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    かけはし2018年11月12日号

ブレグジットは右翼の策動、まず停止を


英国

ブレグジット危機

再国民投票での最終決着不可避
労働党は方針の明確化が必要だ

アラン・デーヴィス

 英国政治がEU離脱をめぐって大きな危機に入り込んでいる。EU離脱自体も先行きは一層混迷を深め、EU経済や世界経済にも影を落としている。以下では、現状の危機的状況を作り出している英国内政治の諸関係、離脱を支持した左翼に対する批判、およびそこで左翼が取るべき姿勢が論じられている。(「かけはし」編集部)

メイが入り込んだ完全な袋小路


 EUの基本原則、すなわち統一市場と移動の自由を破るという基礎に立った、メイのチェッカースプラン(二〇一八年七月に閣議で策定されたブレグジット後の対EU関係についての総合的提言、この決定への反対を理由に国防相のデイビッド・デイビスと外相のボリス・ジョンソンが辞任:訳者)提案をEUのエリートたちが拒否して以来、EUからの無秩序な離脱という見込みが、この問題に関する二回目の国民投票への支持と並んで高まってきた。スコットランドでそれは、SNP(スコットランド民族党)およびスコットランド独立に対する支持の上げ潮(後者に対する支持が初めて多数派であることを示すいくつかの世論調査を伴って)に結果しただけではなく、止めがたくなる可能性が十分ある、独立に関する二回目の国民投票に対する支持の高まりにもなった。そしてそれらは、一〇月六日のエジンバラにおける巨大な親独立デモに映し出された。
 このすべてに対するメイの反応は、(あらためて)レイシズムのカードを切ることとなった。そして彼女は、それがほとんどのブレグジット支持者に十分受け入れられる、と分かっている。それこそが、保守党大会から発せられた彼女のメッセージ、すなわち「ブレグジットに関しては私に忠実であれ、そうすれば私は厳しい移民体制を課し、外国人を入れないだろう」の理由だ。
 そして彼女は間違っていない。つまりこれは、少なくともイングランドでは、保守党への支持のつっかい棒になるだろう。強硬ブレグジット派は依然過激なレイシストのままであり、英国本土を国民第一のものと考えている。彼らの多くは、ブレグジットをめぐって他に何が起きようとそれにはほとんど興味がない。生活水準の下落がそこに含まれようが、それでもこれは、それを徹底的に推し進める政府が民族主義者であり、大英帝国を懐かしみ、移民を入れず、考えを変えない限りは、容認できるものになるだろう。
 それでもそれは十分なものだろうか? おそらくそうではない。メイのブレグジットのよろめきはとてつもなく巨大な矛盾に満ちているからだ。
 彼女は圧力の下で今なお、取引なし(すなわち、WTO協約の上でのEUからの離脱強行)の方が悪い取引よりいい、と語っている。また彼女は聞かれれば、南北アイルランド間、あるいは北アイルランドと英国間、そのどちらでも物理的境界が今後共まったくない、というのが彼女のレッドライン中のレッドライン、とも躊躇なく言うだろう。彼女を支えているDUP(北アイルランドのプロテスタント強硬派極右地域政党である民主統一党:訳者)もまた、より強い言葉――さらにさらにさらに赤いレッドライン――ですら、かれらはそのような境界は全面的に受け容れ不可能とわかるだろう、と語り続けている。
 しかし、ここに重要なことがあるのだ。WTO規則の上でのEU離脱強行は、アイルランド共和国と英国間に物理的国境を完全な形で設定することを確実にする、即座かつもっとも有効な方法なのだ。この境界がEUの外縁となる以上、WTO規則は、EUの諸規則がそうなると同じく、この境界を国境とすることを求めるだろう。そうであれば彼女は、このように歴然とした矛盾をどう説明するのだろうか?
 二週間前、BBCの司会者であるアンドリュー・マールがこの問題を彼女に四回続けて質問した時、それを完全に無視することが彼女の対応だった。彼女が語ろうとしたすべては、それが適用されないような協定に達するつもり、ということだった。しかしこれは、問題全体の心臓部に突き当たる。彼女は、ERG(注)をなだめるために、悪い取引よりも取引なしの方がいい、と語る。しかしそれを実行することは、彼女のレッドライン中のレッドラインを破るものになるだろう。

