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    かけはし2020年1月20日号

震災被災地を襲った巨大災害


宮城全労協ニュース/第336(電子版)/2019年12月28日

台風・豪雨による大規模被災
便乗した政権の大型景気対策


反省なき安倍政権、内閣
改造優先で遅れた災害対応

 二〇一九年秋、台風・豪雨被災があいついだ。被害は広域かつ甚大で、宮城でも阿武隈川、吉田川流域をはじめ今なお復旧途上にある。
 昨年夏の西日本、一昨年の九州北部など豪雨被災が続いた。専門家集団が緊急メッセージを発表、地球環境の変化や気候変動の指摘に実感がともない、関心が高まった。
 今秋、東日本の内陸や太平洋側の各地は台風一五号を皮切りに連続被災、多くの人々が犠牲になった。東日本大震災との「二重被災」も多数にのぼった。なぎ倒された電柱や水没した新幹線車両基地がこれまでの対策の限界を映し出した。
 政権のおごりと無反省が際立った。内閣改造による「空白」が批判された。河野防衛大臣は「雨男」だと無神経な言葉遊びで笑いをとろうとした。この類の発言は止まない。なにしろ総理大臣みずからが「忖度」と言って聴衆を湧かせるありさまなのだから。連続被災の間隙をぬうかのように、現職閣僚が二年半ぶりに靖国参拝した。
 政府与党はもう、昨年の西日本豪雨を忘れてしまっているか。七月五日午後、気象庁は記録的豪雨による危険が迫っていると避難を呼びかけていた。その夜、東京では自民党議員らの酒宴が催された。安倍首相ら閣僚を含めた写真がネット上に出回り、出席者たちは釈明と陳謝に追われた。「赤坂自民亭」の赤裸々な写真を投稿したのは当時の官房副長官であり、現在内閣の一員である。
 安倍政権の主要政策である「防災・減災・国土強靭化」が問われた。政権の自覚を問わねばならない。

大災害に便乗した大型景気対策


 首相は連続被災への対応として大型財政出動を打ち出した。一九年度補正と二〇年度当初予算の一体編成による「切れ目のない」対策であり、河川・堤防・ダムの防災対策など国土強靭化基本計画の見直しも含むとされた。二階幹事長は首相方針を後押しした。「規模感は大切だ」という声が閣僚から上がった。
 「真水一〇兆円」などの政界の声に対して、経団連会長は「そのままの金額では通らないのではないか」と「極端な大型」には一応の抵抗感を示したが、政府与党から反対の動きは起きず、総額二六兆円(事業規模)の経済対策が一二月五日、閣議決定された。
 「災害対策が超大型の予算要求へとすり替わった印象」「経済対策も金額ありきで違和感がある」と著名なエコノミストの発言が紹介されていた(朝日新聞)。
 安倍政権の大型財政出動に対しては、財政規律を緩めるなどクレームや苦言が繰り返し表明されてきた。今回も多数のメディアが主張した。日経新聞は公共事業に積み残しが目立つと指摘、建設現場の人手不足など「執行に課題、経済押し上げ効果は不透明」だと「そもそも論」を展開した(一二月二一日)。
 つまり総じて積極支持はなかった。そこで「災害対策」に加え、ナンバーカードによるポイント助成、小中学校の一人一台のパソコン配備などを「目玉メニュー」として散りばめたというわけだ。
 安倍首相は「令和最初の経済対策にふさわしい力強い政策パッケージ」だと自画自賛した。これにより実質国内総生産(GDP)が一・四%ほど高まるというのだ。一〇%消費税の影響をやわらげる景気対策が政権支持をつなぐためになんとしても必要であり、その「規模感」を演出するために災害に便乗したのだ。
 「災害対策」という景気浮揚策は安倍政権の常套手段となった。「国土強靭化」は政権維持装置としての公共事業に組み込まれた。

