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    かけはし2018年12月3日号

入管法「改正」案採択許すな


移民受け入れを正直に認め
人権保障する改正の実現を

移住労働者と連帯し共に闘おう


 今臨時国会に上程されている入管法改正案(正式名称:出入国管理及び難民認定法及び法務省設置法の一部を改正する法律案)が、与党によって審議を事実上封殺したまま採択が強行されようとしている。問題が山積みの法案である上、実は成立を急ぐ理由すら確かではない。まさに異様な事態が起きている。

技能実習制度の検証
は不可欠の課題だ!


 この法案については、今年一一月一三日付の日本弁護士連合会意見書、同一一月一七日付の日本労働弁護団総会決議、あるいは各紙論説をはじめ、特にその人権保障に関わる危険性の点ですでに各方面から厳しい批判が寄せられ、十分で慎重な審議の必要が強調されると共に、必要となる修正内容も具体的に指摘されている。あるいは技能実習・国際貢献という美名の下に事実上移住労働者として働いている技能実習生からも、その制度の、劣悪な労働条件と人権無視が横行する非道な実態が痛切に訴えられている。ちなみに、職場移動の自由がなく、中間搾取を排除する有効な施策も欠いたこの技能実習制度には、国際的にも以前から奴隷労働との批判が浴びせられてきた。
 「新たな外国人材の受け入れ」として今回の入管法改正案でつくり出される制度がその轍を踏むことはないのか、その見極めはまさに不可欠の要点だ。そしてその点で言えば、安倍首相が「移民政策に変更はない」と言い張るような、難民・移民を拒絶したまま、「労働力」としてだけは都合良く「利用」したいとしてきたこれまでの身勝手な日本の政策、特にその典型的制度である技能実習制度の延長上にある今回の法案では、同じことが繰り返される危険性は極めて高いと言わざるを得ないのだ。その意味でまた、技能実習制度の実態を厳しく批判的に検証することは、今回の法案審議では必須事項と言わなければならない。
 ところが山下貴司法務相は、今法案がめざす新たな制度と技能実習制度は「異なる制度で密接不可分ではない」と言い張り、検証の必要を否定する。しかし一方で山下法務相は、新制度での受け入れ見込み数の半分以上を、技能実習生からの新制度への移行に依存している、という説明資料を国会に提示しているのだ。しかも半分以上というのはあくまで平均であり、同資料で挙げられている一四業種を子細に見れば、素形材産業ではほとんど、造船・舶用工業や自動車整備業では七割、漁業では八割にもなる。このどこが密接不可分でない、と言えるのか。
 果てにこの法務相は、急ぐ理由を問い詰められての委員会答弁で、「来年四月より(施行が)遅れれば、万単位の方々(技能実習生)が帰国してしまうから」と口走ってしまう始末だ(一一月一五日、参院法務委員会)。まさに、今回の制度と技能実習制度は否定しようもないほどに密接不可分であることを自ら認めたに等しい。
 さらに加えれば、技能実習制度は、日本で培った技能を母国の発展に生かしてもらうとの趣旨を大義名分とした制度だ。それを「帰られては困る」と言うのでは、語るに落ちる、だ。先の大義名分は偽の看板、実態は労働者受け入れ、しかも労働者ではないとして権利保障が不十分で劣悪な労働条件での受け入れ、という現実を政府自ら認めたのだ。
 まさにごまかしに継ぐごまかしだが、そのデタラメさは逆に、技能実習制度検証の重大さを一層際立たせている。

