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    かけはし2020年1月1日号

 アベノミクスのデタラメ今や歴然


没落する日本資本主義

鍵握る労働運動と社会運動
その再生なくして未来はない



マイナスGDPを「改ざん」!?

 手元に三枚の新聞記事がある。いずれも最近の日本の景気状況を報ずるものだ。一枚目の記事は一一月一四日に内閣府が発表したもので、一九年七〜九月期のGDP(国内総生産)の「速報値」とその概要である。
その発表によると、物価変動を除いた実質GDPは前年同期比で〇・一%の微増で、年率換算すると〇・二%増にとどまるというものだ。概要は一〇月からの消費税増税を前にしての駆け込み需要で、個人消費や住宅投資、設備投資の内需は伸びたが、米中貿易戦争や日韓関係の悪化の影響などによる輸出の減少が景気を下押ししたとしている。
二枚目の記事は一二月六日に総務省が発表したもので、一〇月の一世帯当たりの消費支出の調査報告だ。その発表によると、前月に消費税増税前の駆け込み消費があり、その反動の影響で前年同月比で五・一%消費が減少した。この下げ幅は一四年四月の五%から八%に増税した時の四・六%減少を上回った。ポイント還元などの効果はほとんど出ていないと言える。また前回の増税後は一三カ月連続して消費支出が前年同月比で減少していることもあり、一九年と一九年度のGDPがマイナスになる可能性も出てきていると報じている。
同日に内閣府が発表した一〇月の景気動向指数も前月比で五・六ポイントの下落を示している。この下落幅は東日本大震災があった一一年三月の六・三ポイントに続くほどのものだ。引き続く輸出不振と小売・卸売業の不振が大きく影響したとしている。
三枚目の記事は一二月九日に内閣府が発表したもので、一九年七〜九月期のGDPの「改定値」とその概要である。その発表によると、物価変動を除いた実質GDPは前年同期比で〇・四%増で、年率換算すると一・八%増になるというものだった。前月に発表された「速報値」では、その数字がそれぞれ〇・一%増と〇・二%増だったことを考えると、「改定値」では不自然なほどに大幅に上方修正されていることがわかる。「これはおかしいぞ」「偽造のにおいがするぞ」「またやったのか」……。
改定値の概要は個人消費が(速報値の)〇・四%増から〇・五%増に、住宅投資が一・四%増から一・六%増に、設備投資が〇・九%増から一・八%に倍増、公共投資は〇・八%増から〇・九%増に、輸出は〇・七%減から〇・六%減に、輸入は〇・二%増から〇・三%増に書き換えられた。GDPに対してマイナス修正されたのは輸入だけであり、他すべてがプラス修正された。特に設備投資の突出は目を疑うものがある。
「改定値は、最新の法人企業統計などを反映して一一月に公表した速報値を見直した」(「毎日新聞」)としているが、これまでと違う作為的な方法で数値が出されてしまうと、前年同期比など正しい数値が得られるわけがないのである。「GDPマイナスでは次の衆院選は勝てない」と考えて、すでに常套手段となっている改ざんを行ったのであろう。この「改定値」は明らかに「大本営発表」だ。

