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    かけはし2018年9月10日号

「全国一律」最賃1500円実現を


最賃格差是正、地方から始まる

「上積み」答申が相次ぐ

宮城全労協ニュース322号

(2018年8月18日)

 最低賃金について中央審議会が七月二四日に「目安」を確定したことを受けて、八月に入って各地方最賃審による地方最賃答申が進んできた。今年の特徴は、中央が決定した「目安」を超える答申が相次いだことだ。極度の低水準、広がる一方の地域間格差など、最賃をめぐる問題は数多いが、今回の事態はその深刻さを現場から突き付けるものと言える。宮城全労協による宮城における最賃への取り組みとこの事態に対する論評が「宮城全労協ニュース」(三二二号、二〇一八年八月一八日)に掲載された。同ニュース編集部の了解の下、以下に紹介する。(「かけはし」編集部)

 七月二四日、最低賃金の「中央目安」が明らかになった。「全国平均で二六円」は「過去最大」で「三年連続三%」の引き上げと報じられた。
 菅官房長官のコメントは淡々としたものだった。「三%」は「既定の事実」であって、さほど重要なことではなかったか。しかし「過去最大」などと浮かれているわけにも、いかないはずだ。
 安倍首相は最賃引上げに積極的な姿勢を見せてきた。民主党政権時代の政労使合意への対抗意識が当初の動機だったのだろう。しかし、「先進諸国」のなかで低位な日本の「ランク」付けがいくつも並び、その一つが最賃だ。世界二位(三位)の経済大国である日本が、この最賃額を労働者と労働組合に押し付けてきた。「世界の安倍」を意識する首相は、いまなお「一〇〇〇円」に届かない日本の最賃をどのように説明するか。
 「アベノミクス」は大成功というが、最賃引上げ額は「六年間で一二五円」にすぎない。企業収益の増大と富裕層の蓄財に比して、賃上げも最賃も低すぎる。その差は歴然としているし、物価や税金等の上昇に追いつく額でもない。
 審議が地方に移されて以降、「中央目安」を上回る答申が相次いだ。日経新聞の記事は「最低賃金 地方上振れ/国の目安超え/全都道府県の四割」「深刻な人口流出、背景に」と書いた(八月九日)。「近隣から一円でも上回らなければ人口流出に歯止めがかからない」など、地方各紙は地元の切実な声を掲載した。宮城を含め、その数は最終的に二三県に達した。昨年は四県だった。「中央目安」に抗する異例の事態が起きた。
 「上積み」答申の広がりは「中央目安」への抗議を含むはずだ。しかし、最賃審議は現状、非公開だ。皮肉なことに、地方の危機感を背景に上積みで合意した地方審議会は、その内容を地域社会にアピールできないのだ。
 宮城全労協は労働局に異議を申し出た(八月一六日)。審議会への要請(七月一三日)とともに検討、活用していただきたい。

資料

「宮城県最低賃金改正決定」(答申)への異議申立書

 宮城全労協(2018年8月16日/宮城労働局長宛提出)

 宮城労働局長より二〇一八年の「宮城地方最低賃金審議会の意見に関する公示」がなされました。宮城全労協は「一時間七九八円」とする改正決定(八月三日)に対して、最低賃金法第一二条の規定に基づき、以下のように異議を申し出ます。
宮城全労協はこれまで「一〇〇〇円の実現」、「地方格差の是正」、「審議の公開」を求める見解を明らかにしており、それらの趣旨にもとづき「二〇一八年最賃審議にあたっての要請」(七月一三日)を同審議会に提出しました。
審議会の労働局長への答申は現行の七七二円から二六円引き上げ七九八円というものでした。これは宮城全労協の度重なる主張ならびに二〇一八年審議への「要請」内容と大きくかけ離れており、受け入れることはできません。

 以下、その理由を述べます。

1.地方最賃で相次い
だ「上乗せ答申」

 各地の最賃審議で「中央目安」からの上積みが相次ぎました。沖縄など八県で二円、東北六県など一五県で一円、あわせて二三県です。いわゆるランク付けで見れば、「Dランク」のすべて(一六県)、「Cランク」の一四道県中六県、Bランクで兵庫の一県でした。
このような事態は、地方の深刻な「人口流出」への危機感の表れだと、各紙は共通して報道しています。
河北新報は、中央目安に対して次のように指摘していました。「総務省の一七年の調査では、希望しても正社員の働き口がない人の割合を示す『不本意非正規』が、宮城以外の(東北)五県で一六%前後と高水準だった。やむなく非正規労働に携わり全国最低クラスの賃金にあえぐ就業実態のままでは、賃金の高い大都市圏への労働力流出を加速させてしまう」(「地域間格差の拡大どう防ぐ」七月二七日社説)
雇用流出の危機感がとくに「D」「C」ランクと位置付けられている地方審議会に反映されました。中央目安に対して一円上積みとなった宮城審議会の答申も、そのような全国的な動きの一環です。
そのように「異例」の事態を受けとめたうえで、異議申し出の理由を述べます。