事態の深刻さが
データ偽装招く

 その検証という点では、もう一つひどいごまかしが露呈した。すでに報道も多いが、いわゆる「失踪技能実習生」に関する法務省の報告だ。二〇一七年中に退去強制処分を受けた「失踪技能実習生」(訂正後の数字では二八七〇人)に法務省が聞き取り調査を行った結果であり、技能実習制度の非道な実態を掴む上では非常に重要な基礎資料だ。ちなみにこの調査は、技能実習制度には問題が多いとの観点から議決された国会の付帯決議(全会一致)に基づいて行われている。
しかし報告は結論として、「@技能実習を出稼ぎ労働の機会と捉え、より高い賃金を求めて失踪する者多数」(八六・九%)、「A技能実習生に対する人権侵害行為等、受け入れ側の不適正な取り扱いによるものが少数存在」とし、国会では山下法務相がその趣旨で答弁した。事情に疎い人がこれを見れば、「失踪」は利己的で身勝手なもの、との印象をもつことは明らかだろう。
しかし実際は違っていた。そもそも聞き取り項目に「高い賃金を求めて」などというものはなかった。回答項目はあくまで低賃金、同(契約賃金以下)、同(最低賃金以下)でしかなく、この三項目回答の合計を勝手に「高い賃金を求めて」とくくっていたのだ。しかも訂正後の集計は六七・二%と、大幅に低くなっている。
さらに「不適正な取り扱い」の実際の数字も違う。「指導が厳しい」、「暴力を受けた」、「帰国を強制された」の項目を合計した場合訂正後の数はほぼ倍増し、約二〇%にもなる。「少数存在」などとはとても言えないレベルだ。
まさに、裁量労働制データ偽装と瓜二つ、あからさまな「印象操作」ではないか。裁量労働制の場合と同じく、原資料に基づく検証は避けられない。しかし与党は今もって、原資料を同委員会理事のみの閲覧にとどめている。異様すぎる事態だ。
しかも「失踪」はむしろ増えているのだ。技能実習生の「失踪」数は二〇一七年に七〇八九人と報告されている。しかし山下法務相は一一月一日予算委員会答弁で、今年上半期の実習生「失踪」が四二七九人に達した、と明らかにした。政府が昨年一一月施行の技能実習適正化法で人権侵害行為への罰則を設け、実習の監督を強めたにもかかわらず起きていることだ。
法務省の偽装はむしろ事態の深刻さを明るみに出すことになった。二〇一七年の労働基準監督署の監督指導では、技能実習事業所の七〇・八%に労働基準法関係法令違反が指摘された、という事実も加えたい。技能実習制度検証の妨害は決して許されない。そして新しい制度の創設を課題だとするのであれば、この制度の存続を許す余地はもはやない、とはっきり認めさせなければならない。

責任を取らない国家が
裁量権を持つなんて


家族帯同を認めないことを含め、新制度には他にもまだまだ多くの問題が指摘できる。しかし与党は、それら一切に背を向け、野党の批判に議論で応じることすら放棄し、会期内成立にひた走っている。「深刻な人手不足」(今年二月の経済財政諮問会議における安倍首相発言)への対応が迫られている、来年四月施行が何としても必要、などと吹聴されている。しかし「人手不足」がたとえ事実だとしても、今回の法案でそれが解消されるわけではない。現に今回政府が提出している五年間の受け入れ見込み数では、現時点での「人手不足」見込み数にも足りていない。そうであれば四月施行にこだわる理由もない。要するに、成立を急ぐ与党の言い分にはまったく根拠がないのだ。
結局政府・与党の真意は審議させたくないという点に尽きる、と言わざるを得ない。それを端的にあらわにするものが、野党から「がらんどう」と批判されているこの法案の内容だ。法案は、新たな在留資格として「特定技能1号」と「特定技能2号」の創設、入国管理局に変えて「出入国在留管理庁」の創設などを内容としているが、その制度の具体的内容、たとえば受け入れ分野、技能試験、受け入れ要件、受け入れのあり方(民間受け入れ期間への規制)など、ほとんどが法務省令や「政府基本方針」に丸投げされ、国会が関与しない形にされているのだ。
国権の最高位とされてきた立法行為は事実上排除されている。ここには、ある意味で、自民党改憲四項目に含まれている非常事態条項の先取りとも言える深刻な問題が潜んでいるとすら言える。安倍政権の下で歯止めなく進む行政の肥大化には、あらためて意識的な闘いが求められている。
そしてこの中で、多くの重要な問題が法に規定された国家の責任から、事実上国家があたかも恩恵として授けるかのような恣意的な裁量に移されている。たとえば人権保障の点では極めて重大な悪質な紹介業者の排除も、さらには職場移動の自由すら、法文には明記されていない。
さらに生活に関わる社会統合政策・多文化共生政策では、法制度上の検討すらされていない。移住者生活支援に関わった筆者の経験でも確かだが、実は、ほぼ一九九〇年前後から始まる移住者問題に関わるこの間の現実では、移住者の生活支援問題はほぼすべてが最初は市民による支援ボランティア、後に自治体も加わる現場の努力に任されてきた。国家は基本的に責任を果たすことはなかった。新たな制度はこれを変えるものにはなっていない。このすべては、移民という実態を決して認めない、という国家政策に淵源があるのだ。