どこまで「国民だまし続ける」

 消費税増税の影響による長期の個人消費の低迷、米中貿易戦争などの影響を受けた製造業を中心とする輸出の低迷と企業業績の悪化、東京五輪を前にして大型公共事業の不在など、日本経済の先行きに明るい展望は皆無だと言っていいだろう。そんななかで安倍政権は一二月五日、財政規模で一三・二兆円の大規模経済対策を閣議決定した。それは民間企業からの支出と合わせると、総額二六兆円にまで膨らむ。
その内容は「国土強靭化」政策としての災害対策、高速道路・港湾・農業などのインフラ整備のための公共事業に五・八兆円。中小企業や農業、氷河期世代支援など「下振れリスク対策」に三・一兆円。「ポスト5G」技術開発支援の他、高齢者安全運転車購入補助・小中学校でのパソコン一人一台・マイナンバーカード買物ポイント還元などの「ばらまき財源」として四・三兆円を支出しようとするものだ。
安倍自身はこれを「アベノミクスの加速」などとウソぶいているが早い話、手っ取り早くGDPを引き上げるカンフル剤として公共投資するということに他ならない。それは「次の衆院選に向けて」巨額の税金をつぎ込む(無駄使い)ばらまき政治である。国と地方合わせると一一〇〇兆円を超える巨大な財政赤字には眼をつむり、「自民党が選挙に勝つために」見境なしに三年ぶりの年度途中の赤字国債を発行するのである。選挙対策のためのでたらめな「経済政策」は、これといった効果も無く破綻することだろう。そんなことは安倍政権も百も承知のはずだ。どこまでも「国民をだまし続ける」。これこそが「アベノミクス」の真骨頂なのだ。

不公正の象徴の消費税は廃止を

 OECD(経済協力開発機構)は「日本は財政赤字を削減するために消費税の税率を二〇〜二六%に引き上げるべき」だとしている。財務省が発表した一八年度の税収総額に占める所得税の割合は三三%、法人税は二〇・四%、そして消費税が二九・三%である。これを消費税八%から三倍の二四%として計算すると、税収総額に占める消費税の割合は六二・二%に跳ね上がることになる。悪夢のような数字である。
「消費税とは、いわば人間の生存それ自体を課税の対象としており、絶対に逃れることはできません。まさに『悪魔の仕組み』だといえるでしょう。・・・税を徴収する政府から見れば、・・・消費税はまさに『打出の小槌』であり、『金の成る木』なのです。・・・税とは本来、それぞれの人が能力に応じて負担するという、『応能負担原理』に即して課すべきものです。しかし消費税は、本来、税の負担者であってはならない子どもや、収入の少ない生活者からもむしり取るわけですから、税の論理からすれば邪悪そのものといえるのです」(第一章)「『税制は政治の顔、社会公正の鏡』……その国の政治が国民に信頼されるかどうかは、その国の税制が公正だと、国民に認められているかどうかにかかっています。……勤労所得には増税し、不労所得の優遇措置は温存して格差を拡大させている現行の税制は、まさにいまのゆがんだ社会の風潮を映し出しています」(第五章)『消費税が国を亡ぼす』(富岡幸雄著 文春新書)。
消費税は一日でも早く廃止されなければならない。財務省は「消費税は社会保障を担う柱」だと主張するが、その実態は「法人税と所得税減税の穴埋め」として使われてきたのである。消費税が導入された一九八九年の法人税の基本税率は四〇・〇%だったが、一八年には二三・二%にまで引き下げられてきた。一九八九年の個人所得税の最高税率は五〇%だったが、一五年から四五%に引き下げられている。これまで三一年間の消費税累計額は約三九七兆円で、法人税(事業税と住民税を含む)減税累計額は約二九八兆円、所得税(住民税を含む)減税累計額は約二七五兆円だった。両方を合わせると約五七三兆円も減税されてきたのである。
その他、一律約二〇%となっている株などの金融所得税率や法人税を減らすための様々な抜け穴の存在、そしてタックス・ヘイブンへの資金の移動は、企業や政治家、富裕層の課税逃れの手段となってきた。これらを公正に整備したり取り締まれるようにするだけでも、かなりの規模で税収が増加することになるだろう。また税金を食い物にしている「タックス・イーター」や、それらと結託する政治家は一掃されなければならない。

