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    かけはし2018年9月24日号

米帝国主義による対トルコ経済戦争宣言反対


ギリシャ/トルコ

解放求めるトルコ民衆に連帯を
各帝国主義の覇権追求を許すな

コスタス・コウシアンタス

地域覇権めぐる競合が真の理由


 アルミニウムと鉄鋼の輸入に対する関税を倍化し(各二〇%と五〇%)、トルコにおける経済と外交の戦争を宣言するとした米大統領の決定に続いて、米国とその長年の同盟国であったトルコの関係は、今最悪なものになった。トルコにとってその結果は巨大なものになるだろう。たとえばトルコの通貨(リラ)はドルに対するその価値を一日でおよそ一七%失い、年初以後では対ドル価値が三七%下落している。
 この攻撃を正当化するためにトランプが引き出した理由は、福音派牧師であるアンドレウ・ブランソンの拘留継続だ。ちなみにトルコ政府は彼に対し、フェスラー・ギュレン――トルコ政府の告発によれば二〇一六年の失敗に終わったクーデターの主な推進者であり、彼は一九九九年以来米国で難民申請している――との関係に嫌疑をかけている。
 米国の報道によればそれは事実上、ブランソンが釈放されるまでトルコに対しじりじりと引き上げられることになる、経済と外交の戦争の始まりだ(ワシントンポスト紙)。
 しかしトルコを敵とする帝国主義超大国によるこの経済と外交の攻撃に対する本当の理由は、もちろん福音派司祭の自由といった問題ではない。二ヵ国間関係におけるこの前例のないエスカレーションの本当の理由と根は、米国とEU、そしてこの地域における彼らのもっとも信頼できる同盟国、イスラエル、エジプト、サウジアラビアによる帝国主義的覇権追求計画に反する、中東でのトルコ帝国主義の外交政策における変化に求められなければならない。
 それは、エルドアンのAKP(公正発展党)がトルコで二〇〇一年に権力を掴んだほとんど直後に、諸々のできごとと一体的に始まった諸々の緊張の長期にわたる積み上げに関わっている。そのできごととは、米国の対イラク戦争の中での、インジルリキ基地使用に対する二〇〇三年のトルコ政府による拒否、トルコのEU加入交渉を無期限に止めるというEUの決定、パレスチナ問題に関するトルコ政府のイスラエルとの対立、アラブの春の中でトルコ政府がムスリム同胞団諸政党を支持したこと、難民問題の管理と特にシリア内戦におけるトルコ政府の役割、などだ。最後のものはまた、欧州・大西洋帝国主義とトルコ間の緊張では頂点でもあった。
 トルコ政府は、米国とEU、また中東とシリアにおける彼らと同盟した地域的帝国主義が、それ自身の帝国主義的計画と利害とは対立していると気付くことにより、ロシア帝国主義とイラン(シリア内戦では鍵を握るプレーヤー)との関係を強化しようとしている。それは、トルコ政府にとっては最も重大な問題、すなわち、トルコ資本主義内部を不安定化する可能性があると思われる自治的なシリア・クルディスタン創出、を処理するためだ。

各帝国主義の野望の犠牲は民衆

 トルコ帝国主義と帝国主義超大国のこの対立は、双方の側で等しく反動的だ。あらゆる側(血塗られたアサド体制を保護するロシアとイランの帝国主義を含む)が、この地域の民衆的利害には死を呼ぶような敵だ。
したがって、トルコに対し米国が始めた経済・外交戦争は、民衆の、また民主的な権利を守るためではない。なおかつ何よりもそれは、その犠牲者がトルコの民衆階級になる戦争だ。実際、これらの制裁の全重量を負うことになるのは彼らだろう。
トルコ経済の崩壊――問題の制裁は、そうしたものを使ってトルコ支配階級を恫喝するためにたくらまれた――は、トルコ民衆にとって破壊的な緊縮方策を意味するだろう。それはまた、AKPとエルドアンの政策に対する不同意と抵抗のあらゆる形態を敵視する、トルコ政府による抑圧とより一層高まる専制を意味することにもなるだろう。
ギリシャの左翼と労働者運動は、米帝国主義の金融制裁と対決する鮮明な立場を取らなければならない。
そして何よりも、ギリシャ帝国主義の利益を高めるためにこの攻撃を利用しようと懸命なギリシャ政府の動きに反対しなければならない。
ギリシャ政府は次のように考えている。つまり、米国・EUとトルコ間緊張の引き上げは、ギリシャ帝国主義とギリシャ、イスラエル、エジプト、キプロスからなる連携枢軸にとって、地中海東部、およびエーゲ海におけるその野心を満たすために(地中海東部に関しては、地中海からトルコを排除する排他的経済水域を書き込み、エーゲ海に関しては、そこからトルコを排除するために海軍の管制域を拡張する)、もっと攻撃的に動く上での好ましい環境を作り出す、ということだ。
事実ギリシャ側は、「ギリシャ/トルコ間信頼醸成方策」(MEO)(そこでは中でも、夏季と大きな宗教的祝日の間の軍事演習凍結が規定されている)の無期限凍結という国防司令部(GETHHA)の決定をもって、米国が始めたこの経済的、外交的攻撃に大急ぎで自身の助けを差し出した。
ギリシャとトルコの民衆は、ギリシャ政府が米国の制裁を支えることにより今高めようとしている、こうした競合の犠牲者になるだろう。