2.いまもなお「一〇
〇〇円」を大きく下回る最賃額

 日本の賃金が低く過ぎる。このことは、労働側がことさらに主張していることではありません。政府も認めているからこそ、「官製春闘」と問題にされながらも賃上げに「介入」してきました。最低賃金への政府対応も同様です。しかし、結果は過去数年の延長にとどまりました。
「アベノミクスの好循環」や政府・日銀の「二%物価上昇」が計画通りに達成されていないのは、消費が上向かないためだ。実質賃金の上昇が必要だ。このような議論が繰り返されてきました。さらに企業収益は過去最高水準を更新しています。にもかかわらず、いまなお最賃大幅引上げが実現していないことは、容認できません。
「一〇〇〇円」はもはや、政府が掲げる最賃額です。各地方審議会答申の全国加重平均とされる「八七四円」、宮城の「七九八円」では到底及びません。
しかも「一〇〇〇円」は「健康で文化的な生活」のための通過点に過ぎず、「一五〇〇円」の実現を「政労使」の総意として掲げるべきです。

3.「ランク付け」の廃止、「全国一律」最賃の声を地方から

 「中央目安」では四ランクの引上げ額は、それぞれ二七円、二六円、二五円、二三円です。こうして自動的に各ランク間の格差が拡大していきます。
このままのすう勢では来年、東京と神奈川で「一〇〇〇円」を超えるだろうという予測があります。多くの地方が七〇〇円台後半や八〇〇円そこそこにとどまっていれば、格差は強く印象付けられることになります。人口流出が「最賃格差」によって煽られるとの不安は、もはや地方にとって、地元経済社会を揺るがす重大案件となっています。異例の地方「上積み」はもはや危機感を越え、「地方の怒り」というべきです。
大都市圏と地方の格差を固定・拡大させるのではなく、地方の実情に踏まえ、その希望に貢献することが最賃審議に期待されています。
「ランク付け」の廃止と「全国一律」最賃への転換を求める声を、地方の最賃審議会があげるべきです。

4.最賃審議の透明性のために、少なくても今回審議の議事録の公開を

 審議の公開、透明性の要求はますます高まっています。「モリカケ」問題に国民多数が不信を持ち続けていることと無関係ではありません。中央であれ地方であれ、投げかけられている問題を審議会が素通りするのであれば、奇異であるといわざるをえません。
「(目安額を一円上回ったのは)民間企業の賃金の上昇率や春闘賃金交渉の妥結状況などを踏まえたとみられる」(河北新報県内記事八月四日)。しかし、現状では、この記事を検証するすべは、読者にはありません。
静かな議論環境や公平性の担保等の説明には説得力はありません。「公・労・使」それぞれの主張、各委員の見解、審議会としての「合意」の経緯が明らかにされるべきです。そうすることにより、地域労働者と地域社会にとって最賃審議がはるかに身近な存在になると考えます。
審議会の熟考を要請するとともに、今年審議について議事録の公開を求めます。

 以上、異議の理由とします。

資料

2018年最賃審議にあたって

宮城地方最低賃金審議会への要請

 宮城全労協(2018年7月13日)

 最低賃金の審議が始まっています。
昨年、宮城全労協は「改正決定」(答申)に対する異議申出として、以下の三点を主張しました。

 @「時間額七七二円」は、今や社会的な要求といえる「一〇〇〇円」から大きく離れた額であり、容認できません。「どこでも、誰でも一〇〇〇円」の即時実現を求めます。

 A(宮城の答申では)ランク付けされた「中央目安」からの引上げもなく、「地域格差」が今年も拡大することになります。

 B審議の非公開が今回も続いており、改善もなされていません。

 昨年度最賃改定の結果は、全国加重平均八四八円、一番低い県で七三七円、宮城は七七二円となりました。
最賃法第一条は「賃金の最低額を保障することにより、労働条件の改善を図り、もって労働者の生活の安定、労働力の質的向上および事業の公正な競争の確保に資するとともに、国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする」としています。上記の改定結果は、この目的に沿うものではありません。
全国加重平均八四八円では、一ヶ月フルタイムで一七三・八時間働いても一四七、三八二円にしかなりません。一七七万円弱の年収となり、「働く貧困層」といわれる年収二〇〇万円にも遠く及びません。そのため長時間労働を余儀なくされ、健康破壊、生活破壊を深刻化させるという事態を引き起こしています。
安倍首相は二〇一五年一一月、「最低時給の一〇〇〇円への引き上げを目指す」と表明しました。時給一〇〇〇円でフルタイムで働いて、ようやく二〇〇万円の年収になります。「最賃一五〇〇円」を求めた若者たちの街頭行進が、社会的な問題として話題になりました。「低すぎる日本の最賃」はただちに、大幅に引上げられる必要があります。
今年春闘において「八時間働いて普通の生活ができる賃金」の要求が各地で掲げられました。私たちも参加して「東北キャラバン」も実施され、各県で労働局への申し入れがなされました。
宮城地方最賃審議会が「どこでも、誰でも最賃一〇〇〇円以上」の声に応えるよう、強く求めます。
また、そのためにも「審議の公開」が実現されるべきです。日経新聞は「審議非公開に疑問の声」と報じました(六月二七日)。記事は「議論の過程が見えず、審議会が形骸化する恐れもある」と言及しています。
公的な手続きや審議の透明性が担保されねば国民の信用を得ることはできない。このことが、日本を揺るがし続けている「モリカケ」問題で問われたことです。最低賃金の審議にあたっても例外ではありません。
よって私たちは、以下のように要請します。

1.時給一五〇〇円をめざし、二〇一八年度には一〇〇〇円以上を実現すること。
2.全国一律最賃制度とすること。
3.中央から地方まで、審議を公開すること。
(以上)



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