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    かけはし2018年9月24日号

地球温暖化がもたらす大規模災害
カジノではなく防災に全力を注げ



巨大台風の「日常化」とベイエリア開発の危うさ

台風21号による関西国際空港の水没は何を示すのか?

大 森 敏 三


 台風二一号による関西国際空港の水没は衝撃的なニュースではあったが、予想されていたことでもあった。開港以来、海上空港ゆえの沈下の進行で、滑走路は海面からわずか二bの高さだったからである。安倍政権と維新の会は、大阪湾ベイエリア(夢洲)へのカジノ・IRおよび万国博覧会の誘致を成長戦略の目玉と位置づけてきただけに、この空港水没に大きなショックを受け、何としても早期再開の格好をつけようと必死である。しかし、今回の事態は、気候変動による「異常気象」の日常化だけでなく、ベイエリア開発の危うさをも暴露したものであり、われわれはカジノ・IRおよび万国博覧会の誘致中止を強く訴えていかなければならない。

気候変動の現れとしての台風巨大化

 九月四日、台風二一号が「非常に強い勢力」を保ったまま、徳島に上陸し、さらに神戸に再上陸して、関西地方を中心に大きな被害を与えた。この台風は、猛烈な風雨をもたらし、関西国際空港における瞬間最大風速五八・一bなど、各地で観測史上最大という風速を記録した。また、台風が通過した地域を中心に、一時間に一〇〇ミリb近い集中的な降雨をも記録したのである。
台風二一号による風雨は、七月の西日本豪雨と違い、上陸後にスピードを速めたこともあり、時間的には短い間だった。筆者が居住する大阪北部では、朝には晴れ間もあったが、正午前から急に風雨が強まった。そして、午後二時過ぎには「台風の目」に入り、一時的に風雨は収まったが、その後夕方まで吹き返しによる強い風雨が再び吹き荒れた。かつて経験した第二室戸台風(一九六一年)を思い起こさせるものだった。
近年、台風の巨大化、発生場所の北上、勢力を保ったままの日本上陸という現象が頻発している。これは決して偶発的で一過性のものではない。日本周辺での海水温上昇がその一因と考えられている。日本周辺の海水温は、とりわけ一九九八年以降に上昇傾向が顕著になっている。台風(サイクロン)の巨大化は、フィリピンで大きな被害をもたらすなど、世界各地で起きていることであり、明らかに地球温暖化による気候変動の一部である。地球のエコシステム自体に亀裂が生じているのである。

現実の問題としての気候変動・環境破壊


マルクスは、地球のエコシステムを「人間と自然との間の物質代謝」としてとらえていた。
この物質代謝の「撹乱」ないしは「亀裂」によって環境破壊が起こると考えていたのである。そうした環境破壊は、歴史貫通的なものであり、資本主義に先立つ諸社会においても起きていて、多くの文明の滅亡・衰退を招く要因となっていた。しかし、短期間における利潤追求を唯一無二の目的とする資本主義システムは、この「人間と自然との間の物質代謝」にかつてない「亀裂」を生じさせた。それは拡大する一方であり、すでに「危険水域」に入っている。
この点について、第四インターナショナル第一七回世界大会決議「資本主義による環境破壊とエコ社会主義オルタナティブ」は次のように指摘している。
「人間が地球システムに及ぼす圧力は、(中略)二一世紀初頭には、きわめて警告すべきレベルに到達した。そして、ほとんど全ての領域において高まり続けている。限界値はすでにいくつかの領域において超えられており、とりわけ大気中の温室効果ガスはそうである。この増大しつつある量的圧力は、あらゆるところ、ほとんどの分野で突然に(数十年以内に)大部分は不可逆的になりうる質的転換へと導いている。地球システムは、その後、非常に異なった地球物理学的状況と生物多様性の一層の減少によって特徴づけられる新たな動的均衡の状況に入るだろう。少なくとも、この新たな状況への移行は、他の生物種に対して及ぼす結果だけでなく、数億人の貧しい人々、とりわけ女性、子どもたち、高齢者の生命を危険にさらすことになるだろう。最大限、それは人間という種の崩壊の原因となる可能性がある」。
地球温暖化による気候変動は将来の問題ではなく、すでに現実の問題であることは、グローバル・サウスのクライメート・ジャスティス(気候正義)活動家があらゆる場で、口を揃えて訴えてきた。今回の台風二一号は、それが単にグローバル・サウスの問題ではなく、いわゆる先進資本主義国においても、現実の問題となっていることを明らかにしたといえる。日本における集中豪雨の広域化・長期化・激甚化、そしてヨーロッパ・アメリカにおける大規模な山火事、猛暑、洪水の多発も同様である。

