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    かけはし2018年11月12日号

日本メディアの異常な報道姿勢


韓国・元徴用工判決

暴力と収奪の歴史に「完全かつ
最終的な解決」などありえない


「遅すぎた判決」

 一〇月三〇日、韓国最高裁(大法院)は第二次大戦中に日本の製鉄所に徴用され、酷使された韓国人の元徴用工四人が新日鉄住金(旧日本製鉄)に損害賠償を求めた訴訟で、原告一人あたり一億ウォン(約一〇〇〇万円)を支払うよう命じる二審判決を支持し、新日鉄住金側の上告を棄却した。
 同三一日付「ハンギョレ」新聞(日本語・電子版)は次のように報じている。
 「……全員合議体が重ねて『妥当』だと判断したソウル高裁民事一九部(当時裁判長ユン・ソングン)の二〇一三年七月の判決は、これに先立って一二年五月の最高裁一部(主審キム・ヌンファン当時最高裁判事)による原告勝訴趣旨の判決に従ったものだ。最高裁が自ら下した判決を確定するのに六年五カ月もかかったわけだ。日本企業がソウル高裁の判決を不服として再び上告をした時から計算しても、五年三カ月がかかった。その間、訴訟を提起した人たちは一人、二人とこの世を去った。同日の裁判には、二〇〇五年二月当時の原告のうち、イ・チュンシク氏(九四)だけが車椅子に乗って出席した。ヨ・ウンテク、シン・チョンス、キム・ギュス氏は遺影写真で大法廷に姿を現した。キム氏は四カ月前の六月に亡くなった。……イ氏らが一九四一―四三年に新日鉄住金の前身である新日本製鉄の日本工場で経験した地獄のような労役と蔑視によって七五年間続いた恨みを晴らすには、判決が遅すぎた。高齢の徴用被害者にとって、遅らされた正義は正義とはいえない」。
 「三〇日の最高裁判決の後、韓国政府はイ・ナギョン首相の主宰で関係部署対策会議を開き、『政府の国民向け立場発表文』を出した。ここには、司法府の判断の尊重と被害者支援という原則は明確にしながらも、韓日関係を悪化させまいとする苦悩が含まれている」(同日付「ハンギョレ」)。

日本政府の居丈高な抗議

一方、日本政府は判決直後に、河野太郎外相が「極めて遺憾で、断じて受け入れることはできない」とする談話を発表、李洙勲(イスフン)駐日大使を外務省に呼び、「請求権協定に明らかに違反し、両国の法的基盤を根本から覆すものだ」と抗議し、必要な措置を取るよう要求した。安倍晋三首相は「国際法に照らして、あり得ない判断だ。政府として毅然と対応する」と述べた。
韓国の最高裁の判決について、韓国政府に対して必要な措置を取るよう要求すること自体が、司法の独立性について歯牙にもかけない安倍政権の体質を物語っている。しかもこの裁判は訴えた被害者個人と、訴えられた民間企業の間の係争であり、政府が企業側に肩入れすること自体が筋違いである。
日本政府は一九六五年の日韓基本条約に伴う請求権協定で、日本が韓国に経済支援を実施することで、両国の財産や請求権問題について「完全かつ最終的に解決された」としている。しかし、一九九一年八月二七日の参院予算委員会での柳井俊二・外務省条約局長(当時)の答弁によると、「両国間の請求権の問題は最終かつ完全に解決した」(日韓請求権協定第二条)とは、「日韓両国が国家として持っております外交保護権を相互に放棄したということでございます。したがいまして、いわゆる個人の請求権そのものを国内法的な意味で消滅させたというものではございません」という意味である。これが従来の政府の解釈である。つまり、「請求権協定に明らかに違反し、両国の法的基盤を根本から覆」しているのは日本政府の側である。そして何よりも日本政府のこのような居丈高な抗議こそ、日本の支配者の宗主国意識、無反省を露わにしているのであり、請求権の問題が「最終かつ完全に解決」してなどいないことを改めて、衝撃的な形で明白にしたのである。

