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    かけはし2018年12月3日号

デベロッパー保護策を廃棄せよ


アイルランド

人々の窮迫は限界

オリヴェー・イーグルトン

 アイルランドは、リーマンショックに端を発する世界金融危機で大打撃を受けながらも、厳しい緊縮と銀行への負債返済第一優先というIMF勧告にしたがって回復を遂げたとして、いわばIMFの優等生と持ち上げられている国だ。しかし、極端な企業課税軽減と規制緩和・私有化をテコとして外国資本に依存し「成長」を志向するその路線は、国内に大きな矛盾を蓄積している。以下ではその矛盾を、住宅危機とそれに対する民衆的抵抗の高まりとして伝えている。(「かけはし」編集部)

住宅危機は
悪化の一方

 家賃の高騰が続いているが、政府は土地・建物の大保有者と結託している。
金融崩壊から一〇年、アイルランドの政治家は「回復」の物語によりかかって、事態の悪化を倍化してきた。中道右派のFine・Gael(FG、統一アイルランド党)政府は、不況を打ち負かし、懲罰的緊縮の年月を経てIMFから経済主権を何とか取り戻し、「共和国の好機」を作り上げたと主張している。それでも、国の公式統計でもホームレス住民が一万人に達する形で、厳しい住宅危機が先の楽観主義を切り取る怖れがあるのだ。
家賃は、現在全国平均で月額一二六一ユーロとなり、今年一二%上昇した。違法な追い立ての割合は、週当たり五件に跳ね上がったが、政府は、追い立てを止める立法や社会住宅計画への資金供与の議会通過を拒否している。政府はその代わりに、三五〇カ所の広大な――まだ眠っている――宅地をそれを開発する計画がまったくないまま放置している。そして、国中にある一九万八〇〇〇軒の家屋を空き家のままにすることを許している。

保護の対象
地主と外資

 政府は、手頃な住居の代わりに、ダブリン全域で七九の高級ホテル建設を承認した。そして政府は二〇一七年に、社会住宅にもっとも適切な地域の一つを、民間エネルギー企業に売却し、この企業は、高価で非効率、そして環境には有害な焼却炉の建設を続けた。
その間国家の土地開発局――危機への取り組みを任務とした――は、宅地開発の六〇%が商業的開発向けに確保される予定の一方、新家屋の一〇軒に一件だけが社会住宅になる予定、と言明した。先月この機関は、一万五〇〇〇軒の担保に取られた住宅の、サーベラス・キャピタルとロウン・スター――大量追い立てと街区高級化加速の歴史をもつハゲタカファンド――に対する売却を止めるために何もしなかった。アイルランド最大の住宅問題福祉団体は、ここまで見てきた悲惨な政策によって、最低でも日に一家族がホームレスに押しやられている、と評価していた。
FGの戦略は、外資引きつけ(そしてそれは、厳格な家賃統制、あるいは借り手の権利の導入があれば減退すると思われる)への切望、および中産階級の支持基盤によって動かされている。この後者の多くは、個人で所有権を持つ地主だ。これまでのところこの党が示してきたことは、これらからの要請が長引く住宅不足のコストより重大、というものだ。

直接行動使い
民衆的抵抗へ


しかし今、住宅活動家のネットワークが大規模な市民的不服従キャンペーンを始める中で、政府の独りよがりは試練にかけられようとしている。八月七日、学生グループ、移民組織、さらに借家人組合の一連合がダブリンで集会をもった。彼らは、「連帯」や「利潤よりも人民」といった左翼諸政党からの支持を得て、市中心部にある一つの建物まで行進した。この建物からは、四〇人のブラジル人移民がこの五月に追い出されたのだ。そしてデモ参加者は、立ち入りに成功、警官を威圧して空き家の家屋を取り戻した。
彼らの占拠は、「都市を取り戻せ」(TBTC)――アイルランド中での建物の確保と追い立てとの戦闘により、FGがつくり出している危機の作用と闘争中の活動家運動――の始まりを刻み付けた。追い立て命令に公然と抵抗する借家人の数は二〇一八年だけで二五%上昇したとはいえ、これらの抵抗行動はこれまで、ほとんど地方的かつ自然発生的だった。TBTCは、そうしたエネルギーを協調された政治的介入に移す可能性をもっている。彼らは、国家が強制収用命令によって空き家を公的所有権に移し、要求を満たす社会住宅を建設し、家賃に所得の二〇%の上限を設けるまで、空き家の建物を標的にする、と誓ってきた。

