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    かけはし2020年2月3日号

民衆的連帯の再構築を


朝鮮労働党中央委(2019年12月)への評価

トランプの筋書どう読むか

米国に振り回された金正恩


膠着状況の継続


 一月一日の朝鮮中央通信は、昨年末の一二月二八〜三一日に行われた朝鮮労働党中央委第七期第五回総会に関する「公式報道」を発表した。今回の総会は、昨年二月末にハノイで行われて決裂した米朝首脳会談と、四月一一〜一二日に行われた朝鮮の最高人民会議を受けて、朝鮮がどのような政治路線を確定するのか注目されていた。
 四月の最高人民会議で金正恩は「米国との対峙と経済制裁の長期化」を指摘した上で、「自力更生による経済再建の必要性」を強調していた。またトランプ政権に対しては「双方が要求を下げるべきだ。年末まで米国の勇断を待つ」と発言し、文在寅政権に対しては南北経済協力などを取り決めた一八年の「九月平壌宣言」の実施を要求していた。
 しかし朝鮮は五月四日と九日に、日本海に向けて短距離弾道ミサイル発射実験を実施したのであった。その後一一月までに計一三回にわたって短距離弾道ミサイルとロケット砲の発射実験を繰り返した。また一二月に入ってからは、ICBMのエンジンテストを二度実施している。
 私は『かけはし』五月二〇日号で「金正恩体制が再び『瀬戸際外交』を選択すれば、それは間違いなく体制崩壊の引き金となるだろう。ハノイでの失敗は決定的である。金正恩は試されて失敗した。軍の既得権は空白化され、下級軍人は国外労働の道も絶たれて日本海での命がけのイカ漁に駆り出されている。労働者は仕事もなく実質的な失業状態。農民も飢えている。朝鮮の自滅か、それとも独裁者の排除かという選択が迫られることになるだろう」(「袋小路に入った金正恩外交」)と状況を評価している。
 また同時期に「毎日新聞」が入手した各治安機関向けに配布されたとする思想教育用の内部資料は「敵と平和に対する幻想を排撃し、全民抗戦準備をさらに徹底的に進めることについて」という題名だった。

「見返り」に応じない米国


 今回行われた朝鮮労働党中央委総会の議題は、@内外情勢と当面する方針についてA組織・人事B政治スローガンの修正・補充C党創立七五周年についてであった。そして中心議題は「情勢と方針」だった。
 金正恩はその報告のなかで「正面突破戦を展開することに関する革命的路線」として、その「基本部門は経済部門だ」とした。そしてその方法は国境を接する中・露からの支援や援助を見越してはいるのだろうが「自力更生」である。さらに「米朝対決」構造は「自力更生と制裁との対決に圧縮された」「自力更生の威力で敵の制裁・封鎖策動を総破綻させるための正面突破戦」だと位置づけた。
 「米国の本心は…制裁を引き続き維持してわれわれの力を次第に消耗、弱化させることである…朝米間の膠着状態は不可避的に長期性を帯びることになっている…対話をうんぬんしながらも朝鮮を完全に窒息させ、圧殺するための挑発的な政治的・軍事的・経済的悪巧みをさらに露骨にしている」と、トランプの対朝鮮政策を批判した。
 また軍事と核問題については、朝鮮の側が一方的に核実験とICBMの発射実験を中止して、核施設の一部廃棄などの措置をとったのにもかかわらず、米韓が合同軍事演習を再開したことを批判しながら「米国が対朝鮮敵視政策を最後まで追求するなら朝鮮半島の非核化は永遠にないということ…朝鮮半島に恒久的で強固な平和体制が構築される時まで…戦略兵器の開発を中断することなく引き続きねばり強く行っていく…強力な核抑止力…を恒常的に…維持する」と宣言した。
 この「宣言」は一八年の年初から始まった朝鮮半島の南北対話と和解・協力、そして米国との軍事的緊張関係の改善といった一連の過程を完全に「清算する」ことを意味している。しかし一方でトランプ政権は、ビーガン北朝鮮担当特別代表が一二月一六日に韓国での記者会見で「米朝交渉の再開」を求めたり、同日に中・露が国連安保理で「朝鮮への制裁の一部解除を求める」決議案を配布したりしている。
 その内容は「米朝交渉の進展を支持」しながら、@海産物・繊維製品など、一般市民の生活に直接かかわるものA国外で就労する朝鮮労働者の本国送還の撤回B南北を結ぶ鉄道・道路建設プロジェクトを制裁対象から外すこととなっている。そして何らかの「見返りなしで合意は不可能」だとしたが、米国務省は「時期尚早」だと対応している。
 こうした決議案配布の背景には中・露それぞれの国内事情も存在している。一二月二二日に朝鮮出稼ぎ労働者の本国送還期限を迎えたからだ。国連安保理は一二月一六日までに四八カ国の履行状況を報告した。
 それによると約一〇万人いるとされている朝鮮からの出稼ぎ労働者のうち約二万三〇〇〇人が送還されたとしている。約三万人が就労していたロシアは約三分の二を、約五万人が就労しているだろうとされる中国は半数超を送還したとしているが実態は不透明だとされている。
 就労ビザではない滞在資格を取得させて「安価な労働力」として雇用し続けているという指摘もある。人口密度が低いシベリア地域や国境が接する遼寧省・吉林省の縫製工場などでは、朝鮮労働者は「欠かせない存在」になっていたのである。

