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    かけはし2020年1月27日号

2020年度政府予算案を批判する


人びとの生活を圧迫し軍拡進め
環境破壊拡大するアベノミクス


生活守る組み換えを


 安倍政権は、二〇一九年一二月二〇日、二〇二〇年度予算案を閣議決定した。一般会計の総額は一〇二兆六五八〇億円で八年連続で過去最高を更新した。一二月一三日に決定した今年度補正予算案と次年度当初予算案をあわせると事実上八年連続の「一五カ月予算」で一〇六兆円となっている。
 安倍政権は、「経済再生と財政健全化を両立する予算」だと虚勢を張っているが、その実態は、突出した軍事費をはじめ無駄遣い、カネのバラマキなどやりたい放題だ。逆に消費税増税、社会保障費の削減など民衆の生活面に対して犠牲を強要するものとしてデッチ上げた。予算案の問題点をチェックし、一月二〇日に召集される第二〇一回通常国会に対して厳しく監視し、民衆のための予算組み替え、消費税廃止を求めて国会を包囲していく陣形を構築していこう。

赤字のツケを民衆に


 歳入の税収が六三兆五一
三〇億円で過去最高だが、実質的に消費税一〇%増税分が支えている。それでも総支出額には、四〇兆円も足りないのだ。しかも日本経済の悪化によって法人税や所得税は軒並み減収だ。一九年一〇月〜一二月の景況感はマイナスになっている(財務省)。日銀の一月の地域経済報告では北陸、東海、中国の景気の総括判断を前回一〇月時点から引き下げた。東京リサーチは、全国企業倒産集計(負債額一千万円以上)が前年比一・八%増の八三八三件でリーマンショック以来、一一年ぶりに増加し、なかでも負債額一億円未満の小規模倒産が全体の七五%を占めていることを報告している(一月一四日)。中小企業の経営悪化は深刻だ。
 つまり、アベノミクスの破綻、成長戦略の頓挫によって日本経済の潜在成長率は一・〇%のレベルでしかないことに現れている。予算案の全貌を見れば明らかなように安倍政権の「経済成長すれば財政再建できる」などとウソを繰り返してきたが、あらためて実証された。
 だから慢性的な借金財政危機の穴埋めとして、従来通り新規国債に依存し続けざるをえないのだ。政府は、新規国債が前年比較で発行額が一〇四三億円減で一〇年連続減だとアピールするが、その額は三二兆五五六二億円の借金を行い、国債依存度は三一・七%になっている。
 新規国債減額と言うが、実は借金返済原則の財政法を無視して特別会計から二〇一八年度の剰余金を通常以上に繰り入れする手法をとり「その他収入」として六兆五八八八億円を捻出することによって強引に出した額でしかない。どんなに取り繕うとしても、すでに国と地方の長期債務残高が前年から八兆円増え、一一二五兆円(対GDP比で一九七%)と巨額な状態となっており、民衆一人当たりの借金は約八八五万円に達しているほどだ(財務省/一九年二月)。借金体質を変更しないことを前提としている安倍政権では今後も借金が膨らんでいくことは必至だ。
 消費税増税対策として総額二六兆円の経済対策を導入したが、その中味は、公共事業の追加、キャッシュレス決済のポイント還元、マイナンバーカード保有者へのポイント付与、大企業への「ベンチャー投資」「第五世代移動通信システム(5G)」「オープンイノベーション税制」などの大企業優遇税制など民衆の貴重な税金を食い物にする安易な政策でしかない。
 とりわけ借金の膨らみに無感覚になっているのが、財政投融資の一三兆円を上回る増額だ。日本高速道路保有・債務返済機構と各道路会社に一兆五二〇〇億円、成田国際空港会社に四〇〇〇億円を供給しB滑走路延伸とC滑走路新設、鉄道・運輸機構に一一七一億円、日本政策投資銀行に七八〇〇億円など大盤振る舞いだ。
 それだけではない。巨額の累積損失を抱えた官民ファンド(農林、交通、通信、コンテンツ関連)の損益を積み上げると、一八年度末で計三二三億円の赤字になっているのに追加出資によって膨らませている。こんなカネのバラマキをやめさせ、巨額な内部留保(四五六兆円)を積み上げている大企業への増税、富裕層への累進課税の増額などを優先すべきだ。
 すでに厚労省の「毎月勤労統計」(一九年七月速報値)は、賃金の伸びに物価の変動を反映した実質賃金は前年同月比〇・九%減で七カ月連続のマイナスだ。内閣府の(一九年八月)の「消費動向調査」の消費者態度指数(二人以上の世帯、季節調整値)は、一一カ月連続で前月比〇・七ポイント低下の三七・一。名目賃金のマイナス傾向は、民衆の収入減のうえに消費税増税の追い打ちによって消費抑制へと追い込まれているのだ。大企業・富裕層優遇の経済政策をただちに止め、民衆の生活に打撃を与える消費税廃止を行え。