暴力的弾圧
は逆効果に


一つの法廷が抗議活動家に市中心部の建物から去るよう命令するや、彼らは住宅相のエーガン・マーフィの事務所前で座り込みを行い、フレデリック街にある二つ目の建物を占拠した。今回、福祉諸団体、コミュニティ・グループ、さらに当地の住民からの幅広いTBTCへの承認が、持ち主による追い立て警告を無視する大胆さを彼らに与えた。
彼らは、彼らの活動を支持して街頭に繰り出した数百人と共に、警備保障会社の暴力集団がこの建物を襲撃するまで、そこに三週間とどまった。これらの私的に雇われた強制部隊は、フードをかぶり、家屋内に強引に侵入するために電動のこぎりを使用し、機動隊と命令執行官の支援を受けた。
この中で一人の活動家が、建物の吹き抜け階段に投げ下ろされた後、角のある滑り止めで頭を割られた。他にも一人が、警官五人に襲われ、脳しんとうを起こし首に神経的ダメージを受けた。その夜の終わりまでに活動家六人が逮捕され、四人が医療的処置を必要とした。このパターンは、二家族を彼らの家屋から追い払うために軍事化された警察部隊が展開された中で、続く日々にも繰り返された。アイルランド法務相は、フレデリック街の占拠活動家を暴力的に攻撃する機動隊の映像が表に出る中で、警官の撮影を犯罪とする計画を表明した。
平和的な抗議活動家に対するこの恫喝は、アイルランドの反水道料金運動を思い起こさせている。この運動は、二〇一四年から二〇一五年にかけて、新たな国内税への反対を理由とした一八八人の逮捕を経験した。二三人の反水道料金活動家は昨年、政府閣僚車両の前に座りこむ抗議行動を指導したとして宣告された「誤った投獄」を理由に、辛うじて終身刑を免れた。しかし、この恥知らずな政治的警察行為がアイルランドの反緊縮運動への支持に強い刺激を与えた(政府にその水道料金政策を放棄させて)こととまさに同じく、住宅活動家に対するこの攻撃も等しく逆効果を招くこととなった。

FG・地主連合
との闘いが始動


フレデリック街の追い立て以後、数千人を集めた諸々の集会やベルファストやウォーターフォードで現れた派生行動を伴って、TBTCへの支持が高まった。不安定な住宅事情にある数多くの家族がTBTCに連絡をつけた。そしてTBTCは、追い立てに対する草の根の抵抗を指導し、占拠のワークショップを行い、全国メディアの注目を引き上げ続けてきた。
この記事を書いている現在、一つの全国規模の「行動日」計画が進行中だ。そこには、危機への取り組みを政府に求める数十の行進が含まれている。活動家たちは、首都で二つの家屋を新たに占拠し終え、一〇月三日の大デモに向け会合した。
TBTCがこの勢いを維持するのならば、アイルランドの進歩的諸政党への支持を引き上げ、住宅問題論争を再形成し、各自治体議会に強制収用命令を発するよう圧力をかける可能性を得るだろう。先週、金融局に権限を委託された独立報告が、空き家を買い上げるために「強制収用令」の利用を勧告した。
FGはすでに、土地・建物を強制的に獲得する国家の能力を高める法を導入し終えている。問題は、この方策がしばしば、私的に所有された農地を多国籍企業に渡すために利用されている、ということだ。問題が荒れたまま寝かされている住宅という問題になる場合、政府は先の権利の行使にはるかに腰が重い。
ホームレスの家族が警察署で眠っている映像がソーシャルメディアで拡散される中、政府の不動の地主保護は公衆の怒りに燃料を注いでいる。われわれは、TBTCの勇敢で人を元気づける直接行動の利用――左翼諸政党の議会内奮闘を補足とした――を通してはじめて、FG・地主連合に異議を突き付けることができている。(「レッドペッパー」より)

▼筆者はロンドン在住のジャーナリスト。彼の記事はこれまでに、ジャコバン、オープンデモクラシー、レッドペッパー、モーニングスター(英共産党系紙)に掲載された。(「インターナショナルビューポイント」二〇一八年一一月号) 