左翼は離脱手続きを止めるべき

 このなぞなぞに対する一つの答は、このところの憶測の中に存在する可能性がある。その憶測とは、たとえそれがチェッカースを破る――すなわち、統一市場と関税同盟内部にとどまることを含む――としても彼女は、彼女が得ることができるいかなる取引でも求めて進むだろう、そしてERGには、それに関し彼女が議会での票決で否決されるのを見るよう要求する、というものだ。ちなみにその否決は、コービン政府に扉を開く可能性があると思われる。彼女は同時にそのような状況の場合には、何人かの労働党の票を獲得することも期待していると思われる。
しかし当面、メイが持ち帰りそうなどのようなものであれ、あるいは取引なしの解決であれどちらに対しても、議会での票決はまったくない。これが変わる可能性があるようには見えないが、しかしそれはおそらく想定外のことでもない。
その一方で数が増すばかりの大企業――金融と製造の両部門の――は、強硬ブレグジットと混乱したブレグジットに関し浮かび上がる諸結果に抗議し、移転の準備をしている。自動車製造業者は、国境審査が増加する中で、それらのジャストインタイム生産方式に何が起きることになるのかを知りたがっている。それらの利潤は先の生産方式に依存しているのだ。
左翼は、取引なし(あるいはまさに強硬ブレグジット)に基づくEU離脱強行が現在の情勢の中ではいわば惨事となると思われる、という点を曖昧にしてはならない。それは、それがWTO協定を基礎とするということ、そしてそれが生活水準の大きな切り下げを意味するというだけではなく、惨事は右翼/レイシストの構想という枠組み、および右へと動きつつある国際的な政治情勢の中にもあると思われるのだ。
そのような諸条件の下で左翼は、強硬ブレグジットに身を委ねることに反対するだけではなく、ブレグジットの歩み全体を終わりにすること、および異なった政治的諸環境がまさに優勢になるまでEUにとどまること、を支持しなければならないだろう。

左翼のブレグジット派の間違い

 ソーシャリスト・レジスタンスがこれまで変わることなく力説してきたように、EUは反動的で新自由主義的な構成体だ。それは、社会主義への道という見地からは、労働者階級には何も提供しない、いわば経営者クラブだ。社会主義者は、進歩的な課題設定を守る、あるいはそれを進める目的の下に、そこから離れる用意を整えなければならない。シリザは、そうした離脱を除外することで、ギリシャで大きな間違いを犯した。
しかしながら、二年前の英国の国民投票におけるブレグジット支持投票に関しては、進歩的なものはまったくなかった。「ソーシャリスト・ワーカー」(二〇一八年六月一八日付け)は「SWP(社会主義労働者党)は新自由主義でレイシズムのEUに反対するがゆえに離脱投票を後押しした……EUは一グループの経営者の利益を他に対して守る仕組みだ」と語っている。
まさにその通りだ。しかし国民投票の政治的中身は、いずれにしろレイシズムに異議を突きつけることとははるかに異なり、それを強化した。国民投票はレイシズムと反移民感情を、また右翼的英国民族主義の設定課題を基礎としていたのだ。ブレグジット票の政治的結果は、保守党の右翼と並んで前述の勢力を強化するものでしかなかった。
そのような条件の下でブレグジットに票を投じた、そして今日傍観し、この過程に一般的な評論とEUについての正しい批判を抽象的に加えている――同時に国民投票についての階級的特性付けを拒否しつつ――、さらに労働党を強硬ブレグジットに押しやろうとしている左翼の人々は、大きな間違いを犯し続けている。ブレグジットは保守党強硬右派の構想であり、彼らの政策によって形作られ続けている。そしてそれは、世界秩序の面では自らをブレグジッターと見ているトランプの衝撃の後では、なお一層危険になっている。

