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    かけはし2020年2月3日号

新活力加えマクロンに敗北を


フランス

全民衆的な年金改悪反対運動

行動正当化の根拠に不足はない
勝つための第2の風が残る課題

レオン・クレミュー



 日本ではほとんど報道されないが、マクロンの年金改悪と対決するフランス労働者のストライキは、フランス国鉄とパリ交通公団(地下鉄やバス)を中心に今も続き、フランス史上最長のストライキ闘争になり、大きな民衆的支持の下に政府を部分的に押し戻しつつ、彼らを守勢に追い込んでいる。世界の労働者運動にとって軽視できない闘争であり、その観点から、クレミュー同志が闘いに密着して継続的に書いている報告と論評を二本紹介する。(「かけはし」編集部)

民衆多数の反対で政府が守勢に


 年金改悪の撤回を求める運動では一月一八日、RATP(パリ交通公団)とSNCF(フランス国鉄)のストライキが四六日目になり、国中でさまざまな形を取った決起も四六日目に入った。
 ストライキ運動は依然として住民の十分な多数派によって、ストライキ基金に対する寄付の流れが示す支援、交通ストライキにより不便を強いられている被雇用者からさえ現れているさまざまな共感の表現、あらゆる世論調査機関が示す支持率、によって支えられ、われわれに一週また一週と、この運動は住民の三分の二から認められている、ということを思い起こさせている。
 その上、住民の同じ比率、三分の二が、改革および彼らの年金の将来に関する高まる一方の懸念を表し続けている。
 マクロンは一月一一日に諸労組に送った手紙でストライキを終わらせるよう願った。フィリップ首相はその手紙で、年金満額を得るために六四歳まで働くことを義務づける「受給年齢」をこの法案から一時的に取り除く、と誓った。彼はまた、年金の資金問題に関する一つの評議会を組織するという、CFDTの求めにも同意した。ちなみにこの会議は、政府が求めている年金保険会計での一二〇億ユーロ節約達成に向けて、ことによればもう一つの方策を提案できれば、というものだ。
 政府によるこの策略は、その改革に対し世論を集めることができず、年末休みを通じてストライキを鎮圧することに失敗して、政府が守勢に置かれた時点で現れた。フィリップの、CFDTを遠ざけるまでに進んだ柔軟さを欠いた姿勢は、大統領与党の内部でさえ批判を呼んだ。
 この「後退」は、報道界から拍手喝采された。右翼政党の共和党の指導者たちもまた、マクロンの面前に幾ばくかの空間を取り戻したことに喜びを感じ、「特別な制度に対して積み重なっている譲歩」を受けて、この「改革の後退」を厳しく非難している。
 労働組合運動の側では、CFDTとUNSAのみがこの公表を大歓迎し、出口を見つけたことも喜んだ。
 この策略はストライキ労働者には何の効果もなかった。しかしそれはあらためて、主要メディアの論説主幹から幅広く支援されて、政府の諸閣僚がストライキ労働者と諸労組の決意を糾弾する一つの機会になった。
 別の面で留意されるべきこととしては、目立つ形の固い労組戦線が維持された、ということだ。それは、この改革と言われるものの撤回を求める闘いに、CGT、CGC、FO、ソリデール、FSUを結集している。これらは、CFDTとUNSAが三一・二%しか代表していない中で、職場選挙で五六%を代表している組合だ(CFDTは今もこの国で先頭にいる組合とされているが、二四%対二三・九%という形で、前記選挙の票数合計でCGTを〇・一%しか上回っていない)(注一)。主な職制組合のCGCでさえ、親経営政策の点ではもっと多くの場合にCFDTと連携しているのに、今も先の労組連合の中にいる。