国連に囚われぬ米戦略

 私は昨年二月末のハノイでの米朝首脳会談の決裂後に三月一八日号の『かけはし』で「トランプと金正恩との個人的な関係は維持されるものの、今後これまで以上に国内問題と通商問題に時間を取られることになるトランプとのディール外交は終わったとみていいだろう」(「合意なき米朝首脳会談」)と書いた。
しかしよく考えてみると、「トランプは最初からディールする気などまったくなかったのではないのか」ということに気づかされるのである。トランプは得意とする脅しも駆使しながら、金正恩ばかりではなく世界中をだました「天才マジシャン」だったのかもしれない。
韓国の文在寅はまんまとそれを演出するための助手役をやらされたということなのかもしれない。そしてその次にはめられたのは、IS掃討作戦に駆り出されて多くの犠牲者をだしながらも、最後になってトランプに裏切られたクルド人民防衛隊(YPG)だったようだ。
イランに対する制裁措置や軍事行動にみられるように、トランプは国連安保理決議があろうがなかろうが、あるいはそれを無視したり、国際法などなかったかのように世界中を脅して、ペテンでもなんでも駆使してアメリカ帝国主義の利益のために意志を貫こうとしてきた。
ただそのやり方が、歴代の平均的な大統領と比べて幾分、独善的で荒っぽく、チームプレーを苦手としているということくらいなのだろう。帝国主義とのディールなどそもそも「幻想」に過ぎない。問われているのは非和解的に徹底的に対決して打倒するということなのだ。
生存権と民主主義を求めて命がけで決起するイラク・イラン人民、中国からの抑圧を拒否して自由と民主主義を求めて闘う香港民衆を、トランプマジックの次の犠牲者にしてはならない。     (高松竜二)


1.19

巨大土木事業の自然破壊

南アルプスにリニアはいらない


多様な視点で運動の拡大へ



工事をただちに
やめるべきだ!
 一月一九日、川崎市・麻生市民会館で「南アルプスにリニアはいらない 巨大土木事業からの自然被害を訴える全国集会」がリニア新幹線沿線住民ネットワーク、ストップ・リニア!訴訟原告団の主催で開かれ、二一〇人が参加した。
 JR東海はリニア新幹線の開業を二〇二七年としているが、大井川の減水対策がいいかげんで出来ていなく、静岡県や水利組合の反対を受け、南アルプスの静岡工区の工事は始まっていない。さらに、長野工区でも残土処理場が決まらず、トンネル工事が中断。工事中の非常口の出水や落盤事故に続いて山梨実験線で車両火災事故が起きた。開業のめどはたっていない。リニア工事をただちにやめ、南アルプスの自然を守れと集会が開かれた。

大井川流域が
砂漠化の危機
主催者あいさつの後、塩坂邦雄さん(静岡県環境保全連絡会議委員)、辻村千尋さん(前日本自然保護協会環境保護室長)、五十嵐敬喜さん(法政大名誉教授、弁護士)によるシンポジウムが開かれた。
五十嵐さんは「二〇一四年に南アルプスがユネスコエコパークに決定された。南アルプスが世界自然遺産にふさわしい『普遍的価値』を有するものとされた。この南アルプスにリニア新幹線を通し、自然を破壊してはならない」と述べた。
辻村さんは「JR東海は南アルプスルートを決定したあとで、絶滅危惧種の生息域での対策を示すとしているが、実際に影響は出ている。どう軽減できるのかを示していない。丹那トンネルや中越地震の時、トンネルは動いている。リニアが走っている時、動いたら粉々になる。活断層はいつ動くか分からない。影響がゼロでない時は予防原則に乗っ取ってやらなければならない。このリニア計画は止めるしかない」と話した。
塩坂さんは工学博士、技術士、特別上級技術者(土木学会・環境)で、現場での調査から問題の本質に迫る現場主義者だ。塩坂さんは、「JR東海は南アルプスの現場に行かずに、書面で問題を立てている。これでは、南アルプスにトンネルを掘ればどのようなことが起こるか分からない」と憤る。その上で、「褶曲(しゅうきょく)山脈の南アルプスはユーラシアプレートとフィリピン海プレートのせめぎ合いによって形成された。地質構造は、途中から直角に折れ曲がったり、新しい地層と古い地層がひっくりかえっていたりと、大変複雑だ。うかつに工事を進めれば、地下水が一気に噴出し、生態系が崩れてしまい、大井川流域が砂漠化する」と警鐘を乱打した。
シンポジウムの後に、リニア訴訟について弁護団が報告した。
工事認可が違法であると第一次訴訟を二〇一六年五月に提訴し、二次訴訟は電気配線計画の認可の取り消しを求めて提訴している。原告は地元を含めて南アルプスの自然を守ろうと北海道から九州まで七百数十人がなっている。三月三〇日に、原告が適格かの中間判決が出されることになっている。弁護団は輸送の安全は個人の利益ではないと適格性での中間判決を出すなと求めている。
次に、東京・神奈川連絡会、相模原連絡会が現状を報告した。
JR横浜線橋本駅に、神奈川県駅が作られる。マンション三棟が引越しの対象になっている。地権者の会をつくり交流をしている。二〇一九年に起工式が行われ、工期は二〇二七年まで。川崎・町田市内で七カ所の非常口工事が始まる。工事車両は一四〇万台。一〇年もの工事。道路用工事のため、立ち退きを要求される人たちがいる。残土は市民の税四〇億円を使い、川崎港扇島に一五〇万?埋められる。
最後に、名古屋の反対する会の人が「長良川河口堰問題の時、旧来の漁民の運動から、天野さんら若者たちが長良川の自然を守れとカヌーで抗議行動を起こした。これによって運動が転換し全国問題になった。リニア問題もこうした住民たちだけの運動ではなく、登山者など違う視点から運動を広げていく必要があるのではないか」と閉会のあいさつが行われた。  (M)


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