利益は企業と株主が丸ごと吸収


二つの図表は一九九七年を一〇〇とする五カ国のGDPと平均賃金の推移を示したものである(『日本経済三〇年史』山家悠紀夫著 岩波新書から)。九七年はバブル経済の破綻以降の日本経済が次の好況局面のピークに差しかかった時期だ。平均賃金もこれまでの最高値を記録している。しかし一方では特別減税政策の廃止と四月からの消費税率の引き上げ(三〜五%)があり、また七月に入ってからはアジア通貨危機が発生、拡大している。そして景気の下降と株価の下落にともなった金融危機(不良債権問題の深刻化)が発生して、北海道拓殖銀行の経営破綻、山一証券の自主廃業が引き起こされている。
図を見るとその後、日本のGDPだけがまったく伸びておらず、賃金も日本だけが少しづつ減少していることがわかる。賃金減少の最大の要因は非正規職の増加にある。全労働者総数に占める非正規職の割合は、九七年に二三%だったが一八年には三八%にまで増加している。しかしその間、労働生産性は二〇%ほど上昇しているのである。その利益はどこに行ったのか。企業と株主にである。「かつては個人の貯蓄が金融機関を媒介して資金不足の企業に流れていたが、いまや非正規雇用が増大する雇用の流動化が起き、労働分配率を低下させながら企業が資金を貯め込むように様変わりした。・・・企業は企業防衛を優先し、法人税減税や繰延欠損金を使って負債を返し、潰れないよう動いたのである」(『平成経済衰退の本質』金子勝著 岩波新書)。ちなみに安倍政権の最初の五年間(一三〜一七年)で、企業の経常利益は七三%増加し、株主への支払配当金は六六%増加している。支払人件費の伸びは五%(消費者物価は四・三%上昇している)に留まった。

非正規労働者の劣悪化進む実態

 非正規雇用の実態はどうなっているのか。厚労省は三月二九日に一八年六月の民間企業フルタイム労働者の平均月給(残業代などを除く)調査結果を発表した。それによると正社員の賃金は〇・七%増で、非正規雇用者は〇・七%減で、賃金格差は〇・九%拡大し非正規の賃金は正規の六四・六%。また女性の賃金は男性の七三・三%で前年並みだったとしている。しかし「賃金統計では本来は企業を訪問して調べるのがルールなのに、郵送で調査したり対象業者の一部を調べなかったりするなどの不正が今年一月に発覚。ただ厚労相は制度に影響はないとして、注釈をつけた上で公表した」(「毎日新聞」三月三〇日夕刊)という統計であり、どこまで信用できるのかわからない代物だ。また諸手当などの格差もあるので、正確なものにするためには年収ベースで比較するしかないはずなのだ。安倍政権らしい調査結果の発表の仕方だと言ってしまえばそれまでなのだが。
「非正規地方公務員急増・一一年で四割増・年収は正規の三分の一」を追跡レポートした一〇月一日付の「毎日新聞」は、よりリアルな実態を明らかにしている。総務省の調査によると、一六年時点で非正規地方公務員は全職員の五分の一にあたる約六四万三〇〇〇人で、正規の平均年収六六〇万円に対してフルタイムの非正規は二〇七万円。今年の四月から施行される「改正法」によって、期末手当・退職手当・昇級・有給休暇・産休などが実施されるという。
しかし施行を前にして、勤務時間を一五分短縮してパート化するとか、月給自体を下げるなどの悪らつな攻撃方法がなされている自治体が出ている。自治労もこうした動きを問題視しているようだが、非正規労働者たちは団結して闘うのではなく「集団で退職する」という抗議を選択するなどしているようだ。それは労働運動の力というものがまったく見えないという現状を悲しくも反映しているのだろう。
われわれは日本労働運動と社会運動のこうした現状から出発しなければならないのだが、没落する日本資本主義を前にして韓国の労働運動や社会運動から多くのことを学ぶ必要があるのではないだろうか。たとえばソウル市が実施してきた非正規職の正規職化。現在労働運動が主導する公共・公的サービス部門で展開されている、医療現場や鉄道、トールゲート労働者の直接雇用正規職化の闘いなどだ。そして社会の民主化を次々と推し進めようとする様々な社会運動の存在である。
非正規職の正規職化の闘いも、最低賃金の全国一律時給一五〇〇円の闘いも、それを実現していくために現場で具体的にどのように実践していくのかが真剣に問われている。労働運動と社会運動の再生なくして日本の民主的な未来は望めないのだから。 (高松竜二)



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