 関空の水没は地盤沈下が原因

 台風二一号は、海上空港である関西国際空港に深刻な打撃を与えた。「想定外」の高潮により、一期島にあるA滑走路や駐機場、第一ターミナルビルの地下が海水に覆われ、滑走路は最大五〇aも冠水した。水が引いた部分も塩分を含んだ泥がかぶった状態にある。地下にあった電気設備が破損し、第一ターミナルビルは停電が続いた。空港の作業用車両の多くが海水に浸かり、航空機を誘導する設備などにも故障が生じた。乗客が飛行機に向かって通行する搭乗橋は多くが損傷し、整備工場や倉庫も浸水した。連絡橋の破損とは別に、JRと南海が乗り入れる鉄道線路も数百bにわたって水没した。
その主要な原因は、関空の構造的欠陥にある。つまり、空港島の地盤沈下が止まらないことである。関空の発表でも、一九九四年九月の開港から二〇一七年一二月までに、一期島で平均三・四三bが沈下し、二期島も供用開始から一〇年で平均四・一四bの沈下が見られた(関空HPによる)。
A滑走路は、海面からの高さがもっとも低いところで二・〇九bしかなく、設計よりも二b低くなっている。別の資料によれば、海面から一・四bの高さしかない部分もあるという。いくらジャッキで護岸をかさ上げしたとしても、沈下自体は止まっておらず(毎年六?七aずつ沈下)、根本的な解決にはならない。すなわち、この程度の台風が来れば、何度も水没する可能性があり、そしてその可能性は年を経るごとに高くなっていくのだ。

 関空閉鎖の影響と政府の対応


加えて、ほぼ唯一のアクセス手段であった連絡橋にタンカーが衝突した。台風が接近しているにもかかわらず、その直前まで航空燃料を陸揚げしていたため、関空と対岸の間に錨を下ろさざるをえなかったのではないかとも言われている。
衝突の結果、関空行きの南側道路(下り線)の橋桁が一車線分横にずれてしまった。二・五b下の鉄道線路の橋桁も五〇センチ横にずれてしまい、下り線道路と鉄道はいまも通行止めのままである。(関空運営会社の発表では、鉄道は二一日に運転を再開するという)【編集部:関空への鉄道再開は、前倒しされて一八日始発からとなった】。
このため、四日の時点で関空に滞在していた乗客は、数十時間も足止めされ、ようやく五日夜遅くにほぼ空港外に脱出することができた。空港で働く労働者は、乗客対応、被害の調査、施設・設備の点検などに忙殺され、六日になってようやく空港から出ることができた労働者も多かった。
関空は、被害の少なかった第二ターミナルとB滑走路を使用して、九月七日から国内便の一部、八日から国際便の一部の運行を再開した。しかし、ほとんどが関空第二ターミナルに拠点を置くピーチ・アビエーションの運行であり、JAL・ANAは再開したというシンボリックな意味で、一便ずつ飛ばしているだけである。海外の航空会社のフライトは、同じく第二ターミナルを従来から使用していた中国・春秋航空を除いては、一便も飛んでいない。
関空の三日間におよぶ閉鎖とその後の間に合わせ的再開による影響は、すでにさまざまな形で拡がっている。報道でも、ミナミの街から外国人観光客の姿が消え、商店・レストランなどの売上げ大幅減、ホテルのキャンセル続出、ツアー中止などが報じられている。航空貨物の途絶は、電子部品の輸出入をはじめ、国際的なサプライ・チェーンに大きな打撃を与えている。
この事態に対し、政府・官邸の対応はある意味、素早かった。それは、豪雨予想のさなかでの宴会や災害対策本部設置の遅れなどを批判された西日本豪雨の際の対応とは大きな違いだった。
毎日新聞(九月八日付朝刊)の記事は、「空港を運営する関西エアポートは当初、一週間程度を見込んでおり、急転直下の再開は政府の強い働き掛けがあった」として、観光を成長戦略に据える安倍政権と万博誘致に危機感を感じた松井大阪府知事の意向が一致したことを指摘している。  「『空港が長期間使えなければ、国際的な信用を失う』。政権幹部らは国土交通省に発破を掛けた。浸水翌日の五日朝、国交省から被災状況の報告を受けた安倍晋三首相の動きは素早かった。関空の早期運用再開と空港で孤立した利用者の救出を急ぐよう指示。首相官邸に、同省出身の和泉洋人首相補佐官をトップとする対策チームを設置して対応に当たった。関空の代替として大阪(伊丹)、神戸空港の発着時間を拡大し、国際線も受け入れる案も動き出した」(同紙)。
まさに、みずからの成長戦略に密接にかかわり、政権の面子がかかる事態には敏速に対応するという安倍政権の性格が如実に現われた対応だったといえる。

