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    かけはし2018年11月19日号

「女性の権利は労働者の権利」!


労働運動

グーグル・ストライキ

労働者運動の潜在的可能性があらためて

ダン・ラ・ボッツ

 今をときめくIT多国籍大企業のグーグルで一一月一日、世界各地の職場で労働者が一斉に反乱を起こした。何が起きているのか、それは労働運動の今後に何を提起しているのか、大きな注目が必要な事態が起きている。以下ではその経緯と、まだ素描的だが、そこにはらまれた潜在力を伝えている。(「かけはし」編集部)

 米国中の、また世界中のグーグル従業員数千人が一一月一日、「セクシャルハラスメント、非行、透明性欠如、さらにすべての者のために機能してはいない職場に抗議するために」彼らの仕事を放り出した。その運動は、シンガポールで始まり、地球を周回し、カリフォルニアのマウンテン・ビューからボウルダー、ニューヨーク、さらにロンドン、ダブリン、チューリッヒ、ベルリンでグーグルの事務所を閉鎖した。

重要な労働者
運動が姿現す


壁やプラカードに書かれた標語は、「邪悪であるな」あるいは「技術者よ、限界だ」と読める。一人の女性は「私の憤激はこの標語ではうまくはまらないだろう」と書いた。労働者たちはほとんどすべてのところで短時間の集会を開催し、そこで女性たちが運動の要求を読み上げた。ストライキと集会に関する多くの写真やビデオを見れば、またグーグル労働者のコメントを読めば、これが大衆的な労働者の運動であることははっきりする。
多くのところで数時間続いたストライキは、現代の労働者の歴史上、最大の国際的な労働者の職とつながった行動だ。これらのような組織化されたあるいは未組織の労働者のどちらでも、労働者がこれほどまで世界的で国境を越えた行動に取り組んだことは、ここ何十年かではめったになかった。
それはまた、二、三〇年前にこの産業が生まれて以来、米国の技術労働者による最大の行動でもある。そしてそれは、「♯MeToo」運動のもっとも重要な職場への拡張の一つだ。グーグル・ストライキの国際的な性格、行動を起こした人々が高度の熟練を積んだ技術労働者であるという事実、そしてこれが女性のための戦闘だったという事実はこれを、労働者運動にとっても巨大な意味をもつできごとにしている。
グーグル労働者は、ストライキをやり通し、まだ組合ではないとしても、そこから団結をつくり出した。グーグル労働者はこれを労働者運動と認めるだろうか? そして米国の組織された労働者は、保守的な労働運動の官僚制の中で窒息させられたり握りつぶされたりすることなく、行動に入っているグーグル労働者を包み込むことができるだろうか? われわれは何が起ころうとも、とてつもない潜在的可能性を秘めた草の根の労働者運動の証明を獲得することになった。

会社の策への怒
りが火を着けた


性的非行事件に対するグーグルの扱いを探ったニューヨークタイムズの調査報道が、諸抗議に火を着けた。同紙は、アンドロイド携帯電話の開発者であるアンディ・ルビンによるセクシャルハラスメントへの信用できる申し立て――一件のオーラルセックス強要を含んで――をグーグルの経営部門が聞き知った後で、彼が九〇〇〇万ドルの解決金で会社を去った、と報じた。ルビンはこれらの申し立てを否認している。
グーグルの女性労働者たちは、この報道に多くは憤り、何人かは激怒し、彼女たちの男の仲間も加わり、この問題に関し組織化を始めた。そして次いでストライキの呼びかけを発した。
労働者の要求は次のものだった。
?ハラスメントと差別事件への仲裁強要を終わりにすること。賃金と機会の不公平を終わりにする約束。
?広く公開されるセクシャルハラスメントの透明な報告。
?安全で匿名の、性的非行報告に対するはっきりした包括的手続き。
?CEOに直接報告でき、重役会に勧告できる主席総務幹部。
?グーグル役員会への従業員代表の指名。