「打ち出の小槌」と化した
「防災・減災・国土強靭化」

 そもそも二〇一九年度当初予算には「消費増税対策に二兆円」が盛り込まれている。キャッシュレスのポイント還元やプレミアム付き商品券など大盤振る舞いだった。二兆円の実に六割、一兆三四七五億円が「防災・減災・国土強靭化」予算だった。
自民党への政治献金は政権復帰後増え続け、二〇一八年の企業・団体献金では「業界別の献金額で建設業界が自動車業界を抜いて、トップに立った」。「国土強靭化を歓迎」と朝日新聞は報じている(一二月一七日)。
政権交代の前後、「公共事業の効果」を重視する主張が、民主党の「コンクリートから人間へ」に対する批判としてなされていた。東日本大震災直後に「国土強靭化」という言葉が浮上した。強靭化論者が第二次安倍政権の内閣府参与に就任した(二〇一二年)。二階幹事長が政策のバックボーンとなった。
この内閣府参与は一年前、辞職したという。一〇%消費税への異論が背景にあり、人事に影響したのではないかと憶測を読んだ。政権の看板政策の一つなのである。首相は経過を説明すべきだ。
首相は「防災・減災・国土強靭化」をキャッチフレーズ化して使用しているが、言葉が独り歩きしているのではないか?三つの分野はどこに、どのようにあるのか(国から地方まで、部署も予算も)、首相は説明してきただろうか。
政権を奪還した安倍首相は二〇一三年一月、所信表明で「震災復興」を一つの章とし、復興にかかわる政府体制の(民主党政権時代からの)「大転換」を宣言した。続く施政方針演説では「世界一安全・安心な国」のために「強靭な国づくり」が急務だと国家主義的色彩を前面に出し、犯罪やサイバー攻撃や悪質商法なども列記した。「事前防災・減災」と「国土強靭化」が結び付けられ、一体化していくのは二〇一五年以降であり、優先的な公共事業という性格を強めていった。
二〇一九年一月施政方針は「国土強靭化」を独立した項目として登場させた。前年の「豪雨、地震、暴風、猛暑」は「異次元の災害」だった。もはやこれまでの経験や備えだけでは通用しない。命に関わる事態を「想定外」と片付けるわけにはいかない。こうして「七兆円を投じ、異次元の対策」が打ち出された。
全国で二〇〇〇を超える河川、一〇〇〇カ所のため池、一〇〇〇キロに及ぶブロック塀、四〇〇〇キロメートルを超える水道管、八〇〇〇カ所のガソリンスタンドが列記されている。さらに「風水害専門の広域応援部隊」を全ての都道府県に立ち上げる。こうして「ハードからソフトまであらゆる手を尽くし、三年間集中で、災害に強い国創り、国土強靭化を進めて」いくと演説したのだった(二〇一九年一月八日)。
その国土強靭化政策と政府与党の姿勢が今秋、問われたのだ。
河北新報は「国土に死角が生じている/台風一九号と震災被災地」と題する社説を掲載した。
「七兆円の事業費を投じる土木工事を中心とした取り組みと今回の震災被災地の被害を重ねると、強靱化の行方は不安を拭い切れない」「災害に対する死角が、国土に次々と生じている」
「震災で、私たちは自然の猛威にあらがえないことを知った。生活を守ること。命を守ること。政治、行政、住民がそれぞれの立場で最善を尽くす必要がある。それが甚大化する自然災害に向き合う人為と人知であり、防災・減災の原点になる」(一一月一九日)。
「二重被災」の地元新聞の主張として検討されるべきだ。

被災者の声を政府にぶつけよう


官房長官は災害対応の検証を二〇二〇年三月までにまとめると述べた。朝日新聞(一二月四日)によれば、その中間取りまとめの原案では一五号の政府初動に「課題はない」が、千葉県については「受身の姿勢」が指摘されているという。
安倍政権下では有識者会議や各種審議会などの失墜が著しい。典型的な例は「統計不正」での「身内検証」だった。災害検証についても被災者、被災地の声がどれだけ反映されるか、注視する必要がある。
想定外であったという声の一方で、過去の経験が生きたという指摘がある。いずれにしても被災地の多くが過去、水害と関係があった。振り返れば水害との闘いの歴史だった。
長野をはじめ、各地で住民たちが行ってきた行政への請願がクローズアップされている。今回の専門家たちの見解を聞けば(たとえば堤防の決壊は多くが「陸側からの越水」が原因であった)、住民たちの体験に基づく感覚は正しかったのではないか。
記録的な水量や降雨の継続が甚大な被害をもたらしたが、住民体験が積極的に教訓化されてこなかったことが一因との指摘もある。
仙台市は「一九八六年の「八・五豪雨」を教訓に雨水対策を強化したが、膨大な費用が足かせとなり、進んでいなかった」(河北新報一一月一八日記事)。県北吉田川流域は何度も水害に悩まされてきたが、抜本的対策はなかなか進んでこなかった。
大崎市では渋井川でまた氾濫、「なぜ四年前を繰り返したのか」「人災ではないのか」と住民から声があがった。
河北新報は昨年春から一年間、「阿武隈川物語」を連載してきた。長期シリーズの中で水害も取り上げられ、流域住民は水害の記憶とともに生活してきたことが記されている。連載は最近、加筆修正のうえ刊行され、その書評が河北新報に掲載されていた(一月一五日)。
「治水編は甘さがあった。下流の(宮城県)岩沼市、中流の(福島県)郡山市など主要地域の対応に焦点を当てたが、全体を見渡す視点が乏しかった。台風一九号の教訓に鑑みれば支流についても注意を払うべきだったろう」。意欲的で貴重な連載であったからこそ、「甘さ」への反省が重さを持つ。河北新報は台風災害後〈決壊〉をシリーズ化し、阿武隈川に続いて吉田川が特集されている。
大規模広域被災であった。多くが課題として指摘されているが、いくつかあげてみよう。

