もどる

    かけはし2018年10月1日号

自民党総裁選「安倍1強」体制のゆらぎ明確に


石破票の伸張が意味するもの

改憲への突進を阻止しよう

沖縄の闘いに続き安倍政権打倒へ

予測を超えた批判票増大


 九月二〇日、注目の自民党総裁選が行われ、即日、国会議員と一般党員による投票結果が公表された。安倍晋三首相の総裁三選は盤石と見られていたし、唯一の対抗馬となった石破茂・元自民党幹事長の挑戦は、石破派以外にごく少数の支持しか得られないと見られていた。
 結果は、確かに国会議員、一般党員の投票とも安倍晋三が多数を占めたが、石破は予想よりもはるかに多くの安倍批判票を集めることになった。
 まず国会議員票では、直前まで石破票は五〇票程度と見られていたが、安倍の三二九票に対して石破に投ぜられた票は七三票に達した。党の「若手の顔」である小泉進次郎筆頭副幹事長も石破に投票したことを明らかにした。
 都道府県別の党員投票では、石破への支持が実に四五%に達した、石破は地元の鳥取、隣県の島根以外にも山形、茨城、群馬、富山、三重、徳島、高知、宮崎の計一〇県で多数となり、党員投票の得票率は四五%に達した。その結果、地方票では安倍の二二四票に対して、石破は一八一票に達した。石破は、国会議員票と都道府県票合わせて、目標としていた二〇〇票を大きく越えて、二五四票を獲得した。自民党内の「安倍一強」に対する批判票が、党員の間でも事前の予想を超えて、とりわけ地方で拡大していることがこの石破票の伸長に示されている。
 今回の投票結果は、自民党員や支持者の中でも、「森友・加計」問題に示される「お友達」政治とその強引な隠蔽、さらには大都市と地方の格差、貧困の連鎖、そして沖縄の「辺野古新基地建設」強行や、原発被災地の切り捨て、あるいは改憲・軍拡への突進に対する不安と疑問が脈打っていることを示すものだ。
 それは安倍の長期政権を支えてきた「アベノミクス」の行き詰まりへの危機感、という形でも表現されている。

「アベノミクス」への危機感


 安倍の自民党総裁三選勝利を報じる九月二一日付日本経済新聞朝刊は、「アベノミクス景気難所へ」と題して、安倍政権が直面する危機を世界経済の面から分析している。
 「戦後二番目に長い景気回復がこれまで政権の支えとなってきたが、世界経済の先行きに目を向けると、米中貿易戦争など減速リスクが広がる。長期政権への追い風となってきた経済が逆風へと転じかねない。日本は金融、財政とも政策対応の余地が限られるだけに、経済運営は難所にさしかかる恐れがある」。
 同紙によれば、安倍政権の追い風となったのは海外景気であるとして、次のように述べている。
 「〇八年のリーマン・ショック後、米連邦準備理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)は大規模な金融緩和を実施した。安倍政権の船出は米景気が〇九年からの回復軌道に乗ったころと重なった。トランプ政権の大型減税も後押しし、米景気の拡大は丸一〇年に近づく」。
 しかしこの流れは転換点に達している。中国経済も、過剰債務の圧縮に力を入れたことで成長率は鈍り、投資にブレーキがかかり、景気の減速感が強まっている。中国の輸出が鈍れば部品などの供給網を通じてアジア新興国にも影響が及び、世界経済の勢いがそがれる。経済協力開発機構(OECD)は、九月二〇日に「世界経済の回復はピークを越えた可能性がある」との見解を示した。
 同紙は、「海外からの逆風に耐えるために政策の『のりしろ』が日本は乏しい」ことが問題、と述べ、「景気が腰折れしそうになっても対応余地はほとんどない。あらゆる緩和策は副作用が効果を上回る」「政府が国債の増発で財政出動し、日銀が国債を買い入れる量を増やすという『最悪のシナリオ』が想定される」との野村総研・木内登秀の見解を紹介している。
 「日経」紙が、こうしたアベノミクスの危機を論じていることは特徴的だ。安倍の長期政権を支えてきた「アベノミクス」の「化けの皮」が剥がされることが予測される時、安倍は彼の悲願である憲法改悪を、何がなんでも具体的日程にのぼせようとするだろう。「アベノミクス」の破綻により、自らの政治生命が決定的に崖淵に立たされる前に、改憲を実現することが彼の最大の目標である。それは安倍にとっても「時間との競争」なのだ。

