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    かけはし2018年10月22日号

EUへの幻想を一切断ち切れ


E U

EUとユーロ圏内左翼の挑戦課題

反緊縮へ国際連帯追求を

エリック・トゥサン

 以下は、二〇一八年九月二二日にロンドンで開催された、「ブレグジット後のEU」を標題とする会合におけるエリック・トゥサンによる問題提起の概要。同会合は、SOAS(ロンドン大学東洋・アフリカ学院)とEReNSEP(社会・経済政策に関する調査欧州ネットワーク)が共催した。反資本主義的社会改革をめざす民衆的決起のための要求、およびそれに基づく具体的施策を検討する参考として紹介する。(「かけはし」編集部)

EUの指令は終始大資本のため


二〇一〇年五月以後、ギリシャと残りのユーロ圏にとって、債務問題が懸念の中心になった。トロイカが強いた最初の計画は、ギリシャの債務に残忍なほどの増大を引き起こした。これはまた、アイルランド、ポルトガル(二〇一一年)スペイン(二〇一二年)、キプロス(二〇一三年)でも、さまざまな形を取って現実になったことだった。
EUの指導者たちが指令した諸政策には基本となる六つの目標がある。
1.民間金融機関がそれら自身の私的な信用バブルから有害な結果を受けることを回避する可能性を与えるよう、公的資金でそれらの金融機関を救済すること。2.民間の貸し手に置き換わった新しい公的債権者に、周辺諸国の政府と諸機関を凌駕する巨大な強制力を与えること。その目的は、徹底的な緊縮、規制緩和、私有化、厳格な権威主義的な支配を強いることだ。
3.ユーロ圏の境界を保持すること(すなわち、ギリシャおよびユーロ圏内の他の周辺諸国をとどめること)。そしてこのことは、諸多国籍企業と圏内の主要経済地域が手中に収めている強力な道具となっている。
4.新自由主義諸政策を特にギリシャに、しかし他のユーロ圏周辺諸国にも、もっと重く集中すること。EUの住民すべてにとってのいわば見せしめにするためだ。
5.ファシストやナチの体制、あるいはフランコ、サラザール、ギリシャの佐官たち(一九六七―一九七四年)のそれに似た新しい実験には頼らずに、統治の権威主義的な形態を欧州規模で強化すること。
6.EUの商品とサービスを世界市場で競争力のあるものにし、利潤率を高めるために、より緩い労働規制の立法と低賃金を強制すること。

急進左翼のかなりにも勘違いが

 議席を確保していった急進左翼の大きな部分は、EU統合とユーロ圏とは何であるのか、について間違った考えを抱いていた。そして今もそうだ。単純に言えば、彼らはEU内にあることには不利益よりは利益が大きいと見ている、と見える。彼らの考えでは、EUは、ユーロ圏も同じように、社会民主主義諸政策への回帰、つまり公正さが幾分劣るがケインジアンスタイルの経済再興、と共存可能であるということだ。
これは深刻に間違いだ。 われわれは以下のことについてはっきり自覚していなければならない。つまりEUは、統合の新自由主義的構想というだけではなく、大資本の構想でもあるということだ。それは、欧州の民衆を単一市場に統合するツールであり、そこで民衆は、相互に競争させられ、さらに地球の他の民衆すべてとも競争を続けることになる。
一九世紀と二〇世紀を通じて、欧州を統合しようとした三つの失敗した試みがあった。第一は一九世紀初頭のナポレオン戦争、第二と第三は、ドイツの大資本により率いられ、第一次と第二次の世界大戦を引き起こした。四番目の挑戦は、この大陸の主要経済国の大資本によって先導され、平和的に進行中だ。それは、ドイツブルジョアジーの勝利と達成成果であるだけではなく、中核諸国の欧州ブルジョアジーの、さらに彼ら自身のものとしては国民的な構想をまったくもっていない周辺諸国のブルジョアジーにとっても、大きな勝利になっている。
欧州ブルジョアジーは、階級闘争における一つのツールとして、EU内部の中心/周辺という関係を利用し続けている。
緊縮の束縛を断ち切る点での、二〇一五年におけるアレクシス・チプラス政権の失敗があり、そこから学ぶ必要のある教訓がいくつかある。さらに、ポルトガルのアントニオ・コスタ社会党少数政府の諸限界をも理解する必要がある。