 〇「災害弱者に届かなかった情報」「動けなかった在宅高齢者」
〇避難所までの移動と避難所の設置場所の再検討
〇「国際赤十字基準」に程遠い日本の避難所
/避難者が援助を受ける権利 
〇災害マップの整備と活用
〇自治体専門職の増員
〇国交省管轄の大河川と地元中小河川の関係、地元意見の尊重
〇森林環境と水害の関係、調査と対策
〇「自助・共助・公助」とボランティアについて

(*付記) 災害に直面したとき、自助と共助がその瞬間に生死を左右することが指摘されてきた。今回の被災でも具体例が報道されている。しかし、それが「公の責任回避」に使われることは本末転倒だ。
ボランティアはもはや災害救援、復旧・復興に不可欠の存在となっているし、「人間性の回復」「一過性でない被災地域との関わり」など多面的側面からも重要視されてきている。同時に、国や行政は「無償労働力」として織り込んでいるのではないかという批判がある。
今回、ボランティアの側から「課題」があげられている(例えばNHK「視点・論点」)。被災地の側では、自分一人ではどうにもならなかったという感謝の一方、ボランティアに来てもらえないという声もある。被災地で期待と落胆が交錯していることも事実だ。メディアの取り上げ方が復旧・復興格差につながるという現実は昨年の北海道地震でも指摘されていた。
大震災被災地での多くの経験もいかした議論が求められていると思う。

二〇一九年一二月二五日(U・J記)

■以上/宮城全労協ニュース三三六号(二〇一九年一二月二八日)

1.6

辺野古実が新年防衛省行動

一刻も早く工事を止めろ

カヌー隊に参加の呼びかけ

一月六日午後六時半から、辺野古への基地建設を許さない実行委員会が月例の防衛省抗議行動を行った。司会者が「一月一日、辺野古浜で、二〇〇人が集まり、伝統的な芸能やラインダンスなどで祈りを捧げ、今年は基地建設を白紙撤回するように頑張る行動が行われた」と報告し、集会を始めた。
 辺野古実の仲間は「今日から埋め立て工事が始められた。土砂投入は一%しか進んでいない。サンゴ礁、海が壊されている。一刻も早く工事を止めなければならない。技術検討委員会が一二月二五日に開かれ、次の三点が明らかになった。@これから、工事費が九三〇〇億円かかる。工期は知事が工事変更を認めても一二年かかるA地盤改良工事に進むために、県に許可申請を提出することになる。しかし、飛行場建設の場合、大規模地震を想定しなければならないのに、それを行っていないB検討委員の八人のうち、三人が工事関連企業から五七〇万円を受け取っていたことが明らかになった。検討委員と言いながら初めから、工事推進の立場に立っていることは明らかで許せない。年内に工事を白紙に戻させるようにがんばろう」と発言した。
 辺野古現地に行ってきた仲間が「一一月二九日から一二月四日まで現地に行ってきた。カヌー隊がねばり強く闘っている。私も泳げないがカヌー隊に参加した。カヌー隊には誰でも入ることができる。プカプカ浮いているだけでも阻止行動になる。皆さんもカヌーのゆっくり隊といっしょに行動しよう」と呼びかけた。

2月連続キャン
ペーン成功へ
埋めるな連は「設計変更許さない!辺野古新基地をつくらせない!キャンペーンを開始する。期間は二月一六日から二五日まで。二月一六日午後一時、新宿駅周辺で街頭アピール、午後二時アルタ前アピール、午後三時から新宿駅周辺デモ。二月二五日午後六時半から防衛省正門前行動。政府が沖縄県へ設計変更申請したときには、その翌日に抗議行動を行う」と行動提起した。米軍のイラン抗議を許すなというアピールも行われた。日音響の音頭で、沖縄などの闘争歌を歌い抗議行動を閉めた。  (M)

 




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