「朝日」、「毎日」も日本政府を擁護

 同三一日の「毎日」の社説は次のように述べている。「……韓国最高裁が一九六五年の日韓基本条約を覆すような判決を下した。この判決の論理を放置していれば、日韓関係は極めて深刻な事態に陥ってしまう。……植民地支配の法的性格については、正常化を優先させることであいまいにした経緯がある。正常化交渉に当たった韓国の金鍾泌元首相は回顧録で、双方が国内的に都合の良い説明をし、お互い黙認することで政治決着したと明らかにしている。……にもかかわらず、一方的に条約や協定の解釈を変更するなら、国際法の規範をゆがめ、日韓関係に大きな対立を生むのは避けられない。賠償を命じられた新日鉄住金のほか、韓国では既に一〇〇社近くが提訴されており、今後日本企業が財産を差し押さえられる可能性もある。日本政府が『断じて受け入れられない』と表明したのは当然である」。
同日の「朝日」の社説は次のように述べている。「植民地支配の過去を抱えながらも、日本と韓国は経済協力を含め多くの友好を育んできた。だが、そんな関係の根幹を揺るがしかねない判決を、韓国大法院(最高裁)が出した。……原告側は、賠償に応じなければ資産の差し押さえを検討するという。一方の日本政府は、協定に基づいて韓国政府が補償などの手当てをしない場合、国際司法裁判所への提訴を含む対抗策も辞さない構えだ。そんなことになれば政府間の関係悪化にとどまらず、今日まで築き上げてきた隣国関係が 台無しになりかねない。韓国政府は、事態の悪化を食い止めるよう適切な行動をとるべきだ。韓国併合の合法性を含め、日韓は国交正常化の際、詰め切れなかった問題がいくつかある。だが、互いに知恵をしぼって歩み寄り、今や年間一〇〇〇万人近くが行き来する関係になった……」。
「読売」や「産経」ではなく、安倍政権には批判的な主張を掲げている「朝日」、「毎日」までがこのありさまである。
たしかにここに書かれていることは事実を曲げてはいない。しかし、書かれていないことが重要だ。一九六五年の日韓条約は日本でも大きな反対運動があったこと、当時の韓国政府は軍事独裁体制で、米国の傀儡政権であり、日本からの経済援助と引き替えに植民地支配や戦争犯罪を水に流してしまったこと、これはいかなる意味でも韓国の人々の意志を代表していないこと。
「一方的に条約や協定の解釈を変更するなら、国際法の規範をゆがめ、日韓関係に大きな対立を生むのは避けられない」? 一九六五年当時の独裁政権が締結した条約に、その独裁政権を倒して民主主義を勝ち取った今の韓国が縛られることはない。日韓関係に支障が出て来るなら、条約の方を再検討すべきだ。
そもそも、帝国主義の支配の歴史、暴力と収奪の歴史に「完全かつ最終的に解決」などありえない。少なくとも加害側が言うことではない。それは日本政府の居丈高な態度が物語っているように、「過去を水に流す」、「なかったことにする」ことを含意している。
現に、日本政府が「解決済み」と開き直ると、ネット右翼たちは「そもそも徴用などなかったのだ」と勢いづく。ここからどんな友好・協力が築かれるのだろうか?
帝国主義の支配の歴史、暴力と収奪の歴史は、たとえ加害側が誠実に謝罪し、補償し、被害側が心からそれを受け入れたとしても、「完全かつ最終的に解決」などしない。理不尽に奪われた命や希望は戻らないし、恨みや憎しみが癒えるわけではない。謝罪、補償、和解の上で、それを記録し、記憶にとどめ、次世代に伝える中で、さまざまな形で昇華されていくべきである。
実際、世界中で数百年前にさかのぼって先住民族への殺戮、奴隷制度、植民地支配とジェノサイドの歴史が問い直されている。その一方で、過去の白人支配のノスタルジーを拠り所とするトランプ主義や、かつての軍事独裁体制を賛美するフィリピンのドゥテルテやブラジルのボルソナロが台頭している。歴史認識をめぐる闘い、記憶をめぐる闘いは過去の問題ではなく、今、そして未来をめぐる問題である。(小林秀史)

10.25

沖縄知事選に勝った集会

辺野古新基地きっぱりノー

民意に反する土砂投入やめろ



 一〇月二五日六時半から、東京・文京区民センターで「辺野古新基地建設NO!これが民意だ 沖縄知事選に勝った!10・25集会」が主催:辺野古への基地建設を許さない実行委と沖縄・一坪反戦地主会関東ブロック、協賛:辺野古の海を土砂で埋めるな!首都圏連絡会、「止めよう!辺野古埋立て」国会包囲実行委で行われ、二三〇人が集まった。
 最初に、沖縄・一坪反戦地主会関東ブロックが「辺野古で工事再開の可能性がある。法的正しさを確信して、工事に対して座り込みを含めて闘う」と主催者あいさつをした。

