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    かけはし2019年11月4日号

NATO諸国は対トルコ制裁を


クルド

クルドの闘争

民主的自治へのトルコの攻撃糾弾
あらゆる略奪者は即刻撤退せよ

ジルベール・アシュカル

  トルコが、シリアのクルド運動圧殺という目的を少しも隠すことなくイラク北東部への侵攻を強行した。そしてトランプは、この侵攻を抑止してきた米軍部隊の撤退を命令することで、トルコの暴挙を容認した。アサド政権やロシアの介入も加わって事態が混沌とする中、シリア北東部で民主的な民衆の自治を築き上げてきたクルド運動は大きな苦境に直面している。このトルコの暴挙を止める国際的な動きが求められている。この観点から今回の事態に対する正確な理解と国際的な対トルコ圧力を求めている、ジルベール・アシュカルの論評を紹介する。合わせて、トルコの同志による声明と米国の同志による論評も紹介する。(「かけはし」編集部)

トルコ・米国
共謀した策動


 米国大統領のドナルド・トランプは、彼の常軌を逸した性格、政治的無責任さ、そして人間的いい加減さを露骨に示すもう一つとして、トルコ大統領のエルドアンとの電話会談に続いて、一〇月六日出し抜けに、北東シリアに駐留していた米軍部隊(一〇〇〇人近くの)の撤退を命令した、と公表した。これらの部隊は、シリア民主軍(SDF)を支援するためにそこに存在してきた。そしてSDFは、いわゆるイスラム国(IS、別名ISIS)との戦闘における、人民防衛隊(別名YPG)というクルド部隊が率いる多民族連合だ。
 シリアのクルドの人々と彼らの連携者は、一万人以上の死傷者を出す形で、この戦闘に重い犠牲を払ってきた。彼らは、シリア領内でISを押し戻し抑制する上での助けとなった。彼らはさらに、ただ一つの進歩派ではないとしても、シリア領内で活動するあらゆる武装勢力の中では、特に女性の地位と役割との関係で、疑問の余地なくもっとも進歩的でもある。
 そしてそれでも彼らは、トルコ政府からは一貫して「テロリスト」とのレッテルを貼られてきた。トルコが支配するクルド領域で活動する主な勢力、クルディスタン労働者党(別名PKK)との緊密な関係がその理由だ。
 トルコ政府は、シリア内でのISの増殖には見て見ぬふりをしてきたことで知られている(それは、この増殖を助けてきたと疑われてさえいる)が、クルド民族運動を主な脅威と見なしている。またこの政府は、二〇一六年にシリア北部の一部(アフリン)に侵攻し、今もそこを占領している。この地域に対するYPGの支配を打ち倒すためにだ。それはそれ以後さらに、シリア北東部(西クルディスタン、別名ロジャヴァ)に侵攻すると脅し続けてきた。そしてトルコはただ、SDFの傍らにおける米軍部隊の存在によってのみ、そうすることを抑止されてきた。

強引、無責任な
トランプの主張


 米、トルコの両大統領間の一〇月六日に行われた電話会談は、エルドアンがトランプに米軍部隊の撤退に向け圧力をかけた初めてのことではない。またトランプが、エルドアンの頼みを聞き入れると決めた、と公表するのも初めてのことではない。
 前回は一年前だった。そしてそれは、前国防相のジム・マティスの劇的な辞任という結果になった。それは、同盟勢力に対する「裏切り」に帰着することを実行するのに米軍が乗り気でないことを反映するものだった。また、トルコの侵入がISを復活させるだろうとの、そしてそれが一つの混沌をつくり出すだろうとの、ペンタゴンの正当な怖れをも反映していた。そしてその恐れられた混沌は、イラン領からイラクを貫いてシリア沿岸部とレバノンへと伸びる広大な領域に対する支配を完璧にする目的で、イランが利用しようとすることになるものなのだ。
 トランプは、仲間の共和党議員からさえ責め立てられて、昨年末には引き下がった。しかしながら今回彼は、ISとの戦闘における貴重な同盟勢力を裏切っていると彼を責める批判に対し、次のように応じることでエルドアンに対する彼の約束を実行したのだ。すなわちそこでの批判に対する彼の回答は、彼が自ら自分のものだとする「偉大で無比の知恵」に基づき、トルコの部隊がシリア北東部に対するその侵攻の中でいくつかのはっきりさせられていない限界を踏み越えたならば、彼はトルコ経済を「抹消する」だろう、との断言だった。

