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    かけはし2020年1月20日号

中東での戦争加担やめろ


自衛隊のオマーン湾派兵糾弾

トランプに追随して民衆に敵対するな

アラブの人びとに連帯し平和への貢献を


米国による暗殺糾弾


 トランプは一月二日、イラク国内でイラン革命防衛隊のコッズ部隊司令官スレイマニをドローンによる攻撃で殺害したソレイマニはイスラエルの「暗殺リスト」のトップにも挙げられていた。コッズ部隊はイランからイラク・シリア・レバノンへと至るいわゆる「シーア派三日月地帯」とイエメンなどで、シーア派民兵の組織化、武器や資金の提供、武装訓練などを主導してきた。そして様々な軍事作戦の計画や実行にも深くかかわってきたのである。
 今回の司令官殺害に至る経緯はどのようなものだったのか。発端は年末の一二月二七日のイラク駐留米軍に対するロケット砲による挑発攻撃だった。この攻撃で軍属の米国人一人が死亡し、米軍兵士が負傷している。米軍はこの攻撃に対する報復として二九日、イラク国内にあるシーア派武装組織「神の党旅団」の拠点五カ所を空爆し二五人を殺害した。三一日には、この米軍による報復攻撃に抗議する親イラン派のデモ隊がバグダッドの米国大使館に押し寄せて投石や放火を繰り返した。ニュース映像を見る限り、イラクの警察はこのデモ隊の行動をほとんど制止していない。コッズ部隊による計画的で「官製的な反米デモ」だということがわかる。そして年が明けて二日にソレイマニ暗殺が実行されたのであった。
 トランプは当初、対応に躊躇したと報道されているが、今回の米大使館に対する反米デモによる襲撃が、一九七九年のイラン米国大使館人質占拠事件とその後の救出作戦の失敗、そして当時の米国大統領であったカーターの大統領選挙敗北につながったことなどに危機感をもって、司令官殺害を決断している。しかしトランプはポピュリストに特有の徹底した「日和見主義者」である。イランと一戦交える決意など持ち合わせてはいないし、米軍から死者が出ることを誰よりも恐れている。アラブ人とイスラム教徒のために米軍と米国人は一滴の血も流す必要はない。これがトランプの排外主義的で人種差別的な中東戦略「哲学」だと言ってもよい。だからいつもトランプの戦争は中東に限らず経済制裁による「兵糧攻め」が基軸になっているのだ。しかし、それはそれで相当の効き目はあるのだが。

深まるイラク民衆の苦境

 トランプは一八年五月に六カ国による「イラン核合意」からの離脱を表明して以降、同年八月にイランに対する第一次制裁措置を発動した。同時に「制裁破りの企業は米国市場から排除する」と発表した。この脅しに屈してEUを中心として主要企業一〇〇社以上がイランからの撤退を表明している。同年の一一月には第二次制裁措置を実施した。例外とする八か国(翌年の五月まで)を除く原油の禁輸措置と、金融制裁圧力の強化だった。そしてその後も次々と追加制裁が実施されてきた。
歳入の約四割を原油関連収入に依存してきたイランにとって、こうした経済制裁は強力な打撃となった。一日二五〇万バレルだった原油の輸出量は、制裁措置によって三〇万バレルにまで落ち込んだ。現在もイランからの輸入を続けているのは中国・インド・トルコだ(ロシアは原油輸出国)。またイラン通貨のリヤルも下落して、食料や日用品などの価格は二倍に上昇した。「すべてがアメリカ・トランプのせいだ」としても、高まる失業と物不足はイラン八〇〇〇万人民の生存権を確実に脅かすものとなってきたのである。
ISによる支配とその後の掃討作戦によって国土が荒廃したイラクの状況はより深刻なものとなった。電気・水道などの公共インフラの復旧は遅れに遅れ、高失業率と政府役人や軍関係者らの汚職が蔓延していた。こうした状況に対して怒りを爆発させた若者たちは、昨年の一〇月一日から大規模なデモとなって治安部隊との衝突を繰り返すことになった。デモはシーア派住民が多いバグダッド、バスラで発生し、瞬く間にイラク全土に拡大した。そして一一月一九日までに三〇〇人以上が治安部隊によって射殺されている。
イラクで始まった反政府デモは一〇月末になってレバノンに波及した。高失業、インフラの不備、汚職の横行に怒りを募らせてきたレバノン人民は、新課税の導入をきっかけに立ち上がった。そして新課税は撤回され、一〇月二九日にはハリリ首相が辞意を発表している。
イランでも一一月一五日から反政府デモが全国二一都市に拡大した。デモの発端は何の予告もなしにガソリン価格が一・五倍に値上げされたことへの反発だった。輸出できない石油を生活苦にあえぐ庶民に高く買わせて利益を上げようというのだから反発は当然のことであった。人員一二万五〇〇〇人の革命防衛隊はイラン経済の半分近くを握っていると言われている。その利権集団としての腐敗し堕落した体制は唯一、人民に対する殺人的な暴力によって維持されてきたのである。今回の反政府デモに対しても革命防衛隊の発砲によって一〇〇〇人以上が殺害された可能性がある。
またイランがアサド政権を支援してきたシリアにおいても、一〇月から始まった米軍の撤退を契機として状況が変わった。シリア領内のほぼ中心を流れるユーフラテス川の東岸は、IS掃討作戦を通して米軍と「クルド人民防衛隊」(YPG)による「シリア民主軍」(SDF)が占領していたが、米軍の撤退というトランプのクルド部隊に対する裏切りによって、トルコ軍がシリア北東部への攻撃を開始したのだった。トルコ軍の侵入に対してクルド部隊とアサド政権が接近して協力することで合意するなどしたが、結局はロシアなどの仲介で停戦することになった。その結果、シリア北東部には南北三二q、東西四四四qのトルコ軍が支配する緩衝地帯が出現することになった。
こうして殺害されたソレイマニの「コッズ部隊」が築いてきた「シーア派三日月地帯」は、昨年の一〇月以降から急速にほころび始めることになったのである。昨年末の米軍に対するロケット砲攻撃や親イラン派による米国大使館襲撃は、この地域一帯で拡大する人民の反イラン・反政府感情を反米に向けさせようとする策謀に他ならなかった。

