もどる

    かけはし2020年2月3日号

住民の訴えが実を結んだ


広島高裁

1・17伊方原発に運転停止仮処分決定

「電力危機」キャンペーンやめろ

世論分断工作を許さない


再稼働原発への訴訟包囲網


 阪神・淡路大震災発生から二五年を迎えた一月一七日、広島高裁は四国電力伊方3号機の運転停止を命じる仮処分決定を出した。仮処分を申立てたのは山口県上関町で原発建設阻止を続ける祝島の住民ら三人。山口地裁岩国支部に一七年三月に申立てたが一九年三月に却下され、広島高裁に即時抗告していた。住民らは一七年一二月に同岩国支部に本訴を提訴しており、今回の運転停止はこの第一審判決の言渡しまでの期間とされた。四電は「速やかに不服申立ての手続きを行います」と発表している。
 山口に加え松山・広島・大分の住民が運転差し止めを提訴、司法の場を通じた包囲網がつくられている。3号機は一五年七月に新規制基準に基づく審査に合格、いち早く再稼働を停止させる方法として一六年三月に広島地裁で仮処分申立てが行われた。これに愛媛・大分・山口が続いた。広島の仮処分では一七年一二月、即時抗告審で「一八年の九月三〇日まで運転を差し止める」とした決定を広島高裁が行っている。この決定に対し四電は異議を申立て、一八年九月二五日に広島高裁が異議を認めたことで差し止め決定は無効になった。3号機は一〇月二七日に運転を再開した。
 新規制基準により再稼働した伊方を含め九基に対する運転差し止めの仮処分申立てが取り組まれてきた。また、原子力規制委員会の審査の山場をこえた女川2号機に対して、石巻市民一七人が仮処分申立てを行っている(本紙一九年一一月一二日号参照)。
 関西電力高浜3・4号機に対しては一五年四月、福井地裁が再稼働を認めない仮処分決定を行ったため、一一月に予定していた再稼働は異議審での仮処分取り消し後の一六年二月となった。一六年三月には大津地裁が運転差し止めを決定、再稼働後一カ月で運転停止に追い込んだ。この一月三〇日には大阪高裁が大飯原発3・4号機の運転判断をする予定だ。
 メディアの多くは「上級審である高裁の判断には重い意味がある」「広島の二つの決定を下した裁判長はともに配転圧力のなくなる退官間近で運転差し止めを命ずる裁判官が続くのではないか」など、司法リスク≠ェ高まったと報じている。産経新聞は「エネルギー政策は食料、国防と並んで国家百年の計」との九州電力首脳の言葉をあげ、今回の広島高裁の決定を「司法リスクが再燃した」と報じた。

「原発ゼロ」の現実性

 他方、規制委員会の基準自体が大手電力会社にとっての「リスク」となっている。
九四年に運転を開始した伊方3号機は四国電力で唯一の原発、1・2号機は東日本大震災後の新規制基準に対応した改修とすると採算に合わないと廃炉が決定している。四電は一九年度の四半期決算で3号機の再稼働効果が月に三五億円あり、前年度の赤字決算から一一二億円の黒字になったと発表している。四電は3号機のテロ対策の五五〇憶円などの安全対策費に一九〇〇億円が必要としている。
福島事故を受け、新規制基準では原子炉から一〇〇メートル以上離れた場所に予備の制御室や電源、ポンプなどを設け、遠隔で原子炉を冷却できる「特定重大事故等対処施設」(テロ対策施設)を基準の一四年七月の施工から五年以内に完成させることを求めた。しかし翌一五年、規制委員会は審査の長期化を理由に「原発本体の工事計画認可後五年以内の完成」とする経過措置期間に緩和した。規制委員会は昨年四月、緩和した期間内に完成しない場合も延期を認めず、期限翌日には停止するよう電力会社に命令することを決めた。再稼働が早い順にこの期限を迎える。
川内原発1号機で今年の三月一七日に期限となり、施設の完成はこの一年後の見込み。続いて、五月に川内2号、高浜原発では八月に3号機、一〇月に4号機が期限となり、施設完成まで一〜一年半の期間が確実視されている。定期点検ですでに停止している伊方3号機を加えると、再稼働した9基のうちの5基が今年一〇月には停止する。他の4基の期限は二二年八〜九月。運転停止を伴うトラブルや定期点検延長などで、東日本大震災以降、三回目の「原発ゼロ」となる現実性もある。
今夏「ゼロ」にならなくとも、大手電力をはじめ廃棄物処理までも利権とする勢力は「電力危機」を創出し、料金値上げやCO2排出増を正当化しようとするのではないか。安倍の「アンダーコントロール」の頼みの綱はこれらの勢力だ。東日本大震災という複合災害を経てできた「世界で最も厳しいレベルの新規制基準」という安倍政権用語が通じるのもこの勢力の内部だ。行政と分権化された司法や「高い独立性を有する原子力規制委員会」にはアンダーコントロールは全面的には及ばない。「電力危機」などの分断キャンペーンをはねかえす行動をはじめよう。
(一月二六日 斉藤浩二)