移民

ラテンアメリカの移民キャラバンに連帯

中東社会主義者連合

 以下の声明は、一一月三日のラテンアメリカ市民キャラバン連帯ロスアンジェルス集会で読み上げられた。

中東の難民と
よく似た構図
われわれ、中東社会主義者連合は、貧困、暴力、訴追、そして権威主義体制から逃れて、ホンジュラス、エルサルバドル、グァテマラから米国国境に向かっている移民/難民の家族と個人からなるキャラバンに対して、われわれの連帯を明らかにする。われわれは、彼らの痛みと苦しみ、彼らの希望と熱望を理解する。
七〇〇〇人以上になる現在のキャラバンは多くの点で、犯罪的なアサド体制、その支援者であるロシアとイラン、他の帝国主義諸大国、さらにISISやアルカイダのような反革命諸勢力によるシリア革命の破壊から逃れるために、二〇一五年以後にシリアから避難した何百万人というキャラバンに似ている。
オバマ政権と今のトランプ政権はこれまでアサド体制に反対してきた。しかしたとえそうだとしても、彼らは一度としてシリア革命を支持せず、彼らが地域の「安定」と呼んだものを保証する目的で、アサドなきあるいはアサドを含んだどちらかのアサド体制継続を強く望んだ。その上米軍は、ISIS空爆の名目で、シリアとイラクの双方で無実の市民数千人を殺害した。アサド政権、その連携勢力、また上述の諸勢力による攻撃の結果として、シリア住民の半数、あるいは一二〇〇万人は今、国内で住家を追われるか、難民として他の国で暮らすかしている。

第二次大戦後で
最大の難民危機
われわれが今日世界中で経験している難民危機は、第二次世界大戦以後では最大だ。それは、中東の住民やラテンアメリカ人だけではなく、貧困、訴追、戦争から避難しているアフリカ人も、さらに南と東のアジア人、特にミャンマー軍事政権によるジェノサイド作戦の犠牲者になったロヒンギャのムスリムをも含んでいる。
このすべての事例で、われわれは、難民たちが人間性を奪われ、「別のもの」や敵として扱われるのを見ている。
しかしながら真の敵、そして度を増す難民危機の主な原因は資本主義であり、それが抱える抑圧のシステムだ。それらは、搾取、不正義、不平等、疎外、戦争を推し進め、そして資本主義の諸病弊に苦しむ多数が結集し、資本主義に対する人間的なオルタナティブをつくりあげることを妨げるために、レイシズム、イスラム嫌悪、家父長制、性差別、ホモ嫌悪、さらに反ユダヤ主義を利用している。
われわれ、中東とラテンアメリカの社会主義者は、ラテンアメリカと中東のいわゆる反米帝国主義諸政権、しかし現実には権威主義かつ資本主義の国家であるものが、問題の一部であることを認めなければならない。それらは、大衆に対する彼らの搾取を隠すために反帝国主義の言葉を利用してきた。
米国ではトランプが、難民として、またより良い生活を求めてここに来ようとしている他国の労働者を悪魔のように描くために、自由貿易とグローバリゼーション反対の言葉を利用している。これに対しわれわれはどうすれば立ち向かうことができるだろうか?

相互交流と連帯
の網の目構築を
社会主義者は、資本主義の一形態としての新自由主義に対する反対は、民衆の国境を越える移動の自由に反対することを意味はしない、ということをはっきりさせる必要がある。資本主義のグローバリゼーション、搾取と抑圧のシステムに反対するためにわれわれは、貧困と不正義から逃れる難民と移民につながりを伸ばす必要がある。われわれは、私的であろうが国家を基礎としていようが、資本主義とその抑圧システムの根源にある、人間性剥奪と疎外に異議を突きつけるために、相互交流と連帯の国際的ネットワークを発展させる必要がある。
黒人、ラティーノ、女性、ゲイ、レスビアン、トランスジェンダーの人々、ムスリム、さらにユダヤ人に対する現在の同時的攻撃を前に、われわれは、レイシズム、白人至上主義、ネオファシズム、性差別、ホモ嫌悪、イスラム嫌悪、また反ユダヤ主義に対する闘争を、資本主義に反対する闘争から切り離してはならず、その逆も同様だ。
われわれ、中東とラテンアメリカの社会主義者は、その努力において互いを必要としている。その努力の一部として、われわれは、移民キャラバンのわが姉妹兄弟への連帯を明らかにする。(「インターナショナルビューポイント」二〇一八年一一月号)

 


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