もどる

    かけはし2020年2月10日号

住民・「利用者」を犠牲に大もうけ


1・17 IR(統合型リゾート施設)反対学習集会から

鳥畑与一さん(静岡大教授)講演要旨


 本紙前号(2月4日付)に掲載したIR(統合型リゾート施設)反対集会での鳥畑与一さんの講演要旨を掲載します。(本紙編集部)

利権そのもの
のカジノ施設
IR法は、刑法で禁止されているカジノの免許を独占的にもらえるという利権そのものだ。香港の投資銀行は日本の大都市部で年間二五〇億ドルもうかるという調査結果を発表している。「もう一つのマカオになれるかも」と宣伝している。
そのマカオだが、かつてSJMグループの独占だったが、開放されて二〇〇七年から六社がカジノを経営しており、累計四〇九六億ドル(約四二兆円)の利益を出している。カジノでの営業権を獲得できれば弱小資本でも大企業として株主に配当できる。アメリカ最大手のシーザーズはアジアに進出しなかったことで経営破綻に追い込まれた。一方、アジアに新天地を求めたサンズは世界最大のカジノ企業のひとつになった。

もうけは政治
家と投資家へ
このようなカジノ産業の栄枯盛衰は、日本でカジノが合法化され、市場開放され、独占営業権がとれるかどうかが分かれ目にもなる。日本でのカジノ合法化の水面下では条件等で綱引きがあったはず。結局、大都市で一兆円規模の投資をしなければならない法律になった。
秋元議員の事件は、地方に潜り込もうとした中国の企業が政治家に働きかけたケース。IR法では対象にならない北海道、九州などの議員の収賄が事件になっている。横浜市長が昨年八月にカジノ誘致宣言をしたことで様相がかわった。
ラスベガス・サンズは収益率を達成するためには大阪から撤退し、東京と横浜を優先すると宣言した。サンズは二〇一八年まで七年間で純益一九〇億ドル、配当二二六億ドル。儲けより配当が多い。配当は株主ファミリーのアデルソン一族からトランプの資金源に流れている。

どんどん進む
脱法化
IR汚職から見えることは、異常な国会審議の過程。治外法権がどんどんひろがる。刑法で禁止されている賭博を例外扱いする。既存の公営ギャンブルは公設公営で、法務省もいろいろ条件をつけた。石原都政はこれを乗り越えられなかった。
IRは「統合型リゾート」ということで法務省の八条件がひっくり返された。民設・民営・民益なのになぜOKになるのか。貸金法の総量規制(年収の三分の一以下)もすり抜ける「特定資金貸付」。「景品価格は二割以下」の景品表示法も適用外など、どんどんカジノを認めていく過程だった。何のために、誰のために。利権のためだ。

 カジノ面積一・五万平米以下、延べ床面積の条件も変えられた。依存症対策で「週三回」というが一回二四時間までOKだ。パチンコの平均営業時間一三時間なので、カジノの一回はパチンコの二回分に相当する。時間平均で考えたら「週六日OK」ということだ。日本人の平均余暇は二―三日。つまりは休みの日はカジノに入り浸りでもOKとなる。

地方は撤退し
始めている
カジノを推進する側は「世界一二〇カ国以上にある」「先進国では日本にだけない」「国際競争力のためにカジノが必要」という意見。しかし日本はアメリカ型カジノがモデル。統合型リゾートで設置の資金的ハードルが高い。国際会議場やホテルなど規模も大きくなる。そのハードルをクリアーするために横浜が手を挙げた形だ。
横浜では、カジノ事業者による見積もりがある。投資規模一兆三〇〇〇億円、売上七四〇〇億円、税収一二〇〇億円など。だがこの税収を確保するには毎年六〇〇〇億円の利益をださないといけない規模。ラスベガスにあるカジノ全部をあわせた利益の規模を横浜だけで稼がないといけない計算になる。
大阪IRの事業見込みは収益四八〇〇億円、カジノだけで三八〇〇億円の収益規模。万博前のオープンも困難となり、サンズは大阪から撤退。北海道や千葉市などの自治体は誘致を断念。江東区の青海地区が有力となった。