必死に怒りを
なだめる会社


グーグルのCEO、サンダー・ピチャイは、彼自身と会社をこのストライキと行動を共にするものにしようと試みた。ピチャイはニューヨークでの『ディールブック』(ニューヨークタイムズのコラムニストが、ビジネスと政治の主要記事について解説するニュースレター:訳者)会合にウェブ会議の形で参加し、その発言で、「明らかに今は困難な時だ。この会社には怒りとイライラ感がある。われわれ皆がそれを感じている。私もそうだ。グーグルでわれわれは高い関門を設定しているが、われわれはわれわれの期待に恥じない行動をしては来なかった」と語った。
ピチャイは、会社はその時以後重要な成果を上げてきた、と力説し、二〇一四年のルービン問題解決に関する怒りをそらそうと試みた。ピチャイは会合に現れて、二〇一四年のルービン退社後、グーグルは会社すべてで性的非行に取り組む方策を諸々取ってきた、と強調した。彼は「はっきりさせてくれ。これらの事件は二、三年前を発端としている。われわれは常に一つの会社としての行動を取り、私にとって重要であったこと……は、適切な行動の点でわれわれが厳しい線を引いてきた、ということだ」と語った。
彼は、四八人の従業員が性的非行が申し立てられた後で職を辞し、そこには一三人の上級管理者がいることをほのめかした。「しかし、今回のような場合が示していることは、われわれがそれをいつも正しく理解したわけではなかった、ということだ」と認めた。
グーグルの労働者がピチャイの言葉でなだめられそうには見えない。彼らは、役員会に一つの声を確保すること、新たな諸方針、そして一切の無意味な言葉をなくすことを要求し続けている。一つのグーグルサイトでは、抗議に立ち上がっている人々の唱和、「女性の権利は労働者の権利」を聞くことができるだろう。グーグルの労働者は労働者運動に入り込んだ。そしてうまくいくならば、彼らはそれを変える助けとなるだろう。

▼筆者は、民主的労組を求めるティムスター(TDU)の創立メンバー。「ニューポリティックス」の共同編集者、「メキシコ労働者の情報と分析」の編集者でもある。(「インターナショナルビューポイント」二〇一八年一一月号)

サウジアラビア

あからさまな権力犯罪糾弾、しかし…

汚い殺人の共犯者を見逃すな

デイヴィッド・フィンケル

 サウジアラビア最高権力者によると推測される一人のジャーナリスト謀殺が、世界に大きな驚きを与えると共に、もっとも不透明なこの地域に新たな不安定要因をつくり出している。その真実と今後の展開は、真実が明らかになるのかどうかも含めて、まったく不透明だ。以下ではその全体像ではなく、世界の大国、特に米国がこの事件の共犯者であり、それが歴史的に以前から、また今後も続くものであることが論じられている。(「かけはし」編集部)

すべて崩壊した完全犯罪の思惑


 イスタンブールのサウジ領事館で起きたジャマル・カショギの拉致―拷問―殺害は、ジャーナリストが謎のように痕跡も残さずに消えたようだとの、ある種の完全犯罪として計画されたはずだ。それは、サウジの王宮――それがムハンマド・ビン・サルマン(MBS)王子を意味することは、誰もが知っている――によって派遣された死の部隊が、いくつかの計算違いを犯したために失敗した。
 彼らは、カショギが二時間以内に現れないということがあれば急を告げろ、との指図の下で彼の婚約者が領事館の外で待っているだろう、とは予想していなかった(カショギは明らかに、拘留される、可能性としては誘拐もあるかもしれないとは疑っていたが、それでもその場で殺されるとはまったく予期していなかった)。彼らは、監視ビデオが彼が建物に入るのを、しかし出てこないのも見ていた、ということも忘れていた。
 そして彼らは、領事館構内をこれまで盗聴してきたトルコの情報部が、殺人の音声テープをもっていると思われるということ、さらにエルドアン政権が彼ら自身の込み入った理由から情報を選択的に漏らすだろう、ということを分かっていなかった。

