部や腰回り辺りに脂肪がつく傾向があることを踏まえると、……袴田が本件当時は鉄紺色ズボンをはけたと十分推認できる。」と、不当決定の中で述べている。この写真を見ても、はけないズボンがはけたと言えるのか。

“科学的な手法が確立していない”と断定した高裁決定


東京高裁は静岡地裁が判断したDNA鑑定を、
@独自手法が確立していない
A再現性がない
として、信用性が低くその鑑定結果を採用した静岡地裁の判断を誤りとした。
昨年九月、弁護団の弁護人は再現実験を行い、実際にDNA鑑定の有効性を証明しているが、高裁大島不当決定は「鑑定人の指導、監督の下に行った再現実験は第三者の検証と位置づけられない」と述べている。一方で、裁判所が委嘱した鈴木廣一は、裁判所の指定する検証方法を行っていないことを尋問でこたえている。大島決定は裁判所の指示を無視した検証実験を批判するどころか、その一部をつまみ食いして、再現性がないと決めつけたのである。
実験の経験が無い素人が専門家の指導や監督の下に再現性を証明できたことが最も客観性や普遍性があると言える。それを、「第三者の検証と位置づけられない」と述べる裁判官の考えこそが偏見に満ちている。
その偏見の元に、みそ漬け実験の色をも否定した。味噌は時間が経過すると色が濃くなり、味噌に漬かった衣類は味噌と同色になり、血液は黒くなる。これは動かしがたい事実なのだ。実際、その事実を高裁大島不当決定では、五〇年前のカラー写真の退色や色の再現性、当時の従業員の検察官に誘導された供述調書の内容でごまかしている。実際、カラー写真の保存性は極めて良く色の再現性や退色を指摘するのは困難なのだ。
また、私たちと同様の実験をさらに大がかりに行い、その結果は私たちと同様になった。誰が行っても、事件を経過すれば味噌の色は濃くなり味噌に漬けた衣類は味噌色に染まり、衣類に付着している赤い血液はその色が黒く変化していく事実は変わらない。大島決定は、検察の実験結果を完全に無視した。無視することによって私たちの実験の正しさも否定したのである。

忖度決定そのものである

 DNA鑑定の有効性を否定したため、他の証拠も否定せざるを得なくなった今回の不当決定には、裁判官の客観的な判断を押しつぶす大きな力が働いているとしか思えない。具体的には、
(1)A鑑定を絶対につぶさなければならない検察官の思惑……足利事件で採用されたDNA鑑定は誤りであったことが明らかになり、菅家さんは無罪が確定した。同じ手法の鑑定、飯塚事件の久間さんは死刑が確定し、検事総長までのぼりつめた大野恒太郎が刑事局長の時に久間の死刑を執行している。
飯塚事件は現在再審請求中だが、そのDNA鑑定はA鑑定人が行っていたこと。A鑑定の正しさを認めると、飯塚事件の久間さんの再審請求に重大な影響を与える。
(2)警察・検察の大がかりなねつ造や証拠隠しを認めることになり、その結果無実の袴田さんの人生を奪ってしまった、という国家権力の重大な責任問題に発展する。
(3)釈放から四年を経過し、いまだに袴田さんは妄想の世界と現実の世界にいることで、死刑制度の維持が困難になり、特に死刑確定者の長期間の処遇に関して法務省や検察当局の責任問題に発展する。また、国際的な人権問題にも発展する。
(4)過去の死刑再審四事件は、旧刑事訴訟法の影響下のこととして、戦前の国家体制の責任として押しつけることができるが、袴田さんの場合は一九六六年の事件であるため、死刑事件の再審を認めると、他の死刑事件の再審請求に重大な影響を与える。
大島裁判長がこんなことを考え、国家権力(最高裁や法務省、検察庁)に忖度したならば、袴田さんの命をあまりにも軽視した不当決定である。裁判官の独立を保証している憲法にも抵触する。
大島隆明、菊池則明、林欣寛、三人の裁判官は、良心に従い独立してその職権を行い、憲法及び法律のみに拘束され(憲法第77条3項)、今回の決定を下したと言えるのだろうか。それとも、悪魔に自分の良心を売り渡し、権力の顔色をうかがい権力に忖度した判断をしたのだろうか。少なくとも、味噌漬け実験による衣類や血液の色変化や三回の着装実験ではけなかったズボンは誰が見てもその結果を否定することはできないだろう。それを無理矢理否定した今回の決定は、悪魔に良心を売り渡した忖度決定としか思えない。

声明

正義に反するオウム事件
7人の死刑執行

アムネスティ・インタナショナル日本

 さる七月六日に行われたオウム事件死刑確定囚七人の死刑執行に対して、アムネスティ・インタナショナル日本や日弁連から抗議の声明が出されている。アムネスティ・インタナショナル日本の声明を掲載する。(編集部)