カジノ構想は石原
都政から始まった
石原都政のお台場カジノ構想が最初だったが、プラン規模は小さい欧州型。カジノ中心にホテル、娯楽施設が付随するタイプで、収益三〇〇〜五七〇億円の規模。カジノ議連も発足したが、実現せず。安倍政権になった二〇一三年から維新の会によって息を吹き返す。カジノを隠してシンガポール・モデルのIRが出てきた。経済規模が大きいので経済効果があるという主張だ。推進派はカジノという言葉を使わなくなった。
東京都もひそかに検討してきた。「しんぶん赤旗」や共産党都議団が資料入手した資料によると、二〇一二年に臨海副都心案で議論を始める。国際会議場・展示場(MICE)や観光拠点として三六〇〇億円を投資して、カジノを含む場合、含まない場合で推計している。カジノがない場合でも「赤字」ではなく「儲けが薄い」と記載した。
二〇一五年に舛添要一都知事のもとで三菱総研のレポートが出る(非公開)。青海地区、品川・田町地区、築地市場跡地の三地域を比較して青海地区が最適地とされた。横浜の山下埠頭や大阪の夢洲などとも比較して、最適地としている。青海地区は、面積の問題から周辺の公園や遊歩道も含む。交通手段も羽田からの直通鉄道が必要とする。
推進派は「カジノがないと採算とれない」というが、カジノがなくても赤字にはならない想定だ。民間投資を誘致するために投資収益率が二〇%以上必要だということだ。

小池都政下で
継続する構想
小池都政下の二〇一八年三月、都の委託を受けたトーマツの調査報告書ではIR売り上げ四〇〇〇億円、一・五ヘクタールのカジノ面積を必要とするが、青海地区では足りない計算になる。民間投資を誘致するために、十分な投資収益率を実現するためにカジノが必要という結論になっている。
一八年七月にIR整備法が成立し、都港湾局は「大都市でないとビジネス成立が難しい水準」と認識し、計画変更を迫られる。東京ベイエリアビジョン(一八年七月)や官民連携チーム(一八年一〇月)を発足させた。臨海副都心構想から東京ベイエリアビジョンへの発展は、規模を拡大するとともに民間のプロフェッショナルを活用することが核心。
一九年一〇月には官民連携チームによる一一の提案がだされ「世界に向けてここしかないベイエリア」「稼ぐ東京」としてIR(カジノ)を盛り込んだ提案を行う。今年の都知事選以降、一挙に青海地区をさらに拡大して計画が大規模化する可能性もある。

 

ベイエリア全
体が対象に
マカオやラスベガスでは複数のカジノを客が渡り歩くことで収益が拡大することがわかっている。羽田を中心に東京・青海と横浜・山下埠頭をつなぐ広大なエリアが対象になる可能性もある。人口が比較的少ない地方でも、アメリカの中小規模のカジノ企業が進出を狙う可能性もある。

家族みんなが
借金漬けに!
推進派は「カジノ面積はIR全体の三%のみ、九七%は家族みんなで楽しめる施設」というが、利益面で見るとシンガポールやマカオではカジノの売上が八〜九割を占める。そうでないと投資側のうまみがない。利益は九七%の施設に行く客をどうカジノに誘導するのか、そしてその客をどうリピーターにするのかにかかっている。
ラスベガスは年間四〇〇〇万人が訪れる。二〇一八年の調査では初めてラスベガスに訪れた観光客のうちカジノ目的の人は一%。観光客の平均宿泊日数は三泊だがそのうち七〇%以上がカジノに行ったと答えている。消費内容もショッピングや飲食を合わせた額よりもカジノでの消費(五二七ドル)の方が多い。
二度目以上の訪問客の場合、カジノ目的は九%に跳ね上がっている。リピーターとはギャンブル依存症やその予備軍であり、そこからまきあげたのがカジノの利益ということだ。家族向け施設面積が九七%だというのならば、家族みんなをギャンブル漬けにするのがIRの本質ともいえる。
投資収益率二〇%以上が目標で、東京都のレポートと重なる。IR施設はカジノ含めて、投資資金さえあれば人工的に作ることができる。言いかえれば競争は資本の体力勝負ということ。カジノ企業の自己資本金は三割、残り七割はファンドなどの投資資金で賄うので、二〇%の投資収益率を謳って資金を集める。