まずトルコ民衆との連帯を


当面、ギリシャの左翼と労働運動にとっては、トルコの左翼の側に、またそれと並んでトルコ労組運動、クルド解放運動、他のマイノリティ運動、女性運動、LGBTQIA+運動の側に立ち、権威主義と新自由主義的緊縮に反対する彼らの闘争、自由と民主主義を求める彼らの闘争を支援することが、かつて以上に必要だ。トルコの諸運動に対するわれわれの連帯は、米国の経済戦争の結果を大衆の背に乗せようとのトルコ支配階級の策動に立ち向かう、彼らの動き出しと決意を強めるだろう。
同時にしかしながらわれわれは、米国とEUのゆすりに反対しつつも、望む政治的指導部を選ぶことはトルコ民衆の不変の権利だ、ということを忘れてはならない。その選択が彼らの利益には役立たないとわれわれが確信する場合であっても、われわれには、帝国主義者の覇権を求める政策と提携する意志のある政治指導部を、飢餓の怖れを使って受け容れるよう民衆を強要することをもくろむ、そうした帝国主義諸勢力に反対するこの権利を支持する義務がある。
これはもちろん、どのような形でも、民衆の自由と権利を求めて闘っている人々、クルド民衆、左翼、労働者階級に敵対する、この国の内部でのトルコ資本主義、AKP政府、そしてエルドアン自身の犯罪的な活動をわれわれが見過ごす、ということを意味してはならない。われわれはまた、アフリンとイラク・クルディスタンのクルド民族運動に対するトルコ帝国主義の犯罪的行為も見逃さない。
トルコブルジョアジー、AKP政府、そしてエルドアンに対する反対は、トルコの民衆諸勢力と被抑圧層の仕事だ。われわれの義務はこれらの闘争に対する連帯と支援だ。

自身の政府の野心に反対を


しかしながら、米国政府が現在始めようとしている経済、外交戦争は、トルコの体制の権威主義と軍国主義化を、そしておそらく帝国主義の攻撃という脅威をもち出し、大衆の抵抗活力を弱める彼らの能力をも、さらに強める結果をつくり出すだろう。
それこそが、われわれが決意をもって、米帝国主義がトルコ民衆を犠牲にして課そうとしている経済制裁に反対であることを言明しなければならない理由だ。米国内とEU内の労働者と進歩的な個人に、彼らの政府がトルコの民衆に敵対してもくろんでいる諸計画、そしてそれらの計画に彼らが帯びさせようとしているイスラム嫌悪の空気に反対するよう訴える。
われわれ「自身の」政府の権威主義と軍国主義化に反対する共通の闘争を求め、われわれ「自身の」支配階級の帝国主義的野心に反対して、トルコの民衆、諸々の運動、左翼に向きを取ろう。
国際主義的連帯の事例として、そして戦争と抑圧のない共通の未来、共通の社会主義的展望に向けた、われわれの民主的権利と自由を守り主張する、中東とバルカンの大衆的協力の事例として役立つよう、ギリシャとトルコの民衆的な共通の闘争とわれわれの連帯を築こう。
この呼びかけを届かせるために、われわれの声は今こそ十分に強くならなければならない。(二〇一八年八月一四日)
▼筆者はアンタルシア(ギリシャの反資本主義組織)のカリセア地方支部メンバー。(「インターナショナルビューポイント」二〇一八年八月号)   

米 国

トランプ政権内部の「静かな抵抗」!?