共犯者は期待
に応えている


 殺害者たち、および彼らを送り出した者たちは、彼らの同盟者たち、真っ先にまた何よりも米政権が、犯行後も自発的に共犯者になるだろう――トランプと仲間は、カショギに起きたことについてはまったく情報がない、と明言するだろう――と考えた。彼らはそれについて大きく間違ってはいなかった。
 すなわちトランプは、国務長官のポンペオが「彼らの捜査を完遂する」(もみ消す)時間を彼らに与える形で、さらに、MBSのショーケースである「砂漠のダボス」投資会議への出席を今も計画中、という財務長官のひどい発言という形で、サウジ支配者たちのために「疑わしいことを有利に解釈してやる」あらゆるもくろみに出た。
 トランプは、ギャングに相対するギャングとして、彼の崩壊しかかった不動産帝国に対するこの王国による救援には触れないまでも、サウジアラビア向けの兵器売却からの利益が重要、とはっきりさせた。イエメン民衆に対してこれらの兵器が及ぼしている大量虐殺的作用は、未だほとんど隠されたままにある、ということが想定されていた。

もみ消し工作
も次々に破綻


 この打ち合わせは、リアド発の一連のあからさまな嘘が、以前の嘘のいかさまさを各々の新たな改作があらわにする形で崩壊した時、はじめてバラバラになった。カショギが領事館を出た、あるいはある種の「腕白者の行為」の中での「殴り合い」で彼が不慮の形で殺害された、という発表に込められたものは、それを誰かが実際に信じるということ、あるいは信じるとの期待、というよりもむしろ、諸政権とメディアから出てくるものが、それを信じるふりをする、ということへの期待だった。
 国内的であれ、外の世界であれ、その言葉に疑問が出されることに慣れていない体制によるもみ消しにはらまれたへまをやりがちな特性が、見せかけを維持不可能なものにした。
 襲撃チームの一員は、家に戻った直後、都合の良い「交通事故」の形で、闇世界にふさわしいスタイルで早くも消された。残りの者は、われわれに伝えられている限りでは、解雇されたか逮捕された。彼らは転落を耐え忍ぶことになるだろう。何人かは静かに再配置されるかもしれず、他の者は、ジャマル・カショギのように永遠に行方不明で終わることすらあり得る。
 そうした方策が「近代化を図る改革者」としてのMBSの国際的地位を救うことになるのか否かは、王国の党派的な白兵戦の中で、そして世界の中心地の企業および政権に巣くうマフィアのドンたち内部の談合で解決されるべく残されている。

自発的共犯者の
存在の認識必要


 われわれは、ここでこれらすべての地政学を解明しようとはしないが、MBSを一定の歴史的な脈絡の中に置いてみる必要がある。彼は、有望な改革者、あるいは近代主義者、あるいは「過激主義」に立ち向かう穏健な防波堤として、西側で称賛を受けた相当な連なりのある人物の列にいるもう一人の者だ。今となっては思い出すことも難しいが、バシャーアル・アサドもその一人だった。サダム・フセインはもう一人だった。一時期、モアマル・カダフィが第三の者だった。残忍なエジプトの独裁者であるアル・シシは今でもその地位を保持し……そしてトルコの豪腕な独裁者、エルドアンは、カショギ殺害の余波の中で彼自身のぼろぼろになったイメージを回復する途上にある。
 これらの改革者は多くの場合、あれやこれやの形で長く保った後に彼らの有用性を失い、使い捨てにされた。サウジアラビアの原油資源、その巨額にのぼる国際的な投資と金融の広がり、さらにイランを敵とする戦争策動におけるサウジの戦略的な中心性を条件とした場合、先のことがMBS自身にも起きるのかどうかは定かではない。
 われわれはその最終的な影響の広がりを考えておくべきだろう。しかしわれわれは、西側諸大国と何よりも米帝国主義が、MBSとその同類に対する彼らの抱擁として、犯行の前から、その最中、そしてその後も、殺害と恐るべき抑圧の点で、自らを自発的な共犯者――実際はパートナー――にしている、ということを認識する必要がある。(二〇一八年一〇月二三日)

▼筆者は、米国の社会主義組織であるソリダリティが発行する「アゲンスト・ザ・カレント」編集者。(「インターナショナルビューポイント」二〇一八年一一月号)


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