改憲あおる右派メディア

 安倍政権を支えるメディアの旗頭となっている読売新聞は、九月二一日の紙面で「改憲案 臨時国会提示へ」との見出しで次のように書いている。
「自民党総裁選に勝利した安倍首相は二〇日、憲法改正の実現に向けて与党内の調整を急ぐ方針を打ち出した。自衛隊の根拠規定の明記を軸とする条文案を、秋に予定する臨時国会に提示することを目指している」。
「首相は総裁選で、自ら提唱した自衛隊の明記案に異を唱える石破茂・元幹事長を破ることで党内議論を決着させ、憲法改正への推進力を高めることを狙っていた。首相は陣営の当選報告会で、『党内では憲法論争がいろいろあった。事実上、一つの方向が出たと思っている』、と自信を見せた」。
他方、露骨な極右天皇主義の側からの「応援団」である産経新聞は、他紙の社説に当たる「主張」欄(九月二一日)で次のように述べた。
「憲法改正を実現し、日本の未来を切り拓くことは、首相と自民党に課せられた重い責務である。総裁選で首相が約束した通り、憲法に自衛隊を明記する党の憲法改正案を秋の臨時国会に提出してほしい。安全保障環境が激変する中、国民投票で『自衛隊』が憲法に書き込まれる意義は大きい。自民党は憲法改正の国民運動も始めるべきだ。党総裁として首相は先頭に立ってほしい」。「総裁選は告示後の三日間、北海道での地震のため運動が自粛された。日本列島で災害が相次いでいる。『想定外』の災害に備えるため、石破氏が強調した緊急事態条項の創設も急ぐべきだ」。
産経新聞の「主張」欄と同じ紙面に、極右天皇主義の安倍応援団である阿比留瑠比(論説委員兼政治部編集委員)の「極言御免」と題するコラムが載っているが、それは改憲への「挑戦者」である安倍を賛美するアジテーションに貫かれている。

安倍打倒の共同戦線強化を

 こうして安倍首相に新たな三年間の「自民党総裁」としての任期が与えられた今、われわれは改めて、「安倍改憲阻止」の全国運動に総力を挙げることを確認しよう。
安倍政権の側は、改憲発議・国民投票の具体的スケジュールを明らかにしているわけではない。それでも、安倍首相がおりにふれて語ってきたように、公明党の了解を前提にして、「九条への自衛隊明記、教育の無償化、緊急事態条項、合区解消」の四項目を軸にした改憲案を発議した上で、国民投票を二〇一九年に行うこと、そして二〇二〇年の「東京五輪」を新憲法の下で開催するというシナリオに沿って、憲法改悪プログラムを組んでいこうとすることが基本方針だ、と思われる。
しかしこのスケジュールは、二〇一九年四〜五月と一一月に企画されている一連の「天皇代替わり」儀式(即位礼、大嘗祭)との関係では、きわめて錯綜した、困難なものにならざるをえない。「改憲を取るのか天皇儀式を取るのか」という話になってしまうからだ。麻生副総理は、それでも二〇一九年に「改憲国民投票」をやっちゃえ、と安倍に吹き込み、安倍がそれを肯定したという話も流れているが、それが困難であることは明らかだろう。二〇一九年七月には参院選が行われるが、おそらく改憲国民投票と参院選とのセット化もむずかしい。
いずれにせよ、改めて三〇〇〇万署名をはじめとした安倍改憲阻止のための広範な共同戦線を作り出していく一翼を全力で担うととともに、辺野古新基地建設阻止をはじめとする沖縄の反基地闘争、日韓連帯運動、さらに天皇代替わりキャンペーンに反対する闘い、東京五輪反対キャンペーンなどの分野と反改憲の闘いを結びつけていく努力を意識的に引き受けていくことが必要だ。
改憲阻止・安倍政権打倒へ! 正念場の闘いに全力を集中しよう。(平井純一)


もどる

Back