 今朝、オウム真理教元代表を含む元幹部7人の死刑が執行されたが、処刑は正義の実現にはなりえない。
 オウム真理教は、199
5年の地下鉄サリン事件のほか松本サリン事件、坂本弁護士一家殺害事件などの凶悪事件を引き起こし、元幹部ら13人が死刑判決を受けた。一連のオウム事件の死刑確定者に対して、今回が初の死刑執行となった。地下鉄サリン事件では神経ガスにさらされて13人が死亡、数千人が被害に苦しんでいる。
 1日に7人の大量処刑は、近年類を見ない。彼らの犯行は卑劣で、罪を償うのは当然である。しかし、処刑されたところで、決して償いにはならない。
 正義の実現には、真相究明が欠かせない。また、すべての人の人権を尊重してこその正義である。 人権を否定し、真相究明の機会を奪う死刑は、正義とは程遠い。
 今朝、処刑されたのは、松本智津夫さん、中川智正さん、新実智光さん、早川紀代秀さん、井上嘉浩さん、遠藤誠一さん、土谷正実さんの7人。執行は、全国の拘置所で行われた。数人が、再審請求をしているものとみられる。
 各国の人権状況を審査する国連の普遍的定期審査で、日本は死刑制度の改革を迫られてきたが、この3月、またもや勧告受け入れを拒否した。
 日本政府は「世論が望む」から死刑執行は避けられない、と繰り返し主張してきた。しかし、本来、国がすべきことは、一歩踏み出して、人権尊重を主導することである。
 アムネスティは、犯罪の性格や犯罪者の特質、処刑方法にかかわらず、いかなる死刑にも反対する。過去40年以上にわたり、終始一貫して死刑の廃止に取り組んでいる。
アムネスティ国際ニュース
2018年7月6日

※死刑執行抗議声明における「敬称」について アムネスティ日本は、現在、ニュースリリースや公式声明などで使用する敬称を、原則として「さん」に統一しています。また、人権擁護団体として、人間はすべて平等であるという原則に基づいて活動しており、死刑確定者とその他の人々を差別しない、差別してはならない、という立場に立っています。そのため、死刑確定者や執行された人の敬称も原則として「さん」を使用しています。

コラム

赤坂の夜は更けて

 「緊急連絡!緊急連絡でーす」「一寸待って、メモの用意メモの用意と」「あっ!メモは後々モメるんで〈無し〉で」「あ?。了解、了解」「実は、今夜の赤坂自民亭に晋ちゃん来ます。万難排して参加と言う事」「いいね?!必ずって事ですよね」「そう。〈会合〉と言う事で」「判った!早速連絡するよ」「晋ちゃん!参加」の報に盛り上がる取り巻き、派閥幹部の面々。

〈赤坂自民亭開店準備中〉

 東京・赤坂の衆院議員宿舎。一般人には、外から眺めるだけの豪華な宿舎。表向きは「国民のため日夜研鑽に励む」議員諸氏に巨額の税金で建てた「豪華議員専用ホテル」。いつの間にか「赤坂自民亭」なる居酒屋が開業してたとは?「聞いて驚き見て地獄」。「酒席」を「会合」と呼べば角が立たぬと言うわけだ。
続々と集まる魑魅魍魎。野党時代の「反省の弁」もいつしか、雲の彼方へと消え「強権」「傲慢」「謀略」渦巻く「私利私欲集団」へ。「晋ちゃんでーす!」と万雷の拍手のなか民主主義、立憲主義の破壊者現る!
「神国日本」「世界の真ん中で光り輝く日本」のために身を粉にして働けと「過労死推進法」。「愛国心教育」と「戦争法」で「神国日本」の礎を築くと宣う。片手にグラス、片手でピースサイン「安倍総理初のご参加で大いに盛り上がり!」と「国民主権」「基本的人権」を全否定する闇色応援団の片山さつき参院議員(改憲草案起草委員)。
コップを掲げ嬌声のなかで何度も「かんぱ〜い!」の音頭で、座は大盛り上がり。海外旅行中止にしょげる晋ちゃんを慰めるヨイショの数々!党利党略批判なんのその「身内のために参院6増」はすれど「西日本豪雨」は話題もでない「重大会合」の夜。
キッパリと「日本型ギャンブル法案は他国と違う」。入場料は高額六〇〇〇円。資産も明確に賭博時間も規制する。ギャンブル依存症は「法律で縛る」から発症なし。金のない奴は利用できない仕組みであり、勿論「働き方改革」で『働きバチ』は一生懸命働かせ『カジノ』で遊ぶ余裕は与えない。とどのつまり、老後の不安とかなんとか言って蓄える国民を「ギャンブル」世界に誘導しハゲタカ業者の「賭博資金融資OK」で「骨の髄」までしゃぶりつくすのだ。
「和気あいあいの中、若手議員も気さくな写真を撮り放題!まさに自由飲酒党(失礼。自由民主党でした)」と全国ネットで駆け巡る。ネット炎上!西村康稔官房副長官はIR議連の元事務局長。米国「カジノ業者がパーティ券購入」。供与を受けても「立法過程に影響なし!」と強弁。あれれれれ!「加計問題と全く同じ構図」。《アホノミクス賭博編》IR法成立に突き進む晋ちゃん!がんばれ!と赤坂自民亭での大合唱。新聞読まない人は自民党支持者?麻生の「迷解釈」にも拘わらず予期せぬ「ネット大炎上」に右往左往。
五日一三時二〇分一一万人に避難指示、豪雨と水害のなかで逃げ惑う人々。赤坂自民亭の「会合」は大いに盛り上がり深夜二三時まで続いた。何事もなかったかのように赤坂の夜は更けた。
東日本大震災から八度目の夏。多くの支援を寄せてくれた西日本の方々の被災を想い僅かばかりの義援金を東北の地から送る。(朝田)

 


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