もどる

    かけはし2019年11月4日号

企業ぐるみの犯罪の実態


「かんぽ生命」の不正な保険販売

JP労組の責任は重大だ


 重大なサギ犯罪行為であるかんはぽ生命の不正な保険販売に、当初経営陣は居直っていたが、調査が進むにつれてその実体が明らかになりはじめ、ついにその責任が隠し切れなくなった。分割・民営化で促進されたこのサギ行為について、経営陣だけではなく、JP労組の責任も問われなければならない。(本紙編集部)

中間報告の公表

 日本郵政グループは九月三〇日、かんぽ生命の不正な保険販売の調査について中間報告を公表した。
 報告によると法令違反が疑われる契約は過去五年で約一四〇〇件、社内規定違反の疑いを含めると約六三〇〇件に達するという。今回の調査対象となった不利益を被った疑いのある「特定事案」とされている一八万三〇〇〇件のうち、契約時の状況を確認できたのは全体の四割の六万八〇〇〇件。このうち、保険内容の虚偽説明などの法令違反が約一四〇〇件、高齢者の勧誘時に家族を同席させないなどの社内規定違反が約四九〇〇件あり、未調査の不正件数が一一万五〇〇〇件あることを考えれば倍増することは明らかだ。
 法令違反・社内規定違反の疑いのある事案の中で飛び抜けて多いのが以下の二つの例だ。一つは、既に加入している保険を解約し新しい保険契約に加入する時、解約を半年間遅らせ二重契約にしておくケースで、全体の九割近くの約五五〇〇件にのぼっている。二つ目は、既に加入している保険から新保険の契約に乗り換える時、四カ月から六カ月間空けるというもので、その間は補償が受けられないことや、健康告知違反を理由に保険金が支払われないこととなる。

販売は適切であったと長門社長が言明


 このかんぽ生命の不正販売調査の中間報告・会見で長門社長は「深くおわび申し上げる」と陳謝していたが、これまでの対応ではかんぽ生命をはじめ日本郵便の経営陣そして統括親会社の長門社長は「(顧客から)しっかりサインを頂いている。明確な法令違反があったと思っていない」「販売は適切だった」の一点張りを押し通してきたのだ。ところが七月七日付の西日本新聞が、前述した新旧の保険に重複加入し、保険料を二重払いさせていたケースが一六年四月から一八年一二月の間に約二万二〇〇〇件に上ることを大々的に報じたのを契機に、他紙の特集記事からもかんぽ生命の不適正営業が明るみに出されるなか、もはや逃げられないと判断し会見に踏み切らざるを得なかったというのが実情なのだ。
 第三者による特別調査委員会は「営業の実力に見合わない目標金額が課されていた」と指摘し、年内に最終報告をまとめるというが、この特調委は社外メンバーであるとはいえ、日本郵政グループが設置するものなので、不適正営業の本質にまで迫ることができるか疑わしい。

不正販売の四分の一が高齢者へ向かう


 朝日新聞の『かんぽ不正の現場@』の記事によれば、七〇代後半の一人暮らしの男性の通帳には「かんぽ」と「アフラック」の保険料の支払い記録がずらっと並び、多いときは一カ月の支払いが一〇本以上。年金は月一八万円なのに保険料は四〇万円にのぼっていた。
 昨冬長女が男性の自宅を訪れた際、新聞やチラシに埋もれた通知を見つけた。ゆうちょ銀行の明細だった。異常な数の保険を不思議に思って聞くと父は「郵便局がちゃんとやってくれているから大丈夫だ」と言った。父は数年前から認知症と診断されていた。父が信頼を寄せていた郵便局員に、まさかこんな非道な仕打ちを受けて女性(長女)の怒りはいかばかりだろうか。
 このひとつの事例を含めてかんぽ生命の不適正営業は全国で一八万三〇〇〇件にのぼるのだから、郵便局員のみの不正販売として片付けることなど到底できるものではないし、日本郵便とかんぽ生命の両社長が会見で「郵便局員への過剰ノルマが不適切販売につながった」と謝罪していることからしても、過去に例を見ない今回のかんぽ不正営業事件は郵政グループの経営組織体制そのものによって起きたことは明らかであろう。
 郵政省から郵政公社を経て民営化がスタートした現在の組織体制は、親会社(持ち株会社)の日本郵政と日本郵便、かんぽ生命、ゆうちょ銀行の三会社に分割された。全国に二万四〇〇〇局ある郵便ネットワークを活用して、かんぽ生命は年間三五八一億円を、ゆうちょ銀行も同六〇〇六億円を業務委託料として日本郵便に支払っている。合わせてこの約一兆円近くの金額は日本郵便の総収入の約四分の一を占める。これは民営化によってユニバーサルサービスを課された赤字体質の日本郵便を持続させるために必要な金額であるらしい。いまも両社から入る委託手数料に変化はないようだ。