トランプの動機
まさに帝国主義


 トランプの動機については、それが何であれいかなる間違いもあってはならない。米国大統領は、彼の国が海外で行っている軍事的冒険に平和主義から反対することなど決してない。彼は、彼の友人である殺人者、サウジの王子が率いる連合によってイエメンで行われている虐殺的戦争の断固とした支援者なのだ。また彼は、昨年一二月に訪れ、そこが米国にとってどれほど重要かを説明した、そのイラク内の米軍基地に対し自身の大讃辞を明らかにした。
 以前の大統領選キャンペーン中、米国はイラクの油田を支配しそれらを自身のために利用しなければならない、と声を大に語った男から見れば、その論理的解釈は十分に鮮明だ。つまりトランプは、米軍は彼の国にとって(そして人は、この大統領政権が公事と私的なビジネスを混ぜ合わせる点で米国史上もっとも先まで進んできた、ということを承知した上で、彼自身の利益にとっても、と付け加えるかもしれない)明らかな経済的利益のある諸領域にのみ関与しなければならない、と確信しているのだ。イラク、サウジ王国、また他の湾岸首長国は、トランプの観点からは、アフガニスタンやシリアといった貧しい国とは異なり、米軍の展開にとって完全にすばらしい場所だ。
 民衆の自己決定権に基づく真に反帝国主義的観点からは、主な主役の名前だけを挙げれば、一九六七年以来シリアのゴラン高原を占領しているイスラエル部隊であろうが、もっと近年に展開したイランやその地域的代理人、あるいはロシア、米国、トルコの諸部隊であろうが、あらゆる帝国主義の部隊と略奪的部隊は撤退させられなければならない。しかし、トルコの侵攻の招き入れと組になった米国の一方的な撤退は、こうしてクルド民族運動を打ち砕くことにフリーハンドをトルコに与えることは、進歩性あるいは平和主義とは何の関係もない。それは完全に逆のことなのだ。

NATO諸国
に重大な責任


 来年の米大統領選における二人の進歩派フロントランナーは、問題になっていることが何かを正確に理解した。そしてドナルド・トランプの公表に対し、一〇月七日似たような言葉で反応した。
 まずバーニー・サンダース上院議員は「私は長い間、米国は中東におけるわれわれの軍事介入を責任をもって終わらせなければならない、と確信してきた。しかしトランプの、シリア北部から撤退し、トルコの侵攻を承認するとの突如の公表は、極度に無責任だ。それは、より多くの苦しみと不安定性に帰結する可能性が高い」とツイートした。
 次いでエリザベス・ウォーレンは「私はわれわれの部隊をシリアから故国に戻すことを支持する。しかしトランプ大統領の無謀で無計画な撤退は、われわれの連携相手とわれわれの安全保障双方を掘り崩す。われわれには、一回の電話会談で揺り動かされる可能性のある一人の大統領ではなく、この紛争を終わらせる戦略が必要だ」とツイートした。
 シリア北東部に対する虐殺的なトルコの侵攻は止められなければならない。トルコ政府のNATOの連携者たちは、この猛攻撃に対する責任を共有している。彼らは、アンカラに対する彼らの軍事支援を止め、トルコがその部隊をシリアから引きあげるまでトルコ政府に経済制裁を加え、クルド運動がその領域へのトルコの侵攻と戦う上で必要とする武器を彼らに与えなければならない。(「インターナショナルビューポイント」二〇一九年一〇月号) 

