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    かけはし2020年1月27日号

新しい主体が登場している


1.17

イラク市民10月革命

若い世代が引っ張る運動へ

高遠菜穂子さんが講演


違う視点から
見るイラクの今
 一月一七日、東京・水道橋の専修大学で、「イラク市民一〇月革命 新世代が導くイラク反政府デモの行方」と題した講演会が行われた。主催はヒューマン・ライツ・ナウ。講演は高遠菜穂子さん。高遠さんの名は、二〇〇四年にイラクの武装勢力の人質となった事件で、記憶されている方も多いだろう。当時私たちは、小泉内閣による「自己責任」論に基づく「人質バッシング」に抗し、現地のNGOを通じて解放をかちとるために力を尽くした。
 それは高遠さんたちの活動に共感するイラクの市民たちと、日本のイラク反戦の市民運動、ATTACジャパンなど、オルタグローバリゼーション運動がお互いに向かい合い、協力してかちとった成果だった(本紙2004年4月26日号1〜4面参照)。
 高遠さんは、その後もイラク現地をベースにして、草の根の人たちの生活と権利を支援するために一貫して活動し続けている。
 今回、米国・イラン関係の緊張が戦争の可能性を含めて極度に激化する中で、イラクの現実が改めてクローズアップされる機会も増えている。この日の講演会には、約七〇人が参加し、高遠さんの報告に聞き入った。ここで「イラク市民一〇月革命」と主催者側が名付けたのは、米トランプ政権とイラン・イスラム国家の衝突が戦争の現実性まで含めて激化する中で、明らかにイラクの市民たちの民主主義のための運動が大きく発展してきたからである。
 腐敗した政府に対する非暴力の抗議行動が、この間、イラクで拡大してきたというニュースそのものがなかなか伝わってこない、という現実の中で高遠さんのこの日の話は、とても新鮮なものだった。ともすれば米国・イランの関係にのみ焦点が当てられる中で、この日の高遠さんの話は問題を別の視角から捉えようとするための貴重な内容に満たされていた、と思う。以下、高遠さんの話を要約的に紹介する(文責:編集部)。

高遠菜穂子さんのお話

「イラクの春」その後

 アメリカのイランへの爆撃が行われ、IS掃討作戦が強化されてきたため、実は出国できないかと思っていました。イラク国内でも散発的な衝突があり、イラクの中で米国とイランが戦争する状況が長期にわたって続いてきたのです。
イラク西部での米軍へのデモ、少数ではありますが女性たちのデモ、人権・教育の後退に対する批判などもあります。二〇一二年から一三年にかけて「イラクの春」と呼ばれた全国的なデモが起こり、死者が出ても頑張って闘うというほどでした。多い時には数十万人が参加したと言われます。このデモは、二〇〇三〜〇四年の時よりも洗練され、よく組織されたものでした。
二〇一三年一二月二八日には政府がヘリを飛ばして弾圧し、死者も増える事態になりました。丸腰で頑張っていた人々が切れてしまい、数週間のうちに部族の長による武装化が始まったのです。ここからISが登場してくることになります。人びとが政府に対してどこまで耐えられるのかが問われています。
この市民革命の中で、約五〇〇人が亡くなり、負傷者は数万人と言われています。この中でISが影響力を増してきました。ファルージャではISが町を占拠し、被害者への援助を行いました。二〇一四年六月にはモスルをISが無血で押さえました。二〇一二〜一三年の「イラクの春」の挫折によってISが復活することになったのです。
メディアでISがセンセーショナルに報じられる一方、デモをやってきた人たちに眼が注がれないようになります。人びとの間で恐怖感が広がり、デモへの肯定的意思表示は弾圧の対象となりました。シーア派への恐怖から非常に口が重くなりました。
しかし二〇一九年一〇月以後、まったく新しい形で反政府デモが始まりました。誰が始めたか、ということもわからないほどいろいろな人びとが参加し、若い人たち、高校生、クリスチャン、さらに若い人たちから高齢者までふくめて女性の参加が目立っています。芸術活動も広がっています。庶民の足である自動三輪車を「ツクツク」と言いますが、その名を取って「ツクツク革命」と呼ばれています。
音楽活動も若い人の感覚でラップなどが好まれています。また若者たちはデモと一緒に街頭を清掃する活動まで行っています。一月一〇日、タハリール広場でのデモには催涙ガスが発射されましたが、その時の映像は香港のひとびとにもシェアされているようです。
その一方、一〇月からのデモでは多くの人々が死んでおり、死者の数は四五〇人にも達している、とされています。