ギャンブルの
からくりとは
イギリスはギャンブルを合法化しているが、カジノ施設に特化した欧州型。IR型は拒否している。地域社会を破壊するからというのが理由。日本にもパチンコ店が一万軒あるし、公営ギャンブルもあるが、カジノはまったく質が違う。日本の公営ギャンブルは胴元が二五%取り、あとを客が分け合う仕組み。一回でもかならず二五%の利益が胴元に入る。カジノの場合、決められた胴元の取り分はない。客が大勝することもある。つまり胴元は客をリピーターにしなければ、利益を確保できない。
たとえばルーレットだが、三八ある数字のうち〇と〇〇に球が入ると胴元の取り分となる。つまり五%強の確率で胴元が勝つ。これを何度も続けさせることで、安定的に取り分を確保することができる。カジノには窓もなく、時計もなく、薄暗いので時間の感覚がマヒする。また酒も飲み放題なのでますます麻痺する。これだけを見ても既存のギャンブルとカジノはまったく違う。

依存症などの
社会的コスト
ギャンブルは新たな価値を生み出さない無益な貨幣の移転にすぎない。もちろん経済効果がないというわけではない。投資費用だけでなく、カジノで消費する物品の仕入れ、労働者の賃金など、そこでも消費がおこなわれる。
しかしそれは客が負けたカネが原資だ。客はお小遣いでギャンブルをやるのではない。依存症ともなれば生活費に手を出し、借金もする。生活資金は本来は地域経済を回す役割があるはずだが、それがカジノに吸い上げられてしまう。そう考えると地域社会にとってはマイナスの経済効果と言わざるを得ない。
たとえば米ニューハンプシャー州の調査では、カジノ開設で依存症対策やその他で五〇〇〇億ドルの社会的コストが発生する。

推進派のウソ
推進派は「シンガポールの観光客は増えた」と大騒ぎする。しかしじつは日本にくる観光客のほうがずっと増えているし、伸び率もアジアでは平均以下にすぎない。実際にはシンガポールにおけるカジノの経済効果は後退している。国際観光力もシンガポールは一位から六位へ下げている。
現在の観光産業の主流はカジノのない町をターゲットにしている。カジノがあるところには投資しない。日本の観光客が増えているのはIRがなかったからともいえる。
「国際会議場にカジノがないと赤字になる」というが、そうではない。カジノがないと収益率が低くなるだけ。また「シンガポールでは依存症が減っている」というが、じつはシンガポールのカジノは外国人観光客が主な対象。住民への依存症対策はシンガポールの厳しい管理体制によってコントロールされているので住民の依存症率は減るのは当然で、カジノの有無とは関係ない。
アメリカの調査によると、カジノに近い住民ほどカジノにいく常習者が増え、その結果、依存症が増えるという。つまり東京のような人口密集地にカジノをつくるとどうなるか分かるだろう。

ISD条項の
訴訟リスク
TPPで問題になったISD条項(期待収益に対する損失補てん)の訴訟リスクがIRでも懸念される。昨年八月、自民党の荻生田光一はカジノ推進派の集会で、五年や一〇年の認定期間では投資する側のリスクが大きい、三〇年に延長も可能だと発言して、投資リスクを自治体や納税者に押し付ける考えを示している。
こんな議員がいま文科大臣だ。たとえば、自治体でカジノ反対派の首長が当選したり議会で多数派を握ってカジノを廃止する等、決められた継続判断基準以外の事由で、事業認定の更新を行わない場合、カジノ企業は想定される損害(たとえばあと一〇年営業権が継続する場合は予想される一〇年分の収益)を補償せよ、と裁判を起こすことも考えられる。自治体は住民に対して、そういったリスクがあることを言わなければならないが、横浜の林文子市長は「税収が入る」「儲かる」しか言わない。
(BB)




もどる

Back