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    かけはし2020年1月1日号

 原発被災地襲った台風被害


STOP地球温暖化と反原発の結合を

国際的な運動と連携しよう

「エコ社会主義」への進路を開け



 台風と豪雨の被害状況

 「状況はとても悲惨であり、私たちは皆パニックに陥るべきである」「あたかも家が燃えているかのように振舞ってほしい―それは実際そうだからだ」「私たちはこれまで危機として扱われたことのない、今までに差し迫った前例のない危機に直面しており、指導者達は子どものように振る舞っている」 スウェーデンの一六 歳の環境活動家、グレタ・トゥーンベリさんの発言だ。
この秋、東日本を襲った台風と豪雨災害への安倍首相や森田千葉県知事の鈍すぎる対応、COP25での環境相小泉進次郎の空疎な発言は温暖化ガス規制政策、防災・減災対策を日本政府が進めていないことを改めて明らかにした。一方、民衆レベルでの認識と運動も、「気候マーチ」が他国と比較して日本の規模はとても小さいことに表れているように大きく立ち遅れている。この秋、われわれが二〇一九年秋に経験した台風と豪雨、それによる被害がどんなものであったのかを見つめ、具体的に記しておくことで、胸に刻み込み運動の前進に役立てたい。

 台風15号による被害

 九月九日に台風15号が千葉市付近に上陸し、中心気圧九六〇hPa・瞬間最大風速五七・五 mを記録、関東では過去最強クラスの規模となった。千葉県内で送電塔二本と電柱約二〇〇〇本が倒壊、損傷し千葉県を中心に九三万戸が停電、完全復旧までほぼ三週間を要した。住宅被害は七万棟を超え、今なお、多くの住宅がブルーシートに覆われたままだ。停電に加え二万数千世帯が断水、これらによる熱中症で死者が出、さらに家屋修理の際に屋根などから転落した事故が相次ぎ、少なくとも三人が死亡、百人以上が重軽傷を負った。

 最大・最強の台風19号

 一〇月一二日、一九時前に大型で強い勢力で静岡県伊豆半島に上陸した。直前の中心気圧は九五五hPa、最大風速は四〇m、関東地方と福島県を縦断し、関東甲信地方、静岡、新潟、東北各地では、時間ごとの降水量が観測史上一位を更新するなど、記録的な大雨となった。台風19号は、北上しても非常に強い勢力を保ったままであったのは、発生後初期には海面水温三〇℃以上(平年比+一℃以上)の海域を進み、日本のすぐ南の海面水温も二七℃以上と平年より一℃から二℃高く、エネルギー源となる水蒸気を多く取り込んだことによると報じられている。
神奈川県箱根では、降り始めからの降水量が一〇〇〇oを超え、この日だけの降水量も全国歴代一位となる九二二・五oを観測した。また同日の北日本と東日本のアメダスで観測された降水量は、一地点あたり一一九・二oで、比較可能な一九八二年以降の一日の降水量として最多となった。
この台風で死者八八人、行方不明者七人を出した。雨が激しく降り続き、各地で河川の氾濫が発生した。長野県では千曲川が決壊するなどして死者五人、浸水八一七二棟など甚大な被害をもたらした。新幹線車両センターが水没し長野新幹線は運行不能となった。県が算定した被害額は二三一八億五〇〇〇万円に及ぶ。埼玉県、千葉県を流れる利根川も氾濫し、各地で洪水や土砂災害、越水、決壊が起き、インフラや交通にも大きな影響を与えた。
追い打ちをかけるように一〇月二五日の大雨で千葉県内の一五河川が氾濫、道路や駅構内の冠水などが起きた。栃木県から茨城県を流れる那珂川が氾濫し下流の水戸市郊外は海と化した。東京と神奈川の境を流れる多摩川と支流も氾濫、最新のタワーマンションの機能が失われる事態も起きた。これらは、気候変動の結果であるとともに、都市の拡大による里山や田畑,遊水池の大幅な減少が影響している。関東には木を切り倒して作られた緑色の砂漠であるゴルフ場が五〇〇以上もある。これらが保水能力を奪っていることも大きな要因だろう。