イランに対する
反発の強まり
二〇一〇〜一四年の原油価格の急騰でバスラは経済成長を遂げ、莫大な資金が民兵、部族の長に流れました。しかしその後の急落で二〇一四年末には経済崩壊となりました。それに干ばつ、塩害が重なりました。失業者が増加し、民兵にリクルートされる人が増え、治安も悪化し、ドラッグの売買も盛んになりました。
二〇一七年には北部のモスルがISから奪還されましたが、水不足、電力不足が進み、失業率は急騰しました。二〇一八年二月からは、バスラで部族と民兵の間の戦闘が激化し、反スンニ派キャンペーンが広がり、宗派相互のヘイト、離婚が続出する事態となっています。そこではメディアの影響も大きいのです。まさにヘイトスピーチのオンパレードです。そこではスンニ派=ISというキャンペーンが行われ、ソーシャルメディアも憎悪の応酬という事態になっています。
イラクでは二〇一八年五月に選挙が行われましたが、選挙結果の発表は三カ月後でした。
二〇一八年一一月には原油・金融・海運を対象としたイランへの制裁が行われ、電力不足が深刻化しました。さらに輸入の支払いに対して食品や救援物資で支払うことを、イランも受け入れました。
二〇一八年一〇月、バグダッドのタハリール広場で行われたデモでは汚職撲滅、外国(イラン、米国)の介入お断り、失業率改善、インフラ整備、公共サービスの改善が掲げられました。そのためにはムハササ(宗派別割り当て制度)見直しが掲げられています。そして一般市民にとっては圧倒的にアメリカに対してよりもイランに対するノーの方が強いのです。
このムハササの下ではスンニ派が国会議長、シーア派が首相そしてクルド人が大統領という割当てになっています。
いまイラクでは若者の失業率は二五%を超えています。そしてアメリカにはいてもらった方がいいという感覚になっています。そしてホメイニとソレイマニの写真両方に×を書き込むようになっているのです。イラク中部・北部のスンニ派の人々は政治がらみの話をしたくない、という姿勢の人が多い。イランとイラクの相互対立関係の中で、シーア派狩りのひどさも目に余るものがあります。
そういう中でシーア派民兵が警察官になると残虐な殺害を行うことになる。日本のメディアはなかなかこうした現実を取り上げません。こうした事態を追及するイラク人は次々に消されるという事態も起こっている。この間、最も多くのジャーナリストが殺された国はイラクです。
シリアの武装組織に拘束された安田純平さんのパスポートを取り上げ続けているのは日本政府です。こんなことがあってはなりません。

「差し迫った危
機」とは何か
今日、差し迫った危機はどこにあるのでしょうか。トランプ米大統領は宗教施設を含む五二の施設を攻撃し、国際的非難を浴びました。「やられたらやり返す。宗教施設を含めて攻撃する」と自ら戦争犯罪を予告しました。
アメリカの大統領が、どういう場合に武力を行使できるのか誰も全く知りません。「差し迫った危機」とは何かについても説明がありません。そうしたアメリカといっしょに日本も戦争をしなければならないのでしょうか。
「戦争にならなくてよかった」ですませてはなりません。アメリカはどこまで暴走するのでしょうか。イラクのシーア派もイランに反旗をひるがえす状況にあります。シーア派が反イラン・親イランに分かれる状況です。イラクと中国が経済協定を結んだことも脅威ですか。アメリカは中国に牛耳られるという危機感を持っているようです。シリアで起きていることに注目しなければなりません。イラン系のシーア派民兵がスンニ派狩りを行っています。こうした中でアメリカよりもイランを恐れる、という感覚も広がっているのです。
(要約:文責は本紙編集部)


1.19

今年初めての「総がかり行動」

安倍政権には負けない

改憲・戦争を止めよう

 一月一九日、二〇二〇年になって初めての「戦争させない・憲法9条を壊すな」総がかり行動の国会前行動が午後二時から衆院第二議員会館前を中心に行われた。寒風の吹く中で一七〇〇人の労働者・学生・市民が集まった。
 司会を務めた藤本泰成さん(戦争をさせない一〇〇〇人委員会)は、「安倍政権には絶対負けない」との決意と構えで、憲法を変えさせない闘いを進めようと強調した。立憲民主党の岸真紀子参院議員は、麻生自民党副総裁が「日本は単一民族国家」という差別的暴言を行ったことを厳しく糾弾し、こんな政権に「改憲」を語らせることはできない、と訴えた。
 日本共産党の吉良よしこ参院議員は「ネット上に第三次世界大戦という言葉があふれている」現状と「トランプ政権にはものも言えない安倍政権」を批判。「この安倍政権は、「桜を見る会」やIR(統合型リゾート)汚職問題、広島の河井議員夫婦の公選法違反(買収)容疑で一切説明責任を果たさない安倍政権のあり方を糾弾した。吉良さんは、その中で伊方原発運転差し止めを命じた広島高裁の仮処分決定や、女性たちのフラワーデモの広がりなど新しい動きに注目を、と訴えた。

沖縄・韓国の
人びとと共に
次に、沖縄の宮古市民連絡会の仲間が、自衛隊配備の強化など戦争の準備が進められている現実を紹介した。宮古島では新たに三八〇人の自衛隊部隊が進駐し、さらに鹿児島県の馬毛島では米空母艦載機の離着陸訓練が行われようとしている。「自衛隊の配備で島の平和がじゅうりんされ、次の戦争の出撃基地になることに反対しよう」とのアピールが発せられた。
東京都品川区で三二団体と個人の参加で「総がかり」の運動に取り組んでいる市民からは、成人式に自衛隊がティッシュペーパーを配って入隊宣伝を行っている現状を批判。また羽田空港の新運用案に反対する住民の闘いを紹介した。品川区では住民投票で民意を問う直接請求署名運動が始まるという。
3・1朝鮮独立運動一〇〇年日本ネットワークの渡辺健樹さんは、「一〇一年目」の今年も、二月二八日の文京区民センターでの集会、二月二九日の新宿駅アルタ前での共同行動の取り組みを提起し、参加を呼びかけた。
総がかり行動は一月二八日の「自衛隊中東派兵阻止」の取り組み(首相官邸前)、一月二九日の新宿西口街頭宣伝、そして二月六日の市民集会(北とぴあ)に、多くの人びとの参加を呼びかけている。共に行動しよう。安倍政権を追い詰め、倒そう!        (K)


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