埋立て承認撤回
妨害する政府
次に、沖縄から安次富浩さん(ヘリ基地反対協共同代表)が知事選と今後の闘いについて報告した(別掲)。続いて、白藤博行さん(専修大学教授、行政法)が沖縄県の埋立承認の撤回に対して、国が審査請求・執行停止申立てを行ったことについて、詳しくその問題点を講演した。
「公有水面埋立法上、国は私人がとうてい立つことが許されない立場に立って、審査請求・執行停止の申立てをしている。地方分権改革の目的である国と自治体の対等性が崩されている。歪んだ法治主義、形式的法治主義は許されない。国の行政機関と裁判所の正々堂々の非常識を許してはならない。国交大臣は県の執行停止を決定するだろう。沖縄県民はこの処分に対して、総がかりで取消訴訟ができる。ぜひやってほしい」。なお、この論議については「かけはし」一〇月二九日号四面の沖縄報告に詳しく展開されているので参照してほしい。
知事選支援の報告とお礼、琉舞の後、連帯のあいさつが行われた。辺野古土砂搬出反対全国連絡協議会・首都圏グループ、「土砂投入反対の新しい署名をやっている。協力をしてほしい。土砂搬出問題はヤマトの問題だ」。警視庁機動隊の沖縄派遣は違法・住民訴訟の斉藤さん、「原告側証人が七人採用され、来年から実質審理が始まる。裁判傍聴を」。CV22オスプレイ横田配備反対運動の棣棠浄さん(第九次横田基地公害訴訟原告団事務局次長、郵政労働者シルバーユニオン)が「郵政ユニオンではこれまで第一〇次沖縄派遣団を組んで連帯行動を行ってきた。横田には一〇月にCV22オスプレイが正式に配備され、夜間飛行をはじめ好き勝手に飛んでいる。一〇月一八日平和センターが五〇〇人で抗議集会、一〇月二七日には平和委員会が抗議デモを行う。辺野古基地反対に応えるのは横田での闘いをつくることだ」と報告した。
最後に実行委が一一月三日午前一一時半から一二時半まで官邸前行動、一一月五日午後六時半から防衛省行動への参加を呼びかけ、全員起立してシュプレヒコールを行い、今後の闘いへの決意を固めた。 (M)

安次富浩さんの報告

東アジアの平和を
めざす沖縄の闘い


沖縄県知事選は玉城デニーさんが四〇万票近い票で勝利した。自公維は企業の組織動員、創価学会七〇〇〇人の沖縄投入にもかかわらず勝利できなかった。やんばる地域で、国頭村・東村以外はデニーさんの票が上回った。名護市では一七〇〇票差で勝った。名護市議選も定数が一つ減った中で一三議席を確保し、与野党同数だ。翁長さんの残したものが県民の心に残っていたからだ。
菅官房長官が来沖して演説中に「侵略者は帰れ」とやじられた。九月二七日のデニー決起集会に、創価学会の三色旗があった。創価学会は四年前には自主投票、今回の佐喜真候補を推した。しかし、三割がデニーに投票したと言われる。これが沖縄の現実だ。
知事選から那覇市長選と三連勝だ。辺野古基地建設阻止へつなげる。県の埋め立て承認撤回の取消しに対して、国の訴えに対して、三年前と同じ判断が今月末に出るだろう。一〇月二六日県庁前集会、一〇月三〇日嘉手納防衛局への抗議、一一月三日辺野古での大規模抗議集会。今後工事が再開されれば、ゲート前・海上での抗議行動を行う。
そして、辺野古の基地建設を問う県民投票条例を県議会で可決するだろう。地方自治法の改正により、県民投票実施に向けた補正予算を否決できる法定受託事務制度となった。石垣市議会は実施反対決議を採択し、その他五市が保留している。今後この攻防もある。
横田基地にMV22よりも危険な空軍の特殊作戦機CV22が配備された。危険性は全国に広がっている。全国展開の反対運動をつくっていかなければならない。沖縄を東アジアの「平和な緩衝地帯へ」、東アジア経済圏のハブ化へ。防衛省を防災省に組織変更を。自衛隊を災害救助隊へ改編せよ。普天間基地の即時閉鎖、辺野古基地の中止そして嘉手納基地の閉鎖につなげる。安倍政権の改憲策動に対して、来年参議院選で選挙区の野党統一候補を確立して勝利を。(発言要旨、文責編集部)


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