 カジノ・IR、万博誘致への
 危機感丸出しの維新・松井知事

 では、大阪府の松井知事はどうだったのか。関西国際空港水没を報道する際、民放のキャスターが「ベイエリアでのIR・万博は本当に安全だろうかと思うのは私だけでしょうか?」と疑問を呈していた。当然の疑問であり、多くの人々がシェアしている疑問でもある。ところが、松井知事はそうではないらしい。
松井知事は、台風二一号で被災した府民へのお見舞いや復旧対策のとりくみをツイートする前に、共産党の中村正男・大阪府委員会副委員長のツイート「関西空港が冠水。一九九四年のちょうど今日、九月四日に開港されてから、懸念されていたことだった。(中略)『夢洲』も同様。なぜこんなところで万博・カジノなのか」にかみついたのだった。
松井知事は「共産党は風評被害をご希望なんでしょうかね?夢洲は関空より地盤が高く問題ありません。今後の対策と復旧も災害直後から実施しています。共産党からは何の提案もありません。応援してくれとは言いませんが、風評被害となる邪魔は慎んでください。」(九月五日)と「風評被害」でカジノ・IR、万博誘致に悪影響が出ることへの危機感を丸出しにしたのである。
さらに、いまだに台風二一号による被害が続く中、大阪で災害復旧の陣頭指揮をとることもなく、七日には沖縄に飛び、沖縄県知事選に自・公・維新の推薦で立候補する佐喜眞候補に対して、日本維新の会代表として推薦状を手渡した。この行動に対しては、大阪維新の会の地方議員も「われわれが台風の被災者のために奔走している中、なぜ松井知事がわざわざ沖縄に行っているのか、疑問だ」と言わざるをえなかった。
これに続いて、九日からは万博誘致対策として、イタリア、デンマーク、ハンガリーの三カ国を回り、ほぼ一週間大阪を離れた。この中では、「大阪が災害に強い都市だということをアピールする」のだそうだ。台風災害で関空が使えないので、中部国際空港から出発したにもかかわらず、である。