現実をねじ曲げてはならない

 トマス・ファズィとウィリアム・ミッチェルによるジャコバンウェブサイトに上げられた先頃の論文は、左翼にとっては生涯に一度の好機だ、と力説している。以下がそれが語る理由だ。つまり、「コービンはあらゆるところからの――第一にまた何よりも彼自身の党内からの――『ソフトなブレグジット』を後押しせよとの圧力に抵抗しなければならない。彼はそれに代えて、根底的に進歩的で解放的なブレグジットの物語を練り上げる道を見つけ出さなければならない。生涯に一度の好機の窓は、新自由主義およびそれを支える諸機構との根底的な決裂は可能である、と英国の左翼が示すことに向け開かれた。しかしそれは永久に開いたままであることはないだろう」と。
言葉を換えれば、野党指導者としてのコービンは、ブレグジットについて分裂している彼の基盤を抱えて、深く反動的なブレグジットの過程を新自由主義との根底的な決裂を求める課題設定へと転換する「道を見つけ出す」必要に迫られる。彼らがその道を自分で概括するよりも、「道を見つけ出す」ようコービンに助言しているのは、驚くことではない。コービンは、何ごとかをやることができる前に、まず選挙に勝利しなければならない。そして彼は、強硬ブレグジットを後押しすることでそれを行うことはないだろう(そして確かにそうすべきではない)。
今日レギジッティアー(左翼のEU離脱支持者:訳者)たちは、保守党と彼らの危機に批評を加え、EUをEUであるとして責めている。しかし、何を行うべきかについて言うべきことを何ももっていない。彼らは、二回目の国民投票に反対し、単一市場にとどまることにも反対している。そしてそれは、一つの強硬ブレグジットの立場なのだ。
彼らは、「人民のブレグジット」、「職を創出し、インフラを建設し、国有化を広げることを基礎に置くそれ」を求めている。誰もがそうではないのか! しかし問題は、そのようなブレグジットが売りに出されているわけではない、ということだ。選択は、底辺に向けた新自由主義的競争と少し違った底辺への新自由主義的競争の間にあり、それらは保守党強硬右派により練られ生み出された。
彼らは、国民投票が英国内でレイシズムを強化したということを否認し、この国に暮らすEU市民にそれが及ぼすことになった影響(そして強硬ブレグジットがどのような影響を及ぼすと思われるか)について語るべきものを何ももっていない。彼らは、ブレグジットキャンペーンとブレグジット投票により英国社会に加えられた打撃――特にレイシズムと外国人排撃の分野で――を認めることを拒否している。そして、ブレグジット投票は左翼に好機を諸々開いた、と力説する。まさに問題への危険な向かい方だ。

再国民投票迂回の解決は不可能


この状況に対する鍵は二回目の国民投票となる。それは、国民投票の全般的諸原則とは関わりがない。われわれが今いる情勢を決定したのは一つの国民投票だった。そしてもう一つの国民投票だけが納得できる形でそれを逆転できる。いずれにしろ、最初の国民投票の性格と今日力をふるっている異なった環境を前提とすれば、二回目の票決には民主的な公正さがある。この投票がブレア派にとっては大きな反響を呼ぶよくないできごとになっているという事実は重要ではない。
もちろん、当初の決定が逆転されるだろうという保証はまったくない。とはいえ、いくつかの兆候は励みになるものだ。しかし傍観し、不可避的な政治的惨事を待ち受けるというオルタナティブはどちらも受け容れがたい。
結果として起きる国民投票に対する鍵は、労働党のコービン指導部にかかっている。この問題に関する労働党基盤内の分裂を理由に、彼らは国民投票支持ではっきりと登場することを渋ってきたが、その中で、メイが提案した取引をそれが労働党の基準に合うという条件で支持するしかないだろうという立場と並んで、国民投票の方向に移動するという明確な向かい方も現れてきた。
これらは、それが強力かつ協調的な将来の対EU関係を確かなものにする、というものだ。つまり、単一市場と関税同盟のメンバーとしてわれわれが現在得ていると「まさに同じ利益」をもたらし、経済と共同体の利益という姿で公正な移民管理を確実にし、諸権利と保護を防衛し、底辺への競争を妨げ、国民の安全保障と国境を越えた犯罪に取り組むわれわれの能力を防護し、そして英国のすべての地域と民族のために結果を出す、そうした関係だ。
この観点から見れば、次の二、三週にメイがEUから持ち帰ることができると想定できるどのような取引も、労働党にはそれを支持できる機会は事実上まったくない。また労働党は、取引なしに基づいて解決する提案を支持しないだろうし、この問題について登院命令を迫ることもないと思われる。この立場がSNP、緑の党、自由民主党、さらに相当数の保守党議員によって保持されている以上、われわれは、当面どちらの提案にも多数派はまったくない、と言うことができる。

