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    かけはし2018年12月3日号

全国一斉の反基地行動を


寄稿

沖縄から呉・岩国を訪問して

沖本富貴子(沖縄)

 機会があって、必ず行かなくてはと思っていた呉と岩国に行ってくることができた。呉ではピースリンクの西岡さん、岩国では二三年余岩国市議をされてきた(今期から引退)田村順玄さんからお話を伺うことができた。岩国も沖縄に劣らずひどい状況にあること、さらには政府が米軍のために税金をふんだんに使って自治体に押し付けてくる卑劣なやり方はどこも同じであることを痛感した。やはり現地を回って地元の人から話を聞くことはとても大事である。
 
広島湾に日米の
海軍・自衛隊集中
 広島湾のちょうど右端にあたる呉は、旧日本軍の海軍基地、現在は海上自衛隊がとってかわっている。呉には明治時代に呉鎮守府がおかれ、日清、日露戦争のときから大きな役割を担った歴史を持つところで、戦艦大和など戦艦や潜水艦等が作られた海軍工廠や兵器製造等の軍需工場がある海軍の一大拠点であった。現在は海上自衛隊がとって代わり、護衛艦(ヘリ空母)、輸送艦、掃海艦など四〇隻余りを有し、海上自衛隊基地の中でも最も多い保有数となっている。
 私たちが行ったときには潜水艦の多さが目についた。それもそのはず海自保有の六割が呉にあるということだ。さらには米軍の弾薬庫が呉近辺数カ所に分散しながらおかれ、極東最大級と言われる弾薬庫地帯になっている。弾薬庫司令部も呉にあった。
 広島湾のもう一方の左端にあるのが滑走路を持つ米海軍と海兵隊の航空部隊・岩国だ。旧日本海軍時代には海軍の航空部隊が、現在は米海軍の航空部隊と米海兵隊、さらに海上自衛隊航空隊も配置されている。
 広島湾に浮かぶ江田島は日本海軍時代には兵学校が置かれ、陸軍特攻艇の練習場になった。現在は海上自衛隊の中堅、幹部を育てる学校に変わり、米軍秋月弾薬庫もこの島にある。
 このように広島湾は日米両国の海軍拠点となっているのである。

普天間海兵隊基地
と密接な岩国基地
アメリカ海兵隊の国外基地は日本にあるだけだ。しかも日本の岩国と沖縄にあるだけだ。それだけに両基地は非常に緊密につながっている。
そもそもは、一九九六年
のSACO合意に始まる。普天間海兵隊基地の負担軽減策の大きな柱は辺野古移設であったが、同時に普天間の空中給油機KC130、一二機すべてを岩国基地に移すことも含まれていた。辺野古に隠れてあまり知られていないが、すでに実行され岩国に全機移動している。
しかし負担が軽減されるはずの普天間にオスプレイ二四機が強行配備されたのは二〇一二年。このときオスプレイは米本国から岩国にいったん運ばれ、ここから普天間に飛んできている。
今このオスプレイは岩国に飛び立ち、岩国を拠点に日本全土で訓練を展開している。そのオスプレイもすでに空中給油訓練中、安部海岸に墜落し、さらにオーストラリアで着艦訓練中墜落、今では二二機になった。岩国は空中給油機のほかにオスプレイの訓練拠点まで押し付けられたことになる。
一方沖縄の伊江島では艦の甲板に見立てて再整備された滑走路に岩国所属のF35艦載機(垂直離着型ステルス戦闘機)がやってきて一二月から離着艦訓練を始める予定である。大型輸送ヘリの訓練も行われる。昨日の新聞では岩国からFA18戦闘機が普天間基地に飛来したという報道があった。岩国・沖縄は空から見ると一つにつながり自由に往来して岩国沖縄間で訓練をしているという状態だ。