声高い民衆の抵抗を今こそ

デイヴィッド・フィンケル

  ニューヨークタイムズの爆弾記事が明らかにした匿名の「トランプ政権内部の静かな抵抗」について知ることで、われわれ全員はそれで大いに安全だと感じてはいないのだろうか? この記事はわれわれに「彼自身の政権内にいる多くの高官たちは、彼の設定課題の一部と彼のまずい傾向を挫折させるための仕事を、こつこつと続けている」と請け合っているのだ。
 なるほど、「われわれの民主的な諸制度を維持するためにできる限りのことを行うと誓った」こうしたこつこつと働く党より国という愛国者のおかげで、まさに多くのものごと――女性の命、基本的な投票権、拷問の禁止、非白人コミュニティに対する殺人的な警察の暴力からの自由、その他――が、とんでもないお化けの跳梁から守られている。

右翼が待ち望む
核心課題は万全


 しかし匿名の筆者の核心的なメッセージは、大統領執務室内の激しい主観の不安定さから守られ続けているのは、強硬右翼の共和党が設定している課題だ、ということだ。「政権に対するほとんど止まることのない否定的な報道が捉えそこなっている明白な問題がある。つまり、効力をもつ規制緩和、歴史的な税制改革、より強壮な軍、その他だ」と。
 筆者は、トランプ政権が達成したことに関し、効果的な指摘を行っている。「歴史的な税制改革」は、国を破産に向かう道に置き、将来世代向けの社会保障とメディケアの一掃に扉を開いている。「効力をもつ規制緩和」によって、企業の権力は消費者保護の名残を顧みずに勝手にふるまえるほど自由になり、金融機関は、次のメルトダウンに向かって大喜びで突進でき、さらに化石燃料業界は、世界的な気候の破局が不可逆的となる前に、最短のうちに地球を略奪できる。
 最高裁の右翼による確保は次のことを意味している。つまり、企業の権力は塹壕で固められ、民衆による政治的「干渉」から隔離され、公教育は空洞化され、医療は潜在的に、オバマケアの下でそれを受け取っている何千万人からはぎ取られ、ロウ対ウィード判決(中絶容認の州法を合憲とした:訳者)は、共和党の基盤である偏執的宗教的信者への贈り物としてひっくり返される、などの可能性だ。その間に、極度にレイシズム的な(密やかな、また公然とした)諸部分の要求を満足させつつ、ICE(米移民・関税執行局)は移民家族を引き裂き、諸々のコミュニティには恐怖が振りまかれている。

右翼的変革期待
でトランプ浮上


 そうした強い印象を与える達成事項の記録とは反対に、大統領が心理的に問題を抱えているという単なる事実は、一定の不都合なことではあるが、十分に管理可能な問題だ。外国の指導者を暗殺するというトランプの途方もない指令は単純に無視され、NAFTA取り消しという大統領令草案は彼の机から盗み取られ、ウラジミール・プーチンに対する彼の愛着は、「モスクワを説明責任を果たさせるために押さえるよう、行動が取られなければならない」とよく承知している国家安全保障チームによって中立化されている。
 われわれは、トランプは、彼の実に不愉快な特質すべてもったまま、ある種「変革をもたらす力をもつ」大統領としてのいくつかの点で浮上してきた、ということを認めなければならない。そしてもちろんそれこそが、彼が何者であるかを完全にわきまえている共和党指導部が彼に権限を与え続けている理由だ。対比的にバラク・オバマは、結局変革の大統領になることができず、リベラルや進歩的な層の多くが抱いた期待に失望を与えた。

活力みなぎる
抵抗組織化を

 政権の内部的空気がたとえレーム事件(訳注)と生ける屍となって過ごすことの分かれ目に似ているとしても、政権を破裂させる何かが起きるまで、継続できる戦略が先に見てきたものだ。
トランプのふるまいは、共和党の議員たちを選挙にまつわる人事不省に落とすかもしれない。もっとありそうなこととして、何らかの種類の危機――たとえば、次の世界的な金融の緊急事態――が米国の有能な「指導部」を求めて現れるかもしれない。そして、トランプや彼の身内のサークルがそうしたものを提供できるとは、誰一人信じていない。あるいはモラーの特別調査が、トランプ一家を監獄に送る怖れのある告発を行うかもしれない。
その段階では、共和党指導部が――弾劾に関する空虚なおしゃべりがあろうとも民主党ではない――トランプを押さえるために真剣なやり方で動かなければならないかもしれない。しかしそれは、当面しばらくは不明の今後のシナリオだ。
まさに今左翼の焦点は、スキャンダルとセレブのいかがわしさに関する日々の大騒ぎから離れ、労働者階級と抑圧された人々が前にしている命に関わる深刻な問題にしっかりと合わされなければならない。われわれは、決して「静か」にはなりようのない抵抗を築き上げ続けなければならない。(二〇一八年九月七日)

▼筆者は、米国の社会主義組織のソリダリティが発行している「アゲンスト・ザ・カレント」誌編集者。(「インターナショナルビューポイント」二〇一八年九月号)
(訳注)一九三四年六月三〇日の、ナチス突撃隊の参謀長だったエルネスト・レームがヒトラーの命令で同隊幹部たちと共に虐殺された事件。


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