EUもユーロ圏も改良は不可能


民衆の利益に沿うオルタナティブ的政策は、同時に緊縮、公的債務、民間金融機関、ユーロ圏に対処し、権威主義的諸傾向に反対しなければならない。さらに、気候と環境の危機、EUの要塞化政策が引き起こしている人道的危機、中東の危機、極右とレイシズムの台頭も忘れてはならない。そしてドナルド・トランプの選出以後では、さらにまたバーニー・サンダースを軸に結集した急進的運動の出現以後では、欧州の急進左翼、諸労組、フェミニスト、環境主義者は、米国内部の抵抗諸勢力との結びつきをつくり出さなければならない。
二〇一五年の諸経験をよく考えれば、基本となることは、あるがままのEUとの決裂の中で、本物の環境主義的かつ社会主義的なオルタナティブを強化することだ。
EUもユーロ圏も両者共改良不可能だ。
第一の教訓は、シリザ政権の降伏から出てくる。つまり、緊縮計画との決裂を委任された者たちと諸機関は、自己防護に向けた強力な普遍的諸方策をとらない限り、債権者と諸大企業がしでかした諸々の人権侵害に終止符を打つことができない、ということだ。
言い古されたことだが、危機からの出口は民族主義的性格なものではない。過去におけると同じく、国際主義的な戦略の採用が必要であり、さらに、大資本の利益によって全面的に支配された現在の統合形態に反対するあらゆる人々を結び合わせる、欧州人の統合をめざすことが必要だ。
二〇一五年にシリザが正しい戦略を採用していたとすれば、それが転換点になる、ということは十分に可能性があった。それは現実にはならなかった。疑いなく、民衆的決起の力は、重要な決定的要素になるだろう。真に非妥協的な変革を求める圧力が街頭に進出することがなければ、暮らしの場と職場、また未来は非常におぼつかないものになるだろう。

民衆決起軸にEUへの不服従を

 以下に、民衆の利益に沿って真に機能するあらゆる政府が直ちに、また同時的に取るべき、社会的動員と行動に向けた一〇の提案を上げる。

一.左翼政府は、その優先的約束と一致する形で、はっきりかつ公然と、EU委員会への不服従を示さなければならない。
統治を主張する党、あるいは諸党連合(心にはスペインの事例が浮かんでいる)は、その始めから緊縮諸方策にしたがうことを拒否しなければならず、予算均衡だけを理由とする方策を拒否することを誓約しなければならない。それらは「われわれは、均衡予算というEU諸条約の指令に降伏するつもりはない。反社会的諸方策や緊縮諸方策とは逆に公共的支出を高め、環境を保全する移行に乗り出したいからだ」「われわれは金融とエネルギー部門に公的独占をつくり出し、それらを公共サービスに変えるだろう」と公表しなければならない。
二.全国レベルと欧州レベル双方での、民衆的決起を求める決意。
二〇一五年、ギリシャ民衆と連帯する欧州の社会運動が諸々のデモを引き出す点で大きな成功を収めなかった、ということは明白だった。それらの行動は実現したが、必要な強さには達しなかった。
しかしながら、シリザの戦略には、欧州での民衆決起のよびかけ、あるいはギリシャ内でのそれすら含まれていなかった、ということもまた真実だ。そして二〇一五年七月五日の国民投票という手段によってチプラス政権が決起を求めた時、債権者の要求受け入れを拒んだギリシャ人の六一・五%の意志は、尊重されなかった。
以下のことを思い起こそう。すなわち、二〇一五年二月後半に始まり、同年六月末まで、ヤロス・ヴァロウファキス(当時のギリシャ財務相:訳者)とアレクシス・チプラスは、合意は間近であり、情勢は改善の途上にある、と世論を説き伏せることを狙った言明を諸々行ったのだ。
その代わりに、重要な交渉の度ごとにそれが終わった後、新聞発表、メディアへの声明、そして公共の広場での――ブリュッセルや他の場所のEU諸機関本部前での――宣言を通して、何が賭けられていたのかを彼らが説明していたならば、と想像してみよう。真に進行中であったものを彼らが暴露していたならば、と想像してみよう。
それは、何千、あるいは何万人という人々の結集へと導いてたと思われる。そしてソーシャルネットワークは、このオルタナティブな議論を数十万あるいは何百万人という市民に拡散していただろう。
三.市民参加に基づく債務監査の始動。
EU諸国内の情勢、そしてもちろんユーロ圏内のそれは多様だ。いくつかのEUの国では、ギリシャでのように、社会的必要を満たし人権を保障する課題に絶対的な優先度を置くためには、債務返済の凍結は、最高度の必要性があり、優先されるべき重要事項だ。それはまた、自己防護戦略として鍵を握る要素でもある。
一方スペイン、ポルトガル、キプロス、またアイルランドでは、その凍結は力関係と経済の現況に応じるものであり得る。他の諸国では、まず監査を実施し、その後に返済凍結について決定するということもあり得る。
この監査は、二〇一五年四月にギリシャ議会議長により創出された「ギリシャ債務真実委員会」の経験を考慮に入れるべきだろう。そこでの、正統性欠落、違法性、持続不可能性、さらにあくどさという概念は、公的債務を分析する上で利用されるべきものだ。
調査期間中の、ECB(欧州中央銀行)が蓄積した国債に関する返済凍結は、ECBと対決する左翼政権が握っているツールだ。たとえばスペインの場合、ECBは総額で二五三〇億ユーロのスペイン国債を所有しているのだ。
四.資本の流れに対する統制。