トルコ

エルドアンの延命めざす戦争はわれわれにとって貧困と死だ

ソシアリスト・デモクラシ・イジン・イエニヨル

 再びエルドアンは戦争カードを切る決定に出た。
 大統領宮殿の体制は、この国と地域の全住民を惨害に引きずり込むことを再び選択している。彼らにとっては、自身を打ち固めるために、弱体化のあらゆる兆候に対して、あるいはいかなる敗北に対しても、武器を取る以外の代わりになるものが何もないのだ。
 この体制は、ISISがトルコの国境に拠点を据えたときに、またジハーディストが都市の中心部に入り込み、われわれのあちこちの広場で彼らの爆弾で命を奪ったとき、対応をとることができなかった。彼らの支配の考え方がそのすべてに扉を開けたのだ。
 この体制は、彼らの虐殺に対決して彼らの命と共に最も基本的な人間的価値を守ったクルド民衆の最小限度の達成成果にさえも、耐えることができない。体制は、現在の経済的危機、貧困、失業という環境の下で、想像上の脅威を取り去るための動員を宣言し、労働者の何千という子どもたちを、彼らが死へと歩むことになる前線に送ることを躊躇しない。
 大統領宮殿のシリアをめぐる冒険は、国境の安全を提供しようとしているとの主張の下にクルドの人々に対する敵意を強めている。そして、難民は彼らが「立ち退かされた」地域に再定住することになるだろう、との主張を含む信じ難い議論をもって公衆からの支持を追い求めている。しかしその冒険はただ、またもっぱら、この地域の民衆に悲惨をもたらす可能性しかもっていない。
 ホワイトハウスに居座っている混乱に満ちた者からは誰もいかなる良いことも期待できない、ということは理解されているように見えるものの、一方またはっきりしていることは、この地域の他の演者たちの、特にクレムリンとダマスカスの姿勢は、平和の確立に向かうものにはならないだろう、ということだ。シリア軍の先頃の介入もまた、自治と民主的な進展というロジャヴァの経験には有害な作用を及ぼすことが、最もありそうなことになるだろう。
 EUについて言えば、それ自身シニシズムと無責任によって印象深い。特にEUはその無責任を難民たちに対して、トルコとの卑劣な協定を通して示してきたのだ。そしてその協定をエルドアンは今廃止すると脅している。
 他方で、起きたことが「国家の生き延び」にではなく、エルドアンと彼の仲間たちの延命に関わっているということが明白な中で、まさにその国家への脅威と言われることが習わしであった者たちが今日、戦争への呼びかけを支持しつつある。これは、当然部分的ではなく短期的でもないと思われてきた野党がまったく脆弱であり、共有する価値を保持することからはかけ離れている、ということを示している。この体制は再度、その卑劣な戦争カードをもって、自身の背後に野党を確保することに成功した。大統領宮殿の基礎が腐食を続けている中で、軍国主義的―排外主義的空気を溶かし、パンと平和を求める闘いを引き起こす任務は、再び社会主義者、労働者、さらに民主主義諸勢力の肩に載せられている。その第一歩は、われわれすべての力、信念、そして誠実さを込めてわれわれのスローガンを叫ぶことだ。
戦争ノー!
今こそ平和を!
二〇一九年一〇月一五日。

▼ソシアリスト・デモクラシ・イジン・イエニヨルは、第四インターナショナルトルコ支部。(「インターナショナルビューポイント」二〇一九年一〇月号)