弁護団声明(広島高裁による原発運転差止決定(勝訴決定)を受けて) 2020年1月17日
       伊方原発運転差止山口裁判弁護団


1 広島高裁第4部(森一岳裁判長、鈴木雄輔裁判官、沖本尚紀裁判官)は、本日、伊方原発3号機運転差止仮処分命令申立却下決定に対する即時抗告事件において、山口地裁岩国支部による却下決定を取り消し、住民らの申立てを認め、伊方原発3号機(以下「本件原発」という)の運転差止を命ずる決定(以下「本件決定」という)を出した。
高等裁判所が原発の運転差止を命ずるのは、2017年12月13日付広島高裁即時抗告審決定に続いて、2回目である(なお、この他に高等裁判所における住民側勝訴の判断としては、2003年1月27日の名古屋高裁金沢支部によるもんじゅ設置許可無効確認判決がある)。
これによって、四国電力は、伊方原発3号機について、現在行なわれている定期検査に伴う運転停止(送電開始予定日は2020年3月29日)を終えた後も、運転を再開することはできなくなった。

2 本件決定についての内容とその評価は、次のとおりである。
(1)地震について
新規制基準には、「震源が敷地に極めて近い」、すなわち、表層地盤の震源域から敷地までの距離が2km以内の場合について特別の規定を設けられている。
ところが、四国電力は、四国電力の実施した海上音波探査によれば、佐田岬半島北岸部活断層は存在しないとし、「震源が敷地に極めて近い」場合の評価を行わず、原子炉設置変更許可等の申請を行い、規制委員会は、これを問題ないと評価した。
これに対して、本決定は、佐田岬半島沿岸について、「現在までのところ探査がなされていないために活断層と認定されていない。今後の詳細な調査が求められる。」という中央構造線断層帯長期評価(第二版)の記載等に基づき、上記四国電力及び規制委員会の判断には、その過程に過誤ないし欠落があったと判示した。
至極正当な判示である。
(2)火山について
裁判所が、火山ガイドを曲解したものというほかない、いわゆる「考え方」を不合理だと断じるなど当方の多くの主張を認めつつも、立地評価については、最終的に社会通念論を基に稼働差止を認めなかったのは、遺憾である。
他方で、裁判所は、影響評価における噴火規模の想定が過小であることからそれを基にした四国電力の申請及び規制委員会の判断が不合理であるとした。この点については私たちの主張が認められたものであり、評価することができる。

(3)避難計画について
避難計画について、本決定は何も述べておらず、実効性のない避難計画を追認した山口地裁岩国支部による判断を是正していない点で問題である。

3 上記3名の裁判官は、双方の主張に真摯に向き合い、疑問点を当事者にぶつけ、証拠を丹念に検討して事実を認定し、法律に基づき、伊方原発3号機の危険性を認めた。行政から独立した司法の役割を見事に果たしてくださった3名の裁判官に改めて敬意を表したい。
今後四国電力が申し立てる異議審を担当する裁判官らも、上記3名の裁判官らが見事に果たしてくださったように、決して行政の後を追って従うのではなく、独立した司法としての役割を果たしていただくよう切に願う。

4 私たちは、伊方原発3号機の危険性を正しく認めた本件決定を礎として、同原発と海を挟んで向き合う山口の地において「放射能被害から山口県民の生命と暮らしを守る」という抗告人らの思いが実現するよう、伊方原発3号機の運転禁止の判断が確定するまで闘い続ける。
以上


もどる

Back