抜本的方策が最初から不可欠


五.金融部門とエネルギー部門の社会化。
金融部門の社会化は、金融の公的な中枢を発展させる、ということをのみ意味しているわけではない。それは、銀行、保険会社、また他の金融諸企業を含んで、金融部門に関する公的な独占を法的に布告することを意味している。それは、市民的統制の下に置かれた金融部門の社会化、すなわち、金融部門の公共サービスへの転換だ。
もちろん、エネルギー部門の社会化もまた、環境保全志向の移行期間中には、優先性を保つだろう。環境保全志向の移行は、生産と配分の分野双方における、エネルギー部門に関する公的独占がなければ、現実になる可能性はない。
金融とエネルギー部門の社会化は、補償なしの単純な収用を通じて行われなければならない。
六.補足的かつ兌換不可能な通貨の創出、およびユーロ離脱に関する避けられない論争。
問題がユーロ圏離脱であろうが残留であろうが、兌換不可能な補足的通貨、会計上の通貨をつくり出すことが必要だ。言葉を換えれば、当該国内部の交換のために――たとえば、年金増額分や公務員の賃上げ分、諸税、公共サービス、などを支払うために――、現地でのみ使用されると思われる通貨だ。
もちろんわれわれは、ユーロ圏に関する論争を避けてはならない。いくつかの国では、ユーロ離脱が、政党、労組、他の社会運動から擁護されなければならない一つの選択肢になる。ユーロ圏の数ヵ国は、ユーロ圏からの離脱がなければ、真に緊縮から離れ、エコ社会主義的移行に乗り出すことはできないだろう。
七.抜本的な税制改革。
食料、電力、飲料水(個人あたり消費の一定レベルまでの)、そして他の基本的な必要物のような、基本的な消費財とサービスに関する付加価値税を廃止しよう。他方で、贅沢品や同様なサービスに対する付加価値税を引き上げよう。
われわれにはまた、企業利潤に対する、また一定水準以上の所得に対する税の引き上げ――すなわち、所得、資産、また高級住宅に対する累進税制――も必要だ。所有者が現に住んでいる住宅は対象から外されるだろう。税制改革は即座の効果をつくり出すに違いない。つまり、住民の多数には、直接税と間接税の極めて意味のある減少、そして、最富裕一〇%層や大企業には極めて重要な増加だ。
さらにまた、脱税や税金ごまかしにも新たな厳格な方策が講じられるだろう。八.私有化の逆転――私有化された企業に対する統制回復。
私有化から利益を受けてきた者たちに、象徴的な僅かな額で補償すること(たとえあるとしても)が、適切な意思表示であると思われ、市民の統制の下に、公共サービスを強化し広げるだろう。
九.社会的に有益な仕事の創出と公正をめざす幅広い緊急計画の実施。
賃金を一切引き下げることなく労働時間を短縮しよう。反社会的な諸法を無効にし、悪どい住宅ローンの状況を改善する諸法を採択しよう。この点では、スペイン、アイルランド、ギリシャのような国がもっとも関係している。法廷での争いを避けるために(担保に取られたものの取り戻しが必要条件となることから家計を保護するために)、これは、十分に立法行為として解決され得るだろう。
たとえば議会は、一五万ユーロ以下の住宅ローンを取り消し、そのことでそうした事件を終わりにする法律を採択できるだろう。現地にあった方式を力づけることで雇用と社会的に有益な活動を刺激する目的で、公共支出に対する広大な計画が実施されるだろう。
一〇.偽りのない憲法制定運動の開始。
それは、現行議会制度の枠内での改憲を意味するものではない。それは、議会の解散と直接投票による憲法制定会議の選出を必要とする。

 大資本の意に反する抜本的諸方策が始めからとられないならば、緊縮政策からの離反は達成不可能だ。
エコ社会主義は、脇に置かれてはならず、論争の中心に置かれなければならない。(「インターナショナルビューポイント」二〇一八年一〇月号)

ブラジル

ボルソナロを打ち破れ

決選投票はアダジとマヌエラへ

PSOL(社会主義と自由党)

 ブラジルで一〇月八日に行われた大統領選挙の第一回投票では、極右の候補者が首位、第二位が労働者党候補者という結果になった。両者共得票率が五〇%に届かず、今月二八日に決選投票が行われる。以下は、第四インターナショナルの同志も参加するPSOLによる、今回の結果に対する政治的評価、および決選投票に向けた呼びかけだ。(「かけはし」編集部)