米国

クルドへの裏切り

トランプのデタラメさ際立つ

デイヴィッド・フィンケル


帝国主義者をも
困らせる裏切り
 シリアのクルドの人々に対するドナルド・トランプの不実な裏切りは、帝国主義には「長続きする友など一人もいず、利益への永遠の関心しかない」との昔からの格言に新たな命を与えている。確かに、クルドへの最終的な裏切りはほとんど不可避だった――それ以前に何度も起きたように――。しかし、トランプがそれを行った特別なやり方は、本当に人を驚かせるものだった。彼はそれを、ペンタゴン、国務省、「国家安全保障」スタッフ、主要な同盟者、あるいは彼自身の偉大かつ無比の知恵を除く他の誰にも相談することなく、トルコの独裁者で彼の相棒であるエルドアンとの電話会談直後にやったのだ。そしてもちろんそれは、今も展開するいくつもの形で、米国の国内的紛糾へと流れ込んでいる。
 私は次のように考えている。つまりわれわれは、トランプ―エルドアン電話会談の複製記録が「機密扱い」サーバーに保存されてきた、と相当程度疑うことができる、そしてその同じサーバーには、ウクライナ大統領のゼレンスキーに対する「見返り」の電話、また(われわれがこれまで学び取ったように)他の外国の指導者に対する同じようなものが、不正告発者や議会で調査に臨む者たちが知ることのできない形で安全にとどまるよう隠されている、ということだ。エルドアンが長く温めていたシリア北部への侵攻計画に危険はない、と彼が分かるようにトランプが手配を整えた、と明らかにすることは、不都合なことになるかもしれない。

気まぐれから
たわごとへ
現在の件では、撤退し、クルドの諸部隊と非武装の住民を干からびるまで吊して放置することに、帝国主義的な物質的利益すらなかった。それはまさにトランプの気まぐれだった。
シリア北部の米軍は大きな打撃力とはほとんど言えなかった、ということを心にとどめよう。それは、トルコの進入を止めるワナの針金、そして「イスラム国」(ISIS)と戦っているクルド諸部隊に対する兵站/情報 支援としての、小さな存在だ(だった)。その撤退は、大口ツイートが自慢するような、米国の「終わりなき中東戦争」からの撤退、を意味するものではない。それらの部隊は故国に向かおうとはしていず、イラクや近くのどこかに再配置されるだろう。
事実が突きつけられるとトランプは、その侵攻がいくつかの明示のない「限界」を超えるならば「トルコ経済を破壊する」だろう、とわめいた。そのたわごとをまじめにとるものは誰もいない。
エルドアンであろうが、逃げまどっている何万人という市民であろうが、米国の欧州の同盟者であろうが、またその真空にどう動く可能性があるかを今じっくりと考えているシリアの政権やイランやロシアであろうが、さらにその復活の潜在的可能性が世界の首都で当然にも恐れられているISISであろうが、そうだ。

人間的犠牲が
あまりに大きい
トランプは彼のポストファクトのたわごとの中で、クルドはシリアの中でISISに対する戦闘を行ったということを認めたが、しかし彼らは「彼ら自身の土地」を守るためにそうした(もちろんだ!)のであり、「彼らはノルマンディーでわれわれを助けなかった」(一体何をいっているのか??)、と語った。
悲劇であることは、クルドの諸部隊に、また自由と自己決定を求めるその熱望とシリアの修羅場のど真ん中で彼らが築き上げた進歩的なロジャヴァ構想が今潰されようとしているその民衆に、物質的な援助と武器を提供する能力が世界の左翼にまったくないことだ。われわれがもっているすべては、米国と欧州がトルコ政権に緊急の懲罰的制裁を加えるよう求めるわれわれの声だ。
極短期的な見通しは、多くの反革命的な諸勢力――トルコ、イラン、ロシア、アサド政権、ISIS――間の残忍な対立だ。われわれは、その結果や諸々の死の大きさ、あるいは新たな難民危機を予想することはできない。一つの結果は、米国とその約束が再び信用されることは決してない、ということかもしれない。それはそれ自身一つの良い教訓であろうが、しかしその人間的犠牲はあまりに大きすぎるのだ。

▼筆者は、米国の社会主義組織、ソリダリティ発行の「アゲンスト・ザ・カレント」の編集者。(「インターナショナルビューポイント」二〇一九年一〇月号) 


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