突出する軍事費増額

 予算の無駄遣いの第一は、突出ぶりがめだつ軍事費だ。前年比一・一%増の五兆三一三三億円に達し、八年連続の増加となった。一九年度補正予算でも〇・四兆円も追加し、実際の二〇年度の軍事費は五兆七〇〇〇億円に達している。
安倍政権は、「防衛計画の大綱」(新大綱/一八年)と「中期防衛力整備計画(一九〜二三年度)」(中期防)にもとづいて対中国、北朝鮮シフトを前面に押し出し、グローバル日米安保体制の強化、南西諸島への自衛隊配備、敵基地攻撃能力保有のレベルアップに向けて着手している。その現れがトランプ米国政権の軍拡路線に追随し、高額兵器を米政府の言い値で買わされる「有償軍事援助(FMS)」(四七一三億円)を採用していることだ。この購入法は、翌年度以降に分割払いする後年度負担(ローン残高)であり、補正予算も動員して支払っていることを常態化している。二一年度以降に支払われる軍事ローンは二兆五六三三円に達してしまう。
さらに軍事費の無駄遣いは、米国製最新鋭ステルス戦闘機F35B戦闘機六機(七九三億円)、F35A三機(二八一億円)、KC46A新型空中給油機(四機、一〇五二億円)、地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」関連費(一二九億円)、海上自衛隊のヘリコプター搭載型護衛艦「いずも」型護衛艦の空母への改修費(三一億円)、航空自衛隊「宇宙作戦隊」の創設と宇宙状況監視システムなど宇宙関連経費(五〇六億円)などだ。
また、一九年度補正予算案には「前倒し計上」で、地対空誘導弾パトリオットミサイルPAC3の改修費、新型主力輸送機C2などの整備費などで膨張している。
米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設事業を含む米軍再編関係経費は、一九三七億円が計上された。米軍駐留経費の負担に関する特別協定(思いやり予算)は二一年三月末が期限だが、継続協議では米は倍増額を要求してくると言われている。いずれも米軍との共同実戦体制の強化を前提にした軍事予算であることは明白だ。グローバル安保体制に反対し、無駄な軍事費を白紙にさせ、民衆の生活面への配分へと組み替えさせなければならない。

治水・防災費にまわせ

 公共事業関係費は六兆八
五七一億円を計上した。一九年度補正予算案に一・六兆円を計上しており、前年と同規模となった。
「防災・減災・国土強靱化のための三カ年緊急対策」(一兆一四三二円)、自治体への防災・安全交付金(一兆三八八円)、社会資本整備総合交付金(七六二七億円)などを計上している。治水・防災・減災対策は必要だ。実際の工事は、オリンピック建設ラッシュによって防災・治水工事が遅滞していたのが実態だ。気候温暖化と台風多発による被災が今後も拡大し、工事の加速化と事業の豊富化が求められている。
ゼネコンの金儲けと開発優先を止めさせ、土地・河川改良の欠陥のあぶり出し、地域ごとの治水計画の再設計、諸インフラの補修・点検・強化に向けた工事強化などを迅速に着工しなければならない。
連動して、例えば、家屋の建て替えや改修などの支援が一八二億円と小規模でしかなく、これでは迅速な復旧・復興に間に合わない。
また、作業人員の安定的確保も含めて財政措置が求められているが、その実態は大手ゼネコン、下請け、孫請けへとピンハネ構造を温存したままだ。また、被災者への援助、避難場所の確保などきめ細かい設計とセットであることは言うまでもない。
予算案は、従来通り、大手ゼネコンに対しては手厚いカネのバラマキを行っている。「生産性向上に資する道路ネットワークの整備」と称して大都市圏環状道路の整備(四三〇四億円)、首都圏空港の機能強化(一〇四六億円)、整備新幹線整備(八〇四億円)など巨額な予算を計上した。環境破壊・大資本のための大型開発計画への巨額な予算は削減し、民衆の生活、治水・防災のための公共事業費へと配分し直せ。