「改革」のあくどさ今やはっきり


 これらすべての要素は、この法案に対する広範な拒絶を映し出している。この法案は、確定支給制度を深く解体することを狙っているのだ。法案の公表自体が、それと闘い続けている者が何ヵ月も唱えてきたことを、次のように確証しただけだった。
▼この制度の指導原理でなければならないものとしての、年金水準と退職年齢の維持を犠牲にする資金手当と予算の帳尻合わせの論理。
▼その時まではパリタリアニズム〔雇用主と労働組合による共同管理〕の領域にあった管理の操縦桿を国家が握ることとしての、マクロンの権威主義的自由主義の論理。
 われわれは、年金への公的支出をGDPの一四%までに断定的に厳格に限定する、として設定された一つの構想を前にしているのだ。加えてこの制度は、暫定的な基礎として、五年間にまたがる収支均衡の義務づけを迫られるだろう。こうして二〇二五年には、二〇二五―二〇二九年の収支均衡という義務が生まれることになるだろう。いかなる赤字も禁じられるがゆえに、また財源拡大(拠出引き上げ)もまた禁じられるがゆえに、変数は唯一、年金額、あるいは退職年齢、しか残らないことになろう。
 その上、時として曖昧な定式の中で十分に理解されることは次のことだ。つまり、財政的均衡を維持するために、管理者が年金ポイントのサービス価値(サービス価値とは、年金が精算される際の、年金額を計算するためのポイントの価値)と配当における引き上げ率を調整しなければならなくなると思われる、ということだ。そして「パートナー」が同意しない場合、これらの価値を政府が決定することになるだろう。
 政府の宣伝とは逆に、「均衡年齢」は消え去った。基本的に、今後の数十年間で、基金管理者は徐々に、金銭的不利益なしの退職があり得る年齢を、後ろ倒しにすることを迫られることになる。この年齢は、期待余命の上昇の三分の二に当たる期間だけ後ろにずれることになると思われるのだ。
 さらに財源に関しては、「社会保障財政法二〇二〇」以後、雇用主拠出を撤回する決定のおかげで生まれる不足分に対し、国家はもはや年金基金に補填しない。そしてその雇用主拠出はかなりの不足分に当たる。
 この法案に伴う影響に対する研究は、退職年齢に関して、それは一九七五年生まれの世代〔こうして二〇四〇年に退職する〕に対しては六五歳になり、二〇五〇年以降の退職者からは六七歳になるはず、と見積もっている。
 その上で法案の一五条と六四条は、補足的に基金化される年金の導入を詳細に述べる(退職預金プラン)。政府は布告によって、これらの基金に対する税制を決定する権限を得ると思われる。これらの基金の意図は、元来は年収一二万ユーロ以上の層からの払い込みを集めようというものだ。さらに諸々の銀行が、高給取りからの払い込みを集めるための年金商品を早期に売り出すよう、はっきり分かる形で招かれている。
 AXAグループ(保険と資産の管理グループ、二〇一八年の取引高は一〇二〇億ユーロ)は、その年金プランを勧める一冊のパンフレットを発行したばかりだ。それはまったく簡明に、その顧客は確定支給の計画的減額から自らを守るだろう……、と説明している。

実質議論なしの強行を今も策動


 そして政府は最終的に、困難の乗り越えを期待しつつ、この破壊的な反改革の採択に向けすぐさま動きたいと思っている。この計画は一月二四日に閣議に、次いで二月三日には、執行部によってわざわざ選抜された議会の「特別」委員会に提出されるだろう。しかしこの審議のためには、本来「社会問題委員会」となるのがこれまで通例だったのだ。結局この法案は、六月以前に進行を完成する目的で、議会毎に(下院、次いで上院)一回だけの読会という加速された手続きに従って討論が行われ、票決に付されるだろう。
 結果として法に関わる多くの論点は、それらを書き込み、布告によってそれらに効力をもたせる(こうして、議会の討論と票決なしに)のを政府の任務として残したまま、空白のままにされるだろう。政府は下院の圧倒的多数を抱えてさえ、上院における論争の具体化を避けたがっている。確かにそこでは大統領与党はかなりの少数派であり、修正をめぐる長い論争があり得るだ。
 上述のことと並んで、CFDTが求めたように「資金問題評議会」が開催されることになっている。このまがいものの会議は、六四歳への退職年齢後ろ倒しに対する代わりの回答、二〇二二年から二〇二七年までで一二〇億ユーロを見つけ出すことを可能にする……オルタナティブ、を探し出す義務によって枠をはめられることになる。そしてその会議では、拠出の引き上げも、人口統計的不均衡、三二〇億ユーロの額になる不均衡、を年々埋めるための二〇〇一年につくり出された「年金準備基金」活用も、ある種のペテン基金であり一七六億ユーロを保持している「社会的債務」補填の基金活用も、提案できないのだ。
 したがってそこでは、選択肢として二つの回答しか残らないと思われる。労働年数の引き上げ(今日は四三年)、あるいはMEDEFと政府が切望するような六四歳への退職年齢後ろ倒しだ。
 いずれにしろわれわれは、社会的対話として一つの大きな勝利を予期してよい、ということだろうか!