厚木の「負担軽減」
と岩国の負担増
その上岩国は厚木基地の負担軽減ということでさらなる負担を強いられることとなった。厚木基地、ここも米海軍と海上自衛隊の航空基地であるが、騒音被害がひどく第五次訴訟が現在も継続中だ。ここに日本政府が介入し、厚木の負担軽減のためと称して、米空母艦載機FA18戦闘攻撃機など六一機を強引に岩国に移転させた。従来の岩国にあった米軍機七一機と海上自衛隊機三六機を合わせると嘉手納の一〇〇機をはるかに超え、岩国は駐機数において東アジア最大規模になる。
先日岩国に移駐して来たばかりのこのFA18戦闘機(スーパーホーネット)が、沖縄の北大東沖で墜落したのは記憶に新しい。さらに同じく移駐してきた同機が今年の夏、グアムでクラスAの事故を起こしていることが発覚した。岩国に移駐早々二機が事故を起こしている。
普天間と辺野古で聞きなれたこの「負担軽減」だが、しかし抑止力は維持されなければならないとされ、結局はどこかに移転する仕組みとなっている。負担軽減はどこかの負担増になり、基地のたらいまわしがされているだけだ。
しかし負担軽減は隠れ蓑に過ぎず、内実は日米の軍事再編戦略に伴って巧妙に移転と同時に機能強化が仕組まれて、移転する側も移転される側も含めて広域にまたがって一体化されているだけであり、実のところ負担軽減でも何でもない。
最近も「沖縄の負担軽減を目的とした訓練の移転」を名目に大分県の陸自日出生台で普天間オスプレイも参加して日米共同訓練が実施されることが発表された。陸自の大分十文字原や福岡の空自築城基地も利用するとのこと。「沖縄の負担軽減」を名目に自衛隊基地も巻き込んで、広域間を移動(これ自体も訓練)、住宅地を飛び交いながら日米共同訓練の拡大化が進む。「沖縄の負担軽減」を口実にされるのは沖縄にとっても迷惑千万である。

市民を裏切った
基地の沖合移設
岩国市民は住宅地上空での訓練と騒音に悩まされていることから、さらには危険回避の観点から沖合移設を長い間希望していたが、やっと日本政府が動きだし、海を埋立て沖合一km先に滑走路を移転、完成させた。この米軍基地のための費用は日本側が全額負担したのは言うまでもない。古くなった施設も全面的に建て替えられた。
しかし結果的には、市民の危険回避と騒音の軽減要求とはかけ離れたもので、逆に基地面積が一・四倍になったところに、厚木と普天間から空母艦載機群や空中給油機部隊が移動し、オスプレイの恒常的な使用が始まり、基地機能が大幅に増強される結果になった。しかも埋め立てて作られた基地には大型岸壁もつくられ、弾薬庫もある。
出来上がった岩国基地は作られようとしている辺野古新基地と全く同じ構造であり、辺野古が遅れても岩国で間に合うように、すでに先行完成しているように見えた。当初から日本政府の目論見はここにあったのではないか。

愛宕山削って
土砂を調達
基地拡張で沖を埋め立てたさいの土砂は一二〇mの愛宕山を六〇mに平らに削って調達した。跡地は住宅地開発の予定が、紆余曲折の末、防衛省に転売され米軍住宅が建てられた。沖合一q滑走路移転で開発も進むという期待は見事に砕かれた。さらには、野球場やソフトボール球場など立派な大型スポーツ施設が作られたが、実はこれらの施設も防衛省が国民の税金で作り、米軍に提供、それを市民がありがたく共用させてもらっているという仕組みになっていた。あきれたことに年間維持費二億円は岩国市民が負担しているとのことだった。