クーデターと
極右の打倒へ


 総選挙(大統領選挙の他に、連邦と各州の上下院選挙:訳者)第一回投票は、不安定性および二〇一六年のクーデターが引き起こした分極化、という同じシナリオを維持したまま終了した。ちなみにそれらのシナリオは、二〇一六年のクーデター以前にすでに展開していた経済的、政治的危機をさらに深める、というものだった。そしてそれはまた、政治的代表性の危機をも深めた。その深さは、極右候補の出現に向けた諸条件を生み出し、結果としてその者が支配階級からの無視できない支持を引き連れて決選投票に進出、というほどまでひどいものだった。
 この選挙は、政治システムを伝統的に支配してきた寡頭支配層をたたきのめしたが、それは、「システム」に向けられた社会的憤激に、極右が乗ずる余地を与えた。
 決選投票はファシズムとクーデターに対決する闘争の続きだ。したがってこの時に当たっての任務は、ボルソナロを打ち破ることだ。彼の敗北は、国民主権を保証し、権威主義と対決して勝ち取られた民主的成果を守り続けるための諸条件を蓄積する中で、テメルが始めた課題設定を阻止する可能性を開くだろう。
このためにこそPSOLは、われわれの政治的違いを保ち、われわれの独立を保ちつつも、今この時からアダジとマヌエラを支持するだろう。われわれはわれわれの闘士たちに、彼ではなく、と大声でかつはっきりと語り続けるために、街頭に繰り出すよう求める。

人民多数の権利
を守る闘い継続


第一回投票でボウロスとソニアを軸に、諸々の社会運動とブラジル共産党(PCB)、また知識人たちやアーチストたちと共にわれわれが形成した連合、およびPSOLは、不平等と特権に対決してブラジル民衆の尊厳を守り続けるだろう。
この立候補はブラジル左翼における新たなサイクルの始まりを刻み付けている。そしてPSOLは、この建設を歓迎し、それに力を与えたことを誇りに思う。したがってわれわれは、他のどの候補者も支持する勇気がもてなかったその主張を擁護し続けるだろう。
われわれは、国民主権とわが人民多数の諸権利を守りつつ、アダジとマヌエラを選出し、ボルソナロを打ち破るためのキャンペーンの中にいるだろう。われわれは、年金改革と労働法改革に反対し、黒人住民に対する皆殺しを終わりにすることを求め、LGBTコミュニティに対する暴力を終わりにすることを求め、警察の非軍事化、ドラッグの公認、先住民とキロムボラ(奴隷から逃れたアフリカ系ブラジル人)の土地に対する公的な認知、森林伐採の取り止め、女性の権利と彼女たちの全要求――平等な賃金、性差別反対、中絶の合法化――を求め、テメル政権の方策すべての無効化を求めつつ、街頭と投票所にいるだろう。
そしてそれゆえわれわれは、エネルギー基盤と交通システムの移行という展望の中で、埋蔵原油の防衛、ペトロブラス(国営のブラジル石油)やエレクトロブラス(ブラジル電力)の防衛を一体とした、エネルギー主権のための闘争を放棄しないだろう。

ブラジルの変革
求め共に街頭へ


PSOLは、決選投票においてボルソナロを打ち破る闘いは、諸権利の防衛と拡張のためであり、それらを別のところで交渉するためではないことを理解している。われわれは、諸々の特権に立ち向かい、人々が舞台の中心を占めるために闘い続けるだろう。その時はじめて、希望、公正、平等、そして主権のサイクルをブラジルに生み出すことが可能になるだろう。
われわれはわれわれの闘士たちを、♯EleNao(彼ではなく)のスローガンの下に幅広い委員会を建設するよう向かわせる。九月二九日に街頭に繰り出した女性たちの事例は、われわれを力づけ、極右打倒に向けた新たな諸々の大衆的示威行動を強化している。われわれは、アダジとマヌエラを勝利へと引き上げ、民衆の意思を尊重させるためのキャンペーンの中にいるだろう。
州政府に対する決選投票があるところでは、われわれはわが闘士たちに、ボルソナロの構想に公然と反対している者たちを支持するよう指示する。各州においては、当地の活動家たちが、われわれの諸原則とPSOLを特徴づける首尾一貫性を維持しつつ、民主主義を擁護するすべての人々を包含する多元的な場を構築することを先導しつつ、後退を打ち破るための民衆的決起に精力的に貢献するやり方を定めるだろう。
われわれは、ブラジルを変えるために、恐れることなく共に街頭にい続けるだろう。彼ではなく!
PSOL全国執行委員会
二〇一八年一〇月八日、サンパウロ

▼PSOLは、ルラ政府参加を拒否した、ブラジル労働者党(PT)内諸潮流により結成された。ブラジルの第四インターナショナルメンバーはPSOLに参加している。(「インターナショナルビューポイント」二〇一八年一〇月号)


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