最後まで闘争拡大の追求を

 したがって運動にとって、その行動を正当化する主張に不足はない。しかし問題は依然として、他の部門がストライキに加わるという問題だ。
一月一三日から一八日にかけた週はある種の転換点を印した。ストライキ労働者内部に、あるいはデモへの参加者内部に疲労はまったくない。そうであっても、一ヵ月以上のストライキ行動がもつ効果は、うまく管理される必要がある。ストライキ労働者たちはいくつかのところで、強固な核を軸に力を取っておく目的で行動日に集中し始めつつある。そして、ストライキ労働者の全体比率はそれ以前の週よりも低くなっている。同じことは、一月九日のデモと比較して、戦闘性はまったく同じだったが数では少なかった一月一六日のデモについても真実だ。多くが、重要な部門からの替え馬の不在を考慮しつつ、長続きさせる必要を述べている。
それでも拡大はある。港湾労働者は港の封鎖を組織しつつあり、他方精油所労働者は、ガス電気工同様生産封鎖を今も続けている。多くの大学と高校では、学士選抜の切れ目のない評価試験に反対して決起した教員と教員・研究員の諸行動とつながる形で、諸々の決起が発展中だ。たとえばリールのカーギルのように、人員整理に対決して闘っている私企業の従業員も、年金デモに合流し続けている。弁護士たちも審問ストライキを続け、華々しい行動を展開中だ。
多くのインテルプロス(部門横断共闘組織)は今週、占拠と封鎖という華々しい行動に向きを変えた。これは動員を維持し、政治空間を占拠する一つの方法だが、それはまた、拡大の限界をも反映している(注二)。
したがって運動はそのリズムを変えつつある。決意とマクロンを押し戻す必要に対する信念は今も強い。幅広い民衆的支持の感覚もまた強い。昨年病院の惨状を糾弾してきた病院労働者と教員が特に味合わされた社会的破壊の攻撃の中で、年金改悪という課題設定は破壊されるべき支柱の一つ、という強い確信も同様だ。その上、女性、失業者、若者たち、そして不安定職の労働者が、この改革の最大の被害者になる、ということも見えている。
こうして実際、この決起のるつぼの中でふつふつと沸き立とうとしているのは、システムに対決する世界的闘争に対する気づきなのだ。
しかし勝つためには、ストライキへの新たな勢力、新たな部門の参入に基づく、第二の風を見つけ出すことが必要になるだろう。彼の計画を通過させるマクロンにとっての勝利がたとえ疑いなく犠牲が多く引き合わないものになると思われるとしても、それは同様にわれわれの生活諸条件のさらなる悪化になり、次の世代にとってはなおのことそうなるからだ。(二〇二〇年一月一八日)

(注一)フランスにおける「職場選挙」は義務とされている。一〇人以上を雇用する企業は「職場代表」を選出し、五〇人以上を雇用する企業は「職場委員会」を選出する。その候補者は認知された労働組合から出される。これは、さまざまな産別連合と全国連合がもつ強さと代表度合いを計る一つの尺度を与えている。
(注二)急速に人気を博するようになった一つの行動形態は、政府代表や雇用主の面前で、労働者が工具や彼らの業界の記章を投げ下ろすこと――医師は彼らの白衣を、弁護士は彼らの黒いコートを、教員は彼らの書類挟みを、公共の建物の調度品に責任を負っている国家調度品作業の労働者は彼らの工具を……――だ。一方、パリオペラ座のミュージシャン、歌手、ダンサーは、オペラ座の正面階段で無料のコンサートを組織している。(「インターナショナルビューポイント」二〇二〇年一月号)