物流へとシフトを移すが失敗重ねる

 こうしたことから一企業として収益増を見込む日本郵便は、採算のとれないユニバーサルサービスの本丸である郵便部門から物流部門への参入にシフトを移してきたのだが、周知のようにJPエクスプレスの失敗、日通との宅配統合の破綻、そしてオーストラリア・物流トール社の買収による四〇〇〇億円の減損処理というようにことごとく失敗を重ねている。郵便局の社員はこれら失敗のツケとして、郵便局の統廃合による減員や配転そして早期退職を強要され、年賀や小包の自爆強要や長時間労働を強いられているのが実態だ。
さらにはいま検討されている「土曜休配」の実施によって今後利用者はサービス低下を強いられ、郵便労働者は正規職・非正規職を問わず、強制配転や多くの雇い止め、そして労働強化の攻撃がかけられてくるであろうことは明白だ。
ゆうちょ銀行でも今回のかんぽ保険の不正営業と同じような問題を抱えている。ゆうちょ銀行の貯金額は一九年度から限度額を通常が一三〇〇万円、定額を一三〇〇万円の合計二六〇〇万円に引き上げた。自民党を後ろ盾に貯金額の引き上げを実現したのだ。この引き上げをもってゆうちょ銀行は三年間で総預かり資産をプラス一兆八〇〇〇億円の営業目標を掲げ、そのうちの投信残高を一兆七〇〇〇億円増やすとしている。ここではアベノミクスの低金利が続くなか、過度な投信販売目標が掲げられ、貯金から投資へとシフトを移している最中に発覚した不正営業だったことを注視せねばならない。
連日報道されているかんぽ生命の不正販売はなぜ起きたのか。かんぽ生命の販売の主力は日本郵便の社員約一万八〇〇〇人で、郵便局の窓口でかんぽを扱う社員と外回りで契約を取る渉外社員がいる。会社ぐるみの不正販売について報道各社は、全国で生起してきた事例をこれまで連日枚挙にいとまがない程に列挙してきたが、ここで郵政の情報誌『伝送便』に一六年七月号に掲載された一例を紹介する。参考として東京では渉外社員一人に年三〇〇万円のノルマが課せられていたが、全国でも同様に過剰なノルマが課せられている。

スキルアップ研修は実は懲罰研修だ


郵政ユニオン呉支部のもとに「かんぽ生命広島支店法人営業部でひどいパワハラが行われている」との情報がもたらされたことに始まる。パワハラは特定の渉外社員を退職に追い込む目的で連日「お前は寄生虫だ」「三カ月で一二〇万できなかったら今後どうするか考えてこい」「出来んかったら許さん!死ぬ気でやれ」「出来んかったら責任取らす」といった罵倒が連日続いていたという。郵政ユニオン呉支部が支部情報紙で一四年二月から六月まで『ルポ かんぽパワハラ支店』と題した情宣活動を展開したことで収束した。ちなみにかんぽ広島支店の年間目標は九〇〇万円で、一般局の倍近い目標だった。このため「出来ない局員」を伸ばすより、休ませるか退職させれば、一人分の目標が減るので局としての目標達成が容易になるということなのだ。
このように、渉外担当社員に過剰なノルマ未達の社員を対象としたスキルアップ研修、俗称「懲罰」研修を全国で行ってきた。販売は通常一〇局ほどの郵便局を束ねるブロック(地区)があるが、研修会場はこのブロック内の大きな郵便局の会議室で行う。
社員からは「辞めさせ部屋」とも呼ばれ、年一〇回近く開かれるが、未達社員はその都度呼びつけられる。講師は体育会系のごとく、語気も荒く机をバンバン叩き未達社員をどう喝し、みなの前でつるし上げすらやるという人格をも否定するほどの「研修」だ。
河北新報では、ノルマと懲罰研修に嫌気がさして「日本郵便東北支社では、渉外担当として数年前に採用された新人約一〇〇人のうち、過剰な目標に追い込まれるなどして、すでに四〇人が辞めた」と報道したが、全国レベルで概ね四〇%辞めたと見ても正しいだろう。

渉外社員の基本給カット認めたJP労組


ここまで不正販売の原因として、郵政グループの経営組織体制が生んだ過剰なノルマにあることを指摘してきたが、不正販売にもうひとつ大きな拍車をかけた要因に触れておかねばならない。一四年にスタートした「新たな人事、給与制度」は、郵便関係では人事評価制度が今まで以上に給与に反映され、年賀状やイベントゆうパックなどの販売実績は人事評価に重く反映されることとなった。
一方、渉外社員は郵便関係の社員より役割成果給が減額され、基本給が下がり、その原資で営業手当化されることとなった。具体的には渉外社員は基本給を一二%カットされたということなのだ。かんぽ生命・ゆうちょ銀行経営側はビタ一文のお金を出すことなく、渉外社員の基本給一二%を引き下げて、この原資を元に社員への尻叩きを実施できるのだから笑いが止まらないだろう。
ところが、これはやり過ぎた。基本給をカットした分を営業手当に回したことで、営業実績水準が平均以上ならば、基本給が下がった分をカバーできる。しかし逆に営業実績が平均より低い場合は、基本給が下がった分をカバーすることはできず、年収ベースで減額となる。つまり、これまで以上に営業実績が給与に直結するようになったのだ。
この制度のスタートによって、渉外社員の競争は「懲罰」研修を介して激化し、ノルマやパワハラなどで休職、退職に追い込まれる社員が実に四割にものぼっているのだ。