事態は労働党の決断にかかる

 労働党大会で達成されたもっとも重要な前進は、二回目の国民投票についての立場を強めることだった。それは、「机上に載せる」という立場に引き上げられたのだ。これは曖昧さを残している。しかしそれは、この提案の背後に今ある勢い、および危機(あるいは突発的衝突)が現れる場合に本来あるべき合理的な他の提案の不在、を前提とすれば重要だ。
労働党は今も、彼らの第一選択は総選挙要求となるだろう、と語り続けている。これが抱える問題は、それが大いに歓迎されると思われるとしても、それがブレグジットという課題を解決することはないだろう、ということだ。それには国民投票をひっくり返す正統性はない、と思われるからだ。さらにそれは、決して消え去ることはないと思われる国民投票という問題も回避できないだろう。
事実として国民投票に対する否認――あるいは議会での票決をもって国民投票結果を否定するという提案――は、当初の決定を防衛し、労働党に対する信用を失墜させるための、理想的な政綱を右翼に与えるだろう。したがって労働党は、総選挙のあかつきには、投票にはEU残留の選択肢も含まれるだろうとはっきりさせて、ブレグジットに関する国民投票をそのマニフェストに書き入れなければならない。
決定的なことだが労働党は、ブレグジット危機から浮上する総選挙における勝利の後では、メイよりも好条件の離脱取引を得るという見通しの下に、ブレグジット交渉を引き継ぐというワナに落ちてはならない。労働党は、新たな国民投票をもって、そして以前の決定を逆転する投票を推奨することをもって、この策動全体を終わりにするよう動かなければならない。現在の情勢の下では、この段階でEU残留に等しいと思われる適用可能なブレグジットの取引は、まったくないのだ。
国民投票にいたるもっともありそうな道は、メイの提案(あり得るすべて)および取引なしの離脱双方に対する拒否――それはおそらく同様に総選挙を必要とすると思われる――を経た、議会を通じたものだ。そのような条件(耐え難く長期には存在できないと思われる)は十分に、二回目の国民投票に対する議会多数派を生み出し得るだろう(特に、それを支持すると思われるSNPに基づいて)。
しかし、たとえその段階で万が一多数派を獲得できなかったとしても、労働党のそのような対応は労働党の影響力、およびおそらくその票を強めるだろう。現在の危機的な袋小路に対して、合理的で民主的な出口を提案するすべての者が敬意を獲得すると思われるからだ。(二〇一八年一〇月一一日)
▼筆者は、英国出身の第四インターナショナルの指導的メンバー。
(注)ERG(欧州調査グループ)は、連合王国保守党のためのシングルイッシュー(強硬ブレグジット)調査支援グループであり、公的に資金を与えられている部分。(ウィキペディアより)(「インターナショナルビューポイント」二〇一八年一〇月号) 

【訂正】本紙前号(11月5日号)1面安倍所信表明演説批判5段中見出しから11行目「八月三〇日」を「九月三〇日」に、同20行目「佐喜真敦」を「佐喜真淳」に訂正します。


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