福島県で死者32人

最も人的被害が大きかったのは福島県で、死者は三二人。被害が最大となった、阿武隈川流域での多くの河川の氾濫、バックウオーター現象(本流が増水すると支流の水位が上がり、決壊・越水)で、白河市、石川町、鏡石町、須賀川市、郡山市、本宮市、伊達市、伊達郡の各町そして宮城県丸森町などで幅広く決壊、越水した。二階まで浸水した家屋も多くあった。阿武隈川と安達太良川の合流地点にある本宮市の中心市街地は深夜に最大四・五mの深さで水没、死者七人を出した。
一〇月一二日と一三日の二日間に郡山市だけで、一二〇〇件の救出要請があり、救助者数は一五日までの四日間で八三〇人に上った。また、郡山市では小学校三校が水没、再開には年末までかかった。クリーンセンターの水没で焼却機能が失われるなどして、各地の歩道や空き地に災害廃棄物の山が連なった。JR各線と阿武隈急行は長期にわたって運休し、バスターミナルで九二台のバスが水没した福島交通は間引き運転を続けている。
阿武隈川は一九八六年の「8・5水害」を契機に一九九八年から約三年間で八〇〇億円以上を投入した「平成の大改修」が行われたが、今回の洪水を防ぐことはできなかった。いわき市では夏井川、相馬市では宇田川などが二度にわたって氾濫、相馬市は市内の四分の一に当たる三七〇〇余の建物が浸水被害を受け、いわき市は二週間にわたり約四万五千戸が断水した。
またこの間、東電福島第一原発事故後の除染で出た廃棄物を入れた袋「フレコンバッグ」が福島県内の仮置き場から計六六袋も河川に流出、除染していない森林から放射性物質が流れ下って線量が上昇し、第一原発敷地で高濃度汚染水が漏れ出た。
中間貯蔵施設に入るダンプで国道六号線沿線も上昇していることも報告された。民間団体の測定で東京オリンピックの聖火リレーの出発地とするJビレッジの駐車場で七一??/h検出され、慌てて再除染された。原発災害による非常事態は継続しており、空間線量と土壌汚染の測定は生活に不可欠であることを改めて示した。
県災害対策本部等によると農林水産業被害は六〇〇億円以上、公共土木施設は一三八九億円。また、県北、県中、いわきを中心に三〇以上の地域・工業団地が被災、三八の商工会議所・商工会の会員企業が浸水などの被害を受けた。いわき市や相馬市では断水などの影響で工業用水の供給が止まり、工業団地周辺で操業できない工場も相次いだ。また、今後の生産継続が不透明な企業も出ているという。全体の被害額は一九八六年時の三二〇億円を倍する数百億円と言われ、加えて繰り返される洪水被害から逃れ移転すべきとの声も挙げられている。

深刻な住宅被災
冷たい内堀知事
福島県住宅被災は、床上浸水は一万二〇六六棟、床下浸水が二六九三棟、全壊三六六棟、半壊一八二七棟、一部損壊一三七四棟と発表された。県災害対策本部によると、最終的には浸水被害は計一万八千棟程度になるといい、水害では戦後最大の被害規模だ。被災者生活再建支援法に基づく支援金は「大規模半壊」以上が対象。国の被災者生活再建支援法では住宅の被害状況に応じて七五万〜三〇〇万円が支給されるが、半壊以下は原則で対象外となるため、居住の可否にかかわらず、一m未満の床上浸水には原則支給されない。
これまでの水害でも、床上九〇pの浸水で家財が使い物にならなくなったのに支援の対象から外れる世帯が相次ぎ、課題が指摘されてきた。こうした状況を踏まえ、他県は独自に支援をしている。二〇一三年、一六年と水害が相次いだ岩手県は台風19号の半壊世帯に二〇万円、床上浸水世帯に五万円を、長野県は半壊世帯に五〇万円をそれぞれ支給する。
福島県は当初、独自支援をしない考えだった。内堀知事は「国に支援制度の拡大を要望する」と中央官僚出身らしく国の顔色を伺うばかりで独自支援に動こうとしなかったのだ。被災者や政党、県市長会、県議会の要望を受けてようやく、一二月議会を前にして方針を転換、三五市町村の一万八五七〇世帯を想定し県が市町村に一〇万円を交付、市町村がそれぞれの災害見舞金制度に基づく金額に一〇万円を上乗せして支給することを表明、一二月補正予算案に一八億五七〇〇万円を計上すると発表した。原発事故避難者に家賃の二倍を請求した上に、立ち退き訴訟を県として起こした内堀の、住民に寄り添わず国の動向のみ伺う姿勢がここにも表れている。
しかも、この程度の支援では生活再建にあまり足しにならないことも明らかだ。浸水は、住宅を泥水で覆い、床、壁にカビを発生させ、腐らせる。床下、床上、壁、断熱材にしみ込んだ汚水は湿気と病原菌の元である。においも含めて完全に取り除き、乾燥させるには、相当の時間を要する。寒空の下、作業を続けるのは大変だ。被災公営住宅の場合は消毒が部屋や階段等は終わっても建物全体はなされていない。衛生面に不安があって戻れないが、家賃の減免措置も行われていない。避難所にいる人は一二月初旬で四五八人二三四世帯と発表されたが、一階に住めず二階で寒く不便な生活している人、親せき宅等に身を寄せている人、借入住宅に入居し不自由な生活を余儀なくされている人が何千人といる。元の住居での生活に戻れた人々は多くはない。