労使共同体へ突き進むJP労組の先には

 郵政最大労組=JP労組はこれらかんぽの不正販売が全国で明るみに出されるなかで七月、「法令や社内ルールに抵触するものと客観的に立証されるような場合に処分等の検討が行われるものと受け止め、今後の調査状況等を注視していく」と見解を発表した。郵政経営側のこの時期の見解も「販売は適切だった」としていたのだから、JP労組は郵政経営側と同じように社員個人の責任であると公言しているようなものだ。そもそもJP労組本部は「基本給一二%カット」を十分に営業インセンティブになる、民営化に相応しく頑張ったものが報われる制度、を謳い文句に五年前の一四年に労使合意してきた。この労使合意こそが不正販売に拍車をかけることとなったのだ。本来ならば、迅速・丁寧・あまねく公平のユニバーサルサービスを守り、労働者の立場に立つべきであるはずの労働組合が、「会社の持続性の確保」を第一義として、詐欺まがいの不正販売を労使で押し進めてきたのだから労組としての堕落ぶりは目に余る。
「基本給一二%カット」のスタートからの五年間、かんぽ渉外の新人の四割が一年で辞めていく事実をJP労組本部は知らないはずがない。現にJP労組の組合員は長時間労働・パワハラ・非人間的な職場に悲鳴を上げ職場での実態が大会や各種会議でも報告されている。会社経営側との共同体を突き進むJP労組ではもはや保険にすらならない。会社経営側のお先棒を担ぐ労組に未来はない。         (M・M)

10.15

関電原発マネー犯罪
今こそその全容を暴こう!

議員会館と国会前で集会


「原発マネー」の
不正な流れ暴け
 関西電力役員が高浜町の元助役から巨額の金品を受け取っていたというニュースは、あらためて不正な利権にまみれた原発マネーの巨額還流の実態のごくごく一部を、垣間見せるものになった。
 一〇月一五日、午後から院内集会と夜六時半から参院議員会館前での集会が行われた。参加者はそれぞれ約一〇〇人。集会では汚濁にまみれた原発マネーの全容を明らかにしようとする思いが多くの人びとから語られた。参院議員会館前で開かれた集会では、甚大な台風被害のさなかでも、原発マネーの不正きわまる闇の実態を暴き出すことをないがしろにしてはならないという司会の言葉に、参加者から賛意が示された。
 最初に、さようなら原発一〇〇〇万人アクションの鎌田慧さんが発言。鎌田さんはウソと不正なカネにまみれた関電のあり方こそが原発建設の実態を明らかにしている、と鋭く批判し、人間のモラルと命をつぶして原発を動かしているあり方をなくそう、と訴えた。
 原発をなくす全国連絡会の小田川義和さんは、三億数千万円の「原発マネー」は私たちの税金から出ている、しかし関電の経営陣は国会に参考人として出るのを渋っている、政府は人類全体の共通利益に背を向けている、と批判した。
 原自連(原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟)の木村結さんは「関電のやっていることはすべての電力会社でやられている。同時に九電力のすべてに株主運動があり、電力会社を監視している。今こそ私たちの未来を私たちが作り出そう」と訴えた。

電力会社に動か
された自治体
国会議員からは、社会民主党の福島みずほ参院議員、共産党の藤野保史衆院議員が発言。「政府は『一企業の金銭不祥事』として問題を矮小化しようとしているが、報告書には『黒塗り』の部分もあり、隠蔽の意図が見え見えだ。政府は一企業の金銭不祥事だと強弁しようとしている。野党合同の追及チームを作った」と真相解明の努力を強調した。
原子力発電に反対する福井県民会議の宮下正一さんは「福井には一五基の原発が集中しており、あらゆる種類の原発がある。そこでは巨額のカネが注がれ、各自治体を動かしている」と指摘し、原発マネーはこの社会のあり方と切り離すことができず、各自治体が電力会社に動かされている」と指摘した。
さらに原子力資料情報室、避難の共同センターの瀬戸大作さん、再稼働阻止ネットの木村雅夫さん、原子力市民委員会などから次々に、関電問題は国の原子力政策と密接不可分の関係にあることが強調された。
今こそ、分断を乗り越えて「原発のない社会」への歩みを着実に進めよう。           (K)

 



もどる

Back