 自己正当化と責任逃れに終始する
 橋下元大阪府知事

 大阪湾ベイエリアでは、他にも大きな被害が出た。大阪府庁咲洲庁舎横の駐車場では、台風二一号の強風により数十台の車が吹き飛ばされ、横転・大破した。さらに、咲洲庁舎は強風で大きな揺れを生じ、エレベーターも大半が止まるなど、災害時にもかかわらず、ほぼ機能を停止せざるをえなかった。これは、東日本大震災の際にも露呈された致命的な弱点(長周期振動で一〇分間にわたって最大二・七bも揺れ、約三六〇カ所が破損)であり、そのために維新が主張していた府庁の全面移転は、見送らざるをえなかったのである。
しかし、橋下徹元大阪府知事は、四日のメルマガで「あのときにWTCビルの購入をしていなければ、大阪維新の会も、日本維新の会も誕生せず、そして統合型リゾートや大阪万博の話も何もなかっただろう」と自己正当化と責任逃れに必死だった。
橋下氏は、関空についても自己正当化の発言をツイッターで発信している。「ほんと民間人になってよかったよ。バカな有権者に対しては、きっちりと反論できるし、そんなバカな有権者のために自分の人生を費やすこともなくなった」と大阪府民・市民への悪罵を投げつけた上で、「もし僕が伊丹廃港を叫ばなかったら、関空はボロボロの状態で、その上今回の浸水。二〇〇八年当時の伊丹と関空の状況を改善するのに、僕がやったやり方以外の方法で国政課題に上げて案をまとめるやり方があったなら、具体的に提案してくれ。バカな有権者に付き合うのは、もう懲り懲りだね」(九月七日)と自己正当化と責任逃れ、府民・市民蔑視に終始した。WTC買収と府庁移転についても、同様のツイートを連発した。
維新にとっては、頓挫した咲洲への府庁移転、夢洲へのカジノ・IRと万博の誘致など、ベイエリア開発は、自らの「成長」戦略の生命線である。その資金確保のために「大阪都構想」をあくまで推進しようとしている以上、松井知事・橋下元知事の二人とも、ベイエリア開発への批判は絶対に我慢できないものだったのだ。

 夢洲へのカジノ・IR、万博誘致は
 ただちに中止を


維新がカジノ・IRと万博を誘致しようとする夢洲とは、そもそもどういう場所なのか。三九〇ヘクタールの広さがある夢洲は、大阪湾の埋め立て地である咲洲のさらに沖合に位置し、大阪市が保有する廃棄物(ゴミ)最終処分場である。これまで廃棄物や港内に堆積した汚泥(浚せつ土)、公共工事の残土などで埋め立てられてきた。
すでに先行開発地区には、コンテナターミナルが稼働しているが、全体としてはまだ埋め立てが完了せず、水面があらわになっている地区もある。ここに、カジノ・IR、万博を誘致するのが維新の考えであり、安倍政権もそれを後押ししている。二〇二五年開催の万博誘致については、一一月の万博協会総会での加盟国による投票で決まることになっている。立候補していたパリが、誘致反対の声や財政負担の大きさなどで立候補を辞退したため、ロシアのエカテリンブルク、アゼルバイジャンのバクーと競合している。カジノ・IRについても、アメリカのカジノ業者などが夢洲でのカジノ建設に積極的だと言われている。
台風二一号によって、夢洲も大きな被害を受けた。どないネット(どないする大阪の未来ネット)のブログによれば、夢洲内の信号機や街灯が破壊されたほか、夢洲のコンテナターミナルに積まれたコンテナが散乱し、コンテナ輸送用の設備の中には倒壊したものもあった。しかし、この被害状況は一切報道されなかった。前述の咲洲庁舎横の駐車場での被害を報道する際にも、NHKは「住之江区」としか言わず、「咲洲」とは絶対報じなかった。こうした報道姿勢は、安倍政権や松井知事・吉村市長らへの「忖度」=報道規制であることは間違いないだろう。
すでに述べたように、夢洲はまだ埋め立て途中であり、水浸しの地区や水抜き途中の地区が多く残されている。これから何年もかけて水を抜き、地盤を固める必要があるのだが、仮にこのままカジノ・IR、万博施設を建設するとすれば、「カステラの上に豆腐」を載せる状態となってしまう。まさに関空の二の舞いが懸念される由縁である。
また、大阪市港湾局は、「浚せつ土は、粘性土だから、それで埋め立てた土地では液状化現象は起こりません」と言うが、実際には砂を含む残土も埋め立てに使用されており、液状化の恐れも否定できない。さらに、浚せつ土や建設工事残土に何が含まれているかは不明であり、有害物質の存在、メタンガスなどの発生も考えられる。
夢洲のような埋め立て地が地震にたいしてきわめて脆弱なことは明らかであり、南海トラフ地震などによる津波の対策もないに等しい状況である。こんな場所に、カジノ・IR、万博を誘致する危険性については、おそらく安倍政権や維新も承知しているのではないか。しかし、アベノミクスの破綻を糊塗するために、東京オリンピック・万博などの一時的カンフル剤に頼らざるをえない安倍政権にとって、そして行き詰まった維新府政・市政の「突破口」(実際には突破口にすらならないのだが)としての「大阪都構想」に執着する松井大阪府知事ら維新の会にとって、そんな「不確定な先のこと」(と彼らが思っている)を考慮する余裕はないし、その必要もないのだろう。
「大阪都構想」の本質がベイエリア開発の資金作りにあるということは、多くの学者・研究者が指摘してきたことである。いまこそ「大阪都構想」に終止符を打つためにも、夢洲へのカジノ・IR、万博誘致の中止を要求し、カジノ・万博ではなく防災を、という運動を拡げていかなければならない。
(九月一五日)