 生活再建に経済格差の壁

住居もさることながら家財損害も大きい。水に浸かったものは使い物とならず災害ゴミと化したからだ。住居も家財も保険に入っていた人、高い掛け金を払うことができていた人は、かなりの程度補償されるが、無保険や少額掛け金の人は、ストーブや冷蔵庫などの電化製品、家具など生活に必要なものもそろえられない。買おうと思えば他の生活費を削るか借金するしかないが、それも困難だ。
借り上げ住宅が決まっても家財がそろわず入居できない、借り上げ住宅をいろいろ紹介されても子どもたちの通学や自身の通勤を考えると条件が整わず実際は入居できない、などの悩みに直面しているとの声があちこちで聞かれる。年金額が少ない、生活保護を受給しているなどの高齢者の場合は一層深刻で避難所にとどまるしかない人もいる。経済格差=収入・賃金格差が被災から立ち直ろうとする際にも貫かれ、貧困層にさらなる打撃を加えている。誰もが早く生活再建できるよう被災者生活再建支援制度の拡充や自治体の独自支援策を強化していく必要がある。

直面する復旧への課題

被災住民が直面してきたのは、まずは住居をかたづけ、仮り住まいの確保と引っ越し、罹災証明書の発行、汚泥と廃棄物の撤去、借入住宅の申し込みなどであった。多くのボランティアが援助に入ったし、他県の自治体職員が書類の作成や発行に携わったが、様々な公的支援措置のもとになる罹災証明の発行は遅れ、まだ貰えていない人が多数いる。
元の生活に戻るにはまだまだ時間がかかる。借入住宅の要件緩和、支援金の増額などを行って、生活再建のスピードアップを図ることが求められている。また、想定を超えた雨量があったとはいえ、被害を少なくする工事さえ行っていれば……との指摘も多く出された。何十年も住民が要望してきたのに阿武隈川東岸には無堤防のところがあり、そこから越水し一帯が浸水した地域がある。河川の築堤、堤防嵩上げ、河道掘削、堆砂除去、遊水池づくりなどは喫緊の課題だ。

 災害の激甚化への対策

 二〇一五年常総での鬼怒川の氾濫、昨年の中国地方の大洪水、そして二〇一九年秋の巨大台風の襲来と気候危機が深まり、自然災害の広域・激甚化が進んでおり、これまでの水準の対策では生命と財産、生活、産業を維持することができなくなる可能性が高い。浸水が繰り返されてきた地域での建築規制、教育、福祉施設、病院、清掃、運輸基地、清掃工場など公共施設の安全な場所への移転などを含めたまちづくりに向かっていかなければならないとの指摘も多方面からなされている。

気候危機を止めるには

アメリカ・トランプ大統領が、「パリ協定(地球の気温上昇を産業革命前と比較して二度未満に抑え、一・五度未満に抑えるための取り組みを推進)」からの離脱を正式に国連に通告する中、一九〇を超える国と地域が参加して「COP25」がスペインで開かれた。一二月一五日に採択された成果文書には「各国の削減目標はそれぞれの国の事情に応じて現在よりも前進させ、可能なかぎり高い野心を示す」ことや、「気候変動の緊急性を踏まえ、来年を一つの機会として温暖化対策を可能なかぎり強化することを促す」との表現で、対策に消極的な国に配慮した形となった。他国への技術支援などで削減できた温室効果ガスの排出量を、自国の削減分として計算する際のルールについては合意できず、来年の「COP26」に先送りされた。
「本当の脅威は、政治家や最高経営責任者(CEO)たちが行動を取っているように見せかけていることです。実際は抜け目ない経理やクリエーティブなPR活動以外に何もしてないのに」「人々からのプレッシャーがなければ私たちのリーダーは何もせずに逃げてしまいます。それが現状で、繰り返されています」とグレタ・トゥーンベリさんが言うように、温暖化と環境汚染防止対策の実現には幾重もの壁があるが、それを乗り越えて運動を進めることが必要だ。
課題はたくさんある。「気候アクション」の拡大に取り組むこと、国際アグリビジネスの農業支配との闘いを広め農業者と消費者の結びつきを強めること。虚偽と腐敗にまみれた安倍政権と電力資本、反動的司法を許さず、原発避難者を擁護し、原発再稼働や石炭火力発電所建設の阻止、一兆円もの規模で進められ重工業産業に膨大な利益を提供している放射能廃棄物の焼却事業、放射能に汚染された木材を燃やすバイオマス発電をやめさせる運動を強化すること。ミサイル開発や装備、武器輸出入、自衛隊の海外派兵、軍拡競争にストップをかけること、安倍改憲を断念させること、などである。そしてこの運動を国際的な労働者と市民の連帯したものとして築いていくことだ。
(福島 世田達)



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