STOP!戦争の訴えを

 米軍によるソレイマニ殺害によって、イラン国内では反米感情が爆発的に高揚することになった。しかしトランプと同様に二国間での本格的な戦争など望んでいないイラン政府は、その報復手段・レベルについて相当なやんだに違いない。何らかの目に見える報復をしなければ、反米強硬派から「弱腰」だと猛烈な批判が噴出することがわかっていたからだ。
一月八日にイラン領内から発射された不発弾を含む一〇数発の短距離弾道ミサイルは、ソレイマニ殺害のための作戦基地だったイラクのアサド空軍基地に一一発が着弾し、クルド人自治区にあるアルビルの基地に二発が着弾した。しかし死傷者はゼロで、基地の被害も軽微だった。しかもミサイル発射と攻撃目標の情報は、事前にイラク軍を介して米軍に伝えられていたのである。こうして今回の「危機」はとりあえず収まったが、様々な火種はくすぶり続けている。
現在、中東に駐留する米軍の数は五万人を超える(トルコ・アフガニスタンを除く)。その内、ペルシャ湾をはさんでイランと対峙しているのが三万八〇〇〇人で、イラク国内には六〇〇〇人(三〇〇〇人増派予定)が駐留している。当面する米軍の作戦はイラク・シリア領内のシーア派武装民兵組織を空爆などで叩きながら、「シーア派三日月地帯」を粉砕することであり、その結果としてイスラエルを防衛しようとするものになるだろう。そして昨年一一月七日に正式発足された七カ国(米・英・豪・サウジ・UAE・バーレーン・アルバニア)の有志連合を基軸としたペルシャ湾からホルムズ海峡、オマーン湾、アラビア海に至る船舶航路の防衛・確保だ。
こうした状況のなか、安倍政権は防衛省設置法の「調査・研究」を法的な根拠として、日本船舶の安全確保のための情報収集を行うことを目的として海上自衛隊の護衛艦「たかなみ」とP3C哨戒機二機の中東派遣を決定した。すでに哨戒機部隊は今月二〇日からの任務に向けて一一日に那覇基地を出発している。「たかなみ」は来月二日にも横須賀基地を出発して二月下旬からの任務につこうとしている。派遣期間は今年の一二月二六日までで、一年間の延長が可能とされている。派遣される自衛隊員規模は総勢で約二六〇人になる。
安倍政権は今回の自衛隊派遣を「日本独自の活動」だとし、また自衛隊の活動範囲も自衛隊が駐屯するジブチの基地からアデン湾、アラビア海までとしているが、米海軍司令部があるバーレーンへの要員派遣も決めていることから、海上自衛隊が実施しようとしている任務は米軍や有志連合と一体となった軍事行動に他ならない。また「不測の事態」が発生した場合には、「海上警備行動」を発令して武器を使用できる警察権を行使するとしている。
海上自衛隊のこうした軍事行動は明確な憲法第九条違反であり、トランプと米国が中東地域で行っている戦争への追従的な加担に他ならない。自衛隊派兵に反対し、抗議の声をあげていこう。また日本は「親イラン」などと報道されているが、そのイランの実態は生存権と民主主義を求めて決起する人民をほしいままに殺戮してきた反革命の革命防衛隊体制である。戦争反対、派兵反対と同時に、イラン・イラクで命がけで決起している人民との連帯の声もあげていこう。
(高松竜二)




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