岩国市民は移設
反対の民意示す
岩国市民は当時の井原勝介市長ともども議会も一致して、厚木基地からの空母艦載機群の移設に反対していたのだが、政府は議会を懐柔し、「国の方針が変わらなければ移転案を受け入れ振興策をもらった方が得策」「来るものは来るからお金をもらった方がよい」と方向転換させ分断を図った。辺野古だけできく言葉ではなかった、なんとここではすでに先行し、「諦めさせて補助金で釣る方式」が成功していた。日本政府が国民を金で釣るとはまさに愚民化政策というほかない。
しかし市民の遺志は強かった。「負担のたらいまわしは許されない」「安全安心はお金に替えられない」という思いは住民投票の実施に向かい、五九%近い投票率、内八七%が受け入れ反対という結果が示された。米軍再編に関する住民投票は初めてであり、しかもNOとする民意が岩国でしっかりと示された。
ここで見落としてならないのは「国防は国の専権事項」で住民投票にはなじまないとする横やりが入ったことだ。現在の辺野古に関する沖縄の民意も「防衛は国の専権事項」の論理でないがしろにされている。「抑止力の維持」が最優先され、行き着くところ「県の権限を奪って国の強制代執行」に辿り着く危険をはらむ。
「国の防衛」とは国を構成する国民の安全と命を防衛することであり、したがってその防衛方法は当事者である国民が決めなくてはならない。当事者を抜きにしては軍部の暴走を許すことになる。
そもそも軍隊をもたないとする「平和憲法の日本」を軍事的に攻撃する国がどこにいるというのか、日本にいるアメリカ軍が標的にされるのであるから、米軍が出て行ってくれればなんの軍事的緊張も生じない。一切の基地と軍隊は日本にいらない。これが唯一の国防策だ。

アメと鞭で分断
された岩国市民
岩国で示された民意に対し、政府は新市庁舎建設補助金三五億円をカットするという強烈な鞭をふるった。進んでいた新庁舎の建設は途中で止まった。名護で稲嶺市長に振るわれた鞭はすでに岩国で実行されていた。
最終的には市議会で予算案が何度も否決され、辞任に追い込まれた井原市長は出直し選挙に打って出た。このときの選挙は、まさに名護市長選挙で官邸直々の下、国総がかりで稲嶺市長を引きずり落とした時と全く同じ、否むしろもっとひどかったとも思えるくらいだ。国総がかりの選挙は岩国で実施され、その成功をもって沖縄に適用されたのではないか。
「八〇億の負債を抱える岩国は財政破綻し、税金が二〜三倍に跳ね上がり病院やバスもなくなる」「児童手当がなくなる、安心して子供を育てられない」などと言いたい放題、デマの大宣伝、相手候補が勝てば一人当たり二万円もらえるというまことしやかな噂、沖縄と同じような期日前投票の横行、写メで証拠を示して報酬を受取り、行かなければ解雇の脅し、等々そのやり口はあまりにも醜い。住民には監視体制が敷かれ相手候補系と接触すれば村八分にするという脅しまでされたという。公正明大な選挙どころか、デマ宣伝と同時に国のふんだんな金で給食費、医療費の無料、手厚い保護といった国による買収選挙の様相である。これで法治国家、民主国家といえるのか。
井原市長がこのようにして引きずり落とされた数日後、補助金の復活が即刻なされ、結果立派な市庁舎ができ、そして厚木から艦載機群が岩国に移動してきた。愛宕山には多額の税金が使われ米軍住宅と米軍のスポーツ施設ができた。

岩国と沖縄、
全国の連帯を
沖縄から見ると沖縄への米軍基地集中はよく見えるが、岩国から見るとここまで密接につながっていることに正直驚いた。沖縄と岩国の海兵隊の運用は一体化している。岩国と私たち沖縄はもっともっとつながっていかなくてはならない。
同時に自衛隊の軍備増強、防衛体制強化が日米一体化で進むことに対して全国の人々が立ち上がらなくてはならない。南西諸島への自衛隊配備が強行され、米軍との共同訓練、基地の共同使用が恒常化している。佐賀には陸自のオスプレイ、山口と秋田には迎撃ミサイルシステム「イージスアショア」の配備、さらには普天間基地滑走路二七〇〇m(辺野古はV字で短い)を確保するために(福岡県)空自築城基地の滑走路を沖合を埋立て、三〇〇m延長するという計画まで発表された。
このように全国あちこちで進められる該当地域には例外なく補助金が湯水のようにつぎ込まれ、地域の分断が進む。本当に必要な福祉の費用は削られ、無駄な防衛費が膨らむ一方だ。
いまや全国の連帯が必要である。基地の押し付けあいには断固拒否を貫き、基地をなくす一点でつながっていかなくてはならない。自衛隊、米軍問わず基地を持つすべての地域の人たちが手を取り合い、国民の命と安全を守らない日本政府を包囲し倒さなければならない。全国一斉の反基地連帯行動が実現できればと切に願う。   (11月23日)


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