身勝手な移民拒絶
政策転換させよう

 あまりにひどいごまかしではないか。それは自ずから、今回の政策の裏にある真実の姿、つまり移民でありながら移民とは扱わないという究極の欺瞞、をも透かし彫りにする。
「人材」ではなく人として迎える、つまり難民・移民の迎え入れを、正面から課題に設定することが求められている。現実にも日本社会はすでに、移住労働者を日常風景にし、その労働と暮らしは社会を支えるものとして定着している。それゆえにこそ、「多文化・共生」のスローガンは公的にも掲げられてきたはずだ。
難民・移民の拒絶という排外主義的政策は現実には破綻している。その破綻に小細工で継ぎ当てし、いいとこ取りだけはしたい、という身勝手なあり方こそ今回提起されている問題の核心だ。まさにその趣旨に立って、一一月二一日には、「今こそ、包括的な移民政策を! ―政府が進める『新たな外国人材受け容れ』を問う」と銘打った院内集会が、特定非営利法人・移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)主催の下に参院議員会館講堂で開催され、野党議員も含む二〇〇人の参加者が、技能実習制度の即時廃止をはじめとした具体的要求を添え、移住者に人間として暮らすための権利と尊厳を求めるアピールを採択した。
安倍の固い支持層である復古主義的右派だけではなく、一部に、日本人労働者の雇用や労働条件に悪影響がある、として移民に警戒する論調がある。現に連合は、外国人労働者の安易な受け入れ反対という立場に立っている。もちろんこの「安易な」という表現には、すべての外国人労働者の権利保障が前提との観点も含まれているが、先の警戒もにじんでいることは否定できないだろう。
しかしわれわれは、やむにやまれずに人が移動せざるを得ない世界に生きていることを自覚しなければならない。時あたかも、米・メキシコ国境には中米の難民が大挙して押し寄せている。同時に大規模な気候難民の移動もすでに始まり、それは確実に拡大するだろう。そしてそのすべてには、紛れもなくいわゆる先進工業国の責任がある。気候変動はもちろん、新自由主義的グローバリゼーションによる多国籍大資本の活動が、一次産業を先頭に生活基盤の深刻な破壊を進めているからだ。
先進工業国に暮らすわれわれは、この移動を迫られている人々を身勝手に拒絶することはできないのだ。そうであればその原因を作り、同時にわれわれの生活と権利をも破壊している支配階級、多国籍資本に立ち向かい、連帯して闘う仲間として、移住労働者を積極的に迎え入れることを自ら課題に据える挑戦こそが求められる。
簡単なことではない。しかし同時におそらくそこには、後退が進む労働者運動の反転攻勢に水路を開く潜在力が秘められている。新しいエネルギーと新しい文化がそこにあるからだ。移住労働者が軽くはない役割を果たしてきた労働者運動の歴史も思い起こされてよい。
そして日本でも現に、移住労働者を闘いの仲間とする労働者の運動が継続的に重ねられてきた。今こそこの経験をさらに広げることが求められている。率先して欺瞞に満ちた難民・移民政策の転換を要求し、技能実習制度の廃止を先頭に、日本の支配的エリートたちが小手先のごまかしに頼る明らかな矛盾の積み重ねを突き崩そう。   (神谷)

冬期カンパのお願い

日本革命的共産主義者同盟(JRCL)/国際主義労働者全国協議会(NCIW)

 全国の同志、友人、「かけはし」読者の皆さん。日本革命的共産主義者同盟(JRCL)と国際主義労働者全国協議会(NCIW)は冬期カンパへのご協力を訴えます。
 安倍晋三は自民党総裁で三選を果たし、最優先課題を「九条改憲」=自衛隊の国軍化、戦争のできる体制の構築に目標を定めた。それに対抗しているのは沖縄であり、県知事選で米軍基地新設を許さない玉城デニーさんが圧倒的支持を受けて当選した。沖縄・辺野古での米軍新基地建設の埋め立て工事がいよいよ砂利の投入による海の埋め立てという重大局面に突入しようとしている。阻止の闘いを全国的に作り出そう。自衛隊基地の先島群島への建設、軍備増強に反対する。改憲絶対阻止。
 朝鮮半島で朝鮮休戦協定を平和協定にそして非核化に向けての動きが始まっている。安倍政権のように軍事的圧力によるのではなく、民衆の平和を求める力を基礎においた闘いを。
 安倍政権は外国人労働者を実習生などとして労働者性を認めない低賃金、労基法も適用しないいわば「奴隷」労働者として扱ってきた。そうしたことを変えることなく、労働力不足を補うとして、大量の外国人労働者を受け入れようとしている。非人間的な実習制度の廃止、劣悪な入管体制の抜本的な見直し、外国人労働者の労働者保護制度の確立をもとに受け入れを。
 また福島第一原発の事故被災者の切り捨て、原発の再稼働、原発輸出に反対する。二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピック開催は大資本のカネもうけと国家発揚のために行われる。二〇一九年の天皇の「生前退位」も、こうした「改憲」=「新しい時代」「美しい日本」と一体で進められている。天皇制はいらない。消費税一〇%への増税を阻止しよう。
 私たちは全世界で新自由主義に抗して、生存や人権、民主主義を求めて闘っている人たちの一翼を全力で担っていこうと決意しています。週刊かけはしの維持・発展のために冬期カンパにご協力をお願いします。
 【送り先】?労働者の力社 郵便振替 00110=2=415220
?新時代社 郵便振替 00290=6=64430



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