1.19

巨大土木事業の自然破壊

南アルプスにリニアはいらない


多様な視点で運動の拡大へ



工事をただちに
やめるべきだ!
 一月一九日、川崎市・麻生市民会館で「南アルプスにリニアはいらない 巨大土木事業からの自然被害を訴える全国集会」がリニア新幹線沿線住民ネットワーク、ストップ・リニア!訴訟原告団の主催で開かれ、二一〇人が参加した。
 JR東海はリニア新幹線の開業を二〇二七年としているが、大井川の減水対策がいいかげんで出来ていなく、静岡県や水利組合の反対を受け、南アルプスの静岡工区の工事は始まっていない。さらに、長野工区でも残土処理場が決まらず、トンネル工事が中断。工事中の非常口の出水や落盤事故に続いて山梨実験線で車両火災事故が起きた。開業のめどはたっていない。リニア工事をただちにやめ、南アルプスの自然を守れと集会が開かれた。

大井川流域が
砂漠化の危機
主催者あいさつの後、塩坂邦雄さん(静岡県環境保全連絡会議委員)、辻村千尋さん(前日本自然保護協会環境保護室長)、五十嵐敬喜さん(法政大名誉教授、弁護士)によるシンポジウムが開かれた。
五十嵐さんは「二〇一四年に南アルプスがユネスコエコパークに決定された。南アルプスが世界自然遺産にふさわしい『普遍的価値』を有するものとされた。この南アルプスにリニア新幹線を通し、自然を破壊してはならない」と述べた。
辻村さんは「JR東海は南アルプスルートを決定したあとで、絶滅危惧種の生息域での対策を示すとしているが、実際に影響は出ている。どう軽減できるのかを示していない。丹那トンネルや中越地震の時、トンネルは動いている。リニアが走っている時、動いたら粉々になる。活断層はいつ動くか分からない。影響がゼロでない時は予防原則に乗っ取ってやらなければならない。このリニア計画は止めるしかない」と話した。
塩坂さんは工学博士、技術士、特別上級技術者(土木学会・環境)で、現場での調査から問題の本質に迫る現場主義者だ。塩坂さんは、「JR東海は南アルプスの現場に行かずに、書面で問題を立てている。これでは、南アルプスにトンネルを掘ればどのようなことが起こるか分からない」と憤る。その上で、「褶曲(しゅうきょく)山脈の南アルプスはユーラシアプレートとフィリピン海プレートのせめぎ合いによって形成された。地質構造は、途中から直角に折れ曲がったり、新しい地層と古い地層がひっくりかえっていたりと、大変複雑だ。うかつに工事を進めれば、地下水が一気に噴出し、生態系が崩れてしまい、大井川流域が砂漠化する」と警鐘を乱打した。
シンポジウムの後に、リニア訴訟について弁護団が報告した。
工事認可が違法であると第一次訴訟を二〇一六年五月に提訴し、二次訴訟は電気配線計画の認可の取り消しを求めて提訴している。原告は地元を含めて南アルプスの自然を守ろうと北海道から九州まで七百数十人がなっている。三月三〇日に、原告が適格かの中間判決が出されることになっている。弁護団は輸送の安全は個人の利益ではないと適格性での中間判決を出すなと求めている。
次に、東京・神奈川連絡会、相模原連絡会が現状を報告した。
JR横浜線橋本駅に、神奈川県駅が作られる。マンション三棟が引越しの対象になっている。地権者の会をつくり交流をしている。二〇一九年に起工式が行われ、工期は二〇二七年まで。川崎・町田市内で七カ所の非常口工事が始まる。工事車両は一四〇万台。一〇年もの工事。道路用工事のため、立ち退きを要求される人たちがいる。残土は市民の税四〇億円を使い、川崎港扇島に一五〇万?埋められる。
最後に、名古屋の反対する会の人が「長良川河口堰問題の時、旧来の漁民の運動から、天野さんら若者たちが長良川の自然を守れとカヌーで抗議行動を起こした。これによって運動が転換し全国問題になった。リニア問題もこうした住民たちだけの運動ではなく、登山者など違う視点から運動を広げていく必要があるのではないか」と閉会のあいさつが行われた。  (M)


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