コラム

マクワウリの味

 盆棚に備えていた甜瓜(まくわうり)から甘い匂いが漂ってきた。一個三〇〇円。幼少時に井戸水で冷やした甜瓜を母親が人数分に切り分けて食べさせてくれた夏のご馳走の一つだ。ついつい手が伸びたのは懐かしい記憶の仕業だろう。
 今年も記録破りの暑さと真夏日の連続。西日本豪雨、台風21号そして北海道胆振地方を震源とした大きな地震。これまで蓄積した気象データーには無い予想外の台風の動きに翻弄された夏。日本のみならず世界各地で起きている異常な自然環境の変化。深刻な地球温暖化に直面し「水の惑星」で何かが起こっている? 抜き差しならない状況に世界中で「知恵と力」を注いでいる。
 先日、地元紙が「石炭火力新規融資停止へ 国内機関投資家が方針」と大きく報道した。一歩前進と受け止めたい。だが、米国トランプの「環境規制撤廃」の動きに「我が意を得たり」とばかりに国内で石炭火力発電所建設を容認し、途上国への輸出を図る安倍政権の動きは尋常ではない。温暖化が進めば豪雨も猛暑も際限なく増え続ける。国内でも石炭火発建設に反対する住民の運動で計画中止に追い込まれたりしている。世界的な脱炭素社会への動きに最早「安倍のハッタリ」は通用しない。
 そして、仰々しく「復興冠」を被った「東京五輪」。「復興」の心地よい響きを「オブラート」に、湯水のように投入される巨額の金で一夜の夢の饗宴を演出し、夢の境地のなかで「改憲」を成し遂げる腹積もり。五・八万人を超える東日本大震災避難者、九州・中国・北海道でこの瞬間も多くの人々が避難のただなかにいる。五輪前に「仮設の無償貸与打ち切り」。「帰還困難区域」に「復興拠点」を作り「形」を整え世界を騙す算段だ。世界から疑問視される「真夏の大会」は「日本選手に有利」とそのままに、労働者は「サマータイム導入」で酷使され、青年・学生は「交通費、宿泊費なし」の国家的行事への無償労働「一一万人のボランティア」に駆り立てる。小中高生も小旗を抱え「ニッポン」コール動員に駆り出されるのか? さて高齢者はと言えば「熱中症」で倒れる老人が続出し、世界の注目が「高齢化社会日本の現実」に注がれることの無いように「外出禁止令」とするのか? 事態は〈国家総動員体制〉の様相を呈しながら五輪に突き進んでいる。
 そんななか、子どもの貧困が拡がっていると報道された。そして、一人暮らしの老人六〇〇万人、生活保護水準以下で生活する老人は二〇〇万人。「もっと使い道があるのに」「困った人に分けてあげたらいいのに」という巷の声に耳を塞ぐ「聞かざる」政治家。その陰で、国民に恐怖を与えながら軍備増強が着々と進み軍事費がうなぎのぼり。「他国」の陸・海・空を我物顔で行動する米軍を「おかしい」とも思わない「見ざる」政治家。「不平等」な日米関係に無自覚・無関心なサル山のボスとは、どこの山の「ボス」なのか?
 カラカランと氷が鳴った。甜瓜をかじるとほんのりとした甘みが残った。糖度ばかりが強調されるご時世、変わらぬ味も良い。「黒霧」を注ぎながら、物思いにふけった夏のひととき。
        (朝田)


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