原発・五輪にカネを出すな

 予算の無駄遣いはたくさんあるが、とりわけ必要がないものを列挙しておく。
原発関連では、小型原発などの開発支援(九億円)、原発技術開発や人材育成(一二億円)、原発立地自治体を買収するための電源立地地域対策交付金(七六二億円)、日仏・日米の高速炉開発関連費(四〇億円)など軒並に脱原発の流れに逆行する予算を計上している。関西電力の闇マネーの腐敗連鎖に現れているように原発マフィアの暗躍と一体となった安倍政権の原発再稼働、原発推進政策を許してはならない。原発予算はいらない。
ナショナリズムを煽動し、メダル獲得至上主義を柱とする東京五輪に対して三五一億円を計上した。その中味は、選手強化(一〇一億円)、メダル獲得支援(二二億円)などだ。その本質は、オリンピックマフィアの暗躍を太らす予算でしかない。
東京五輪に便乗して警察庁は、五輪警備対策推進費(二四八億円)、国際テロ対策費(二八億円)などを計上した。東京五輪警備に便乗した治安弾圧体制の強化を許さない。
安倍政権は、天皇制強化に向けた一連の天皇「代替わり」予算として総額で一六〇億八五〇〇万円(一八〜一九年度)の予算を計上し使ってきた。そのうえで二〇年度予算案でも皇室関連費として一九億円を計上した。その内訳が赤坂御所のエレベーター設置(七億円)、秋篠宮邸改修(八億円)、立皇嗣の礼(四〇〇〇万円)、「大嘗宮」の取り壊しと原状回復(二億円)などだ。どれもインチキ儀式や御殿をリフォームするために税金を使おうというのだ。天皇制強化のために勝手に税金を使うな。皇室関連費はゼロにしろ。

住民の暮らしを守れ


一月一七日、内閣府は、二〇二五年に国と地方の基礎的財政収支(PB)の赤字が三・六兆円残ると、安倍政権の経済財政諮問会議に報告した。インチキなアベノミクスの財政黒字化説の破綻の結果がこのような形で明らかにせざるをえなかった。
安倍政権は、これまでマスコミへの買収による根回しの成果のうえで社会保障関係費の「踏み込み」と称する削減キャンペーンをエセエコノミストを動員しながら行ってきた。マスコミ・マフィアの意志一致の下、「財政再建をどうするのか」というアプローチをしながら、その財政削減のターゲットとして社会保障関係費の削減に一斉に向かった。
そもそも社会保障関係費は民衆の生活維持のために必要な財政であり、税金を払っているからこそ公共サービスを受ける権利を最低限維持しなければならない。だが安倍政権は、新自由主義政策を継承しながら医療、年金、介護支出の抑制、不十分な幼児教育・保育、高等教育無償化政策などささやかなサービス姿勢を示しつつも、厚生労働省の概算要求を四一一一億円に圧縮して三五兆八六〇八億円を計上した。とりわけ長年積み立ててきた年金支給に対して「マクロ経済スライド」(賃金や物価による年金額の改定率調整)を強引に導入して実質削減を強行している。介護、医療も一層改悪する方針だ。
すでに社会保障財政削減に向けた全世代型社会保障改革会議は、「世代間の負担の公平」と称するカネ収奪政策の貫徹として二〇二二年度から七五歳以上の医療費の二割負担を強要することで意志一致している。この社会保障削減方針を今後の予算案作りに反映させていこうとする狙いだ。安倍政権による民衆生活破壊を基本路線とする社会保障予算政策の反動性を暴きだし、無駄な予算ゼロ、民衆のための社会保障と生活防衛の予算を実現していかなければならない。
(遠山裕樹)

 




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